2017年10月13日

●「GEは変革で何を目指しているか」(EJ第4624号)

 GEが力を入れているのは、IoTのプラットフォーム「プレ
ディックス」です。プレディックスで、GEと米マイクロソフト
社は提携しており、プレディックスは、マイクロソフト社のクラ
ウラドサービス「アジュール」経由で提供されます。
 このプレディックスによって、航空エンジンから、風力発電装
置、石油掘削装置、医療機器のMRIなど、GEの持つあらゆる
産業機器がつながるのです。
 GEは、1980年〜90年代に単に重電製品を製造して売る
業態から、保守点検のサービス事業に踏み出し、サービスを充実
することによって利益率を高めていたのです。それをさらに高め
るのが、ソフトウェアを通じた新しい価値の提供です。
 当時CEOのジェフ・イメルト氏による変革で最もわかりやす
いのが航空機部門への取り組みです。GEは航空エンジンでトッ
プシェアを誇り、2万5000基が世界の航空会社で採用されて
います。これは、2秒間に1回、GEエンジンを搭載する飛行機
が離陸する計算になります。
 ボーイング787というと省エネで有名ですが、これには「G
Enx」というGEの最新鋭のエンジンが搭載されています。こ
れには26個のセンサーから、毎秒5000種類のデータが取得
可能です。米国の西海岸から日本までの飛行中に収集されるデー
タは、実に15億個、容量でいうと、512GBもあるのです。
 しかし、これらの膨大なデータは、これまではすべて捨てられ
ていたのですが、それらのデータを飛行中にリアルタイムに把握
することができれば、GEはそれらのデータを解析して、安全な
飛行に活かす技術を持っているのです。
 たとえば、飛行中の航空エンジンの摩耗や損傷をモニタリング
することで、摩耗率を正確に予測し、その寿命を知ることができ
ます。これに加えて、これまでは飛行距離を基に予測するしかな
かったオイル交換の時期も、飛行エリアや飛行方法を機体ごとに
正確に把握できます。
 これについて、GEの航空部門のディブ・バートレットCTO
は、次のように述べています。
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 医者が体温や心拍数を測るように、これらのデータを通してわ
れわれは飛行機の状況をリアルタイムで知ることができる。エン
ジンの状態を正確に把握することで、欠陥便の減少や燃料の節約
さらに無駄な整備時間の減少ができ、10億円単位のコスト削減
ができる。  ──ディブ・バートレットGEの航空部門CTO
       『週刊ダイヤモンド』/2015年10月3日号
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 これによってGEのビジネスは、単に航空機エンジンを製作し
ている売るモデルから、航空会社の安全とコスト削減を約束する
総合的なサービスモデルに転換したことになります。
 これらのGEのIoT戦略は、現在のところは顧客サービスの
強化が主目的ですが、今後はエンジンの開発にも活かされる可能
性があります。GEソフトウェアのグレッグ・ペトロフ最高経験
責任者は、次のように述べています。
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 飛行機は、飛ぶエリアによって、ダメージや摩耗が異なる。そ
うしたデータが集まれば、今後は運航する会社によって、エンジ
ン素材も変えていくかもしれない。
           ──グレッグ・ペトロフ最高経験責任者
       『週刊ダイヤモンド』/2015年10月3日号
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 グレッグ・ペトロフ氏がいっているのは、例えば、中国の空を
飛ぶと、大量の煙を吸い込むし、中東の空は、砂漠によって砂が
入る。これによるエンジンの損傷のデータを集めて分析し、エン
ジン開発に活かそうというのです。航空エンジンひとつとっても
従来はできなかったサービスがこれだけ可能になるのです。
 元シスコシステムズの副社長を務めていたビル・ルー氏をGE
に引き抜き、GEのデジタル戦略をまかせたのは、ジェフ・イメ
ルト前CEOです。ビル・ルー氏は、GEソフトウェアをシリコ
ンバレーにゼロから立ち上げた立役者です。ビル・ルー氏はIo
Tで成功するには、シリコンバレーのスピードに学ぶ必要がある
と次のように述べています。
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 IoT時代の改革で何よりも重要なのは、スピードです。今は
製造業もシリコンバレーのスタイルで動かなければ生き残れませ
ん。いきなり完成形を提示するのではなく、まずやってみて、失
敗から学習し、もう一度やり直すというプロセスを、他社を引き
離すまで繰り返すのです。日本でのソフトウエア販売でソフトバ
ンクと提携したのも、彼らにこのスピードがあるからです。
 プレディックスは日米や中国、独仏など産業国にまず需要があ
ると思っています。  ──ビル・ルーGE最高デジタル責任者
       『週刊ダイヤモンド』/2015年10月3日号
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 しかし、ジェフ・イメルト前CEOは、製造業をソフトウェア
企業に変身させるために、稼ぎ頭の金融事業を売却しなければな
らなかったのです。しかも、GEの金融事業は、20世紀最大の
経営者といわれるジャック・ウェルチ元CEOが築いたビジネス
モデルであり、なかなかできる決断ではなかったのです。
 2015年7月9日、東京・六本木のグランドハイアット東京
には、GEジャパンの社員が250人集まっていたのです。来日
したイメルト氏は、「本当に売ってしまうのですか」と聞かれる
と、涙を浮かべ、次のようにいったといわれています。
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      GEは変わらなければならないのです
             ──ジェフ・イメルトGE・CEO
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            ──[次世代テクノロジー論/14]

≪画像および関連情報≫
 ●GEの変身/「募るアイデア賞金は2億ドル!」
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   「クラウド・ソーシング」という言葉をご存じだろうか。
  クラウドは今はやりの「雲」(クラウド)ではなく、群衆の
  のこと。「ソーシング」はアウトソーシングのソーシングで
  調達を意味する。意訳すれば、「どこの誰だか分からない群
  衆から何かを調達する」とでもなるだろうか。
   米ゼネラル・エレクトリック(GE)が企業にとって最も
  大切なモノをクラウド・ソーシングするという。最も大切な
  モノとは、価値を生むための「新しいアイデア」だ。
   GEのジェフ・イメルト会長は2010年7月13日、米
  シリコンバレーの地で、スマートグリッド「次世代送電網」
  についてアイデアを世界中から募り、優れたものには総額2
  億ドル(約174億円)の賞金を与えると発表した。
   東京でも日本GEが7月14日、スマートグリッドをめぐ
  るシンポジウムを開催した。冒頭あいさつに立った日本GE
  の藤森義明社長は「スマートグリッドがらみで面白いアイデ
  アがあっても、研究資金がないといった理由でそのまま眠っ
  ているモノも多いはず。大学の研究室やものづくり系の企業
  の皆さんから、積極的な応募を期待したい」と呼びかけた。
  GEといえば創業者のエジソン以来、電力システムの開発で
  は世界のトップを走ってきた。そんな名門企業がどこの誰と
  も知らない人からなぜアイデアを募るか。
                http://s.nikkei.com/2i2rBTK
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ビル・ルーGE最高デジタル責任者.jpg
ビル・ルーGE最高デジタル責任者
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする