2017年11月06日

●「ニューグローバル/岩本敏男社長」(EJ第4639号)

 大前研一氏は、現在のインターネットの世界を「見えない経済
大陸」と呼んでいますが、NTTデータ代表取締役社長の岩本敏
男氏も大前氏に近い考えをもっています。こちらは「もうひとつ
の地球」です。
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 46億年にわたり「地球」はひとつでありつづけた。地球がひ
とつであるというのは当然のことであり、突飛なことをいうもの
とあるいは思われるかもしれない。しかし、現実として「もうひ
とつの地球」が生まれつつある。そのような認識を私はもってい
るのである。「もうひとつの地球」に対して、私は真剣に思いを
巡らせている。
 では、その「もうひとつの地球」とはどのようなものなのか。
その存在を示す言葉として私は「ニューグローバル」という表現
を用いている。海外のニュースをタイムリーに知る。会ったこと
のない人と友だちになる。海外の街並みを見られる。現地に行か
ないと買えなかったものを家で買える。これまでの長い歴史で作
られてきた常識では説明のつかないような世界が生まれている。
物理的な距離、国境、国家ではとらえきれない新しい世界だ。
                      ──岩本敏男著
              『IT幸福論』/東洋経済新報社
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 なぜ、多くの識者が、現在われわれを取り巻いている社会を規
定し直そうとしているのでしょうか。
 それはいま未来を予見することの重要性が高まっているからで
す。ビジネスではとくにそうです。ビジネスモデルが変貌してし
まうからです。現代は、少なくともあと5年後、10年後に社会
がどのように変貌するか、素人では見通せなくなっていることは
確かです。それでいて、素人でも、大きな変化が起きるだろうと
いうことは実感しているのです。そのため、書店では、未来予測
をテーマとする書籍が多く出版されています。
 岩本敏男氏は、「もうひとつの地球」の存在を示す証として、
「ニューグローバル」という言葉を使っていますが、グローバル
化していく社会では次の3つのことが起きると述べています。
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          1. ボーダーレス
          2.インテグレート
          3.  リプレース
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 起きることの第1は「ボーダーレス」です。
 米国では「州」はひとつの国のようなものであり、ビジネスに
しても物流にしても、ほとんどのことが州単位にまとまっていた
のです。その州としてのまとまりを壊したのが鉄道と郵便制度の
発達です。岩本氏は、その例として、現在も巨大な百貨店として
残る「シアーズ・ローバック」を上げています。
 「シアーズ・ローバック」は、ミネソタ州で鉄道の駅員をして
いたリチャード・ウォーレン・シアーズと、時計商のアルヴァ・
C・ローバックが起こした企業です。彼らは、当時、発展途上に
あった郵便制度と鉄道を利用して、物品の通信販売をはじめたの
です。ミシン、自転車、スポーツ用品などの商品カタログを作り
それを郵便や鉄道を利用して配付したのです。
 代金決済は基本的に前払いで、現金のほか、小切手、郵便振替
郵便切手などが使われています。したがって、このビジネスが発
展すればするほど、州を超えて拡大することになったのです。こ
れが「ボーダ−レス」です。
 起きることの第2は「インテグレート」です。
 インテグレートは、業態を超えて統合することを意味していま
す。インテグレートの例として岩本氏が上げたのが、世界最古の
百貨店といわれるフランスのボン・マルシェ百貨店です。当時パ
リでは、専門店が乱立し、多くの商品を扱う百貨店という業態は
なかったのです。岩本氏は、ボン・マルシェ百貨店がどのように
して誕生したのかについて次のように述べています。
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 パリにあったこの店は、もともとは布の生地だけを扱う、いま
でいうところの専門店だった。しかし、1852年、事業家のア
リスティッド・ブシコーがこの店を買い取り、夫人とともに、現
在の百貨店に通じるような数々の新しい売り方を導入した。例え
ば、誰もが店に出入りできるようにしたこと、商品に定価を付け
るようにしたこと、また、ショーウィンドウに商品を並べて通行
人の注目を集めること、季節ものの大安売りをすること、などで
ある。ブシコーが導入した斬新な販売方法がもうひとつある。も
ともと店で扱っていた布の生地だけでなく、医薬品や香水など他
の種類の商品も店で売るということを、ブシコーは始めたのであ
る。業態を超えて商品を統合的に取り扱う、つまりインテグレー
トがここに見られる。      ──岩本敏男著の前掲書より
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 起きることの第3は「リプレース」です。
 「リプレース」とは、商品やサービスが新しいものに代替され
ることを意味しています。これについて岩本氏はエドワード・ロ
イドのテムズ河畔、タワー街に開店したコーヒーハウスを例とし
て取り上げています。当時コーヒーハウスは、情報入手の中心的
な役割を果たしていたのです。この店には、主として船主たちが
多く集まって、コーヒーカップを片手に情報を交換したといいま
す。やがてこの店は船舶保険を扱うようになり、これがロイズ保
険会社の起源となったのです。
 1785年、ロンドンの印刷業者ジョン・ウォルターによって
世界初の日刊新聞「デイリー・ユニバーサル・レジスター」が創
刊されています。これは、コーヒーハウスという情報交換の場が
日刊新聞へと代替されるようになったのです。これが「リプレー
ス」という現象であるといえます。ビジネスにおける状況変化の
ひとつです。      ──[次世代テクノロジー論/29]

≪画像および関連情報≫
  ●書評『IT幸福論』(岩本敏男著)
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   本書は進化する情報社会の中における、企業リーダーのI
  Tの活用方法とITへの向き合い方について、NTTデータ
  代表取締役社長が提言した一冊です。著者であるNTTデー
  タ代表取締役社長の岩本敏男氏は、インフラ系システムを中
  心に、長年に渡りITビジネス業界に身を置いてきた人物。
  手掛けたプロジェクトには、中央省庁システム、日本銀行、
  東京証券取引所といった、まさに日本を代表する企業が名を
  連ねています。このように、IT業界で長年にわたり活躍し
  てきた著者ですが、現代のIT技術の進化を、農業革命、産
  業革命に続く「第三の革命期」、つまり「情報通信革命」で
  あると述べています。
   『私は現在も人類はこの情報通信革命の真っ只中に置かれ
  ていると考えている。情報通信革命により、われわれは、大
  きな生活の変化を経験した。いつでも、どこからでも、求め
  られる情報へ瞬時にアクセスすることが可能となり、また、
  手軽に世界中の人びととコミュニケーションがとれるように
  もなった』。以前はアナログの媒体で取り扱われてきた情報
  が急速にデジタル化し、企業の業務プロセスも、ITをより
  駆使することができるようになっています。また、IT技術
  の進歩は日進月歩であり、iPhoneやFacebook といった従来
  では考えもつかなかったようなアイデアが、どんどん世の中
  に生み出されています。      http://bit.ly/2zZLP4j
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岩本敏男NTTデータ社長.jpg
岩本敏男NTTデータ社長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする