2017年11月01日

●「ネット靴店『ザッポス』の売り方」(EJ第4637号)

 「見えない経済大陸」のもうひとつの覇者、アマゾンについて
述べます。なぜ、アマゾンは見えない大陸、すなわち、インター
ネットでのビジネスの覇者になることができたのでしょうか。
 アマゾンの創業は1995年8月、1997年5月にナスダッ
クに上場を果たしています。2000年11月に日本語のサイト
を立ち上げ、アマゾン・ジャパンを設立し、日本に進出。以来、
事実上1社が独占的に提供する電子商取引としては、日本最大の
ECサイトになっています。しかし、アマゾンは、最初のうちは
何度も浮き沈みを繰り返し、苦労を重ねて、最後には世界最大の
Eコマース業者になっています。
 このアマゾンについて、かなり長い間、多くの日本人は、「イ
ンターネット上の書店」と考えていたと思います。しかし、アマ
ゾンの創業者ジェフ・ペソス氏は、最初から、次のように考えて
いたといいます。
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 自分は本屋になるのではない。自分は、世界一のリテーラー
 小売業者になるのだ。
          ──大前研一著/『テクノロジー4・0/
         「つながり」から生まれるビジネスモデル』
                     KADOKAWA
─────────────────────────────
 それでは、なぜ、書店だったのかということです。大前研一氏
によると、ジェフ・ベソス氏は、ネット上で売れる商品には次の
2つがあることを認識し、最初に書籍を選んだといいます。
─────────────────────────────
           1.左脳型商品
           2.右脳型商品
─────────────────────────────
 「左脳型商品」とは、お客が注文した商品と届いた商品がほぼ
一致する商品であるということです。つまり、書籍は最も誤発注
の少ない商品なのです。「著者は大前研一、書籍名はX、出版社
はZ」というように特定できるからです。
 航空機の席も同様です。「JALのX便、Z行き、Y時Y分発
席はF席」というように間違えようがないからです。こういう商
品のことを左脳型商品というのです。
 しかし、スーツ、ジャケットなどの衣服、カーテン、バッグ、
ソファ、靴などは、ウェブサイトだけで商品を伝えることには限
界があります。「色が気に入らない」「肌触りがわるい」「サイ
ズが合わない」「(靴などの)履き心地がよくない」など、ネッ
トだけでは商品を十分伝え切れず、どうしても返品が多くなって
しまうのです。こういう商品を大前研一氏は「右脳型商品」と呼
んでいます。
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 あるときベゾス氏は、米国でザッボスという企業を経営してい
た台湾出身の経営者に出会います。ザッボスは靴のeコマースで
売上を伸ばしていました。調べると、ザッボスは「返品自由」と
いうシステムをとっていました。ユーザーは3足ほどを一度に注
文して、一番合う靴を残し、ほかは返品してしまう。不思議なも
ので、それを何度か繰り返すと、自分に合うのはこういうモノで
こういう注文の仕方をすればいい、ということをユーザーが分か
るようになり、返品率が下がっていくのです。
                ──大前研一著の前掲書より
─────────────────────────────
 ジェフ・ベソス氏が、なぜザッポスに目をつけたかには理由が
あります。ベソス氏は、アマゾンで、いろいろな商品をネットで
売ってみたのですが、実は靴の返品が非常に多く、苦労していた
からです。ところが、ザッポスは創業の1999年のゼロから、
2009年には12億ドルの売上高に達していたのです。
 この企業の特色は、既存顧客売り上げが75%を占める目を見
張るようなリピート率に支えられていることにあります。つまり
新規よりも既存顧客に焦点をあてたサービスによる営業が可能な
企業なのです。また、経営のやり方が非常に巧みであり、フォー
チューン誌が「働きがいのある企業100」のランキングにも選
出する有名企業になっていたのです。
 どのようにして売っているのかというと、大前氏の本にあるよ
うに、自分に合いそうな靴を複数注文させ、合わない靴は送り返
すシステムを導入したのです。そのさい、商品の返品は無料で自
由ですが、送り返す費用は自己負担にしたのです。
 ジェフ・ベソス氏は、この右脳型の商品の扱いが上手なザッポ
スを破格の条件の900億円で買収し、自らの傘下に収めている
のです。このようにあらかじめ返品を予想して、それを認めたう
えで商品をネットで販売するビジネスモデルは、今までにない発
想であるといえます。
 ザッポスのサービスの素晴らしさを物語る有名なエピソードは
ザッポスで、母親へのプレゼントとしてシューズを購入したある
女性の次の話です。
─────────────────────────────
 購入直後に母親が病で突然亡くなってしまい、シューズどころ
ではなくなってしまった彼女の所に、ザッポスのコンタクトセン
ターの社員から購入した靴の様子を尋ねるEメールが届く。母親
が亡くなってしまい返品したかったが、貨物集配所まで持ってい
く時間が無かった事、必ず返品するので何とかもうしばらく待っ
て欲しい事を伝えると、「そういう事情でしたらご自宅まで集荷
便を送りますから、ご心配なく」というEメールが直ちに帰って
きた。翌日、お悔やみの花束が届く。同封されていたメッセージ
カードの封を開けてみると、それはザッポスからの手書きのカー
ドだった。感動のあまり号泣した彼女はその感動をブログに投稿
し、それが人から人へと広まっていく。 http://bit.ly/2zOpE10
─────────────────────────────
            ──[次世代テクノロジー論/27]

≪画像および関連情報≫
 ●ザッポスの“伝説的”顧客サービスはどこがすごいのか?
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   2000年11月にアマゾン・ドットコムは同社史上最大
  の買収額でザッポス・ドットコムを買収した。アマゾンは、
  買収時点でザッポスが扱う靴などの商品をすでに取り扱って
  いたにもかかわらず、ザッポスを独立したブランドとして存
  続させるという。重複や余剰などの冗長性を嫌う米国式マネ
  ジメントでは珍しいこの判断は、いかにアマゾンがザッポス
  のブランド価値を高く評価しているかを示している。
   ブログメディアのマッシャブル共同編集者ベン・パーは、
  アマゾンによるザッポス買収の理由を次の4つにまとめてい
  る/2009年7月22日。
   1.ザッポスの大きな成長ポテンシャル
   2.ザッポスの成功を実現したユニークな企業文化
   3.ザッポスの伝説的な顧客サービス
   4.ザッポスの人材・・・・リーダーシップと社員
   ザッポスの成長は、確かにめざましいものがあり、創業の
  1999年のゼロから10年後の2009年に12億ドルの
  売上高に達している。さらに、アパレルなど靴以外の商品の
  急成長もあって、2010年第1四半期は前年比で売上高は
  50%増。2010年11月現在2800人の従業員だが、
  2011年はこれにさらに2000人(シーズンの一時雇用
  を含む)を加える計画だという。  http://bit.ly/2ybhhQN
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ジェフ・ベソス氏.jpg
ジェフ・ベソス氏
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2017年11月02日

●「滴滴出行配車アプリで日本へ進出」(EJ第4638号)

 先日、自宅からタクシーを利用するため、タクシー会社に電話
して、配車を依頼したところ、すぐには配車できないといわれた
ので、バスで駅まで行ったのです。ところが駅にはそのタクシー
会社のタクシーが多数客待ちをしているのです。この客待ちの時
間が長ければ長いほど、配車の効率が低下することになります。
 多くの場合、タクシー会社は、配車依頼の電話が入ると、無線
で配車依頼者の場所に近いところを走っている空きタクシーをそ
こに向わせるやり方を昔からとっています。しかし、この方法で
は、タクシーの客待ちロスを減らすことは困難です。
 いわゆるライドシェアサービスのウ―バー(Uber)の創業者は
サンフランシスコであまりにもタクシーがつかまらないのに業を
煮やして、2009年3月に自分で会社を設立しています。実体
験に基づいているのです。そのウ―バーは、5年足らずで時価総
額7兆円の巨大企業になっています。発想が違うのです。
 そのウーバーも、自家用車の有料配送の規制のある日本にはお
手上げの状態ですが、2017年10月30日付の日本経済新聞
は、次のニュースを一面トップで報道したのです。
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          中国配車アプリ、日本進出
       /最大手・滴滴/タクシーと連携
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 中国の滴滴出行といえば、タクシー配車とライドシェア(相乗
り)サービスの世界最大手です。滴滴出行は、日本ではタクシー
国内最大手である第一交通産業と提携し、来年春にもタクシーを
配車できるようにするという内容の記事です。
 お客が滴滴のスマホのアプリの地図で、出発地と目的地を指定
すると、その情報を登録タクシーが受信し、一番出発地の近くに
いるタクシーが出発地に迎えに行くという仕組みです。もちろん
そのさいには、何分で出発地に迎えに行けるかをお客に知らせ、
料金はスマホを通じて支払われることになっています。
 滴滴出行は、来年の春にも都内で500台の規模で運用します
が、第一交通産業としては、主として中国人旅行者のタクシー需
要を取り込めるメリットがあります。中国からの旅行者は、日本
に来る前にネット上で配車を依頼し、料金を払い込んでしまうの
で、成田や羽田空港などには、登録タクシーが続々と迎えに行く
ことになります。
 滴滴出行としては、第一交通産業の保有する約8700台のタ
クシー全てをアプリで配車できるようにするとともに、他のタク
シー会社とも提携することによって、大阪などの他都市にも対象
を拡大し、徐々に登録車の台数を増加させる計画です。
 白タクの規制緩和は、タクシー会社の反対もあって簡単には実
現するとは思われないものの、いつかは条件付きで実現される日
が来ます。しかし、そのときは、既にタクシー配車で実績を持つ
滴滴出行によって事業は独占されてしまうことは目に見えていま
す。日本の企業のテクノロジー4・0への対応は遅いのです。
 これについて、大前研一氏は、ウ―バーの例をひいて次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
 私はよくオーストラリアに行きますが、今やゴールドコースト
に昔ながらの流しのタクシーはほとんど走っていません。以前か
らよく知っているタクシーの運転手に尋ねると「街で手を挙げて
タクシーをつかまえる人がいなくなりました」と言います。Uber
を利用する人が多いので、街を流して走っていても客も見つけら
れないそうです。しかもUber の方が操業度は高く、ドライバー
にとっては実入りも良いのです。(中略)
 Uberが急成長した背景には、配車を可能にする位置情報、デー
タを解析して配車を効率化するビッグデータ、そして代金のやり
取りに関わるFinTech があります。つまり、これからのビジネス
においては、ひとつのテクノロジーを理解しているだけでは駄目
なのです。システム(テクノロジー)がつながって、サービスや
ビジネスを形成しており、テクノロジーがどうつながっているか
を知ることが重要です。           ──大前研一著
 『テクノロジー4・0/「つながり」から生まれる新しいビジ
              ネスモデル』/KADOKAWA
─────────────────────────────
 「スマートフォン・セントリック」という言葉があります。大
前研一氏がこの言葉を使っています。大前氏は、「スマホはデジ
タルコンチネントを形成している」というのです。考えてみると
スマホは何でもできるマシンであることがわかります。
 電話やメールで、いろいろな人と連絡をとることができますし
ラジオやテレビ、動画も見ることができ、音楽を聴いたり、写真
を撮ったり、録音をすることも可能です。GPSを利用して、道
案内をしてもらうこともできます。VRもARもスマホがあれば
体験できます。
 それに加えてスマホで買い物をして決済するだけでなく、リア
ルな店舗での買い物の支払いをしたり、電車やバスに乗ったりも
できます。さらに銀行の資金の出し入れや振り込みをしたり、残
高照会をすることもスマホで可能です。
 これだけではありません。スマホにおいて最も重要なことがあ
ります。それは、大前研一氏のいう次の指摘です。
─────────────────────────────
 世界中で使われているスマホを動かすシステムは、アップルの
iOSか、グーグルのアンドロイドしかありません。しかもアプ
リは、ほとんど共通に開発されています。したがって、ひとつの
都市で開発された事業が、即、全世界に展開できるのです。
 つまり、スマホの中に全世界をカバーする新しい経済圏・デジ
タルコンチネント(大陸)ができたのです。
                ──大前研一著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[次世代テクノロジー論/28]

≪画像および関連情報≫
  ●注目すべきテクノロジーが1つにつながる
  ───────────────────────────
   「位置情報3・0」の周りにはいろいろと注目すべきテク
  ノロジーがあります。まずはやはりビッグデータ。それから
  IoTやフィンテック(FinTech)、 AI(人工知能)もそ
  うです。そして今、位置情報も含め、これらのテクノロジー
  が1つにつながってきているというのが私の実感です。
   今、これら全てのものが、皆さんが手にしているスマート
  フォンに集約されています。こうした状態を「スマートフォ
  ン・セントリック(Smartphone Centric)」と言います。ス
  マホのエコシステムの中に、様々な機能やサービスが取り込
  まれているというわけです。ですから、これらの技術に関す
  る事業を1つでも取り上げて見てみると、そこにあらゆる技
  術が入ってきていることが分かります。
   たとえばセーフィーという会社は、170度モニターでき
  るカメラとスマホを連携させるセキュリティサービスを提供
  しています。このカメラで捉えた映像を、自分のPCやスマ
  ホで見ることができるというものです。このカメラを自宅の
  玄関前に取り付けておいて、月々980円払っていれば、誰
  か来たときにセンサーがそれを感知し、自分のスマホに、ア
  ラートで通知してくれます。さらに、録画されたデータの1
  週間分はクラウド上に保存されていますから、もしなにかト
  ラブルがあったときには、それを警察に持ち込めば分析して
  もらえるのです。         http://bit.ly/2zk6Kmx
  ───────────────────────────

滴滴出行.jpg
滴滴出行
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2017年11月06日

●「ニューグローバル/岩本敏男社長」(EJ第4639号)

 大前研一氏は、現在のインターネットの世界を「見えない経済
大陸」と呼んでいますが、NTTデータ代表取締役社長の岩本敏
男氏も大前氏に近い考えをもっています。こちらは「もうひとつ
の地球」です。
─────────────────────────────
 46億年にわたり「地球」はひとつでありつづけた。地球がひ
とつであるというのは当然のことであり、突飛なことをいうもの
とあるいは思われるかもしれない。しかし、現実として「もうひ
とつの地球」が生まれつつある。そのような認識を私はもってい
るのである。「もうひとつの地球」に対して、私は真剣に思いを
巡らせている。
 では、その「もうひとつの地球」とはどのようなものなのか。
その存在を示す言葉として私は「ニューグローバル」という表現
を用いている。海外のニュースをタイムリーに知る。会ったこと
のない人と友だちになる。海外の街並みを見られる。現地に行か
ないと買えなかったものを家で買える。これまでの長い歴史で作
られてきた常識では説明のつかないような世界が生まれている。
物理的な距離、国境、国家ではとらえきれない新しい世界だ。
                      ──岩本敏男著
              『IT幸福論』/東洋経済新報社
─────────────────────────────
 なぜ、多くの識者が、現在われわれを取り巻いている社会を規
定し直そうとしているのでしょうか。
 それはいま未来を予見することの重要性が高まっているからで
す。ビジネスではとくにそうです。ビジネスモデルが変貌してし
まうからです。現代は、少なくともあと5年後、10年後に社会
がどのように変貌するか、素人では見通せなくなっていることは
確かです。それでいて、素人でも、大きな変化が起きるだろうと
いうことは実感しているのです。そのため、書店では、未来予測
をテーマとする書籍が多く出版されています。
 岩本敏男氏は、「もうひとつの地球」の存在を示す証として、
「ニューグローバル」という言葉を使っていますが、グローバル
化していく社会では次の3つのことが起きると述べています。
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          1. ボーダーレス
          2.インテグレート
          3.  リプレース
─────────────────────────────
 起きることの第1は「ボーダーレス」です。
 米国では「州」はひとつの国のようなものであり、ビジネスに
しても物流にしても、ほとんどのことが州単位にまとまっていた
のです。その州としてのまとまりを壊したのが鉄道と郵便制度の
発達です。岩本氏は、その例として、現在も巨大な百貨店として
残る「シアーズ・ローバック」を上げています。
 「シアーズ・ローバック」は、ミネソタ州で鉄道の駅員をして
いたリチャード・ウォーレン・シアーズと、時計商のアルヴァ・
C・ローバックが起こした企業です。彼らは、当時、発展途上に
あった郵便制度と鉄道を利用して、物品の通信販売をはじめたの
です。ミシン、自転車、スポーツ用品などの商品カタログを作り
それを郵便や鉄道を利用して配付したのです。
 代金決済は基本的に前払いで、現金のほか、小切手、郵便振替
郵便切手などが使われています。したがって、このビジネスが発
展すればするほど、州を超えて拡大することになったのです。こ
れが「ボーダ−レス」です。
 起きることの第2は「インテグレート」です。
 インテグレートは、業態を超えて統合することを意味していま
す。インテグレートの例として岩本氏が上げたのが、世界最古の
百貨店といわれるフランスのボン・マルシェ百貨店です。当時パ
リでは、専門店が乱立し、多くの商品を扱う百貨店という業態は
なかったのです。岩本氏は、ボン・マルシェ百貨店がどのように
して誕生したのかについて次のように述べています。
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 パリにあったこの店は、もともとは布の生地だけを扱う、いま
でいうところの専門店だった。しかし、1852年、事業家のア
リスティッド・ブシコーがこの店を買い取り、夫人とともに、現
在の百貨店に通じるような数々の新しい売り方を導入した。例え
ば、誰もが店に出入りできるようにしたこと、商品に定価を付け
るようにしたこと、また、ショーウィンドウに商品を並べて通行
人の注目を集めること、季節ものの大安売りをすること、などで
ある。ブシコーが導入した斬新な販売方法がもうひとつある。も
ともと店で扱っていた布の生地だけでなく、医薬品や香水など他
の種類の商品も店で売るということを、ブシコーは始めたのであ
る。業態を超えて商品を統合的に取り扱う、つまりインテグレー
トがここに見られる。      ──岩本敏男著の前掲書より
─────────────────────────────
 起きることの第3は「リプレース」です。
 「リプレース」とは、商品やサービスが新しいものに代替され
ることを意味しています。これについて岩本氏はエドワード・ロ
イドのテムズ河畔、タワー街に開店したコーヒーハウスを例とし
て取り上げています。当時コーヒーハウスは、情報入手の中心的
な役割を果たしていたのです。この店には、主として船主たちが
多く集まって、コーヒーカップを片手に情報を交換したといいま
す。やがてこの店は船舶保険を扱うようになり、これがロイズ保
険会社の起源となったのです。
 1785年、ロンドンの印刷業者ジョン・ウォルターによって
世界初の日刊新聞「デイリー・ユニバーサル・レジスター」が創
刊されています。これは、コーヒーハウスという情報交換の場が
日刊新聞へと代替されるようになったのです。これが「リプレー
ス」という現象であるといえます。ビジネスにおける状況変化の
ひとつです。      ──[次世代テクノロジー論/29]

≪画像および関連情報≫
  ●書評『IT幸福論』(岩本敏男著)
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   本書は進化する情報社会の中における、企業リーダーのI
  Tの活用方法とITへの向き合い方について、NTTデータ
  代表取締役社長が提言した一冊です。著者であるNTTデー
  タ代表取締役社長の岩本敏男氏は、インフラ系システムを中
  心に、長年に渡りITビジネス業界に身を置いてきた人物。
  手掛けたプロジェクトには、中央省庁システム、日本銀行、
  東京証券取引所といった、まさに日本を代表する企業が名を
  連ねています。このように、IT業界で長年にわたり活躍し
  てきた著者ですが、現代のIT技術の進化を、農業革命、産
  業革命に続く「第三の革命期」、つまり「情報通信革命」で
  あると述べています。
   『私は現在も人類はこの情報通信革命の真っ只中に置かれ
  ていると考えている。情報通信革命により、われわれは、大
  きな生活の変化を経験した。いつでも、どこからでも、求め
  られる情報へ瞬時にアクセスすることが可能となり、また、
  手軽に世界中の人びととコミュニケーションがとれるように
  もなった』。以前はアナログの媒体で取り扱われてきた情報
  が急速にデジタル化し、企業の業務プロセスも、ITをより
  駆使することができるようになっています。また、IT技術
  の進歩は日進月歩であり、iPhoneやFacebook といった従来
  では考えもつかなかったようなアイデアが、どんどん世の中
  に生み出されています。      http://bit.ly/2zZLP4j
  ───────────────────────────

岩本敏男NTTデータ社長.jpg
岩本敏男NTTデータ社長
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2017年11月07日

●「もうひとつの地球/技術進化速度」(EJ第4640号)

 「バラダイムシフト」という言葉があります。今まさにそれが
起きているので、EJでこのテーマを取り上げたのですが、その
言葉の意味をはっきりさせておく必要があります。
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 パラダイムシフト(英: paradigm shift)とは、その時代や分
野において当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の
価値観などが革命的にもしくは劇的に変化することをいう。パラ
ダイムチェンジともいう。        ──ウィキペディア
─────────────────────────────
 岩本敏男氏のいう「もうひとつの地球」では、まさにパラダイ
ムシフトが起きているのです。その原動力になっているものは、
次の3つです。
─────────────────────────────
          1.   CPU
          2. ストレージ
          3.ネットワーク
─────────────────────────────
 この3つが「もうひとつの地球」において、どのようにパラダ
イムシフトを起こしているかについて、岩本氏の主張をまとめる
と、次のようになります。
 従来の地球では、人や機械などの「何かを動かすもの」が機能
することによって生産活動を行ってきたのです。それが「もうひ
とつの地球」において、その「何か」は情報であり、それを動か
すものの役割を「CPU」が担っているということです。情報を
インプットして受け入れ、プロセスで加工し、アウトプットとし
て出力する──そういう生産活動における中核的機能を果すのが
CPUであります。
 従来の地球では、情報を記録する手段は紙であり、メモ、ノー
ト、書面、新聞、書籍、雑誌のように、情報の多くは紙のなかに
存在していたのです。それが「もうひとつの地球」では、ハード
ディスクなどに「0」と「1」のデジタル情報の集合体として保
存されるようになっています。このような情報の保管場所のこと
を「ストレージ」といいます。ストレージという言葉の意味は、
データが保存・保管される場所のことです。
 また、従来の地球では、人と人のコミュニケーションは主とし
て郵便や電話という手段で、離れた場所にいる人とコミュニケー
ションをとってきていますが、「もうひとつの地球」では、情報
のデジタル化によって、電子ネットワークによるコミュニケーシ
ョンが可能になっています。「1対多」の情報発信が可能になり
しかもその情報を受信した人が、瞬時にそれに対する反応を個人
ないし複数の人に返すことができるようになっています。
 CPU、ストレージ、ネットワーク──岩本敏男氏は、これら
を「情報通信技術の3要素」と位置づけて、著書で詳しく論じて
います。この本は技術書ではなく一般書ですが、現代人であれば
このくらいの技術的知識は、誰でも、とくに経営者は、知ってお
かなければならないという著者の思いが強く感じられます。
 これら情報通信技術の3要素について、岩本氏は次のように締
めくくっています。
─────────────────────────────
 「もうひとつの地球」を構成するこれらの要素(情報通信技術
の3要素)の進化が目覚ましいのは、既に示したとおりだ。19
97年からの15年間でCPUの処理速度は約80倍、ストレー
ジのデータ保存容量は約2万倍、電子ネットワークの通信速度は
約15万倍にもなった。各要素におけるこのような指数関数的な
伸びは、少なくともこれから10年は続くと考えられる。人や歯
車、紙、郵便や電話という要素で構成されていた従来の地球では
おそらくどの時代の15年に焦点を当てても、これだけの進化が
見られたことはなかっただろう。       ──岩本敏男著
              『IT幸福論』/東洋経済新報社
─────────────────────────────
 「従来の地球」と「もうひとつの地球」における大きな違いは
桁違いに進化のスピードが速いということです。それが上記のC
PU、ストレージ、ネットワークの驚くべき進化によくあらわれ
ています。
 それにAI(人工知能)の進化があります。従来の地球では人
が判断していたことが、AIの判断がそれに加わることによって
進化のスピードが加速します。そのため、昨日できなかったこと
が今日にはできるようになっていることがたくさんあるのです。
現時点では顕在化していない技術であっても、何かのきっかけで
一瞬のうちに顕在化することは十分あり得ることです。つまり、
技術が顕在化しようとしたときにビジネスモデルを考えても「時
既に遅し」というわけです。
 したがって、まだ顕在化されておらず、現在進行中の未来の技
術を見抜く目が必要になります。そのため、このテーマの冒頭か
ら技術の未来論の重要性を述べているのです。『エコノミスト』
誌のトム・スタンデージ副編集長のいうように、過去を振り返り
現在進行中の現象を鋭く見極め、SF小説で描かれている未来を
調べる──そういう未来予測が現代ビジネスパーソンに求められ
ているといえます。岩本氏は、まだ顕在化されてはいないものの
現在進行中の技術を見極めることの重要性について、次のように
述べています。
─────────────────────────────
 重要なのは、まだ表面に出ていない潜在的な技術、あるいは顕
在化しつつあるが、一部の感受性の高いアーリーアダプター″
層しかまだ興味を示していない技術の中から、将来的に影響を与
えるようなものを見極めることである。そうしたITが活用され
ることを予見し、事前にその活用のための準備をしておくことこ
そ重要なのである。       ──岩本敏男著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[次世代テクノロジー論/30]

≪画像および関連情報≫
 ●技術論に終始する「日本の予測本」の異様さ
  ───────────────────────────
   世界の賢人たちによる未来予測本は、みな独自性にあふれ
  たものだ。しかし、それらを足し合わせて平均してしまえば
  「現状と何も変わらない」という陳腐極まりない結論になっ
  てしまう。そのことを前回の「未来は「平均値」で考えては
  いけない」で触れさせていただいた。つまりは、それぞれの
  予測を集めて多数決を採るのではなく、「いいとこどり」を
  していく必要があるということだ。
   実際に、未来予測に関するリポート『メガトレンド201
  4〜2023』(日経BP未来研究所)を執筆する前段階と
  して私もこの作業に挑んだわけだが、その際に気づいたのは
  個々の予測は、著者が属する国や地域、そして著者の専門分
  野などを強く投影したものになっているということである。
  それは個性、あるいは独自性とも言えるものであり、各著作
  の魅力となっている。だが、彼らの予測を具体的な事業計画
  などの参考にしようとするのであれば、このことには十分留
  意すべきだとも思う。
   著名予測本の具体例として前回、BIノルウェービジネス
  スクール教授のヨルゲン・ランダースが著した『2052年
  今後40年のグローバル予測』(日経BP社、2013年)
  と英エコノミスト誌編集部がまとめた『2050年の世界/
  英『エコノミスト』誌は予測する』(文芸春秋2012年)
  の内容について紹介させていただいた。今回はさらに著者の
  「地域」を広げ、それらの特徴を探ってみたい。
                  http://nkbp.jp/2zbAxen
  ───────────────────────────

岩本敏男氏.jpg
岩本 敏男氏
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2017年11月08日

●「トフラーの第三の波は現代社会か」(EJ第4641号)

 『第三の波』という本があります。1980年に刊行されてい
ます。アルビン・トフラーという米国の作家で、未来学者が執筆
した大変有名なベストセラーズです。トフラーは、この本のなか
で、人類の歴史における大きな技術革新の「波」の概念に基づい
て、三種類の社会を描いています。
 第一の波は農業革命、第二の波は産業革命、そして第三の波は
現代の情報革命が進む社会を暗示していると考えられます。この
本が執筆された1980年は、コンピュータは高度に進化し、そ
の小型化も進んでいた年です。既に1975年にマイクロソフト
次の年にはアップルが創業し、現在のPCの前身である小型コン
ピュータも既に姿を現しているのです。
 ネットワークでは、インターネットの原型といわれるARPA
ネットは1969年に3つの大学と1つのシンクタンクの間で開
通し、1975年には、その接続拠点は既に50拠点を超え、安
定運用が行われています。当時の米国の状況について、村井純慶
応義塾大学教授は自著で次のように述べています。少し専門的で
すが、ネットワークが相当進んでいたことはわかると思います。
─────────────────────────────
 1970年代初頭、さまざまなネットワークをARPANET
を用いて相互接続することが考えられ、このときにネットワーク
プロトコルとしてTCPが考えだされた。そして1978年、T
CP層から経路制御機能を担う部分をIP層として分離するアイ
デアが出され、1981年に正式にTCP/IPとなつた。同時
にARPANETはTCP/IPを使用したネットワークヘ移行
した。       ──村井純著/『インターネットの基礎/
  情報革命を支えるインフラストラクチャー』/角川学芸出版
─────────────────────────────
 おそらく、何かが変わろうとして蠢いていた時代であり、トフ
ラーは、かなり具体的に情報通信革命が進む社会について描くこ
とができたのではないかと考えられます。既出の岩本敏男氏は、
このトフラーの『第三の波』を自著の冒頭にに引用し、トフラー
のいう第三の波のもらたす社会は「情報を主体とする社会」であ
り、現在も人類はこの情報通信革命の真っ只中に置かれていると
指摘しています。
─────────────────────────────
 コンピューターは、断片的な情報文化をきちんとした情報の形
に組織し、総合するのに役立つだけでなく、可能性の範囲を押し
広げる働きをする。図書館や資料の入ったキャビネットは、それ
自体、ものを考える力は持っていない。もちろんユニークな発想
など生まれてくるはずもない。ところがコンピューターは『人間
の考えおよばないこと』を考えたり、以前は『思いもよらなかっ
たこと』を考えさせるのに役立つ。コンピューターは、言葉の真
の意味で、われわれがこれまで考えもせず、想像もしなかった新
しい理論、概念、イデオロギー、芸術的直観、技術的進歩、経済
的および政治的革新というものを、可能にしていく。それによっ
てコンピューターは、歴史の変化の速度を早め、第三の波の社会
の多様化を推し進めるのである。  ──アルビン・トフラー著
  徳山二郎監修/鈴木健次・櫻井元雄訳/日本放送出版協会刊
─────────────────────────────
 ここで「情報」について考える必要があります。岩本氏は情報
の本質は、次の3人の科学者に学ぶ必要があるといっています。
─────────────────────────────
       1.   クロード・シャノン
       2.  ハーバート・サイモン
       3.ジョン・フォン・ノイマン
─────────────────────────────
 第1に、クロード・シャノンについて考えます。
 クロード・シャノン──この名前をご存知でしょうか。この偉
大なる米国の科学者の名前を知っている日本人は、ほとんどいな
いはずです。驚くべきことに、現在システム系の仕事をしている
人でも、シャノンを知る人は少ないのです。
 シャノンについては、次の有名な言葉があります。シャノンが
いなければ、現在のようなPCは出現しなかっただろうというも
のです。教育でICTの歴史を教えていないからです。
─────────────────────────────
 もし、クロード・シャノンなかりせば、コンピュータは高級
 そろばんで終わっていたであろう。
─────────────────────────────
 クロード・シャノンは、情報の概念の創出者です。シャノンは
情報を次のように定義しています。
─────────────────────────────
   情報とは、対象の不確実性を減少させるものである
               ──クロード・シャノン
                      ──岩本敏男著
              『IT幸福論』/東洋経済新報社
─────────────────────────────
 これは何を意味しているのでしょうか。岩本敏男氏は、これを
トランプを例にして説明しています。トランプは、ジョーカーを
除くと、52枚あります。このなかから、ある人が1枚のカード
を引いたとします。このカードが何かを当てる場合、この段階で
は52枚中のどれか見当はつきません。これは不確実性が52枚
で、最大の状態です。
 しかし、引いたカードがハートであることがわかったとすると
不確実性は52から13に減少します。この不確実性を減少させ
たものは、「カードはハートである」という事実です。この事実
が不確実性を減少させたので、情報ということになります。これ
に加えて「カードは1」であることが判明したとすると、引いた
カードは「ハートの1」と確定し、不確実性は0になります。
 シャノンの情報論については、明日のEJでも引き続き論じる
ことにします。     ──[次世代テクノロジー論/31]

≪画像および関連情報≫
 ●「第三の波」のアルビン・トフラーに想いをはせる
  ───────────────────────────
   情報化社会の到来を予言した「第三の波」などのベストセ
  ラーで知られる作家で、未来学者のアルビン・トフラー氏が
  2016年6月27日、米カリフォルニア州ロサンゼルスの
  自宅で死去した。トフラー氏と妻、ハイジさんが創設したコ
  ンサルタント会社、トフラー・アソシエイツが29日、ホー
  ムページで公表した。死因には触れられていない。87歳。
   1980年代に見事に未来を予見したのが、アルビン・ト
  フラーの「第三の波」だった。第一の波は農業革命、第二の
  波は産業革命、第三の波として情報革命。その中でも「消費
  生産者=プロシューマー」という概念が、現在のソーシャル
  メディアをとりまく環境を言い当てている。トフラーのメタ
  ファーで考えると・・・。
   第一の波は、生産者の誕生だった。捕食によって得られた
  栄養を農業によって生産することができ、定住して、集団を
  まとめるチカラと役割分担が明確になり、ヒエラルキーが生
  まれた。第二の波は、大量生産が可能となった時代。マスエ
  ネルギーによる生産と消費で人口が爆発的に増える。生産者
  と消費者が共存せずに役割が明確にわかれる。資本家と労働
  者の時代。そして、第三の波は、消費しながら、情報を活用
  して、生産者にもなり得るというプロシューマーの到来だ。
  まさに、一部のユー・チューバーやプロのブロガーやアフィ
  リエイターなどがそうかもしれない。しかし、これはまだ一
  部なので、プロシューマーとはいえない。また、ソーシャル
  メディアからのゴールがマスメディアという構図も本当の意
  味での第三の波ではない。そう、私たちは、第三の波が起こ
  る、最初のいくつかの小波にゆらされているにすぎない。
                   http://bit.ly/2h1REa1
  ───────────────────────────

『第三の波』/アルビン・トフラー.jpg
『第三の波』/アルビン・トフラー
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2017年11月09日

●「情報の最小単位と情報のコード化」(EJ第4642号)

 「情報」の概念について、学ぶ必要のある3人の科学者を年号
付きで再現します。
─────────────────────────────
  1.   クロード・シャノン/1916〜2001
  2.  ハーバート・サイモン/1916〜2001
  3.ジョン・フォン・ノイマン/1903〜1957
─────────────────────────────
 クロード・シャノンの話を続けます。「情報」については次の
ような話もあります。当時は物理学が全盛の時代で、世の中のす
べてのことは物理学で説明できると考えられていたのです。
 チンパンジーにタイプライターを与えて打ち方を指導し、適当
に文字をタイプさせます。一方で人間にはシェイクスピアの詩を
タイプさせます。
 そして、シャノンは、チンパンジーのタイプした紙と人間のそ
れを示し、これらはどちらもタイプライターのインクが付いた紙
であり、物理学的には同じものであると説明します。そのうえで
次のように続けたのです。
─────────────────────────────
 大きな違いがあります。チンパンジーのタイプしたものは内容
が意味不明ですが、人間のそれはシェイクスピアの詩になってい
ます。そこには大きな差があります。この差を私は「インフォメ
ーション/情報」と呼ぶことにします。──クロード・シャノン
─────────────────────────────
 「情報」という言葉は、そのとき既に存在し、使われていたの
ですが、非常に曖昧な概念だったのです。シャノンはその言葉を
明確に定義してみせたといえます。
 シャノンは、大学院のときに「継電器とスイッチ回路の記号論
的解析」という論文を書き、「デジタル」の概念につながる理論
を発表しています。電気回路が閉じているときが「オン」、回路
が開いている状態を「オフ」とし、情報の最小単位を「ビット」
と称し、オンには「1」、オフには「0」を対応させたのです。
このように情報は「0」と「1」で表現されるようになります。
─────────────────────────────
     ビット=bit/2進数字
     Binary Digit/バイナリー・ディジット
─────────────────────────────
 これによってシャノンは「情報」を数式や方程式で扱えるよう
にしたのです。それを可能にしたのが「情報のコード化」です。
情報のコード化とは何でしょうか。その最も分かりやすい例とし
て「モールス信号」をあげることができます。
 モールス信号は、「トン」(短音)と「ツー」(長音)という
2種類の信号の組み合わせで、文字を伝える方法です。これには
よく考え抜かれた工夫がこらされています。
 英文の中に使われる文字には、よく使われる文字とそうでない
文字があり、統計的に判明しています。
─────────────────────────────
 ≪最もよく使われる文字≫
  E ・・・ −         トン
  T ・・・ ――        ツー
 ≪あまり使われない文字≫
  Q ・・・ ―― ―― − ――  ツー・ツー・トン・ツー
  Z ・・・ ―― ―― −    ツー・ツー・トン
─────────────────────────────
 どうでしょう。最もよく使われる文字は短く、あまり使われな
い文字には長い音を割り付けています。少しでも早く情報を伝え
るための処置といえるでしょう。これがシャノンの考えた「情報
のコード化」です。
 第2に、ハーバート・サイモンについて考えます。
 ハーバート・サイモンは米国の経済学者であり、その研究の中
心は組織論の分野であり、組織における人間の意思決定過程の研
究を行い、これによって1978年にノーベル経済学賞を受賞し
ています。
 この意思決定という人間の営みには「情報」が深く関わってく
るのですが、サイモンは情報には「階層」があることを指摘し、
次のように述べています。
─────────────────────────────
 データ、インフォメーション、インテリジェンスという情報の
階層を経て、われわれは意思決定をすることができる。
                 ──ハーバート・サイモン
      ──岩本敏男著/『IT幸福論』/東洋経済新報社
─────────────────────────────
 「情報は対象の不確実性を減少させる」とシャノンはいいまし
たが、その情報、すなわちインフォメーションは「事実」、デー
タの積み上げられたものです。岩本敏男氏の言葉を借りれば「デ
ータを分類して意味を持たせ、分析や評価の対象にしたものが、
インフォメーション」といえるのです。
 しかし、このインフォメーションだけでは意思決定に使えない
のです。多くの情報をシステマティックスに積み上げて、もうひ
とつ上の階層に引き上げることが意思決定には必要になります。
そうなると、これは単なる情報ではなく、インテリジェンス、い
わば「知見」のレベルになっているといえます。
 このようにサイモンの意思決定のプロセスの説明をたどってい
くと、情報には次の3つの階層があることがわかってきます。
─────────────────────────────
         1.      データ
         2.インフォメーション
         3. インテリジェンス
                ──岩本敏男著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[次世代テクノロジー論/32]

≪画像および関連情報≫
 ●意思決定は合理的ではありえない/ハーバード・サイモン
  ───────────────────────────
   「需要曲線と供給曲線の交点で、価格と生産量が決定され
  る」。この法則は、ミクロ経済学の教科書を読んでいなくて
  も、ほぼだれでも知っている基礎知識です。「需要と供給の
  一致」、つまり「神の見えざる手」ですね。需給の交点で市
  場は均衡するわけです。
   しかし、この法則の成立には前提があります。市場には供
  給側も需要側も十分に多数の参加者が存在し、全員が同じ情
  報を持っていることです。これを「完全競争市場」といいま
  す(正反対の概念は「独占市場」)。
   さらに、企業は利潤を最大化し、人々は効用を最大化する
  行動をとることが前提にあります。効用の最大化とは、予算
  の制約のなかで欲望を最大化すること、と言い換えてもいい
  でしょう。人々は同じ財・サービスであれば、必ず価格の一
  番安いものを買う、といったことです。なぜならば、それが
  合理的な行動だからです。つまり、人間の合理性が大きな前
  提条件として組み込まれていることがわかります。人間の合
  理性を前提に、経済学は計算可能なサイエンスとして発達し
  たわけですが、現実の社会で完全競争市場はほとんどありえ
  ません。実際は完全競争市場と独占市場の間にグラデーショ
  ンのようなさまざまな市場があり、人間は完全に合理的な行
  動をとることもありえないのです。 http://bit.ly/2zkCCGD
  ───────────────────────────

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情報の巨人:シャノン/サイモン/ノイマン
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2017年11月10日

●「ノイマンの提案によるEDSAC」(EJ第4643号)

 「情報」の概念について学ぶ必要のある3人の科学者のうち、
クロード・シャノンとハーバード・サイモンについては既に説明
は終わっています。
─────────────────────────────
  1.   クロード・シャノン/1916〜2001
  2.  ハーバート・サイモン/1916〜2001
 →3.ジョン・フォン・ノイマン/1903〜1957
─────────────────────────────
 第3に、ジョン・フォン・ノイマンについて考えます。
 ジョン・フォン・ノイマンといえば、ハンガリーのブタペスト
出身の米国の世界的に優れた数学者であり、8歳のときに微分積
分を理解していたいわれるほどの天才です。コンピュータの発達
にも優れた業績を遺した人物ですが、岩本敏男氏は「ゲームの理
論」の創設者として、ノイマンを取り上げています。
 ゲームの理論は、社会において複数の主体が関わる意思決定の
問題や行動の相互依存状況を数学モデルを用いて研究する学問で
あり、数学家のノイマンと経済学者のオスカー・モルゲンシュテ
ルンによる共著書『ゲームの理論と経済行動』(1944年)の
上梓によって誕生しています。
 ゲームの理論では、人間は自分の知り得る情報を活用し、相手
の戦略を予想し、自身の「利得」が最大になる行動を選択すると
されています。ノイマンは、このゲームの理論の枠組みで「情報
の利用価値」について次のように述べています。
─────────────────────────────
 情報の利用価値とは、情報が存在する場合の利得から、情報が
存在しない場合の利得を減じたものである。
               ──ジョン・フォン・ノイマン
      ──岩本敏男著/『IT幸福論』/東洋経済新報社
─────────────────────────────
 岩本敏男氏は、これらのシャノン、サイモン、ノイマンたちが
述べたことをまとめ、情報を次のように定義し、トフラーの『第
三の波』の次の一節を紹介しています。それは、現在起きつつあ
る情報通信革命への対処を教えてくれます。
─────────────────────────────
◎情報とは何か
 情報とは、不確実性を減らし、利得を極大化するための源泉で
 ある。
◎第三の波への対応
 これからのわれわれの生活の枠組みになるのは、この変革の第
 三の波である。滅びゆく文明から、いま、その姿をあらわし始
 めた新しい文明へ円滑に乗りかえ、しかも自分自身を見失わず
 に、これから迫ってくる、いよいよ激しい危機を乗り切るため
 には、第三の波の変革を正しく捉え、むしろ積極的にその変化
 を推し進めていかなければならない。
                 ──アルビン・トフラー著
  徳山二郎監修/鈴木健次・櫻井元雄訳/日本放送出版協会刊
                ──岩本敏男著の前掲書より
─────────────────────────────
 ジョン・フォン・ノイマンの話が出てきているので、彼のコン
ピュータの発展への貢献について述べておきます。これは、現在
開発されつつある「量子コンピュータ」について述べるときの前
提になります。
 世界初のコンピュータは「ENIAC」といい、1946年に
弾道計算のために、米国陸軍の弾道研究室によって設計され、完
成しています。報道では「巨大頭脳/グレート・ブレイン」と紹
介され、当時の電気機械式計算機に比べて、約1000倍の速度
だったと紹介されています。
 これに対して1949年に英国のケンブリッジ大学で「EDS
AC」というコンピュータが開発されています。一般的にはこの
コンピュータはノイマンが開発したといわれていますが、正確に
いうとそうではないのです。
 ノイマンは「EDVAC」というレポートを発表しているので
すが、この内容に刺激されたケンブリッジ大学の数学研究チーム
がEDSACを開発したのです。レポートの内容は、当時として
は誠に斬新なアイデアに満ちたものだったといいます。ENIA
CとEDSACの違いを次に簡単にまとめておきます。
─────────────────────────────
◎ENIAC
 Electronic Numerical Integrator and Computer
 1946年完成/10進数/ハードウェア/弾道計算を目的と
 する専用の計算機
◎EDSAC
 Electronic Delay Storage Automatic Calculator
 1949年完成/ 2進数/ソフト内蔵/大量のデータ処理の
 ための汎用計算機
─────────────────────────────
 ノイマンによるEDSACの重要な特徴は2つあります。1つ
は、ENIACの10進数に対して2進数を採用したことです。
2つは、プログラム内蔵型のコンピュータであることです。
 EDSACは、真空管を3000本使い、主記憶装置としては
水銀遅延菅、入力には紙テープを利用し、出力にはテレタイプを
使うなど、構成部品は現在のコンピュータとまるで違うものの、
その基本的な仕組みや考え方に変化はないのです。
 現在のコンピュータは、スマホまで含めて、2進数を採用し、
プログラム(アプリ)の命令にしたがってCPUが処理を行う仕
組みであり、その基本的な仕組みは、EDSACと変わらないの
です。そのため、現在のコンピュータは「ノイマン式コンピュー
タ」と呼ばれています。これを超えるコンピュータとして期待さ
れているのが「量子コンピュータ」です。
            ──[次世代テクノロジー論/33]

≪画像および関連情報≫
 ●ジョン・フォン・ノイマンの生涯
  ───────────────────────────
   1903年12月28日、ジョン・フォン・ノイマン(ハ
  ンガリー名:ナイマン・ヤーノシュ)はハンガリーの首都ブ
  ダペストにて、父が弁護士をしているユダヤ系ドイツ人の家
  庭に三人兄弟の長男として生まれた。
   ノイマンは幼少期から英才教育を受けており、ラテン語と
  ギリシャ語の覚えが早く、時には古典ギリシャ語でジョーク
  を言うこともあった。6歳になる頃には6桁の計算を暗算で
  こなし、筆算では、8桁の掛け算までできるようになってい
  た。また8歳になる頃には、微分積分などの高等数学を理解
  していたという。
   その興味は数学だけにとどまらず、ウィルヘルム・オンケ
  ンの全44巻からなる「世界史」や、ゲーテの詩集・小説な
  どを片っ端から読破し、歴史・文学の分野にも強い関心を見
  せるようになった。その反面、運動や音楽などについては全
  く才能が見られず、どれほど練習しても、上達することはな
  かったという。
   1914年10歳になったノイマンはブダペストにあるギ
  ムナジウムという学校に入学した。この学校は日本の中高一
  貫校に相当する学校であり、1963年にノーベル物理学賞
  を受賞することになるユージン・ウィグナーとは一学年違い
  だった。入学から間もなく、ギムナジウムの教授がノイマン
  の才能を見抜き、それからの約8年間、ノイマンはブタペス
  ト大学の数学者によって個人授業を受けることになる。
                   http://bit.ly/2A8fN6w
  ───────────────────────────

ノイマンの考案したEDSAC.jpg
ノイマンの考案したEDSAC
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2017年11月13日

●「ソフトウェア概念誕生とノイマン」(EJ第4644号)

 世界初のコンピュータである米国のENIAC(エニアック)
と、それに続く英国のEDSAC(エドザック)──これらにつ
いて、もう少し述べることにします。
 正確にいうと、ENIACは世界初のコンピュータではありま
せん。ENIACは1946年の開発ですが、1942年に「A
BC」という名前のコンピュータが開発されているからです。
─────────────────────────────
      ABC(Atanasoff Berry Computer)
─────────────────────────────
 ABCというコンピュータは、特定の計算にしか対応できない
専用マシンです。別の計算をする場合は、真空管の配列や配線を
変更する必要があり、事実上の作り直しになります。
 それから4年後に開発されたENIACは、1万8800本の
真空管を使い、重量は30トン以上で、設置には165平方メー
トルもの面積を必要とする巨大なマシンですが、基本的にはAB
Cと同じ専用マシンです。弾道計算をする目的で開発された専用
コンピュータです。もし、別の計算を行うには、そのつど真空管
の配列を変更するなどの膨大な手間がかかるので、専用のハード
ウェアそのものであるといえます。
 ところが、1949年に英国によって開発されたEDSACは
汎用コンピュータである点に最大の特色があります。つまり、真
空管の配置や配線などのハードウェアはそのままで、プログラム
というものを変更することで、いろいろな計算ができるのです。
これは凄い発明であり、ソフトウェアの概念の誕生を意味してい
ます。このアイデアを創出したのが、ジョン・フォン・ノイマン
です。彼が「コンピュータの父」といわれるゆえんです。
 EDSACは、現代のコンピュータの5大装置を備えており、
処理方式は逐次処理方式です。ちなみに、PCもノイマン型コン
ピュータそのものです。
─────────────────────────────
    @ 入力装置 ── データを入力する
    A 制御装置 ── 入出力データを制御する
    B 演算装置 ── 計算を実施する
    C主記憶装置 ── データを記憶する
    D 出力装置 ── データを出力する
─────────────────────────────
 当時はコンピュータの計算速度を向上させるためには、真空管
の数を増やさなければならなかったのです。しかし、真空管を小
さくするには技術的な限界があり、必然的にコンピュータは大型
化していくことになります。
 1965年に真空管に代わる半導体素子としてトランジスタが
開発されると、コンピュータの規模は急速に小型化します。さら
に、1975年にIC(Integrated Circuit)集積回路が開発さ
れるに及んで、コンピュータはPCの大きさまで小さくなり、し
かもその性能は大幅に向上することになったのです。
 ICが登場して2年後の1977年のことです。アップル社は
「アップルU」という小型のコンピュータを発売します。これが
爆発的に売れ、現代のPCの先駆け的存在になります。このよう
に、PCに関してはアップル社が先行したのです。
 しかし、世界に広く普及したのは、IBM仕様のPC/ATマ
シンだったのです。これは、IBMのデファクト・スタンダード
戦略の成果といえます。OSについてはIBMと寄り添ってOS
の標準化を狙ったマイクロソフトのウインドウズの開発の成功が
そういう状況を作り出したといえます。
 現在、普及しているPCは、次の2種類しかありません。しか
し、OSは違うものの、両者のPCのハードウェアの構造として
は、ほとんど同じマシンであるということができます。
─────────────────────────────
   PC/AT互換機 ・・・・・ ウインドウズPC
   マッキントッシュ ・・・・・ アップル・マシン
─────────────────────────────
 これらPC/AT互換機にしても、アップル・マシンにしても
ノイマン型コンピュータであることには違いがないのです。した
がって、現代の技術をもってしても、コンピュータに関しては、
ノイマンを超えることはできないのです。これは、ノイマンがい
かに偉大な仕事をしたかをあらわしています。
 ノイマン型コンピュータを超える「量子コンピュータ」の開発
も進みつつあります。これについては日本の技術も入っており、
大いに期待されますが、量子コンピュータについは改めて取上げ
ることにします。
 ノイマンには負の側面もあります。とくに日本人にとってはそ
ういうことがいえます。昨年のEJのテーマ「現在は陰謀論の時
代」でそれを取り上げています。日本への原爆投下を一番強硬に
主張したのは、ほかならぬノイマン自身であったからです。その
一部を以下に再現します。
─────────────────────────────
 ノイマンは、ニコラ・テスラの「フィラデルフィア計画」を引
き継いだ人物でもあり、第2次世界大戦中は、「マンハッタン計
画」の軍事顧問として原爆の製造にも参加しています。ノイマン
は、爆薬を32面体に配置することにより、核爆弾が製造できる
ことを10ヶ月にわたる計算で導き、原爆製造にも貢献したこと
によって「原爆の父」ともいわれるのです。
 実は原爆の日本投下に関しては、多くの反対意見があったので
すが、ノイマンはあくまで「無警告で投下すべき」と強硬に主張
し、実際に広島と長崎に原爆は投下されたのです。これはノイマ
ンの負の側面ですが、その他の多くの業績により、この面はあま
り強調されていないようです。
     ──2016年8月16日付、EJ第4238号より
─────────────────────────────
            ──[次世代テクノロジー論/34]

≪画像および関連情報≫
 ●ハンガリー人宇宙人説
  ───────────────────────────
   現代社会は、天才であふれている。はずみで大魚をつかん
  だ運才、自称天才、エセ天才、ただの詐欺師。もちろん、本
  物の天才もいる。もっとも、本物の天才ともなれば、ヒトと
  は限らない。染色体の数が47本、つまり両親から受け継が
  ない秘密の染色体を持っている可能性もある(人間の染色体
  は46本)。ところが、さらに恐ろしい仮説もある。
   1950年代、アメリカの名門プリンストン大学に、ジョ
  ン フォン ノイマンという数学者がいた。彼は非常な変わり
  者だったので、こんな陰口をたたかれていた。「ノイマンは
  人間そっくりだが、本当は宇宙人」。
   たいていの本では、ジョークですませているが、中には真
  に受けている本もある。いずれにせよ、それが本当なら、染
  色体の数どころの話ではない。染色体があるかどうかも怪し
  い。宇宙人なのだから。
   アメリカのニューメキシコ州に、歴史上初の原子爆弾を開
  発したロスアラモス研究所がある。1945年8月、ここで
  つくられた2個の原子爆弾は広島と長崎に投下されたが、こ
  の忌まわしい研究所で、不気味なうわさが流れていた。「ハ
  ンガリー人はじつは火星人である」。これが普通の職場なら
  「ただのヨタ話やろ」で一件落着なのだが、天下の頭脳が集
  まる研究所である。噂を流した本人も、第一級の科学者だろ
  うし、何か根拠があったに違いない。
                   http://bit.ly/2j8bLYB
  ───────────────────────────

ノイマン型コンピュータの「逐次処理」.jpg
ノイマン型コンピュータの「逐次処理」
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2017年11月14日

●「ウーバーVSエアビーアンドビー」(EJ第4645号)

 「見えない大陸」、「もうひとつ地球」について、具体的にそ
れは何であり、そこでは何が行われるのかについて考えていくこ
とにします。
 「スマートフォン・セントリック」という言葉があります。そ
れは、「すべてのテクノロジーはスマートフォンに集約されてい
る」という意味です。大前研一氏は、デジタルアイランド(島)
がデジタルコンチネント(大陸)になるといいましたが、スマホ
こそデジタルコンチネントを形成しているというのです。
 スマホがあれば、新聞を読むことも、動画を見ることも、地図
と音声で道案内をしてもらうこともできます。音楽を聴くときも
わからないことを尋ねることもできますし、買い物の決済も可能
です。また、電車に乗ることも、車を呼ぶことも、株や外貨を買
うこともできます。何でもできる夢のマシンです。
 スマホで注目すべきは、それを動かすシステム(OS)は、世
界中で使っているのに次の2つしかないことです。
─────────────────────────────
      1.   iOS ・・ アップル系
      2.アンドロイド ・・ グーグル系
─────────────────────────────
 OSはこのように2つに分かれていますが、スマホのアプリの
ほとんどは共通に開発されており、どのアプリも、アイフォーン
(iOS)でもアンドロイドスマホでも使えるのです。つまり、
スマホのなかに全世界をカバーする新しい経済圏・デジタルコン
チネント(大陸)ができているといえます。
 このスマホというマシンは、機能がアプリで、次々と追加でき
る強みがあります。しかも、現在、世界中の人のほとんどは、こ
のスマホを常時携帯して持ち歩いており、いつでもどこでも使う
ことができる状態にあります。
 スマホが普及しなければ、絶対に生まれることがなかった企業
の代表的な例として、ライドシェアのウ―バー(Uber)という企
業があります。2009年の創業です。ライドシェアといっても
ウ―バーは、車を作っているわけでも、特別な技術を持っている
わけでもなく、単なる自動車配車ウェブサイトと配車アプリを制
作しただけです。世界中に走っている自家用車やタクシーを世界
中の人たちがいつでも好きなときに使えるようにするアイデアを
創出しただけのことです。
 それでいて、5年足らずで、現在は時価総額7兆円、世界中で
3000人の従業員を使う巨大企業に成長しています。ウーバー
はサンフランシスコ生まれですが、単なる米国企業ではないので
す。大前研一氏はウ―バーについて次のように述べています。
─────────────────────────────
 Uberはサンフランシスコで生まれながら、本社機能はオラ
ダにあります。世界のどこかで誰かがUberを使うと、その瞬
間にオランダの本社に取引情報が送信されます。運転手に売上の
85%を支払う業務は、オランダで行われているのです。
 さらにオランダ本社はそこから経費を除いた利益を、タックス
・ヘイブン(租税回避地)であるバミューダに本社登録した別会
社に送り、最終的にサンフランシスコの親会社に送られる「技術
料」は全体の1・45%だけです。
 そのため、Uberが大成功しても、米国政府には税収がほと
んど入りません。Uberの実際の本社はサイバースペースにあ
り、世界中のあらゆるオーダーを同じシステムで決済しているの
で、国という単位はほとんど意味を成していないのです。これが
21世紀の企業の形であり、テクノロジー4・0時代の企業の形
です。                   ──大前研一著
 『テクノロジー4・0/「つながり」から生まれる新しいビジ
              ネスモデル』/KADOKAWA
─────────────────────────────
 ウーバーの創業とほぼ同時期にエアビーアンドビー(Airbnb)
という企業が誕生しています。ウ―バーと同じサンフランシスコ
生まれの企業です。
 サンフランシスコのアパートに同居する3人の貧乏な若者がい
たのです。彼らはとって目下の急務は、アパートの家賃をどのよ
うにして支払うかです。相談の結果、自分たちのアパートを貸す
ことにします。要するにまた貸しです。サンフランシスコでは、
よく国際会議が開かれるので、安く部屋を借りたい人は必ずいる
との判断です。
 しかし、彼らはベットを持っていないので、エアマットを持ち
込み、彼らの作る朝食付きで貸すことにし、サイトでお客を募集
します。そのため、当初、サービスをそのままあらわすサイト名
をつけます。しかし、後からそれを短縮しています。
─────────────────────────────
     Airbedandbreakfast.com → Airbnb.com
─────────────────────────────
 このエアビーアンドビー、初日には3人のお客が付き、次々と
お客が付いたので、彼らはこの事業に手ごたえを感じ、ネット上
で、自宅や部屋を誰かに貸したい人と部屋を借りたい人をマッチ
ングさせ、このビジネスを推進したのです。スマホさえあれば、
それはきわめて容易であり、ニューヨーク、ハンブルグを皮切り
に、宿泊施設が不足している観光地や、宿泊費の非常に高い大都
市、世界5000都市でビジネスは急速に拡大させます。そして
創業からわずか5年で、時価総額5兆円のベンチャー企業に成長
したのです。
 ウ―バーにしてもエアアンドビーにしても、それぞれの国の法
律や規制を無視してビジネスを展開させたので、今になっていろ
いろなトラブルを抱えていますが、あまりにもシンプルで、あま
りにも速いので、国の対応がどうしても遅れてしまいます。しか
し、この流れを止めることは困難です。これが、スマートフォン
・セントリック、見えない大陸でのビジネス展開です。
            ──[次世代テクノロジー論/35]

≪画像および関連情報≫
 ●21世紀競争の主戦場は「見えない経済大陸」/大前研一氏
  ───────────────────────────
   クラウド型会計ソフト「MFクラウド会計」をはじめとす
  るビジネス向けクラウドサービス「MFクラウドシリーズ」
  や、個人向け自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワ
  ード」など、お金に関するプラットフォームを提供するマネ
  ーフォワードが、4月末に開催した「MFクラウド・エキス
  ポ/2015」。MFの辻庸介代表取締役社長CEOや、今
  やIT分野の有識者と認められている堀江貴文氏に加えて、
  世界的なビジネスオピニオンリーダーである大前研一氏が講
  演するなど、最新のビジネス事情についての知見が共有され
  た。大前氏はその中で、経営コンサルタントとしての豊富な
  経験や、幅広い調査から、21世紀の経営者が踏まえるべき
  ことや、使うべきツールを紹介。1990年代後半の執筆活
  動から蓄積してきた、サイバースペース内のプラットフォー
  ムに富が蓄積されることや、グローバル化などの基本的な条
  件に改めて言及するなど、幅広く解説した。今回はその、大
  前氏の講演の全体を前編、中編、後編にわけて紹介する。以
  下が大前氏の講演だ。
   21世紀と20世紀とどこが違うのかということを、何十
  年か書いてきています。ちょっと古い本ですけれども、まず
  は『「新・資本論」/見えない経済大陸へ挑む』という本を
  14〜15年前に書きました。その本で、どういうことを書
  いたかというと、21世紀の経済って実は見えないんだ、見
  えない部分が多いんだよねということです。
                   http://bit.ly/2Aminpq
  ───────────────────────────

ライドシェア/ウ―バー.jpg
ライドシェア/ウ―バー
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2017年11月15日

●「セーフィーによるニュービジネス」(EJ第4646号)


 ウ―バーやエアビーアンドビーだけではありません。日本の企
業も「見えない大陸」のビジネスに多く参加しています。テクノ
ロジー4・0の時代では、今までであれば、銀行が絶対に貸さな
い企業でも、アイデアが優れていれば、クラウド・ファンディン
グで資金を集めることはできるのです。
 セーフィーという2014年創業の日本の企業があります。こ
の企業は、クラウド・ファンディングで資金を集め、急成長して
いる企業です。セーフィーは、170度モニターできるカメラと
スマホを連動させる技術で、セキュリティ情報を提供するビジネ
スを急拡大しています。
 この防犯カメラは、一台約2万円しますが、なかなか高性能な
カメラです。400万画素の170度広角カメラで、HD(高精
細度)画質のライブ映像をPCやスマホに送ることができます。
いま話題のドライブレコーダーでも2〜3万円はするので、防犯
カメラとしては格安です。
 このカメラを自宅の玄関先に設置し、セーフィーに月額980
円を支払うと、誰かが玄関に近づいたとき、センサーが反応し、
スマホにリアルタイムに映像を送信してくれるのです。さらに録
画された画像は一週間分保存されているので、トラブルがあった
ときは、その画像をそのまま警察に持ち込むことができます。こ
の月額料金は、セキュリティ料金としては「超格安」です。セコ
ムなどの既存企業が真っ青の低価格なのです。
 セーフィーは、クラウド・ファンディングで資金を集め、創業
しており、銀行に依存していないのです。銀行にこのアイデアを
持ち込んでも相手にされないでしょう。セーフィーは現在普及し
ているテクノロジーを組み合わせたアイデアで勝負しています。
もし、既存のセキュリティーサービス企業で、セーフィーと同じ
ことをやろうとすると、数100万円かかるといいます。それが
初期費用2万円、月額980円で実現するのです。
 2017年になってセーフィーには、オリックス社、関西電力
社、キャノンマーケティングジャパン社、NECキャピタルソリ
ューション社、ティーガイア社の5社と、9・7億円の資金業務
契約を締結しています。銀行が、融資にはあくまで担保を要求す
るなどの古いビジネスをやっていると、銀行不要になってしまう
ことはこの企業を見ても明らかです。
 セーフィー社の佐渡島隆平CEOは、日本国内で稼働中の防犯
・監視カメラはローカルなシステムで稼働しているとして、次の
ように述べています。防犯ビジネスの問題点を鋭く見抜いている
発言です。
─────────────────────────────
 日本国内では約350万台の防犯と監視カメラが稼働中なので
すが、その99%がローカルシステムかつローカル保存で、シス
テムもそれぞれ別のもので動いているんです。ムダが生まれてし
まっているところに、我々がクラウドで集中管理することで、ラ
ンニングコストを約6分の1に圧縮しています。
 しかも、セーフィーでは、HD動画を観られるので、静止画と
比べたらデータ量は約50倍なんですね。ということは、実質的
には約300分の1に下げたことになるわけです。
                   http://bit.ly/2iIhH6B
─────────────────────────────
 ウ―バー、エアビーアンドビー、そしてセーフィーのビジネス
のいずれにも共通している前提は、現代ではほとんどすべての人
がスマホを常時携帯していることです。この状況があるからこそ
このようなビジネスが成立しているのです。少しオーバーにいう
なら、現代は世界中の人が必要に応じて「つながる社会」になっ
ているといえます。
 スマホによって人と人がつながるためには、そのための通信網
が必要です。この携帯電話のネットワークがあるからこそ世界中
のどこへでも情報をきわめて安く送ることができます。しかも、
そのネットワークは、どんどん進化しています。
 携帯電話通信網の進化は、「G」──ジェネレーションであら
わします。現在は、「4G」の時代に入っています。
─────────────────────────────
       1.1G運用開始/1979年
       2.2G運用開始/1993年
       3.3G運用開始/2001年
    ⇒  4.4G運用開始/2012年
       5.5G開始予定/2020年
─────────────────────────────
 私は、1996年頃から携帯電話を使いはじめたと記憶してい
ます。そのとき、携帯電話のネットワークは2Gの時代だったこ
とになります。このときは、まさに携帯電話は音声電話の時代で
す。データ通信はもっぱらPCで行われていたのです。
 1999年1月から日本では、iモードで携帯電話によるメー
ル送受信ができるようになっています。これは日本が世界に先行
して行っています。このとき、世界では携帯メールによるショー
トメールが流行していたのです。これは、携帯電話番号を使って
送るメールであり、メールではなく、電話そのものです。もちろ
ん日本の携帯電話でもできるのですが、iモードの普及によって
あまり使われているとはいえません。
 今から考えると、日本では、このiモードに使うようになって
以降、携帯電話にカメラが付き、さまざまなアプリが搭載され、
遂には「お財布ケータイ」として決済まで行われるようになり、
ガラパゴス化が進んだのです。
 そして、2008年にアイフォーンが登場するのです。これは
日本のガラパゴスケータイが下敷きにされたものといっても過言
ではないでしょう。私は、アイフォーンを2009年から使用し
ていますが、使用当時のネットワークの世代は「3G」であり、
使い勝手においていくつもの問題点があったのです。
            ──[次世代テクノロジー論/36]

≪画像および関連情報≫
 ●電話・通信の仕組み/実は有線の携帯電話!?
  ───────────────────────────
   携帯電話の最大の利点は、「いつでも、どこでも通話でき
  る」ことでしょう。これが実現できているのは、携帯電話に
  電話線がないから。電話線がないからこそ、どこへでも持ち
  歩いて、好きなときに通話することができるのです。とはい
  え、もちろん、通話をしているのですから、電話線の役割を
  しているものがないわけではありません。携帯電話は、電波
  による「目に見えない電話線」を利用しているのです。目に
  は見えなくとも、携帯電話のアンテナが立たない「圏外」表
  示を見て、「電波が届かないこと」を体感したことは、誰で
  も一度や二度はあるのではないでしょうか。このように「目
  に見えない電話線」を利用している携帯電話ですが、実は、
  通常の電話と同様、有線のネットワークが通話を支えている
  ことをご存知でしたでしょうか?
   たとえば、北海道に住んでいるAさんと沖縄に住んでいる
  Bさんが、携帯電話で通話しているとします。この場合、A
  さんの携帯電話とBさんの携帯電話はどのようにつながって
  通話しているのでしょうか?
   ついイメージしがちなのが、Aさんの携帯電話から発せら
  れた電波が、日本の上空を横断して、直接Bさんの携帯電話
  に届いて、通話しているというものではないでしょうか?な
  んといっても、携帯電話は電波を使っているのですから。し
  かし、これは間違いです。     http://bit.ly/2hnlols
  ───────────────────────────

セーフィーの防犯カメラ.jpg
セーフィーの防犯カメラ
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2017年11月16日

●「携帯電話通信網が進化しつつある」(EJ第4647号)

 2009年に私が手にしたアイフォーンは「アイフォーン3G
s」──日本のアイフォーンユーザーとしては初期の頃になると
思います。電車のなかで持っている人は、ほとんどいなかったし
むしろ持っていることが注目されたものです。しかし、当時のア
イフォーンは、アプリをダウンロードするときは、PC経由でな
いと、できなかったと記憶しています。当時は、通信世代は3G
であり、「3Gs」はそれを意味しています。
 なぜ、PC経由でないとダウンロードできなかったかというと
電池が長持ちしないことと通信速度が遅かったからです。そのた
め外ではアプリのダウンロードはできなかったのです。したがっ
て、PCがうまく使いこなせない人にアイフォーンの操作は困難
だったといえます。
 既に携帯電話通信網の規格は「G(Generation)/世代」で表
すことになっていると述べていますが、1Gからはじまって、現
在4Gの時代になっています。
 1979年運用開始の1Gは音声をアナログ電波で通信する規
格です。そのため、ノイズが多くて音声品質は良くなく、盗聴さ
れる危険性もあったのです。しかし、1993年に2Gになり、
ここからデジタル方式に変わっています。これによって、音声品
質は格段に向上し、基本的には、メールやネットにも対応できる
ようになっています。
 2001年から3Gが運用開始され、通信のさらなる高速化に
対応できるようになります。3Gの時代は10年続きますが、こ
の間に通信速度は大幅に進化しています。そして「LTE」を経
由して4Gの時代になっています。
 3Gと4Gの通信速度の違いは、次のようになっています。ち
なみに、これは下りの速度、つまり、アプリをダウンロードする
ときの速度のことです。
─────────────────────────────
       3G ・・・ 384Kbps〜 14Mbps
       4G ・・・  75Mbps〜100Mbps
               4Gは正確には「4GLTE」
─────────────────────────────
 通信の速度は「bps」(ビーピーエス) であらわします。通信
では「ビット」という単位を使いますが、これは1秒間にどれだ
けのビットを送れるかをあらわしています。
─────────────────────────────
  bps :bit per second
  75Mbps → 1秒間に75メガビットの情報を送れる速度
─────────────────────────────
 4Gの一番遅い速度と3Gの一番速い速度を比べると、5倍以
上の速さの差があります。その差は動画に明確にあらわれます。
3Gでは動きが滑らかでなく、場合によっては止まってしまうの
に対し、4Gでは動画をスムーズに見ることができます。
 ここで少し複雑な話をしなければなりません。というのは、こ
こで4Gといっているのは、正確には「4GLTE」であるから
です。それではLTEとは何でしょうか。LTEとは、次の言葉
の略語です。
─────────────────────────────
        LTE/Long Term Evolution
─────────────────────────────
 LTEとは、3Gと4Gの中間に位置する規格のことであり、
「3・9G」に分類されています。つまり、まだ4Gではないと
いうことです。しかし、キャリア(携帯電話会社)間で話が統一
されておらず、現在では、すべてのキャリアが4Gと呼ぶように
なっています。かつてNTTドコモは、この3・9Gを「Xi/
クロッシィ」と呼んていました。
 なぜ「3・9G」というような中途半端な呼び方をするように
なったかというと、基地局などの装置が4G通信を可能にするま
でには相当の時間がかかるからです。最初は条件の整った実験室
のなかとか、東京都心などの一部エリアしか4Gのサービスを提
供できず、少しずつ高速化エリアを増やして行くしかないので、
あえて4GLTE(3・9G)という呼び方をしたのです。
 それでは、4GLTEではなく、4Gの通信速度はどの程度の
速度になるでしょうか。
─────────────────────────────
     4Gの通信速度/超高速大容量通信の実現
                 100Mbps〜1Gbps
─────────────────────────────
 2年後の2012年に私は「アイフォーン5Gs」に買い替え
ていますが、この頃から、ほとんどのアプリはPC経由ではなく
アイフォーンでできるようになったのです。このときから、外で
アイフォーンを使ってネットでウェブサイトがストレスなく見れ
るようになったことを記憶しています。それは、4GLTEの時
代に入ったことを意味しています。
 その2012年から5年が経過しています。そして東京五輪が
行われる2020年のサービスインに向けて、「第5世代移動体
通信システム(5G)」の整備が着々と進んでいます。どうして
5Gが必要なのかについて、次の根拠があります。
─────────────────────────────
 2015年に通信されたデータ量はおよそ6ZB(1ゼタバイ
ト=2の70乗バイト)。それが2020年には7倍の44ZB
になるといわれている。7倍もの量のデータが通信されるわけで
当然それだけ高速なデータ通信、インフラが必要になる。さらに
IoTでいろいろなものがつながってくる。
 米シスコが出している予測では、全世界のモバイル端末の数は
2020年までに116億まで増加するという。
                   http://bit.ly/2zCQ3Qs
─────────────────────────────
            ──[次世代テクノロジー論/37]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ今、次世代のモバイル通信方式「5G」が必要か
  ───────────────────────────
   いま、携帯電話業界で急速な盛り上がりを見せている「5
  G」は現在主流のモバイル通信方式「4G」と比べ、一体何
  が違っているのだろうか。また5Gを実現する上では、どの
  ような課題があると考えられるだろうか。
   ここ最近、携帯電話業界で「5G」に対する取り組みが急
  速に拡大している。国内の事例を見てもソフトバンクが昨年
  より「5GProject」 と打ち出し、5Gの要素技術を用いて
  通信環境を改善する取り組みを進めているほか、NTTドコ
  モも今年5月より、東京スカイツリーなどで5Gを体験する
  取り組みを進めていくとしているなど、各社が急速に5Gに
  関連した施策をアピールしている。
   そもそも5Gとは何かというと、現在主流の「4G」と呼
  ばれる「LTE-Advanced」 などの通信方式の、次の世代とな
  るモバイル通信方式のこと。第5世代の通信方式ということ
  で「5th Generation」、つまり5Gと呼ばれているわけだ。
  とはいえ現在のところ、多くの人は、現在の4Gの通信環境
  に対し、それほど大きな不満を抱いているわけではないだろ
  う。100Mbps を超える通信速度を実現している4Gであれば
  スマートフォンで動画や音楽など、比較的大容量のコンテン
  ツを扱うサービスであっても満足できるレベルで楽しめる。
  にもかかわらず、いま5Gが必要とされている理由は、モバ
  イル通信の利用の変化によって起きる「多様化」に対応する
  必要があるからだ。        http://bit.ly/2ADGO2K
  ───────────────────────────

3G/4G/5Gjpg.jpg
3G/4G/5Gjpg.jpg
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2017年11月17日

●「なぜ、5G通信網が必要になるか」(EJ第4648号)

 スマホの現在のG(ジェネレーション)は「4G」ということ
になっています。しかし、実際には、まだ「4GLTE(3・9
G)」であるともいわれます。これは、スマホの存在する場所に
よって異なると考えればわかりやすいと思います。
 4Gで通信ができるようになるためには、基地局など、それが
実現できる条件が整っている必要がありますが、全国的にはまだ
整っていないところがあるのです。それに加えて、2020年に
は「5G」の時代になるともいわれています。
 なぜ、5Gが必要なのでしょうか。その背景を探ってみる必要
があります。昨日のEJで、その根拠を示す一文をご紹介してい
ますが、それを再現します。
─────────────────────────────
 2015年に通信されたデータ量はおよそ6ZB(1ゼタバイ
ト=2の70乗バイト)。それが2020年には7倍の44ZB
になるといわれている。7倍もの量のデータが通信されるわけで
当然それだけ高速なデータ通信、インフラが必要になる。さらに
IoTでいろいろなものがつながってくる。
 米シスコが出している予測では、全世界のモバイル端末の数は
2020年までに116億まで増加するという。
                   http://bit.ly/2zCQ3Qs
─────────────────────────────
 上記文中には「ZB(ゼタバイト)」という単位が登場します
が、この単位について説明します。大きな単位をあらわす接頭辞
は量が1000倍されるとに変わります。「キロ」から上の単位
について示すと、次のようになります。なお、1バイトは8ビッ
トです。
─────────────────────────────
    K ・・・・  キロ (千)/10の 3乗
    M ・・・・  メガ(百万)/10の 6乗
    G ・・・・  ギガ(十億)/10の 9乗
    T ・・・・  テラ (兆)/10の12乗
    P ・・・・  ぺタ(千兆)/10の15乗
    E ・・・・ エクサ(百京)/10の18乗
    Z ・・・・  ゼタ(十垓)/10の21乗
─────────────────────────────
 現在はデジタルの世界です。文書や書籍、映像、音楽などのあ
らゆるものがデジタル化され、年間のデジタル量は毎年増える一
方です。毎年生成されるこうしたデジタルデータをカウントして
いる「デジタル・ユニバース・スタディ」という調査報告サイト
があります。
 これによると、2005年に世界中で生成または複製された情
報量は「0・1兆GB」であったのに対し、2011年における
それは「1・8兆ZB」になっているといいます。ギガ、テラ、
ペタ、エクサときて、単位はゼタになっています。
 これについて、既出のNTTデータ社長の岩本敏男氏は、デジ
タル情報量の伸長を情報爆発と呼び、次のように述べています。
─────────────────────────────
 2005年の0・1兆GBというのは、0・1ZBのことだか
ら、2011年の1・8ZBというのは、2005年の情報量の
18倍ということになる。この1・8ZBを仮にDVDに1枚ず
つ記録していくとすると、DVDの標準的な容量は4・7GBで
あり、約3800億枚が必要ということになる。このDVDを厚
さ5ミリのケースに入れて積み上げて行くと、190万キロメー
トルという距離になる。これは、地球と月との距離約38万40
00キロメートルを2往復するほどの距離である。
                      ──岩本敏男著
              『IT幸福論』/東洋経済新報社
─────────────────────────────
 冒頭記事によると、通信された情報量に絞ってみても2015
年はおよそ6ZBであるが、それが2020年には、7倍の44
ZBになるというのです。これは、まさに「情報爆発」といって
も過言ではない状況です。
 なぜ、5Gが必要なのかについては、基本的には次の3つの理
由があります。
─────────────────────────────
   1.コンテンツのリッチ化への対応が求められる
   2.IoTの普及拡大でトラフィックが急増する
   3.ネットワークの多接続と低遅延が求められる
─────────────────────────────
 「1」について考えます。
 これまでもそうであったように、時代が進むにつれて、コンテ
ンツのリッチ化は、単に個人が楽しむだけでなく、今後ますます
強く求められるようになります。とくに映像の8K化や立体化は
衛星放送や光ケーブルによる伝送ではコスト面に限界があるので
5G通信ネットワークの実現が期待されています。これにより、
遠隔手術などの遠隔医療に貢献することができます。
 「2」について考えます。
 あらゆるものがネットにつながると、トラフィック──通信回
線を利用するデータ量が激増するのことは必至になるので、新し
い通信方式での対応である5Gが求められます。5Gになるとい
うことは、4Gをそこに取り込むことになるので、それによって
ネットワークは強靭化されます。
 「3」について考えます。
 IoT時代のネットワークは、多接続性はもちろんのこと、と
くに「低遅延」の実現が求められます。IoTが本格化すると、
身の回りのデバイスに加えて、目に見えないセンサーも加わるの
で、数兆個の機器がネットに繋がることになります。自動運転車
や遠隔手術などの分野では、機器同士間の数ミリ秒以内の低遅延
性が求められます。4Gでは0・01秒の遅延を0・001秒ま
短縮する必要があります。──[次世代テクノロジー論/38]

≪画像および関連情報≫
 ●5Gはどれくらい速いの?/ITpro
  ───────────────────────────
   第5世代移動通信システム(5G)の利用者が体感できる
  実効速度は、現行の4G(LTE)の100倍に当たる毎秒
  数百メガ〜数ギガビット。携帯最大手のNTTドコモはそう
  想定する。通信条件の良いピーク時の実効速度は、サービス
  開始当初は毎秒数ギガビットにとどまるが、その後毎秒10
  ギガビット以上へと段階的に速まりそうだ。
   毎秒10ギガビットを実現できると、1つの基地局に接続
  した数百人のユーザーが同時に、4K映像を快適に視聴でき
  る。基地局をうまく配備すれば、五輪会場やコンサート会場
  など利用者が密集する環境でも通信しやすくなる。
   なお、国際電気通信連合(ITU)の技術性能要件では、
  5Gの最高伝送速度を、下り毎秒20ギガビット/上り毎秒
  10ギガビットとしている。強みはスピードだけではない。
  IoT(インターネット・オブ・シングズ)向けに多数のセ
  ンサーを同時接続しやすくもなる。同時接続端末数は4Gの
  100倍となる、1平方キロメートルのエリア当たり、最大
  100万台を目指す。縦横各1メートル間隔でセンサーや端
  末をびっしり並べても5Gの標準的な基地局で通信をほぼカ
  バーできる計算だ。       http://nkbp.jp/2iUv3wA
  ───────────────────────────

5G/どのくらい速いか.jpg
5G/どのくらい速いか
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