2018年01月30日

●「安倍政権のメディア規制への意見」(EJ第4693号)

 安倍首相の「メディア幹部との会食」の是非については種々の
意見があります。そこで、砂川浩慶氏とニューヨークタイムズ前
東京支局長マーティン・ファクラー氏の意見をご紹介します。
 最初は砂川浩慶氏の意見です。砂川氏は、放送を中心とするメ
ディア政策、法制度を研究テーマとする学者としての意見です。
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 世界的にみても、政治のトップがメディア幹部らとこれだけ頻
繁に会食する例は、寡聞にして聞いたことがない。百歩譲って、
取材する記者であれば、最高権力者と会食することで取材の幅を
拡げ、国民の知る権利に奉仕する報道を実施することば可能であ
ろう。しかし経営トップとなれば、そうはいかない。経営者の最
大の関心は、自社グループの利益拡大である。
 渡邊恒雄・読売新聞グループ本社会長が読売新聞の社長に就任
したのが1991年。既に四半世紀を経ている。同様に日枝久・
フジテレビ会長がフジテレビの社長となつたのは1988年。こ
ちらも四半世紀を超える支配体制を築いている。このような経営
者が頻繁に首相と会食をしているのを尻目に、現場の記者が「権
力の監視」を行なうことが果たして可能だろうか?
                      ──砂川浩慶著
             『安倍官邸とテレビ』/集英社新書
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 メディアには政権を監視する役割があります。政権に問題があ
れば、それを指摘し、国民に知らせる責任を負っています。その
メディアのトップが、国の最高権力者と親しく頻繁に会食をする
例は海外では見られない現象であるといいます。
 まして、読売新聞の渡邊会長やフジテレビの日枝会長が頻繁に
安倍首相と親しく会食をすれば、そのメディアの信頼性が根本か
ら揺らぐことになります。そういう、あってはならないことが、
日本では平然と、当然のことのように、行われていると砂川浩慶
氏は指摘しているのです。
 続いて、ニューヨータイムズ紙の前東京支局長、マーティン・
ファクラー氏の意見です。
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 政権がメディアをコントロールしたいと思うのは当然だ。私は
メディア・コントロールに努める安倍政権よりも、やすやすとコ
ントロールされるままでいる日本のメディアに強い危機感を覚え
ている。なぜ大手メディアはアメによる懐柔策を突っぱね、安倍
政権を真っ向から批判しようとしないのだろう。
 政権に批判的な記事を書いた結果、官邸へのアクセスの制限や
取材拒否に遭えばそのときこそメディアにとっての大チャンスの
はずだ。権力の不当な振る舞いを批判できる機会を与えてもらっ
たようなものだ。チームを組んで安倍政権のメディア戦略を調べ
上げ、メディア・コントロールの実態について調査報道ですべて
を明らかにする。どのメディアの誰がどういう料亭で首相に会い
密室でどんな会話がなされたのか。そもそもメディアの上層部が
総理大臣と近すぎる距離にいること自体がおかしい。メディアの
人間は意識的に権力と一定の距離を保つよう、心がける必要があ
る。そうした観点から、ジャーナリズムと政治権力の緊張関係に
ついて、記事によって一石を投じればいいのだ。
               ──マーティン・ファクラー著
      『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』/双葉社刊
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 マーティン・ファクラー氏は、安倍首相がメディアのトップと
コミュニケーションをとり、親しくなろうとして、会食をするの
は理解できるという立場です。それは、権力者として本能みたい
なものだからです。
 しかし、メディアの方は、易々とそれに応じてはいけないとい
います。権力者と親しくなれば、その監視役であるメディアとし
ては、どうしても政権を批判しにくくなるのは当然の帰結である
からです。したがって、権力者からの会食の招待も、礼を失しな
い程度に付き合うレベルにとどめるべきであるとします。
 そういう状況の下で、政権が、テレビ朝日の「報道ステーショ
ン」の特定のコメンテーターや編集者を外せというような不当な
圧力をかけてきたら、断固として政権として戦うべきであり、も
しそのメディアができないのであれば、他のメディアがそのこと
を報道すべきではないかといっています。それがメディアの役割
であると主張しています。誠にその通りであると思います。その
意味で、日本のメディアは、権力に完全に懐柔されています。
 安倍政権のメディア対策について述べてきていますが、最後の
項目が残っています。
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        1.ぶらさがり会見の中止
        2.蜜月メディアへの出演
        3.メディア幹部との会食
      ⇒ 4.メディアチェック実施
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 メディア対策の第4は「メディアチェック実施」です。
 安倍政権はどのようにして、メディアをチェックしているので
しょうか。
 これについては、詳細はわかっていませんが、安倍政権のなか
に終始メディアをチェックするチームがあり、問題があるときは
即座に対応できるようになっていると思われることです。それは
海外の記者の書いた記事に対してもチェックが及んでおり、問題
のある記事には、その海外メディアの本社に対し、外務省を通じ
て日本政府としてクレームを入れています。
 そのチェック体制は、2015年に起きたテレビ朝日「報道ス
テーション」からの古賀茂明コメンテーター解任事件を分析する
ことによって浮かび上がってくるはずです。次回から、この問題
について検討することにします。
            ──[メディア規制の実態/017]

≪画像および関連情報≫
 ●国連が、安倍政権によるメディア圧力に是正勧告へ
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   安倍政権によるメディアへの報道圧力が、国際社会で大き
  な問題になった。国連の人権理事会が2017年11月14
  日、日本の人権状況を審査する作業部会を約5年ぶりに開催
  したのだが、そこで各国から「報道の自由」に対する強い懸
  念の声が続出したのだ。
   本サイトでお伝えしてきたとおり、第二次安倍政権以降、
  官邸はテレビなどのマスコミを常時監視しており、報道に対
  する圧力は日々苛烈を極めている。今年5月には昨年来日調
  査を行った国連人権理の特別報告者のデービッド・ケイ氏が
  報告書(未編集版)を公表し、そのなかで安倍政権による報
  道圧力とメディアの萎縮について是正を勧告していた。
   そして、今回の国連の対日人権審査では、たとえばブラジ
  ルやベラルーシ代表が特定秘密保護法による「報道の自由」
  の侵害に懸念を示し、アメリカ代表などはさらに踏み込んで
  日本の「放送局をめぐる法的規制の枠組み」を問題視。政府
  による電波停止の根拠となっている放送法4条の改正と、独
  立した第三者監督機関の設立を求めたのである。人権理によ
  る最終的な勧告は来年に行われるが、そこに日本の「報道の
  自由」の現状を憂慮する文言が組み込まれる可能性は極めて
  高いと見られる。         http://bit.ly/2z8H4JZ
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マーティン・ファクラーニューヨーク・タイムズ紙前東京支局長.jpg
マーティン・ファクラーニューヨーク・タイムズ紙前東京支局長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | メディア規制の実態 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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