2017年11月01日

●「ネット靴店『ザッポス』の売り方」(EJ第4637号)

 「見えない経済大陸」のもうひとつの覇者、アマゾンについて
述べます。なぜ、アマゾンは見えない大陸、すなわち、インター
ネットでのビジネスの覇者になることができたのでしょうか。
 アマゾンの創業は1995年8月、1997年5月にナスダッ
クに上場を果たしています。2000年11月に日本語のサイト
を立ち上げ、アマゾン・ジャパンを設立し、日本に進出。以来、
事実上1社が独占的に提供する電子商取引としては、日本最大の
ECサイトになっています。しかし、アマゾンは、最初のうちは
何度も浮き沈みを繰り返し、苦労を重ねて、最後には世界最大の
Eコマース業者になっています。
 このアマゾンについて、かなり長い間、多くの日本人は、「イ
ンターネット上の書店」と考えていたと思います。しかし、アマ
ゾンの創業者ジェフ・ペソス氏は、最初から、次のように考えて
いたといいます。
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 自分は本屋になるのではない。自分は、世界一のリテーラー
 小売業者になるのだ。
          ──大前研一著/『テクノロジー4・0/
         「つながり」から生まれるビジネスモデル』
                     KADOKAWA
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 それでは、なぜ、書店だったのかということです。大前研一氏
によると、ジェフ・ベソス氏は、ネット上で売れる商品には次の
2つがあることを認識し、最初に書籍を選んだといいます。
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           1.左脳型商品
           2.右脳型商品
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 「左脳型商品」とは、お客が注文した商品と届いた商品がほぼ
一致する商品であるということです。つまり、書籍は最も誤発注
の少ない商品なのです。「著者は大前研一、書籍名はX、出版社
はZ」というように特定できるからです。
 航空機の席も同様です。「JALのX便、Z行き、Y時Y分発
席はF席」というように間違えようがないからです。こういう商
品のことを左脳型商品というのです。
 しかし、スーツ、ジャケットなどの衣服、カーテン、バッグ、
ソファ、靴などは、ウェブサイトだけで商品を伝えることには限
界があります。「色が気に入らない」「肌触りがわるい」「サイ
ズが合わない」「(靴などの)履き心地がよくない」など、ネッ
トだけでは商品を十分伝え切れず、どうしても返品が多くなって
しまうのです。こういう商品を大前研一氏は「右脳型商品」と呼
んでいます。
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 あるときベゾス氏は、米国でザッボスという企業を経営してい
た台湾出身の経営者に出会います。ザッボスは靴のeコマースで
売上を伸ばしていました。調べると、ザッボスは「返品自由」と
いうシステムをとっていました。ユーザーは3足ほどを一度に注
文して、一番合う靴を残し、ほかは返品してしまう。不思議なも
ので、それを何度か繰り返すと、自分に合うのはこういうモノで
こういう注文の仕方をすればいい、ということをユーザーが分か
るようになり、返品率が下がっていくのです。
                ──大前研一著の前掲書より
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 ジェフ・ベソス氏が、なぜザッポスに目をつけたかには理由が
あります。ベソス氏は、アマゾンで、いろいろな商品をネットで
売ってみたのですが、実は靴の返品が非常に多く、苦労していた
からです。ところが、ザッポスは創業の1999年のゼロから、
2009年には12億ドルの売上高に達していたのです。
 この企業の特色は、既存顧客売り上げが75%を占める目を見
張るようなリピート率に支えられていることにあります。つまり
新規よりも既存顧客に焦点をあてたサービスによる営業が可能な
企業なのです。また、経営のやり方が非常に巧みであり、フォー
チューン誌が「働きがいのある企業100」のランキングにも選
出する有名企業になっていたのです。
 どのようにして売っているのかというと、大前氏の本にあるよ
うに、自分に合いそうな靴を複数注文させ、合わない靴は送り返
すシステムを導入したのです。そのさい、商品の返品は無料で自
由ですが、送り返す費用は自己負担にしたのです。
 ジェフ・ベソス氏は、この右脳型の商品の扱いが上手なザッポ
スを破格の条件の900億円で買収し、自らの傘下に収めている
のです。このようにあらかじめ返品を予想して、それを認めたう
えで商品をネットで販売するビジネスモデルは、今までにない発
想であるといえます。
 ザッポスのサービスの素晴らしさを物語る有名なエピソードは
ザッポスで、母親へのプレゼントとしてシューズを購入したある
女性の次の話です。
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 購入直後に母親が病で突然亡くなってしまい、シューズどころ
ではなくなってしまった彼女の所に、ザッポスのコンタクトセン
ターの社員から購入した靴の様子を尋ねるEメールが届く。母親
が亡くなってしまい返品したかったが、貨物集配所まで持ってい
く時間が無かった事、必ず返品するので何とかもうしばらく待っ
て欲しい事を伝えると、「そういう事情でしたらご自宅まで集荷
便を送りますから、ご心配なく」というEメールが直ちに帰って
きた。翌日、お悔やみの花束が届く。同封されていたメッセージ
カードの封を開けてみると、それはザッポスからの手書きのカー
ドだった。感動のあまり号泣した彼女はその感動をブログに投稿
し、それが人から人へと広まっていく。 http://bit.ly/2zOpE10
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            ──[次世代テクノロジー論/27]

≪画像および関連情報≫
 ●ザッポスの“伝説的”顧客サービスはどこがすごいのか?
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   2000年11月にアマゾン・ドットコムは同社史上最大
  の買収額でザッポス・ドットコムを買収した。アマゾンは、
  買収時点でザッポスが扱う靴などの商品をすでに取り扱って
  いたにもかかわらず、ザッポスを独立したブランドとして存
  続させるという。重複や余剰などの冗長性を嫌う米国式マネ
  ジメントでは珍しいこの判断は、いかにアマゾンがザッポス
  のブランド価値を高く評価しているかを示している。
   ブログメディアのマッシャブル共同編集者ベン・パーは、
  アマゾンによるザッポス買収の理由を次の4つにまとめてい
  る/2009年7月22日。
   1.ザッポスの大きな成長ポテンシャル
   2.ザッポスの成功を実現したユニークな企業文化
   3.ザッポスの伝説的な顧客サービス
   4.ザッポスの人材・・・・リーダーシップと社員
   ザッポスの成長は、確かにめざましいものがあり、創業の
  1999年のゼロから10年後の2009年に12億ドルの
  売上高に達している。さらに、アパレルなど靴以外の商品の
  急成長もあって、2010年第1四半期は前年比で売上高は
  50%増。2010年11月現在2800人の従業員だが、
  2011年はこれにさらに2000人(シーズンの一時雇用
  を含む)を加える計画だという。  http://bit.ly/2ybhhQN
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ジェフ・ベソス氏.jpg
ジェフ・ベソス氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする