2017年10月02日

●「ICTによるビジネスの一大変化」(EJ第4616号)

 「ICTが世の中を変える」ということがかなり前からいわれ
ています。PCの普及、インターネットの活用、メールによるコ
ミュニケーションなどによって、ビジネスの世界は、大きく変貌
を遂げたことは確かです。
 さらに携帯電話の普及によってICTの変化は進みます。とく
に、携帯電話からのメールの受発信も可能になり、コミュニケー
ションの多様化が進みます。いつでもどこでもコミュニケーショ
ンがとれるようになります。これによって、携帯電話が単なる電
話ではなくなるのです。
 携帯電話──とくに日本の携帯電話はどんどん進化し、多機能
化します。カメラが付き、それに続いて、ワンセグ、着メロ、着
うた、赤外線通信、電子マネー(お財布ケータイ)など、驚くべ
き多機能化が進んだのです。
 このように、日本の携帯電話は、多機能ではあるものの、世界
の標準とはいささか異なる進化を遂げたことから、他の島と接触
がないことによって、動植物が独自に発達したガラパゴス諸島に
ちなんで、「ガラパゴスケータイ」と揶揄されるようになったの
です。しかし、世界は結果としてこの日本の技術を後から取り入
れるようになります。現在のスマホがその典型です。
 2005年頃からブログが登場し、誰でもウェブサイトを持つ
ことができるようになります。このときから、ICTの専門家だ
けではなく、多くの人々が、インターネット空間を自由に利用す
ることができるようになったのです。
 2007年にアップルが開発したアイフォーンによって、IC
Tの進化の速度はさらにスピードアップします。世界中の人々が
5年ほど前のスーパーコンピュータの能力に匹敵する高性能コン
ピュータをつねに携帯するという驚くべきことが実現します。こ
れで世の中が変わらないはずはありません。
 そして現在、世界はデジタルトランスフォーメーションの時代
になりつつあります。「デジタルトランスフォーメーション」と
は何でしょうか。
 トランスフォーメーション(Digital transformation)には、
「形を変える」とか、あるいは「再編成する」という意味があり
ます。どのように形を変えて、何を再編成するのでしょうか。
 デジタルトランスフォーメーションの定義については、次のよ
うにいわれています。
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 「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変
化させる」という概念である。2004年にスウェーデンのウメ
オ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したとされる。
                   http://bit.ly/2dLDLdz
─────────────────────────────
 これでは、あまりにも概念が抽象的なので、もっと具体的に考
えてみます。現在、すべてのビジネスプロセスは、人間が行うこ
とを前提に組み立てられています。当たり前のことです。プロセ
スで、さまざまな道具やマシンを使うにしても、あくまでビジネ
スプロセスの中心は人間であり、それを前提にビジネスプロセス
は最適化されています。
 しかし、これからは違います。人間ではなく、マシンが中心に
行うことを前提にビジネスプロセスが最適化されるようになった
のです。それを「デジタルトランスフォーメーション」といいま
す。ネットコマース株式会社社長の斎藤昌義氏は、これについて
自著で次のように述べています。
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 ITの進化は、これまで「人間のできること」を機械に置き換
え、効率化やコストの削減を実現してきました。さらに、インタ
ーネットやクラウド、IoTや人工知能の普及は、「人間にしか
できなかったこと」や「人間にはできないこと」をどんどんでき
るようにしています。ならば、そんなITや機械の新しい常識の
下に、「人間ではなく、ITや機械がすべてをおこなうことを前
提に、最もふさわしい仕事の流れを実現する」と考えてもいいは
ずです。どうしても「人間にしかできないこと」が残るとすれば
「それは人間がやりましょう」と発想を逆転して考えてみると、
これまでの常識では考えられなかったことが実現するかもしれま
せん。これが、「デジタルトランスフォーメーション」の目指し
ているところです。──斎藤昌義著『未来を味方にする技術/こ
   れからのビジネスを創るITの基礎の基礎』/技術評論社
─────────────────────────────
 ハーレーダビッドソン──オートバイに関心がない人でも、こ
の企業の名前を知らない人はいないでしょう。しかし、この企業
の生産性はきわめて悪かったのです。なぜなら、この企業の最大
の特色は「カスタム性(改造)」にあるからです。日本を含め、
世界中に「ハーレーのカスタム化専門店」が多数存在し、ありと
あらゆるパーツやアクセサリーを販売しています。いわば「改造
車があたりまえ」であり、「改造していないハーレーなんてカッ
コ悪い」といわれているのです。
 このような顧客のわがままな注文を聞き入れるために、注文を
受ける工場では、部品手配の関係上、15〜21日前に注文を締
め切らざるを得なかったのです。個別対応になるので、これでは
生産性がまるで上がるはずがありません。
 しかし、ハーレーダビッドソンは、トップの決断によって「ア
ルバート」というAIシステムをマーケティング政策に取り入れ
ウェブ上で顧客が自分でパーツを組み立て、申し込むというシス
テムを導入します。それに加えて、さらに強力なICTシステム
を取り入れ、工場をスマート・ファクトリー化させ、生産性を劇
的に改善させることに成功しています。それは、すべての製造装
置や工作機械に取り付けられたセンサーによって、稼働状況をリ
アルタイムで把握できるIoTのシステムです。これは、デジタ
ルトランスフォーメーションの事例そのものです。
            ──[次世代テクノロジー論/06]

≪画像および関連情報≫
 ●ハーレーダビッドソンのAI活用法
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   冬のニューヨーク市。アサフ・ジャコビ率いるハーレーダ
  ビッドソンの販売代理店では、オートバイの売上げは週1〜
  2台だった。満足のいく数字ではない。ジャコビは、リバー
  サイド・パークに長い散歩に出かけたところ、人工知能(A
  I)企業アドゴリズムのCEO、オル・シャニにばったり出
  会った。販売不振に悩むジャコビの話を聞いたシャニは自社
  のAIを用いたマーケティングプラットフォームである「ア
  ルバート」の試用を勧めた。これは、マーケティングキャン
  ペーンの効果を測定し、自律的に最適化するツールであり、
  フェイスブックやグーグルを含む多様なデジタルチャネルで
  活用できるものだ。
   ジャコビは、アルバートに1週間の「試用期間」を与える
  ことにした。その週末、ジャコビはオートバイを15台販売
  した。夏場の週末の売上最高記録である8台を、2倍近く上
  回る数だ。ジャコビは当然ながらアルバートを使い続けた。
  すると、販売店で1日に獲得する優良見込み客は、1人から
  40人へと増加。最初の1ヵ月、新規見込み客の15%は、
  「ルックアライク(類似した顧客)」だった。すなわち、販
  売店にアポイントの電話をかけてくる人々は過去の優良顧客
  と似ており、オートバイを購入する可能性が高いということ
  だ。3ヵ月後、見込み客数は2930%も増加し、そのうち
  50%がルックアライクだった。このため、ジャコビは新た
  に6人の従業員を雇い、新規顧客に対応すべく急遽新しいコ
  ールセンターを設置した。     http://bit.ly/2x2tAhL
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ハーレーダビットソンの工場.jpg
ハーレーダビットソンの工場
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする