2017年10月27日

●「スパコンでも解けない問題がある」(EJ第4634号)

 ムーアの法則を継続させる──なぜこのことが問題なのかとい
うと、それが今後のコンピュータの発展を左右するからです。コ
ンピュータはつねに発展していかなければならないのです。
 スパコンについて、かつて民主党(当時)蓮舫議員は、「2位
じゃ、ダメなんでしょうか」という有名なことばを口にしました
が、2位じゃダメなのです。科学技術を発展させるためには、コ
ンピュータが最速である必要があります。コンピュータは、現在
も発展途上のマシンであるからです。
 スパコンの「京」でも解けない問題があります。それは、次の
ような循環セールスマン問題です。
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 セールスマンが、いくつかの都市を一度ずつすべて訪問して、
出発点に戻ってくるときに、移動距離が最小になるような経路を
求めなさい。           ──循環セールスマン問題
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 ちょっとできそうな問題に見えます。数学的にいうと、都市数
を「n」とすると、可能な経路は「n!/2n」通り存在するこ
とになります。「n」の値が小さいときは、全ての組み合わせを
調べられるので、最短経路はわかるのですが、「n」が大きくな
ると、この組み合わせの総数は爆発的に増加し、すべてを調べる
ことは困難になります。
 例えば、都市数を10としましょう。そのときの組み合わせの
総数は181440通りですが、30都市になると、次のように
なります。
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    30都市の場合 → 4・42×10の30乗
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 この計算を「京」で解くと、1401万年もかかるのです。事
実上計算は困難です。それでは、この問題を解くメリットは何か
というと、問題が解けると、あらゆる自動車の移動ルートを最適
化できるので、世界中から交通渋滞を解消させる可能性があるの
です。実現すれば大きなメリットがあります。
 また、これまであり得なかったような効き目の医薬品が開発で
きる可能性もあります。医薬品メーカーは、いまタンパク質の構
造をどう変えれば、薬効の高い医薬品ができるか、コンピュータ
を使って懸命に分析しています。このようなタンパク質の構造分
析も組み合わせの最適問題に属します。組み合わせ問題は、数学
好きなヒマ人の道楽ではないのです。
 このように、コンピュータにも「革新」が求められており、現
在「量子コンピュータ」の開発が進められています。量子コンピ
ュータは、量子力学の原理を応用して演算を行うコンピュータで
す。既存のコンピュータに比べて圧倒的に高速に計算できる夢の
マシンであり、1990年代から世界中で開発が進められていま
すが、現在のところ完成していないのです。
 しかし、今までのアプローチとは異なる「ディーウェーブシス
テムズ」と称する量子コンピュータができており、既にNASA
やグーグルで試験的に使われています。これによって、今までは
「近似解」しか出せなかったものが、「厳密解」を出せるように
なっているといいます。しかし、まだ実用化のレベルには達して
いるとはいえない状況です。
 ここでスパコンの話から従来のコンピュータ(PC)に話を戻
します。PCの速度は何によって決まるでしょうか。PCの速度
についてはさまざまの要素が絡みますが、基本的にはCPUの速
度で決まります。CPUはトランジスタで構成されていますが、
これは電子スイッチとして使われます。
 CPUには「クロック周波数」という数値がありますが、これ
はCPUの能力を示す尺度のひとつになります。クロック周波数
は、例えば「3・4GHz(ギガヘルツ)」というように表現し
ます。G(ギガ)は10億であるので、「3・4GHz」は、1
秒間に34億回オンとオフを繰り返す速度になります。なお、現
在の多くのPCはこのクロック周波数を上回っています。
 1秒間に34億回ですから、速いというイメージはありますが
1969年にはじめて月面着陸に成功したアポロ11号のクロッ
ク周波数が「1MHz」程度でしかなかったことを考えると、こ
れは物凄い速度です。
 CPUはどのような構造になっているでしょうか。簡単にいう
と次の3つから構成されます。
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           1.   コア
           2.キャッシュ
           3.   バス
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 中心部は1の「コア」です。各種の演算処理を行う中心部分で
あり、CPUそのものです。2の「CPUキャッシュ」はデータ
を一時的にストックしておくメモリで、処理速度を向上させるも
のです。3の「バス」は外部とつながる経路です。
 コアは、2000年までは1個であり、ムーアの法則により、
年々速度を上げてきたのです。8ビットCPU、16ビットCP
U、32ビットCPUまではコアはあくまで1つであり、シング
ルチップといわれます。
 しかし、64ビットCPUからはシングルチップでも出ました
が、多くは、コアは2個ないし、4個になっています。これは、
CPUの微細加工の限界と、速度を上げることに伴うCPUの発
熱を回避するため措置なのです。なお、CPUの数によって、次
の名称があります。
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     1.CPUが2個 ・・ デュアル・コア
     2.CPUが4個 ・・ クアッド・コア
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            ──[次世代テクノロジー論/24]

≪画像および関連情報≫
 ●デュアルコア/クアッドコア/オクタコア
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   スマートフォンやタブレットの宣伝だけではなく、コンピ
  ュータの宣伝でも見かけることの多い「クアッドコア」とか
  「オクタコア」という言葉ですが、そもそもどういう意味な
  のでしょうか?クアッド(Quad)とは英語で4倍を意味する
  言葉で、オクタ(Octa)とは同様に8倍を意味します。つま
  り、CPUにコアが4個であるとか、8個搭載されていると
  いう意味になります。少数派では有りますが、6個のヘキサ
  コアであるとか、12個のドデカコアもあります。
   昔のCPUはひとつのコアしか搭載していませんでした。
  しかしCPUがどれだけ高速になっても、1つのコアは同時
  に1つの事しか行うことが出来ません。CPUを早くしても
  一度に一つのことしか出来ないので、コアを増やして一度に
  複数のことを同時に行えるようにしたのが、デュアルコアや
  クアッドコア、オクタコアと呼ばれるマルチコアCUです。
  そのため、コアの数イコール性能といううわけではありませ
  ん。コアの数の多さのみをあらわしています。オクタコアや
  クアッドコアでコアを沢山積んでいても、一つ一つのコアの
  性能が低く計算が遅いようでは、CPUとしての性能は高く
  は有りません。なお、この計算の速さをクロック数と呼び、
  1・8GHzとか書かれている数字が、クロック数です。厳
  密には、CPUの性能はこれだけでは比較できないのですが
  今回の記事では割愛します。    http://bit.ly/2iA2oR1
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 ●図形出典/岩本敏男著/『IT幸福論』/東洋経済新報社刊

デュアルコア/クアッドコア.jpg
デュアルコア/クアッドコア
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする