2018年03月01日

●「『ホット炭酸』をするテレビ各局」(EJ第4714号)

 安倍政権と「四季の会」によって誕生した籾井勝人NHK会長
は、その就任会見で、一応個人的見解であると断りながらも暴言
を連発します。2014年1月25日のことです。砂川浩慶氏は
これを「放言」とし、次のように述べています。
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 従軍慰安婦問題について「今のモラルでは悪いことだが、戦争
地域にはどこにもあった」とし、ドイツ、フランスの名をあげ、
さらに「なぜオランダにまだ飾り窓があるんですか」と発言。尖
閣諸島・竹島などの領土問題については「国際放送で日本の立場
を主張するのは当然。政府が『右』というものを『左』というわ
けにはいかない」。特定秘密保護法については「国会を通ってし
まったので、言ってもしょうがない」などと発言した。
 これらの発言に対して批判がわき起こり、籾井氏は国会に招致
される。そして、「個人的見解だ」「放送に反映させることはな
い」と発言を釈明した。しかし、2月12日の経営委員会では、
経営委員からの就任会見以降の混乱への質問に対して、「ぜひこ
の前の記者会見のテキストを全部見ていただきたい。それでもな
おかつ私は大変な失言をしたのでしょうか」と述べており、本心
からの反省は感じられない。
      ──砂川浩慶著『安倍官邸とテレビ』/集英社新書
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 籾井氏は、安倍政権が自分に何を期待しているかをよくわかっ
ているつもりで、この発言をしたと思います。しかし、こういう
ことは就任会見でいうべきではなく、これにより、籾井氏は国会
に招致され、何回も喚問を受けることになったのです。それ自体
安倍政権の望むことではなかったはずです。
 2017年7月23日、次期会長の指名の検討をする指名部会
が行われた頃から、NHK内部では当時の松本会長の再任はもは
やなく、新会長は安倍政権寄りの人物が送り込まれるという雰囲
気が漂っていたといいます。
 ちょうどその頃、国会では、特定秘密保護法案が審議されてい
たのです。11月26日に自公の与党とみんなの党の賛成で衆議
院を通過し、12月6日に参議院も通過して成立しています。
 その頃から「ホット炭酸」という妙な言葉が流行しはじめたの
です。「ホット炭酸」とは何でしようか。
 「ホット炭酸」とは、文字通り温かい炭酸飲料のことです。し
かし炭酸は温度が高いほど抜けやすくなるため、温かい炭酸飲料
の商品化は困難とされてきたのですが、日本コカコーラとキリン
ビバレッジが独自技術の採用で、実現させたものです。
 といっても流行しているのは「ホット炭酸」そのものではなく
安倍政権のテレビ局規制に対応するための方法として使われてい
るのです。
 特定秘密保護法の成立にいたる一連の報道で、ある日のこと、
NHKのメインニュース番組である「ニュースウオッチ9」で、
「ホット炭酸」の話題を長々と流し、肝心の特定秘密保護法関連
のニュースは、時間も短く、内容の是非に踏み込んだ解説を故意
に避けたことがあります。
 つまり、どうでもよいことを長々と流し、肝心なことはサラリ
と触れる程度にして逃げたのです。これは明らかな官邸対策であ
り、このことから、そういうテレビ局の対応のことを「ホット炭
酸」と呼ぶようになったのです。いわゆるギョーカイ用語の一種
であるといえます。
 実際に、NHKは、特定秘密保護法そのものに関する報道の時
間は民放に比べて少なく、報道の自由を狭めかねない問題では、
独自の取材や解説をまったくしなかったのです。こうした報道も
「新会長」就任後を意識して、報道局の幹部たちが政権の意向を
先取りし、忖度したものと思われます。NHKというのは、そう
いう組織なのです。
 実際に籾井会長になってからのNHKの報道は、誰の目にも明
らかなほどの政権寄りであり、そういう意味で安倍政権にとって
は、籾井会長を送り込んだことは成功であったといえます。その
実態は、NHKのOBを中心とする「放送を語る会」がまとめた
実証データによって明らかです。具体的には、『安保法案/テレ
ビニュースはどう伝えたか/検証・政治権力とテレビメディア』
(かもがわ出版)によって知ることができます。
 対象番組は、NHK「ニュース7」と「ニュースウォッチ9」
日本テレビ「NEWS ZERO」、テレビ朝日「報道ステーシ
ョン」、TBS「NEWS 23」、フジテレビ「みんなのニュ
ース」の民放を含む6番組です。このなかから、NHKの2番組
のコメントについて、砂川浩慶氏は次のように述べています。
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 NHKの「ニュース7」「ニュースウォッチ9」は、政権にマ
イナスになるような出来事や審議内容を極力伝えない傾向があっ
たこと、記者解説が「政府広報」という印象を与えていること、
国会審議の伝え方で政府・与党の主張に傾斜していることなどを
指摘している。
 NHKの報道で私が気になっているのは、その見せ方である。
国会審議の模様を報じる際、質問者の質疑後に安倍首相の答弁を
映し、特にコメントもなく次の話題へ移る。映像メディアの特性
として、この手法では全体の問題点は分からず、最後の安倍首相
の答弁だけが印象に残る。高市早苗総務大臣の停波発言問題でも
同様の手法が使われており、報道機関として、問題の解説より政
府の答弁を重視する姿勢が如実に表れている。
      ──砂川浩慶著『安倍官邸とテレビ』/集英社新書
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 NHKの報道はまるで政府広報である──NHKのOB自身が
実証データに基づいてそういっています。まさに「ホット炭酸」
そのもの。しかし、安倍政権は、そういうNHKのある番組も気
に入らず、圧力をかけて、著名キャスターを交代させるなどして
います。        ──[メディア規制の実態/038]

≪画像および関連情報≫
 ●時代の危機を感じるNHK首脳の人模様
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   国営放送といえば、すぐ北朝鮮や中国のメディアが思い浮
  かぶ。一方、公共放送のイメージはいまひとつ定かでないが
  公共や公共性の概念を駅のコンコースに例えると分かりやす
  い。立場や考え方は違えども人それぞれに幸せを求め行き交
  う開かれた空間がコンコースであり、何か邪悪な意図で人々
  の自由な行動を妨げる者は排除されねばならない。公共放送
  も同じことで、広く人々を幸せに導く知識・情報の伝達が責
  務であり、特定の政治勢力が横車を押すような愚は厳に慎ま
  ねばならない。民主主義社会を支えるメディアであり、国営
  放送とは理念が異なる。
   その視点から見て公共放送NHKの籾井勝人会長と最高意
  思決定機関である経営委員会の委員2人による昨今の言動は
  深い不信感を抱かせる。現に欧米諸国のメディアのNHK批
  判は厳しく、ドイツ紙はNHKを国営放送と決め付けたうえ
  「日本の国営放送を中国的状況が支配している」とまで酷評
  している。ケネディ・駐日米国大使がNHKの取材を拒む事
  態も尋常なことではない。元従軍慰安婦の、人格をおとしめ
  る歴史の事実を否定、東京裁判は拒否し、思想の違う相手を
  「人間のくず」と呼ぶ。言論テロを称賛するような論文を発
  表する。批判を招く首脳陣の言動は多岐にわたるが、会長発
  言には公共放送トップの自覚を疑わせるものもあった。日本
  の知性を代表する立場だが、心に響く論理も言葉の修辞もま
  るで抜け落ちた品性を欠く言説に筆者は寒気を覚えた。籾井
  会長は主要な発言を撤回したが、本音はどうなのか不審な言
  動が続く。            http://bit.ly/1i0KnzK
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当時のNHK「ニュースウォッチ9」.jpg
当時のNHK「ニュースウォッチ9」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | メディア規制の実態 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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