2017年11月21日

●「トラック隊列走行が実現する要件」(EJ第4650号)

 5Gを達成するための4つの要求条件(エンドツーエンドアー
キテクチャの変革)を再現します。
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     @  超高速        A超大容量
     B超大量接続      ⇒ C超低遅延
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 Cの「超低遅延」とは何でしょうか。
 「レイテンシ(latency)」 という言葉があります。レイテン
シは、データ転送における指標のひとつで、転送要求を出してか
ら実際にデータが送られてくるまでに生じる、通信の遅れ、つま
り、遅延時間のことをいいます。この遅延時間が短いことをレイ
テンシが小さい(低い)、遅延時間が長いことをレイテンシが大
きい(高い)と表現しています。
 ここでは「超低遅延」ですから、レイテンシが非常に小さいこ
とを意味しています。5Gではその実現を狙っているのです。何
かの操作をすれば、文字通り瞬時に反応するというのが「超低遅
延」ということになります。
 5Gの「超低遅延」の特性を使うと、さまざまなことが実現で
きますが、そのひとつに自動運転の「隊列走行」があります。隊
列走行とは、複数の車両が車間距離を詰めながら、縦に並んで走
ることです。これを自動運転でやろうというのです。
 ある目的地に大量の荷物を輸送するとき、4台のトラックで運
ぶ必要があるとします。この場合、当たり前ですが、4台のトラ
ックと4人の運転手が必要になります。これを1人の運転手と4
台のトラックでやることができます。
 『日経コンピュータ』は、5Gで超低遅延が可能になると、次
のようなかたちで隊列走行が実現すると書いています。
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 自動運転による隊列走行では先頭車の運転手だけが運転し、後
続車両は自動運転で先頭車を追随する。先頭車の加減速やハンド
ル操作などの制御情報を後続車へ迅速に伝える。データ伝送に5
Gを活用し、無線区間のみで1ミリ秒、伝送前後のデータ処理時
間を含めても10ミリ秒での伝送を目指す。公道を走る際は、先
頭車のドライバーが安全確認できるよう、後続車の側方・後方に
付けたカメラの映像を先頭車に送る必要もある。
     ──『日経コンピュータ』(2017年10月26)
                  http://nkbp.jp/2hIyEBE
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 先頭車にだけ運転手が乗っており、普通に運転をするのですが
その運転の微妙な感覚やハンドルなどの操作が、間断なく超遅延
で、後続車に伝わるのです。スピードを落とせば後続車もスピー
ドを落とし、先行車が止まれば後続車も止まります。車間距離は
ぎりぎりの限界まで、縮めてその体制を維持するのです。
 車間距離を短くして隊列走行すると、空気抵抗が低減し、現状
の道路幅員を維持したまま交通量を増大(単位道路距離あたりの
走行台数が増加)できるし、交通流の円滑化効果が期待されるの
です。この分野では日本が先行しています。これについて、日刊
工業新聞「ニュースイッチ」は次のように書いています。
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 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、トラッ
クの隊列走行の技術を開発、実証実験も実施した。豊田通商は国
内トラックメーカーやジェイテクト、日本信号、ナブテスコなど
と組み、経済産業省の事業の一環で、2018年度に後続車両が
無人の隊列走行を実証する計画。後続無人は世界初になる見通し
だ。新たなビジネスも生まれる。その一つが輸送する荷物の目的
地や目標到達時間、走行状況、渋滞情報を分析し、最適な隊列構
成を指令する交通管制技術だ。
 交通管制は米グーグルや米アマゾンと同様、「プラットフォー
ム型」ビジネスといえる。先駆者は米ペロトン。スウェーデン・
ボルボ、デンソー、カナダ・マグナ・インターナショナル、米U
PS、米インテルキャピタルなど、自動車・部品メーカー、物流
事業者などが出資しており、17年の商業化を目指している。隊
列走行が実現すれば、燃料費も削減できる可能性がある。とあれ
ば物流事業者が自動走行トラックを使わない手はない。
          ──日刊工業新聞「ニュースイッチ」より
                   http://bit.ly/2mEkgM7
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 さて、ここで、5Gの特徴に戻ります。日立システムズネット
ワークスによる5Gの特色を再現します。
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    1. エンドツーエンドアーキテクチャの変革
    2.   従来の無線技術の進化を超えた変革
    3.これまでの世代の技術を総合した通信方式
    4.   本格的なIoT向けのネットワーク
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 ここまで「1」について説明してきましたが、その説明のなか
で、「2」「4」については、説明を終わっています。そこで、
「3」について説明を加えます。
 5Gというのは、これまでの3G、4G、それにWiFiなど
の現在の通信方式に、2020年までに新技術が加わるのです。
これまでのものがすべて5Gにリプレースするのではなく、積み
上げられるのです。現在でも4Gが使えない場所では、3Gが対
応しますし、前の通信方式がなくなるわけではないのです。
 電波は、同一基地局内にいる人で分け合っています。この場合
周波数の帯域幅を広くするなどして、速度を速めることができれ
ば、データを取得する時間が圧倒的に少なくなり、占有時間が減
るので、多くの人がつながることができます。基地局を小型化し
数を増やすことによって速度を上げる方法もあります。何はとも
あれ、5Gが目の前に迫ってきていることは確かです。
            ──[次世代テクノロジー論/40]

≪画像および関連情報≫
 ●運輸人手不足の特効薬なるか/SBがトラック隊列走行実験
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   現在、運送業界は深刻な人手不足に見舞われており、ヤマ
  ト運輸が27年ぶりに宅急便の基本運賃を引き上げたことも
  記憶に新しい。今年3月には、高齢者の事故防止、運送業界
  の人手不足解消を狙い、道路交通法が改正されるなど、迅速
  な対策が求められている。
   そんな中、ソフトバンクが総務省の「高速移動時において
  1ms(1000分の1秒)の低遅延通信を可能とする第5世
  代移動通信システムの技術的条件等に関する調査検討の請負
  に選定されたと発表した。ソフトバンクが主体となり、グル
  ープ会社のSBドライブや、自動運転技術を開発する先進モ
  ビリティなどと、トラックの隊列走行および車両の遠隔監視
  ・操作に5Gを適用した実証実験を行う。
   「トラックの隊列走行」による幹線輸送は、物流事業者が
  抱える、深刻な人手不足という課題を解決すると期待されて
  いる。これは、先頭車両が有人運転し、後続車両が自動運転
  で追従するものだ。
   同社は、この隊列走行の実用化を目指し、5Gが持つ「低
  遅延」「高信頼」の能力を生かし、走行時の車両間および車
  両と運航管制センター間での、通信の実証実験を行う予定だ
  という。             http://bit.ly/2zO1Uxk
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トラック4台による隊列走行.jpg
トラック4台による隊列走行
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする