2017年12月08日

●「和歌における『折句』と『沓冠』」(EJ第4662号)

 このところ難しい話が続いています。頭休めとして、理学博士
竹内薫氏の量子コンピュータの本に出ていた暗号に関する話をご
紹介します。
 「ステガノグラフィー」という言葉があります。ウィキペディ
アで調べると、次のような意味です。
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 ステガノグラフィー(steganography) とは、データ隠蔽技術
の一つであり、データを他のデータに埋め込む技術のこと、ある
いはその研究を指す。 クリプトグラフィー(cryptography) が
メッセージの内容を読めなくする手段を提供するのに対して、ス
テガノグラフィーは存在自体を隠す点が異なる。
         ──ウィキペディア http://bit.ly/2B6lKFD
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 何でもない文書に重要な情報を隠して送るのですが、何も知ら
ない人には普通の文章に見えるものの、読み方のルールを知って
いる人には、ちゃんと伝わるのです。このように平文に情報を隠
す技術を「ステガノグラフィー」といいます。
 昔の歌人は、このステガノグラフィーを使って和歌のやり取り
をしていたといわれます。竹内薫氏の本には、徒然草の作者の吉
田兼好と、その兼好と共に和歌四天王とよばれた歌人・頓阿との
和歌でのステガノグラフィーの例が出ています。
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 ◎吉田兼好
  夜も涼し 寝覚めの仮庵 手枕も 
  ま袖も秋に へだてなき風
 「夜も涼しくなったわ。家がボロいやん?アチコチの隙間から
秋風が入って目ぇ覚めるねん」
 ◎頓阿
  夜も憂し 妬たく我が背子 果ては来ず 
  なほざりにだに 暫し訪ひませ
 「夜が長くて退屈しているねん。ツレやねんから、遊びに来た
らエエのに。気軽においでや」  ──竹内薫著/丸山篤史構成
 『量子コンピュータが本当にすごい/グーグル、NASAで実
         用が始まった“夢の”計算機』/PHP新書
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 一見すると時候の挨拶のように見えますが、各句の語頭をとり
さらに後ろから語尾を並べると、次のようになります。
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    ◎吉田兼好
     よねたまえ → 米を貸してくれませんか
     ぜにもほし → お金も少し貸してほしい
    ◎頓阿
     よねはなし → 米は残念だがありません
     ぜにすこし → お金なら少しありますが
                 ──竹内薫著の前掲書より
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 和歌においては、このようなテクニックのことを「折句」とか
「沓冠」といっていますが、こういう一種の言葉遊びは、平安時
代から現代まで続いてきているのです。
 暗号の話はこのくらいにして、現在のコンピュータがどういう
ものであるかについて説明することにします。なぜなら、現代の
コンピュータがどういうものかわからないと、量子コンピュータ
が理解できないからです。
 それでは、現代のコンピュータとは何でしょうか。
 現代のコンピュータのほとんどは「ノイマン型コンピュータ」
と呼ばれています。「ノイマン」とは、ハンガリー出身の米国の
数学者であるフォン・ノイマンのことで、彼の構想により、作ら
れたコンピュータをノイマン型コンピュータというのです。
 それは、「京」のようなスーパーコンピュータから、多くの人
が日常使っているウインドウズPC、アップルPC、そして各種
スマートフォンにいたるまで、すべてノイマン型コンピュータに
属するのです。
 地球シミュレータと呼ばれるコンピュータがあります。海洋研
究開発機構で使われているスーパーコンピュータです。もちろん
このコンピュータもノイマン型コンピュータであることには変わ
りはないのですが、どういうコンピュータか詳しく述べると、高
性能なPCを並列につないだものであることがわかります。
 地球シミュレータは、1つ1つが毎秒80億回の計算が可能な
小さなコンピュータを8台を1セットにして実に640セット、
全部で5120台を並列に接続しており、全体で最大毎秒40兆
回の計算ができる凄いコンピュータです。しかし、コンピュータ
自体はノイマン型なのです。
 一体フォン・ノイマンとは、どういう人物なのでしょうか。ど
うやら、単に稀有な数学者というだけではなく、幅広い分野で驚
くべき立派な業績を上げているのです。竹内薫氏は、ノイマンに
ついて次のように絶賛しています。
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 純粋数学から始まったフォン・ノイマンの経歴は、応用物理か
らコンピューター、経済学、気象学、生物学、心理学、政治へと
及ぶ。しかも、それぞれの業績は掛け持ち仕事だったのだから恐
れ入る。フォン・ノイマンの才能は、どんな分野だろうと関係な
かった。まるで石ころからダイアモンドに磨き上げてしまうよう
に、誰かの未成熟なアイデアを数学の力で瞬く間にキラキラ光る
宝物にしてしまうのだ。      ──竹内薫著の前掲書より
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 実は、フォン・ノイマンは、量子コンピュータの原理である量
子力学についても実績があるのです。いずれにしても、量子コン
ピュータを理解するには、現在のコンピュータであるノイマン型
コンピュータについて詳しく理解する必要があります。
            ──[次世代テクノロジー論/52]

≪画像および関連情報≫
 ●フォン・ノイマン/宇宙人説
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   現代社会は、天才であふれている。はずみで大魚をつかん
  だ運才、自称天才、エセ天才、ただの詐欺師。もちろん、本
  物の天才もいる。もっとも、本物の天才ともなれば、ヒトと
  は限らない。染色体の数が47本、つまり、両親から受け継
  がない秘密の染色体を持っている可能性もある(人間の染色
  体は46本)。ところが、さらに恐ろしい仮説もある。
   1950年代、アメリカの名門プリンストン大学に、ジョ
  ン フォン ノイマンという数学者がいた。彼は非常な変わり
  者だったので、こんな陰口をたたかれていた。「ノイマンは
  人間そっくりだが、本当は宇宙人」。
   たいていの本では、ジョークですませているが、中には真
  に受けている本もある。いずれにせよ、それが本当なら、染
  色体の数どころの話ではない。染色体があるかどうかも怪し
  い。宇宙人なのだから。
   アメリカのニューメキシコ州に、歴史上初の原子爆弾を開
  発したロスアラモス研究所がある。1945年8月、ここで
  つくられた2個の原子爆弾は広島と長崎に投下されたが、こ
  の忌まわしい研究所で、不気味なうわさが流れていた。「ハ
  ンガリー人はじつは火星人である」。これが普通の職場なら
  「ただのヨタ話やろ」で一件落着なのだが、天下の頭脳が集
  まる研究所である。噂を流した本人も、第一級の科学者だろ
  うし、何か根拠があったに違いない。
                   http://bit.ly/2j8bLYB
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フォン・ノイマン/世界的数学者.jpg
フォン・ノイマン/世界的数学者
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする