2017年11月22日

●「スマートマシンによる第4の失業」(EJ第4651号)

 「スマートマシン」と呼ばれるマシンがあります。米国の調査
会社であるガートナー社は、スマートマシンを次のように定義し
ています。
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 自律的に行動し、知能と自己学習機能を備え、状況に応じて自
らが判断し適応し、これまで人間にしかできないと思われていた
作業を実行する新しい電子機械。        ──林雅之著
      『スマートマシン/機械が考える時代』/洋泉社刊
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 スマートマシンには、当然高度に発達したAI(人工知能)が
搭載され、次の2つのことを実現しようとしています。
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       1.人間にしかできなかったこと
         ・「支援」「置換」
       2.人間には、できなかったこと
         ・「助言」「強化」
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 1つは、「人間にしかできなかったこと」をマシンが代替し、
仕上がりやスピートなどを効率化することです。
 工業用ロボットが、工場での作業を人間に代わってこなすこと
は相当以前から行われていましたが、最近では、スマートマシン
の出現によって、人にしかできなかったことが、どんどんマシン
に代替され、それが加速しつつあります。
 いま現実に起きつつあることは、銀行やコンビニの店舗の無人
化や、自律走行車がトラックやタクシーの運転手を代替しようと
し、軍事面では、自律型無人機がパイロットを置き換えようとし
ていることです。
 また、AIは人の音声を認識し、言葉の意味や文脈を理解し、
人間のやってほしいことを、まだ一部ではあるものの、代替して
くれるようになっています。
 2つは、「人間にはできなかったこと」をマシンが実施して、
結果を助言し、人間の能力を強化することです。
 マシンは、人間が一生かかっても読み尽せない膨大な学術文書
や法律文書を読み、分析し、最適な解釈や判断結果を示してくれ
ます。ある病院では、がん患者の細かな病状のデータをマシンに
与えると、その患者に最適な抗がん剤をアドバイスし、医師の判
断を助けます。
 これらはスマートマシンによるプラスの面です。スマートマシ
ンをフルに使いこなし、今までできなかったことをできるように
して自身の能力を向上させ、マシン処理によって空いた時間を有
効に活用するいわば「AIをこき使う人間」です。
 しかし、その一方で「AIに使われる人間」もいます。もちろ
ん職を奪われる人間も多数出てきます。これは、スマートマシン
のマイナス面です。現代では、スマートマシンによる第4の産業
革命が起きつつあるといえます。
 18世紀に起きた第1次産業革命による農民の失業、20世紀
初頭の工場の電力化と大量生産による第2次産業革命による労働
者の失業、続く20世紀後半のコンピュータ導入による第3次産
業革命による工場労働者の失業、そしてスマートマシンの進化が
もたらす産業の自動化によって起きるであろう知識労働者の失業
が予測されます。
 スマートマシンに限らず、科学技術の進歩により、機械が発達
し、人間の仕事が代替されることは、早くから多くの学者やエン
ジニアによって予測されていたのです。著名な経済学者、ジョン
・メイナード・ケインズは、機械の発達によって労働時間が減る
バラ色の未来の生活を次のように予測をしています。
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 2030年には、技術的進歩により、週の労働時間は15時間
にまで減り、豊富な余暇を楽しめるようになるだろう。
             ──ジョン・メイナード・ケインズ
               ────林雅之著の前掲書より
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 ケインズは1946年に亡くなっていますが、当時はコンピュ
ータがやっと世の中に現れた時期であり、根こそぎ産業がなくな
り、知識労働者ですら職を奪われる現代を予測することはできな
かったものと思われます。
 国際大学GLOCOM客員研究員で、NTTコミュニケーショ
ンズに勤務する林雅之氏は、これらの知識労働者の失業を「第4
の失業」と呼び、自著で次のように述べています。
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 書籍『機械との競争』(著:エリック・ブリニョルフソン、ア
ンドリュー・マカフィー/日経BP社)では、「今日、経済のあ
らゆる部門は技術による置き換えに直面しており、数百万単位の
労働者が不要になっている」と、テクノロジーの進化により、こ
れまでの人間の仕事の置き換えが進みつつあることを指摘してい
る。生産性が伸びても雇用が伸びない「グレート・デカップリン
グ」に陥る状況が予想される中、これらに対処していくことが、
「今世紀における最も急を要する社会的課題」としている。
               ────林雅之著の前掲書より
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 ピーター・ドラッカーは、早くから先進国における「超少子高
齢化社会」の労働人口の減少を予測し、警鐘を鳴らしていたので
す。だからこそ、来るべきそういう社会の到来に備えて、人類は
未来に対する予測を踏まえ、科学技術の研究を重ねてきたからこ
そ、それがAIを生み出し、高度化させることによって、現代の
スマートマシンを結実させたと考えられます。
 そのスマートマシンを活用すれば、少ない労働力でも生産性を
向上させる仕組みをつくることは可能です。そして、それを前提
とする人間にしかできない仕事を生み出していく。これからはそ
ういう時代になります。 ──[次世代テクノロジー論/41]

≪画像および関連情報≫
 ●「姿なきロボット」がメガバンク行員数万人の仕事を奪う
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   人間は人工知能(AI)に仕事を奪われてしまうのではな
  いか――。その問いは、テクノロジーの進化が引き起こした
  論争におけるメインテーマの一つだ。ただ、AIの影に隠れ
  て目立たないが、実はすでに現実のオフィスで、人間に取っ
  て代わる存在が台頭しつつある。それは、ロボット。それも
  姿なきソフトウェアロボットだ。私たちはその存在とどう向
  き合うべきか、真剣に考えなくてはいけない時代が訪れてい
  る。(週刊ダイヤモンド編集部 鈴木崇久)
   銀行業界に「大リストラ時代」が再び訪れる――この1〜
  2週間、メディアの報道の中でそうした見出しが何度も踊っ
  た。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住
  友FG、みずほFGの3メガバンクグループは今後、大規模
  大規模な店舗の統廃合や人員・業務のスリム化に取り組み、
  コスト構造改革に本腰を入れる。その結果、三菱UFJFG
  で9500人、三井住友FGで4000人、みずほFGで1
  万9000人、3社合計で3万2500人もの人員を浮かせ
  る算段だ。ただ、3社がこれから取り組もうとしている「大
  リストラ」には多くの場合につきものであるはずの早期退職
  募集などといった人員削減の話が出てこない。せいぜい大量
  に採用されたバブル入行組の退職と今後の新規採用の抑制に
  よって人員の自然減を進める程度にすぎない。実は、3社合
  計で、3万2500人分に相当する「業務の削減」は行うも
  のの、それで浮いた人員は営業など別の部門に回すことを想
  定しているのだ。         http://bit.ly/2B2WH2S
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スマートマシンが実現しようとしていること.jpg
スマートマシンが実現しようとしていること
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする