2017年10月20日

●「SF映画から未来予測はできるか」(EJ第4629号)

 英誌『エコノミスト』副編集長であるトム・スタンデージ氏に
よると、2050年を見通す鍵は、過去、現在、そして「SFで
描かれる未来を調べること」とあります。
 確かに、大半が未来のことを描いているSFは、小説であれ、
映画であれ、作者は何らかの根拠に基づいて書いているはずなの
で、未来を予測するヒントになり得るといえます。その典型的も
のに、次のSF映画の傑作があります。
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           映画『2001年宇宙の旅』
            原題:2001:A Space Odyssey
     製作・監督:スタンリー・キューブリック
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 この映画は、1968年4月6日に公開されているのですが、
この映画の表題になっている「2001年」は、映画の公開から
33年後の世界です。まさにSFです。
 映画のなかでは、木星探査の宇宙船ディスカバリー号には「H
AL」という名のコンピュータが搭載されています。HALは、
宇宙船乗務員が「音楽を頼む」といえば、音楽が流してくれ、話
しかけると、適切に応答してくれる音声認識のできるAI(人工
知能)そのものです。このことは、映画公開後、約50年で、既
にわれわれのスマホで実現しています。やはり、この映画は、約
50年後のコンピュータを予測していたといえます。このAIコ
ンピュータ「HAL」には、次の隠された意味があるのです。
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           次のアルファベット
         H ・・・・・・・ I
         A ・・・・・・・ B
         L ・・・・・・・ M
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 HALの3文字のアルファベットの次の文字は、それぞれIB
Mになります。つまり、当時のコンピュータの巨人のIBMより
も優れたコンピュータであるという意味です。
 この未来の予測に関して、トム・スタンデージ氏は次のように
述べています。
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 SFは単に未来を予測するだけではない。技術者が新しいもの
を生み出すためのひらめきも与える。たいていの技術者はひと皮
むけばSFファンだ。1990年代のフリップ開閉式の携帯電話
などは、1960年代のテレビ番組『スタートレック』に登場す
る携帯通信機に触発されたように見える。また、コンピュータと
直接会話するというのも『スタートレック』に登場していたアイ
デアだが、このところ新たな潮流としてアマゾンの「アマゾン・
エコー」をはじめ、音声を基本的なインターフェースとする、常
時オンの手ぶらで使えるコンピュータ端末が登場している。
         ──英『エコノミスト』編集部/土方奈美訳
   「2050年の技術/英『エコノミスト』誌は予測する」
                       『文藝春秋』
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 テレビ番組『スタートレック』は、23世紀の宇宙船USSエ
ンタプライズのクルーが、未知の宇宙を探索する物語です。若く
有能なジム・カーク船長、ヴァルカン人と地球人のハーフである
スポック、皮肉屋ドクター・マッコイの3人を中心として展開。
毎週のように登場する異星人や未知の惑星との遭遇が、基本形と
なって話が展開します。
 『スタートレック』は、あのスティーヴン・ホーキングが熱烈
なファンであり、自らの講演でよく引用するそうです。エンジニ
アのファンの多い番組といわれます。
 この『スタートレック』というテレビ番組に対して、『スター
ウォーズ』という映画があります。名前がよく似ていますが、全
然違う作品です。この両作品のメガフォンをとったJ・Jエイブ
ラムス氏は、この両作品の違いを次のように述べています。
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 『スター・ウォーズ』は、常におとぎ話のようなファンタジー
だ。そして『スター・トレック』はSFなんだ。『スター・ウォ
ーズ』は遠い昔で、一方の『スター・トレック』は未来が舞台と
いうのもおもしろい違いだね。もちろん似ている点があるのも確
かだよ。宇宙船とかエイリアンとかね。でも根本的に違うんだ。
違うトーンに、違う感情だし。    ──J・Jエイブラムス
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 これに対して、グーグルは『スターウォーズ』の新作が封切ら
れると、マウンテンビューにある2つの映画館を借り切って、全
社員に『スターウォーズ』を見せています。業務命令です。梅田
望夫氏が、作家の平野啓一郎氏との対談のなかで、そのことを明
かしています。
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◎梅田:少なくとも彼らが政府とか言うときのイメージってすご
    く単純ですよ、そこに人文科学系の深みのようなものは
    ないです。「スター・ウォーズ」といえば、公開される
    前日は、シリコンバレーのマウンテンビュー市の映画館
    全部がグーグルの貸切だったんですよ。
◎平野:えっ、そこまで?社員全員が見るんですか?みんながそ
    の価値観を共有しているんですか?
◎梅田:価値観を共有」といえば強すぎるけれど、けっこう影響
    はされていると思う。それは「はてな」の近藤(淳也社
    長)たちも一緒で、僕は取締役になるための通過儀礼と
    して「スター・ウォーズ」のDVDを全部見てくれって
    言われたんですから。  ──梅田望夫/平野啓一郎著
                『ウェブ人間論』/新潮新書
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            ──[次世代テクノロジー論/19]

≪画像および関連情報≫
 ●『スター・トレック』『スター・ウォーズ』は全然違う!
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   映画界のみならずカルチャーシーンにも多大な影響を与え
  てきた2大メガシリーズ『スター・トレック』と『スター・
  ウォーズ』の両作品でメガホンを取った、唯一の存在、J・
  J・エイブラムスが、『スター・トレック・ビヨンド』のプ
  ロモーションで来日した際に、両シリーズの違いなどについ
  て語った。
   2009年にエイブラムスがリブートさせた新『スター・
  トレック』シリーズの第3弾にあたる『スター・トレック・
  ビヨンド』。本作では、『ワイルド・スピード』シリーズの
  ジャスティン・リンがメガホンを取り、エイブラムスは製作
  にまわった。「ジャスティンは、とてもよくやってくれたと
  思う。特にアクションシーンは僕にとってとても勉強になっ
  た。彼はアクション映画のプロだからね」と今作について切
  り出すエイブラムスは、「正直、嫉妬したね。だって、俳優
  陣は素晴らしいし、(サイモン・ペッグとダグ・ユングの書
  いた)脚本はとてもおもしろい」と打ち明ける。
   実は、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の編集真っ
  只中で、本作の撮影現場にあまり行くことができなかったの
  だという。「彼らに重大な課題を託していったわけだけど、
  彼らがとても素晴らしい仕事をこなしてくれて本当に感謝し
  ているんだ」とキャスト&スタッフをねぎらう一幕も。
                   http://bit.ly/2xNUQAV
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映画「2001年宇宙の旅」.jpg
映画「2001年宇宙の旅」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする