2017年11月29日

●「仮想現実かもしれない現実の世界」(EJ第4655号)

 「マトリックス」とは何なのでしょうか。人間は、AI(人工
知能)によって、後頭部をプラグにつながれ、仮想現実の世界を
見させられているというのです。荒唐無稽ではあっても、ICT
的になんとか説明がつく理屈です。
 ネオは、戦う士官トリニティによって、モフィアスに紹介され
「君は奴隷なのだよ、ネオ」と告げられ、現在の人類の状況を次
のように説明されます。なぜ、英語なのかというと、劇場用アニ
メ映画『ゴースト・イン・ザ・シェル/攻殻機動隊』の監督であ
る押井守氏が、映画『マトリックス』については英語のセリフに
注目すべきであるといっているからです。
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   Like everyone else you were born into bondage, born
  into a prison that you cannot smell or taste or touch.
  A prison for your mind.
 他の者がそうであるように、君もまた囚われの身に産まれ、君
が嗅いだり、味わったり、触れたりすることのできない刑務所の
中に産み落とされた。「心」を支配する刑務所だ。
                   http://bit.ly/2BlvPez
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 「心を支配する刑務所」とはなかなか深いです。確かに支配し
ているのはマトリックスですが、自分が見聞きしているマトリッ
クスの世界を現実であると心が受け入れているからです。
 それでは、心が現実であると認識している世界を映像で見てい
ただきたいと思います。人間はプラグでつながれていますが、基
本的には、自分の意思の力でプラグを外すことができます。そう
すれば、本物の現実の世界に戻ることができます。しかし、現実
の世界は太陽が失われているので、真っ暗な世界です。マトリッ
クスの世界の方がはるかに魅力的であり、現実的であり、寛げる
世界になっているのです。だから、すぐにマトリックスの世界に
戻ってしまいます。
 つまり、AIは、人間をがんじがらめには束縛していないので
す。そのため、自分の状況に気付く人はいます。AIはこういう
自らの状況に気が付く人を「アノマリー(異端児)」と呼んでい
ます。そして、そういう人たちの集まっている都市のことを「ザ
イオン」と呼び認めています。つまり、モフィアスやトリニティ
は、アノマリーであるということができます。
 それでは、マトリックスの世界とはどのような世界であるか、
とくに映画をご覧になっていない方にお見せしたいと思います。
これは、モフィアスたちの制作したマトリックスの世界を体験し
敵と戦う訓練プログラムの仮想空間であり、マトリックスとそっ
くりに作られています。モフィアスがネオを案内し、どうやって
リスクに対処するか、その方法を教えています。
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    ◎マトリックス訓練プログラム/2分27秒
              http://bit.ly/2iRRGmp
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 マトリックスの世界から救出されたネオは、モフィアスとさま
ざまな問答を展開します。映画を見ている人には、それはまさに
哲学問答のように聞こえますが、現代人にとって考えさせられる
ものがあります。モフィアスは、ネオだけでなく、現代人にも問
いかけています。その一部を再現しましょう。ネオ=N、モフィ
アス=Mとします。
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N:これは現実ではないのか。
M:現実とは何だ。君はどうやって現実とそうでないものを見分
  けるのか。君が感じるもの、匂うもの、味わうもの、それを
  「現実」というなら、現実とは、君の脳から発せられた単純
  な電気信号に過ぎない。ここにマトリックスの本質がある。
  我々人間が「現実」として意識しているもの──目に映るも
  の、匂い、味、音、ものの感触──それら全ては、生理学的
  にいえば、「脳のシグナル」によって認識させられるもので
  ある。つまり、実体があるようで、そこには「何もない」の
  かもしれない。すべては、心が作りだした、イメージの世界
  かもしれない。
N:マトリックスとは何か。
M:支配。マトリックスとは、人類を生体電池として支配するた
  めに作り出されたコンピュータの描く夢の世界なのだ。
                   http://bit.ly/2BlvPez
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 現在、われわれが住んでいる現実の世界も、もしかしたら、仮
想現実かもしれないのです。われわれが見たり、聞いたりしてい
る世界は、脳のシグナルによって作り出されたイメージに過ぎな
いといえるからです。
 モフィアスは、ネオの持つ特殊な能力に気付き、レジスタント
のリーダーになり得ると判断し、彼のプラグを外し、仲間に加え
たのです。しかし、AIと戦うためには、訓練が必要です。そこ
で、モフィアスは、マトリックスそっくりに作られた訓練空間の
カンフーの道場で、ネオに稽古をつけるのです。
 ネオはカンフーをやったことはないのですが、このプログラム
の世界では、心にとらわれているものをそぎ落とせば、それまで
に経験していなくても何でもやれるのです。このカンフーのシー
ンはこの映画の有名なシーンです。時間は、4分21秒ですが、
迫力満点です。モフィアスの言葉。「頭で考えるな!心を解き放
て!」は重要な言葉です。心にとらわれている限り、何もできな
いからです。
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       ◎カンフーのシーン/4分21秒
            http://bit.ly/2n2IAYl
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            ──[次世代テクノロジー論/45]

≪画像および関連情報≫
 ●映画マトリックスと胎蔵界
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   マトリックス1の映画で、私たちは仮想現実に住んでいて
  コンピューターに操られています。子供の時にコードを繋げ
  られるとその仮想現実の世界で生活し、熱を発生します。そ
  の生命エネルギーがコンピューターにとって必要なのです。
  私たちは感覚器官から伝わってきた情報を真実と信じ、仮想
  現実の中で何でも出来るとは信じていません。
   モーフィアスは言います。『何が現実か?五感が感じるも
  のが現実? 現実は脳による電気信号に過ぎない』。選ばれ
  た主人公ネオは、モーフィアスに会って話を聞きます。なぜ
  ここに来たか。『目覚めたいからだ』。その理由は『何かが
  間違っていると感じたから』。
   密教では私たちの心には、情報の覆いがかかっていると言
  います。その覆いを剥ぐことが「目覚める」ことであり、目
  覚めた人のことを覚者(Buddha)と呼びます。般若心経では
  無・眼耳鼻舌身意と感覚器官なんて無いんだと称えます。ま
  た無・色声香味触法と感覚対象さえ無いんだと称えます。
   意識が現実世界を創っていることを知るために、密教(修
  験道)では滝行をします。私たちは意識の力により感覚器官
  の働きを、一時停止させることも出来るのです。意識の力で
  脳による電気信号を遮断することが出来るのです。
                   http://bit.ly/2Ace1SZ
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ネオとモフィアスのカンフーのシーン.jpg
ネオとモフィアスのカンフーのシーン
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする