2017年10月02日

●「ICTによるビジネスの一大変化」(EJ第4616号)

 「ICTが世の中を変える」ということがかなり前からいわれ
ています。PCの普及、インターネットの活用、メールによるコ
ミュニケーションなどによって、ビジネスの世界は、大きく変貌
を遂げたことは確かです。
 さらに携帯電話の普及によってICTの変化は進みます。とく
に、携帯電話からのメールの受発信も可能になり、コミュニケー
ションの多様化が進みます。いつでもどこでもコミュニケーショ
ンがとれるようになります。これによって、携帯電話が単なる電
話ではなくなるのです。
 携帯電話──とくに日本の携帯電話はどんどん進化し、多機能
化します。カメラが付き、それに続いて、ワンセグ、着メロ、着
うた、赤外線通信、電子マネー(お財布ケータイ)など、驚くべ
き多機能化が進んだのです。
 このように、日本の携帯電話は、多機能ではあるものの、世界
の標準とはいささか異なる進化を遂げたことから、他の島と接触
がないことによって、動植物が独自に発達したガラパゴス諸島に
ちなんで、「ガラパゴスケータイ」と揶揄されるようになったの
です。しかし、世界は結果としてこの日本の技術を後から取り入
れるようになります。現在のスマホがその典型です。
 2005年頃からブログが登場し、誰でもウェブサイトを持つ
ことができるようになります。このときから、ICTの専門家だ
けではなく、多くの人々が、インターネット空間を自由に利用す
ることができるようになったのです。
 2007年にアップルが開発したアイフォーンによって、IC
Tの進化の速度はさらにスピードアップします。世界中の人々が
5年ほど前のスーパーコンピュータの能力に匹敵する高性能コン
ピュータをつねに携帯するという驚くべきことが実現します。こ
れで世の中が変わらないはずはありません。
 そして現在、世界はデジタルトランスフォーメーションの時代
になりつつあります。「デジタルトランスフォーメーション」と
は何でしょうか。
 トランスフォーメーション(Digital transformation)には、
「形を変える」とか、あるいは「再編成する」という意味があり
ます。どのように形を変えて、何を再編成するのでしょうか。
 デジタルトランスフォーメーションの定義については、次のよ
うにいわれています。
─────────────────────────────
 「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変
化させる」という概念である。2004年にスウェーデンのウメ
オ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したとされる。
                   http://bit.ly/2dLDLdz
─────────────────────────────
 これでは、あまりにも概念が抽象的なので、もっと具体的に考
えてみます。現在、すべてのビジネスプロセスは、人間が行うこ
とを前提に組み立てられています。当たり前のことです。プロセ
スで、さまざまな道具やマシンを使うにしても、あくまでビジネ
スプロセスの中心は人間であり、それを前提にビジネスプロセス
は最適化されています。
 しかし、これからは違います。人間ではなく、マシンが中心に
行うことを前提にビジネスプロセスが最適化されるようになった
のです。それを「デジタルトランスフォーメーション」といいま
す。ネットコマース株式会社社長の斎藤昌義氏は、これについて
自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 ITの進化は、これまで「人間のできること」を機械に置き換
え、効率化やコストの削減を実現してきました。さらに、インタ
ーネットやクラウド、IoTや人工知能の普及は、「人間にしか
できなかったこと」や「人間にはできないこと」をどんどんでき
るようにしています。ならば、そんなITや機械の新しい常識の
下に、「人間ではなく、ITや機械がすべてをおこなうことを前
提に、最もふさわしい仕事の流れを実現する」と考えてもいいは
ずです。どうしても「人間にしかできないこと」が残るとすれば
「それは人間がやりましょう」と発想を逆転して考えてみると、
これまでの常識では考えられなかったことが実現するかもしれま
せん。これが、「デジタルトランスフォーメーション」の目指し
ているところです。──斎藤昌義著『未来を味方にする技術/こ
   れからのビジネスを創るITの基礎の基礎』/技術評論社
─────────────────────────────
 ハーレーダビッドソン──オートバイに関心がない人でも、こ
の企業の名前を知らない人はいないでしょう。しかし、この企業
の生産性はきわめて悪かったのです。なぜなら、この企業の最大
の特色は「カスタム性(改造)」にあるからです。日本を含め、
世界中に「ハーレーのカスタム化専門店」が多数存在し、ありと
あらゆるパーツやアクセサリーを販売しています。いわば「改造
車があたりまえ」であり、「改造していないハーレーなんてカッ
コ悪い」といわれているのです。
 このような顧客のわがままな注文を聞き入れるために、注文を
受ける工場では、部品手配の関係上、15〜21日前に注文を締
め切らざるを得なかったのです。個別対応になるので、これでは
生産性がまるで上がるはずがありません。
 しかし、ハーレーダビッドソンは、トップの決断によって「ア
ルバート」というAIシステムをマーケティング政策に取り入れ
ウェブ上で顧客が自分でパーツを組み立て、申し込むというシス
テムを導入します。それに加えて、さらに強力なICTシステム
を取り入れ、工場をスマート・ファクトリー化させ、生産性を劇
的に改善させることに成功しています。それは、すべての製造装
置や工作機械に取り付けられたセンサーによって、稼働状況をリ
アルタイムで把握できるIoTのシステムです。これは、デジタ
ルトランスフォーメーションの事例そのものです。
            ──[次世代テクノロジー論/06]

≪画像および関連情報≫
 ●ハーレーダビッドソンのAI活用法
  ───────────────────────────
   冬のニューヨーク市。アサフ・ジャコビ率いるハーレーダ
  ビッドソンの販売代理店では、オートバイの売上げは週1〜
  2台だった。満足のいく数字ではない。ジャコビは、リバー
  サイド・パークに長い散歩に出かけたところ、人工知能(A
  I)企業アドゴリズムのCEO、オル・シャニにばったり出
  会った。販売不振に悩むジャコビの話を聞いたシャニは自社
  のAIを用いたマーケティングプラットフォームである「ア
  ルバート」の試用を勧めた。これは、マーケティングキャン
  ペーンの効果を測定し、自律的に最適化するツールであり、
  フェイスブックやグーグルを含む多様なデジタルチャネルで
  活用できるものだ。
   ジャコビは、アルバートに1週間の「試用期間」を与える
  ことにした。その週末、ジャコビはオートバイを15台販売
  した。夏場の週末の売上最高記録である8台を、2倍近く上
  回る数だ。ジャコビは当然ながらアルバートを使い続けた。
  すると、販売店で1日に獲得する優良見込み客は、1人から
  40人へと増加。最初の1ヵ月、新規見込み客の15%は、
  「ルックアライク(類似した顧客)」だった。すなわち、販
  売店にアポイントの電話をかけてくる人々は過去の優良顧客
  と似ており、オートバイを購入する可能性が高いということ
  だ。3ヵ月後、見込み客数は2930%も増加し、そのうち
  50%がルックアライクだった。このため、ジャコビは新た
  に6人の従業員を雇い、新規顧客に対応すべく急遽新しいコ
  ールセンターを設置した。     http://bit.ly/2x2tAhL
  ───────────────────────────

ハーレーダビットソンの工場.jpg
ハーレーダビットソンの工場
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2017年10月03日

●「常識の大転換が起きる4つの変化」(EJ第4617号)

 9月26日のことです。掃除機メーカーとして世界的に有名な
英国のダイソンが、日本円にして1514億円を投じて電気自動
車(EV)に参入すると発表し、自動車業界に衝撃をもたらして
います。日本経済新聞の報道は次の通りです。
─────────────────────────────
 【ロンドン=篠崎健太】英家電大手のダイソンは9月26日、
2020年までに、電気自動車(EV)市場に参入すると表明し
た。主力のコードレス掃除機などで培った蓄電池やモーターの技
術を生かし、すべて独自での開発をめざす。世界の自動車大手が
しのぎを削るEVへの新たな異業種参入で、開発や販売競争は一
段と激しくなりそうだ。
 初代モデルの2020年までの投入を目標に、開発チームの増
強を急ぐ。ダイソン氏は、製品の詳細や販売目標などは言及しな
かったが、他社の既存EVとは「根本的に違ったものになる」と
の見通しを示した。英国のほか世界各地での販売をめざすとみら
れる。    ──2017年9月27日付、日本経済新聞より
                http://s.nikkei.com/2xJUFFM
─────────────────────────────
 日本の自動車業界には、この7月も、英国政府やフランス政府
が2040年までにガソリン車を全廃すると発表し、中国政府も
時期は明らかにしないものの、EVへの完全シフトを宣言し、大
衝撃が走ったばかりです。なぜなら、日本の自動車メーカーは、
EVは製造しているものの、現時点では水素自動車など、正反対
の方向を向いているからです。こういう動きこそデジタルトラン
スフォーメーションであるといえます。
 EVは基本的には「家電」ですから、掃除機メーカーが参入し
てきても何の不思議もないのです。これからも次々といろいろな
企業が参入し、競争はさらに激化するはずです。EVは、ガソリ
ン車ほどの高度な技術は必要がないとされ、最終的には価格競争
になる恐れがあります。トヨタ、日産をはじめとする日本の自動
車メーカーも対応を誤ると、日本の家電メーカーと同じ運命を辿
る可能性があります。それがデジタルトランスフォーメーション
の恐ろしいところです。デジタルトランスフォーメーションは、
既に次の4つの変化を生み出しつつあります。
─────────────────────────────
          1. サービス化
          2. オープン化
          3.ソーシャル化
          4. スマート化
─────────────────────────────
 4変化の説明に入る前に、ひとつお断りしておきたいことがあ
ります。生活やビジネスにおいて、人はさまざまな道具を使いま
すが、そういう道具を「機械」とか「システム」とか「マシン」
とかの言葉で表現します。ここではそういうものを「ICT」と
表現することにします。ICTにはもちろん、AI(人工知能)
などの先端技術を含みます。
 第1の変化は「サービス化」です。
 人は何かを造るために、これまで様々な機械や道具を手段とし
て使ってきましたが、近未来のビジネスでは、モノ作りのほとん
どの工程は、ICTが行うようになり、人はそれ以外のことを担
当するようになります。それが「サービス化」です。
 自動車のタイヤメーカーは、タイヤを製造し、そのタイヤを売
ることで稼ぐビジネスです。しかし、ICTが進化すると、走行
している車のパーツから様々な情報が送られてきて、それらを分
析できるようになります。IoTといわれる技術です。
 例えば、走行中の車のタイヤの空気圧や温度、走行距離などが
リアルタイムにわかると、メーカーは事前に異常を検知できるの
で、ドライバー通知して、事故を起こす前に修理できます。それ
ができるようになると、タイヤメーカーは、タイヤという製品を
売って稼ぐのではなく、安全な走行や、燃費向上(経費削減)の
サービスを提供するサービス業に転換するようになります。
 人々が求めているのは、手段ではなく、結果です。手段を所有
しなくても結果が手に入るのであれば、その方へ需要がシフトす
るのは、自然の流れです。これが「サービス化」です。
 第2の変化は「オープン化」です。
 「オープン化」というのは、情報システムの世界の言葉ですが
ここでいうオープン化とは、特定の企業が占有する技術や製品で
はなく、多くの人がフリー(無料)で関与できる技術や製品のこ
とをいうのです。その代表的なものは、インターネットとそれに
付随する様々ななサービスです。
 インターネットの利用自体は、プロバイダの経費を除くと、ほ
とんどフリーであり、だれでも利用できます。ブログ、フェイス
ブック、ツイッター、インスタグラム、LINEなどのSNSも
フリーで使えます。スマホが普及してからは、これらのサービス
の利用者は激増し、そういう環境のなかで、ウ―バーやエアビー
アンドビーなどのシェアリングエコノミーが育っています。時代
がオープン化を求めているといえます。
 既出の斎藤昌義氏は、オープン化について自著において、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 オープンであることが、もはや社会主義に近い感覚になりつつ
あります。自らがオープンなコミュニティの中で貢献し、リーダ
ーシップを示すことが社会的評価を高め、ビジネスを成功させる
原動力となることを多くの人が受け入れはじめています。
          ──斎藤昌義著『未来を味方にする技術/
  これからのビジネスを創るITの基礎の基礎』/技術評論社
─────────────────────────────
 日本のコマツ、ロールスロイスなどにこのような動きが見られ
ます。4の「ソーシャル化」、5の「スマート化」については、
明日のEJで述べます。 ──[次世代テクノロジー論/07]

≪画像および関連情報≫
 ●デジタルトランスフォーメーションをどう定義するか
  ───────────────────────────
   デジタルトランスフォーメーションという言葉をどのよう
  に定義するか、企業の最高情報責任者(CIO)10人に尋
  ねてみたら、恐らく、10通りの答えが返ってくることだろ
  う。包括的なビジネス変革を促進するためのテクノロジープ
  ロジェクトをいくつも並べているところは大枠として共通し
  ているだろうが、それでもやはり、デジタルトランスフォー
  メーションを定義することは簡単ではない。
   確かにデジタルトランスフォーメーションでは、新たな収
  益源やビジネスモデルを追求するためにテクノロジーをどの
  ように使うかという面を、根底から考え直す必要がある。ま
  た、ビジネスに主眼を置いた哲学と、アプリケーションの高
  速開発のモデルとを組み合わせるという点で、部門間にまた
  がったコラボレーションも必要になる。しかし、多くの企業
  が行っている取り組みは、一見デジタルトランスフォーメー
  ションのようでも、実は、デジタルオプティマイゼーション
  (最適化)であり、新たなデジタルイニシアチブで、既存の
  サービスを充実させているにすぎない。結局、デジタルトラ
  ンスフォーメーションの定義に苦労した人の多くは、最終的
  には「見れば判断が付く」という言い方に落ち着く。
                  http://nkbp.jp/2wqu50B
  ───────────────────────────

ダイソン/マックス・コンツCEO.jpg
ダイソン/マックス・コンツCEO
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2017年10月04日

●「ソーシャル化とスマート化の解明」(EJ第4618号)

 デジタルトランスフォーメーションが起こしつつある4つの変
化を再現します。1と2の説明は終わっています。
─────────────────────────────
          1. サービス化
          2. オープン化
        → 3.ソーシャル化
        → 4. スマート化
─────────────────────────────
 第3の変化は「ソーシャル化」です。
 よくいわれる「ソーシャル化」とは、どういうことを意味する
のでしょうか。定義は次のようになっています。
─────────────────────────────
 ソーシャル化とは、従来はユーザーが単独でそれぞれ利用して
いた機能やサービスに、ネットワークを通じて人と人との双方向
コミュニケーションが図れるソーシャルメディアの要素を加える
ことである。             http://bit.ly/2xUuI66
─────────────────────────────
 これは、ウェブサイト、ブログ、ツイッターの違いを考えてみ
るとわかります。ウェブサイト、すなわちホームページは、その
メッセージは一方的に発信するだけです。
 これに対してブログは、投稿記事に対して返信機能があるので
これを使えば、コミュニケーションがとれます。しかも、そのブ
ログの利用者には、やり取りが公開されているので、誰でもその
やり取りに参加できます。今では当たり前のことですが、当時と
しては画期的なことだったのです。
 ツイッターは、発進できる文字数が140字と限定されていま
すが、ツイートに対しての返信はもちろんのこと、そのまま自分
のフォロワーにリツィートしたり、「いいね」をクリックしたり
して、ツイートを拡散できます。ここまでくると、「人と人との
双方向のコミュニケーションが図れる」ので、ソーシャル化とい
うことができます。同じことができるフェースブック、インスタ
グラム、LINEなどのSNSメディアは多数あり、現代は「人
と人がつながる時代」になっています。
 これは、多くの人がスマホを常備するようになって、実現した
といえます。斎藤昌義氏は、ソーシャル化は「情報の民主化を加
速する」として、次のように述べています。
─────────────────────────────
 インターネットの普及とともにコミュニケーションコストが劇
的に下がりました。また、だれもがスマートフォンを所有し、情
報をその発生源から直接手に入れることができるようになりまし
た。その結果、情報の流通を管理、統制することで権力や富を維
持してきた仲介者はその役割を失いつつあります。インターネッ
トやソーシャルメディア、スマートフォンの普及は、そんな「情
報の民主化」を加速しています。
          ──斎藤昌義著『未来を味方にする技術/
  これからのビジネスを創るITの基礎の基礎』/技術評論社
─────────────────────────────
 インターネットを介して人と人が簡単につながることが実現し
たことによって、これまでの常識では考えられなかった「シェア
リングエコノミー」というサービスが続々と誕生しています。
 例を上げると、車の所有者と、いま車に乗りたい人がつながる
ことで実現した配車サービスの「ウーバー」、印刷機の空き時間
をなくしたい印刷会社と、少しでも安く印刷したい人がつながる
ことで実現した「ラクスル」などがあります。これらは、シェア
リングエコノミーと呼ばれますが、人と人がすぐにつながるソー
シャル化があってはじめて実現したサービスです。
 第4の変化は「スマート化」です。
 最近「スマート」という言葉がよく使われます。「スマート〇
〇」というようにです。スマートフォン、スマートファクトリー
スマートハウス、スマートグリッド、スマートシティ、スマート
デバイスなど、たくさんあります。
 一般的に「スマート」という言葉は、「気の利いた」とか「粋
な」とかいう意味にとらえられています。しかし、辞書をていね
いに見ると、「高性能の」とか「コンピュータ化された」とか、
「ハイテクな」というような意味もあります。
 これによって「スマートフォン」は、高性能のハイテクな電話
という意味になりますし、「スマートファクトリー」は、「賢い
工場」ともいわれますが、「ハイテク化された工場」というよう
に理解できます。
 現在、多くの製品、衣服にしても、バイクにしても、好みの多
様化やカスタマイズ化が起きています。しかし、企業が人の様々
な好みに合わせて、個別に対応することは困難です。
 しかし、IoTによって消費者とメーカーがつながることで、
それは可能になるのです。IoTを活用すると、消費者は、カス
タマイズされた一品ものの製品を、量産品と変わらない価格で買
うことができるようになります。
 消費者からのカスタマイズされた注文を受けた工場のAI(人
工知能)が、必要な組み立て工程を確立し、自動的にラインが組
み替えられて、あたかも量産品が生産されるかのように、カスタ
マイズ製品が出来上がるのです。既出の斎藤昌義氏は、これにつ
いて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 IoTによって収集された「個別な事実」は、人工知能によっ
て分析され、それぞれの事実や意向を汲み取ります。そして、全
体を考慮しつつも可能な限り個別のニーズに対応しようとするで
しょう。さらに、人工知能は大量の「個別の事実」を分析し、新
たな知見、未来予測、最適な判断を促し、私たちの住む現実社会
をより快適にしてくれます。   ──斎藤昌義著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[次世代テクノロジー論/08]

≪画像および関連情報≫
 ●「スマート化」 が進むと世の中はどうなる!?
  ───────────────────────────
   オバマ大統領が2008年の選挙期間中に発表し、大きな
  話題となった「グリーン・ニューディール政策」。これは、
  環境産業によって、経済成長の促進や雇用を生むことを狙っ
  た政策ですが、この中で取り上げられ、一躍脚光を浴びるこ
  とになったのが、「スマートグリッド」です。
   電力の送り方を "賢く" する、この取り組み。必要な時に
  必要な場所だけに電力を送れるようにすることで、効率化を
  図り、省エネを実現します。また、再生可能エネルギーやエ
  コカーの導入を、強力に促進させます。このシステムを支え
  る縁の下の力持ちが、高度な電気・IT技術です。
   電力の供給と需要のバランスを上手にコントロールしたり
  太陽光や風力で発電したエネルギーを貯めておく技術の開発
  が、急ピッチで進められています。また、「スマートオアシ
  ス」といって、電気自動車の充電スタンドの所在地や、空き
  状況を知らせる新しいサービスの提供が始まっています。電
  気やエネルギーのコントロールを新しい方向へ導く「スマー
  トグリッド」。あなたが社会人になるころには、よりエコロ
  ジカルで、「賢く電気を使う」ためのさまざまな仕組みが社
  会に浸透しているはずです。    http://bit.ly/2hGFY07
  ───────────────────────────

シェアリング・エコノミー.jpg
シェアリング・エコノミー
 
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2017年10月05日

●「いまICTを考え直すときである」(EJ第4619号)

 最近の通信技術について書いたり、話したりするとき、ITと
書くべきか、ICTというべきかについて迷います。現在書籍や
テレビなどでは主流はダントツでITです。ITとは、次の英語
の頭文字をとっています。
─────────────────────────────
     IT=Information Technology 情報技術
─────────────────────────────
 この言葉が日本において使われるようになったのは、PCが一
般家庭に普及した1995年頃からです。その頃メールは幅広く
使われていましたが、インターネットは既に日本語対応をしてい
たものの、あまり普及していなかったのです。
 数年が経過して、PCからのウェブサイトの閲覧は当たり前の
ことになり、同時に携帯電話が普及し、携帯電話からもメールが
発信できるようになると、人々は通信とか、それによるコミュニ
ケーションを意識するようになります。ちょうどその頃だったと
思いますが、ITのことを時の総理が「イット」と呼び、話題に
なったものです。
 この時点で既にITは相当浸透しており、ITではなく「IC
T」と呼ぶべきだったのです。ICTは次の英語の省略形です。
─────────────────────────────
 ICT=
 Information and Communication Technology 情報通信技術
─────────────────────────────
 このICTが今や急速に発達しており、世の中を一変しようと
する勢いです。その速度は尋常なほど早いのです。その進化に負
けないように、ICTというものをどのようにとらえればよいか
考えてみる必要があります。
 ここで改めてご紹介したいのは、未来のビジネスについて、I
CTの進化という独自の立場から説いている次の本です。既にこ
こまで何回も所説をご紹介しているネットコマース株式会社代表
取締役の斎藤昌義氏の次の著書です。
─────────────────────────────
                        斎藤昌義著
     『未来を味方にする技術/これからのビジネスを創る
              ITの基礎の基礎』/技術評論社
─────────────────────────────
 この本の特徴は、この本に掲載されている膨大な図表をロイヤ
リティフリーでダウンロードできるという特典がついていること
です。これは大変ありがたいことです。ちなみに、斎藤昌義氏は
ICTではなく、「IT」という表現を使っています。
 斎藤昌義氏は、ICTの役割について、次の4つに分けて説明
しています。
─────────────────────────────
 1.利便性の向上と多様性を支える「道具としてのIT」
 2.    効率や品質を高める「仕組みとしてのIT」
 3.      変革や創出を促す「思想としてのIT」
 4.収益を拡大させ、成長を支える「商品としてのIT」
              ──斎藤昌義著の前掲書より
─────────────────────────────
 斎藤昌義氏によるICTの4つの役割の説明はなかなか意味が
深いのです。以下、そこで斎藤氏の説明を私なりに解釈して説明
することにします。
 第1は「道具としてのIT」です。
 これは理解できます。多くの人はICTを仕事を進めるための
道具として認識しています。一番わかりやすいのは、ワープロ、
表計算、電子メールなどのビジネスソフトです。これを使うこと
によって、仕事の効率や質を確実に高めてくれます。そういう意
味でICTは、ビジネスと一体化しており、不可欠な道具となっ
ています。
 第2は「仕組みとしてのIT」です。
 「仕組みとしてのIT」とは何でしょうか。仕組みについて、
斎藤昌義氏は次のように説明しています。
─────────────────────────────
 そもそも「仕組み」とは、業務の手順を作業単位、すなわち、
「プロセス」という要素に分解し、時間軸に沿って並べたものも
のです。無駄なプロセスを省き、効率の良いプロセスの順序を決
め、だれもが使えるように標準化し、それをコンピュータプログ
ラムに置き換えることで、だれもがまちがえることなく、仕事を
進められるようにします。経理や人事、受注、調達、生産、販売
など、さまざまな業務プロセスがプログラムに置き換えられてき
ました。            ──斎藤昌義著の前掲書より
─────────────────────────────
 「道具としてのIT」と「仕組みとしてのIT」の違いは、前
者がそのスキルを習得するための努力が必要になるのに対して、
後者は手順通りデータを入力すれば、だれでも目的とする処理が
できるという点にあります。
 典型的なものに、新幹線や航空会社の座席予約システムがあり
ます。これは発券処理という業務プロセスにのっとってプログラ
ミングされているので、その手順さえ間違わなければ、誰にでも
操作できます。しかし、現在のシステムでは、顧客が日付や時間
あるいは便数を指定して、早い者勝ちで席を予約できるようなシ
ステムになっており、希望する席──窓際か内側か、2人席か複
数席かの指定は困難なようです。
 しかし、業務プロセスを改善して、事前に自分の希望を入力す
れば、AI(人工知能)によって、その希望に最大限合わせた席
をとることが可能になるはずです。業務プロセスは常に見直され
るべきであります。このような「仕組みとしてのIT」がそれぞ
れの目的に合わせて無数に存在するのです。3と4については、
明日のEJで考えていくことにします。
            ──[次世代テクノロジー論/09]

≪画像および関連情報≫
 ●ITは道具ではなく、レストランのようなサービスである
  ───────────────────────────
   「サービスとは何か」――これは、会社の経営者や組織の
  運営者にとってさえ重要な問題である。利益やコスト削減の
  みを追及し、事業顧客(いわゆるお客様)に対するサービス
  の基本を忘れ、それが露呈した段階で衰退していった会社や
  組織がどれほど多いことか。
   ITが、企業活動において「なくてはならない存在」にな
  って、かれこれ20年ほどが経過した。実際には、ビジネス
  にコンピュータが使われるようになった歴史はもっと長いが
  大企業がホストコンピュータやオフコンと呼ばれるシステム
  を本格的に導入し始めたのが1980年頃、中堅企業がウイ
  ンドウズシステムを中心としたクライアント/サーバシステ
  ムを導入し始めたのが1980年後半、と考えればそんなも
  のだろう。しかしこの20年間、IT資産(ハードウェアや
  ソフトウェアなど)はビジネスにおける「道具」と思われて
  きた。机やイス、ペンやノート、そろばんや電卓、電話やF
  AXなどと同じ「ビジネスに必要な道具」だという扱いを受
  けてきたのである。そのためITシステムの開発は「ビジネ
  スに便利な道具を開発する」という考え方の元に行われてき
  たし、導入したITシステムの運用も「ビジネスに便利な道
  具の使い勝手をメンテナンスする」というアプローチで進め
  られてきた。その考え方は、おそらく、歴史の途中までは正
  しかったのだろう。       http://dell.to/2xXJby1
  ───────────────────────────
 ●図形の出典/http://bit.ly/2g5X5qQ 

道具としてのITと仕組みとしてのIT.jpg
道具としてのITと仕組みとしてのIT
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2017年10月06日

●「『思想としてのICT』を考える」(EJ第4620号)

 昨日のEJで取り上げた「ICTの役割」を再現します。1と
2についての説明は終わっています。今回は、3について考える
ことにします。
─────────────────────────────
  1.利便性の向上と多様性を支える「道具としてのIT」
  2.    効率や品質を高める「仕組みとしてのIT」
 →3.      変革や創出を促す「思想としてのIT」
  4.収益を拡大させ、成長を支える「商品としてのIT」
                     ──斎藤昌義著
    『未来を味方にする技術/これからのビジネスを創る
             ITの基礎の基礎』/技術評論社
─────────────────────────────
 第3は「思想としてのIT」です。
 思想としてのIT──これはどういう意味でしょうか。
 実は「思想としての〇〇」という表現は、実はよくあることな
のです。一番印象に残っているのは次の本です。
─────────────────────────────
           西垣通著/1997年5月
     『思想としてのパソコン』/NTT出版
─────────────────────────────
 この本が出版されたのは1997年5月です。日本では、マイ
クロソフトから「ウインドウズ95」が発売されたのが1995
年11月であり、これを契機に一般家庭にPCが、いささかオー
バーな表現ながら、怒涛のように普及し、一大PCブームが盛り
上がっていたときです。これと並行して、インターネットも利用
者が急増していたのです。
 『思想としてのパソコン』は、人とコンピュータの関係を研究
するキーマンであり、現代のICT社会を予告するような7人の
学者の先駆的な論文を紹介しています。「メメックス」というマ
シンを提唱したヴァネヴァー・ブッシュ、マウスの開発者として
知られ、現代のウインドウズのようなGUI──グラフィカル・
ユーザー・インターフェイスを実現したダグラス・エンゲルバー
ト、電子マネーや暗号通貨につながる概念に言及したフィリップ
・ケオーなど、錚々たる学者の論文が7つ紹介されています。論
文そのものなので、いささか堅いですが、きわめて興味深い内容
の本であるといえます。
 最初に紹介されているヴァネヴァー・ブッシュの提唱する「メ
メックス」の構想は次のようなものです。
─────────────────────────────
 ブッシュが描いた連想の航跡は、リンクによって鎖のようにつ
ながれた一連のマイクロフィルムのコマであり、これは格納され
ている順番とは全く関係ない。そこに個人的なコメントや枝分か
れした航跡を付属させることもできる。当時ブッシュは情報の索
引付けの方法を制限と考えており、人間の脳内で行われている連
想と似たような情報蓄積方法を提案したのである。
                   http://bit.ly/2xfRcuH
─────────────────────────────
 このヴァネヴァー・ブッシュの構想は、後のハイパーテキスト
という概念の先駆けであり、これがベースになってウェブサイト
が実現しています。また、インプットした文書の検索やタグ付け
などの機能をひとつの装置が持つというイメージは、現代の「エ
ヴァノート」のアプリを連想させます。驚くべきことはブッシュ
がこの論文を発表したのが1945年(昭和20年)であること
です。その頃からこんな凄い思想があったのです。
 この本で紹介されているひとりであるダグラス・エンゲルバー
トは、まさに現代のPCの使い方を1968年に次のようなプレ
ゼンをしています。これは大変有名なプレゼンです。
─────────────────────────────
 コンピュータの画面の前に座った人間が、画面上の複数のグラ
フィカルな「ウィンドウ」を見比べながら、マウスやキーボード
を使って文章をリアルタイムに編集する。そして作成した文書を
遠隔地のコンピュータに送る。いまではごく当たり前の操作方法
だが、そのルーツはこのときのプレゼンにある。エンゲルバート
のプレゼンが、その後のコンピュータ開発に与えた影響は計り知
れない。現代を生きる私たちにとってなじみ深い「パソコン(パ
ーソナル・コンピュータ)」も、エンゲルバートなくしては考え
られない。                 ──鈴木幸一著
            『日本インターネット書記』/講談社
─────────────────────────────
 世の中を一変させるようなある画期的なマシンや技術が発表さ
れたとき、それらの本質を見抜いて、将来それが人々の生活にど
のような影響を与えるのかについて考える必要があります。どの
ような時代でもそういうことを研究する人はいるものです。こう
いう視点が斎藤昌義氏のいう「思想としてのIT」の視点ではな
いでしょうか。ICTこそ、確実に未来を変えるテクノロジーで
あると考えるからです。
─────────────────────────────
 ITは既存の常識を破壊し、「以前はまったく夢物語だったけ
ど、いまではかんたんにできること」を増やし続けています。そ
の新しい常識でものごとを考えるとき、これまでとは違う解釈や
発想が生まれてきます。そんな「思想」という役割をITは担っ
ているのです。「思想としてのIT」は、ビジネスを変革させ、
新たなビジネスを創出する原動力となります。
                ──斎藤昌義著の前掲書より
─────────────────────────────
 すべてのビジネスプロセスをICTが行うことを前提としても
のごとを考えると、今までの常識が覆ります。その非常識な発想
をベースにものごとを考えると、新しいアイデアが生まれてくる
のです。それが「思想としてのIT」です。4は10日のEJで
取り上げます。     ──[次世代テクノロジー論/10]

≪画像および関連情報≫
 ●マウスを発明した男、ダグラス・エンゲルバート
  ───────────────────────────
   エンゲルバートが抱いていた思いは、人間と技術の進歩の
  調和がずれ始めているということだった。電話やテレックス
  のネットワークは世界中に広がり、情報は瞬時にやりとりが
  できるようになっている。印刷のコストは下がり、大量に情
  報を印刷して配布することも可能になった。そして、電子計
  算機が登場し、複雑な計算も瞬時に行えるようになった。し
  かし、一方で人間はどうだろうか。テクノロジーは急速に進
  化しているのに、人間はまったく進化していない。これでは
  いずれ、人間がテクノロジーの進化に置いて行かれてしまう
  のではないか。
   そうならないためには、人間が進化しなければならない。
  しかし、生物としての進化は、簡単なことではないので、情
  報機器を使いこなすようにして、情報武装しなければならな
  い。そのためには、電子計算機を利用するのが最も適してい
  る。紙とペン、電話は確かに人類が発明した素晴らしい道具
  ではあるが、それでだけでは情報化社会は実現できない。エ
  ンゲルバートはそう感じていた。だが、その電子計算機にも
  問題がないわけではない。複雑な計算ができる計算機として
  は優秀だったが、人間が使う道具として見るとまだまだ至ら
  ないところが多かった。エンゲルバートが特に問題にしたの
  が、リアルタイムと協働作業だ。  http://bit.ly/2xgko9L
  ───────────────────────────

ダグラス・エンゲルバート.jpg
ダグラス・エンゲルバート
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2017年10月10日

●「『商品としてのIT』を検討する」(EJ第4621号)

 「ICTの役割」を再現します。今回は4について考えます。
1〜3については、既に説明は終わっています。
─────────────────────────────
  1.利便性の向上と多様性を支える「道具としてのIT」
  2.    効率や品質を高める「仕組みとしてのIT」
  3.      変革や創出を促す「思想としてのIT」
 →4.収益を拡大させ、成長を支える「商品としてのIT」
                     ──斎藤昌義著
    『未来を味方にする技術/これからのビジネスを創る
             ITの基礎の基礎』/技術評論社
─────────────────────────────
 最初にこれまでのところを振り返ります。当初「機械化」と呼
ばれる変化があったのです。人間のやれることを機械に置き換え
る変化です。典型的なものに「給与計算の機械化」があります。
 かつて給料日には、人事部の給与係は社員一人一人の給与をソ
ロバンをはじいて給与明細書を作成し、これに基づいてお札を数
えて給与明細書と一緒に給与袋に入れ、それを本人に配っていた
のです。たくさんの社員のいる大企業では、これは想像を絶する
大作業だったといえます。
 しかし、給与計算業務はコンピュータによって機械化され、銀
行振り込みになると、給与計算業務という大作業は完全に消滅し
たのです。これは、今まで人間がやっていた業務を機械(コンピ
ュータ)に置き換えたことによる変化です。当時、ICTという
言葉はありませんでしたが、これは、業務プロセスを機械化する
「仕組みとしてのIT」といえます。
 この「仕組みとしてのIT」は、コンピュータの進化によって
その適用範囲を広げていきます。人間が行う業務をプロセスに分
解し、それぞれ無駄を省いて標準化し、プログラムに置き換える
作業が進んだのです。
 しかし、この時点では、コンピュータはメーカーや企業に存在
するマシンであり、それを扱える人はごく一部のエンジニアに限
られていたのです。しかし、技術革新によってコンピュータが小
型化してPCになり、価格も下がって誰でも購入できるようにな
ると、企業にはPCが導入され、人々はそれを道具として使い、
自分に与えられている業務をPCで効率的に処理したり、その出
来栄えをよくするように使い始めます。このようにして、「道具
としてのIT」が普及するようになります。
 エクセルを使って業務計算を行い、ワードで業務文書を作成し
パワーポイントでプレゼンテーションをしたりすることが、業務
上当たり前になります。このような状態がしばらく続くと、2つ
の変化が起こります。1つは、ITの需要の高まりは、テクノロ
ジーの変化を促し、インターネットやクラウドの進化によって、
PCは高度な通信機能を有し、なくてはならないものになったの
です。もう1つは、携帯電話が進化してスマホになり、多くの人
が持つようになったことです。この時点で、ITは「ICT」に
変化したといえます。
 このような時代になると、人々は従来とは違う新しい常識を持
つことが求められます。この新しい常識というか思想によって、
企業は新しいビジネスモデルを生み出すことができるようになり
それによる競争が激化してきたのです。それが「思想としてのI
T」です。つまり、ICTはこれまでの閉じた世界から飛び出し
て、日常生活や社会にさまざまな変化や影響を与える「思想とし
てのIT」の役割を持つようになったのです。
 こうした変化の後に「商品としてのIT」が登場します。つま
り、ICTそれ自体が商品となって、お金を稼ぐ存在になったこ
とを意味します。ここで、改めてスマホについて、考えてみる必
要があります。「機械」とは何でしょうか。
─────────────────────────────
 機械とは、その性能や機能が購入時よりも、進化することの
 ないマシンである。
─────────────────────────────
 家電製品についても車にしても、およそ機械というものは、購
入時の性能や機能はそのままであり、故障や劣化によって、低下
することはあっても、進化することはあり得ないのです。これが
機械というものの本質です。
 しかし、スマホというマシンは、購入時よりも性能はそのまま
ですが、機能が向上する性格を持つのです。それはある意味にお
いて「理想のマシン」であるといえます。スマホの機能は、次の
ようにあらわすことができます。
─────────────────────────────
    スマホ=ファームウェア + アプリケーション
─────────────────────────────
 スマホは、入手した時点では基本的機能しか付いていないので
す。これを「ファームウェア」といいます。このファームウェア
に自分が使いたいアプリケーション(アプリ)をメーカーが開設
している市場から購入して、機能を追加することができます。こ
れによってスマホの機能は、購入後に機能が向上していきます。
こういうマシンは、PC以外はこれまで存在しないのです。
 このスマホ用のアプリは、無料のものもありますが、有料のも
のは商品であり、「商品としてのIT」そのものです。総務省の
調査によると、スマホ向けのアプリやコンテンツは、2014年
度には390億ドルに達しており、2018年度には770億ド
ル規模にまで拡大するといわれる巨大市場です。
 日本でいうと、国民の70%以上が既にスマホを保有しており
最近では高齢層まで拡大しているので、当然のことながら、スホ
マアプリやコンテンツ市場は拡大しています。スマホには、アイ
フォーンとアンドロイドがありますが、日本は、世界で唯一アイ
フォーンとアンドロイドが半々の国です。他国ではアンドロイド
のシェアが上であり、それほど日本はアップルファンが多い国で
あるといえます。    ──[次世代テクノロジー論/11]

≪画像および関連情報≫
 ●「商品としてのIT」の狙い目/斎藤昌義氏
  ───────────────────────────
   2009年、インターネットにつながっていたモノは25
  億個あったとされていますが、2015年には180億個に
  そして2020年には500億個に達するであろうという予
  測があります。IoTはそんな勢いで市場を急速に拡大しつ
  つあります。加速度を増して拡大するIoT市場は参入を検
  討するに値する市場であると考えます。
   急速に拡大する市場への参入は技術も未成熟で変化も早く
  その動きに追従し、さらには先取りして取り組むことは容易
  なことではありません。また、そこで使われている様々な技
  術が将来生き残るかどうかも市場の評価が固まっていない段
  階ですから、リスクがあります。一方で、市場に加速度があ
  りますから、ちょっとしたアドバンテージが短期間で大きな
  差を生みだす市場でもあるのです。
   新しい事業は、このような市場の加速度があるところに着
  目すべきです。既に確立された大きな市場は強豪がひしめい
  ています。そのような市場で闘うことは容易なことではなく
  先行企業の圧倒的な競争力で潰されるか価格競争を強いられ
  るかのいずれかであり、ビジネスとしてのうまみはなかなか
  得られません。いまは規模が小さくても加速度のある市場に
  いち早く参入することです。自分たちが未熟であってもお客
  様も競合他社も未熟です。だからこそ、ITの動向を見据え
  て自分たちだけでやろうとはせず、オープンにできる人たち
  を巻き込むことです。そうやって一歩先んじることで市場で
  のイニシアティブを確保することができるのです。
                   http://bit.ly/2y2wAYC
 ●図形の出典           斎藤昌義著/技術評論社
               『『未来を味方にする技術』』
  ───────────────────────────

商品としてのITの生まれた背景.png
商品としてのITの生まれた背景
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2017年10月11日

●「IoTがビジネスを大変化させる」(EJ第4622号)

 2015年3月のことです。米テスラ・モーターズの電気自動
車「モデルS」に乗っていたAさんは、車内にある大きなディス
プレイに次の表示が載ったのを確認します。
─────────────────────────────
 ソフトウェアアップデートがあります。今すぐアップデート
 しますか。[YES]「NO」
─────────────────────────────
 車を止め、「YES」をタップすると、直ちにワイヤレスで通
信が始まり、約10分でアップデートが完了します。テスラの場
合、ソフトウェアアップデートとは機能追加を意味します。今回
バージョン6・2で追加されたのは、自動緊急ブレーキや安全な
車線変更をアシストする機能です。
 このように、テスラでは、車を購入後もモデルSを自動運転車
へと進化させる機能を追加させる方針なのです。既に述べている
ように、「機械とは、その性能や機能が購入時よりも、進化する
ことのないもの」のはずですが、テスラは「進化する車」を目指
し、それを可能にさせつつあります。
 このテスラのサービスを可能にしている技術が「IoT(アイ
オーティー)」です。IoTとは(Internet of Things)のこと
で、次のように定義されます。
─────────────────────────────
 IoTというのは、無線タグ、センサー、MEMS(メムス)
などを使い、コンピュータを通じて、ネットとやり取りをする、
モノのネットワークのことである。
 MEMS=Micro Electrical Mechanical System. 微小電気機
械システム ──大前研一著『IoT革命/あらゆるものがイン
  ターネットにつながる時代の戦略的発想』/プレジデント社
─────────────────────────────
 従来のインターネットの世界は、人がPCやスマホなどのIC
T機器を使ってつながる「PtoM」だったのですが、IoTの時
代は、人ではなく、インターネットによって、モノからモノにつ
ながる「MtoM」の時代であるといえます。
 このIoTの実験を日本で一番早くやった人がいます。日本の
インターネットの父といわれる慶応義塾大学環境情報学部の村井
純教授です。実験が行われたのは1990年のことであり、Io
Tという言葉がなかった頃の話です。
 村井教授のやった実験は、名古屋のタクシー会社のタクシーの
ワイパーにIPv6アドレスを割り当て、動作状況をインタネッ
ト経由で受け取れるようにしたのです。IPv6アドレスは、現
在のIPv4アドレスがなくなったときに使われるものですが、
既に使えるようになっており、実験などでよく使われています。
 なぜ、ワイパーなのかというと、ワイパーが動くというのは、
雨が降っていることになるからです。しかも激しく動いていれば
大雨が降っていることをあらわしています。
 したがって、車にGPSを搭載していれば、どの地域に雨が降
っているかわかるわけです。したがって、雨になると、タクシー
の需要が増えるので、その方向に移動すれば、効率的に営業がで
きることになります。
 しかし、その実験には大変なコストがかかり、研究予算をすべ
て使い果してしまったそうです。村井教授は、この実験について
次のように述べています。
─────────────────────────────
 名古屋で1500台のタクシーにGPSを搭載してもらうこと
にしたのですが、当時のGPSの価格は1台40万円。これが、
1500台分ですから40万円×1500台=6億円。さらに、
パケット代などがかかるためこれだけで20億円の研究予算のう
ち、10億円以上が消えてしまいました。ちなみに、現在であれ
ばGPSにかかる費用は必要ありません。すでにGPSはみなさ
んのスマートフォンに入っているではありませんか。ハードウェ
アは実質タダ同然になるというのは、まさにこういうことなので
す。また、こういう実験を行うことが明らかになると、すぐに警
察からクレームがきました。車のスピードがわかるとどこの道路
が渋滞しているかが明らかになる、そういった情報を民間がもっ
てはいけないというのです。
 ちなみに、農業を行う上で、大事なのは明日の天気ですが、そ
れをIoTでわかるようにしようとすると、やはり当局から怒ら
れます。明日の天気の予測は気象法に触れるからです。だから、
どうしてもこれをビジネスで行いたいのであれば、まず私たちと
共同研究にしてください。それで、いざというときは大学側が責
められるという仕組みをつくっておけば安心というわけです。
                ──大前研一著の前掲書より
─────────────────────────────
 それにしても当時40万円もしたGPSが、現在ではスマホに
タダ同然に付いているのです。しかも、現在のスマホの性能は、
5年前のスーパーコンピュータと同等といわれます。そういう高
性能のコンピュータを国民の70%が肌身離さず持ち歩いていま
す。こういうことはこれまでは考えられなかったことであり、こ
ういう時代に従来の常識でものごとを考えると、完全に事態を読
み違えてしまいます。
 そういう意味で現代のビジネスパーソンは、従来の常識にとら
われない、新しいコンセプトでものごとを考える「思想としての
IT」を持つべきです。しかし、そういうコンセプトでものごと
を考えられる人材はまだ非常に少ないといえます。
 そういう間にも、今まででは絶対に成立しなかったビジネスが
続々と誕生しています。モノを売らない製造業、既存の業界秩序
を破壊するシェアリングエコノミー、既得権益の壁を崩壊させる
フィンクテックなど。ICTの進化がもたらす社会、ビジネス世
界には、いま劇的な変化が起こりつつあります。そしてその変化
の速度はAIが加わって非常に加速しているのです。
            ──[次世代テクノロジー論/12]

≪画像および関連情報≫
 ●IoTによる4つの影響力
  ───────────────────────────
   IoTが社会に導入されることにより、大きく発展、変化
  するものに次の4つが挙げられる。
   ◎製造業のサービス業化
   ◎リアルタイム化
   ◎需要と供給の最適化
   ◎マスカスタマイゼーション
   まず、製造業のサービス業化はIoTの大きな変化として
  一番挙げられるものである。製造業の方は今も昔も何らかの
  モノを製品として製造している。これまではユーザに対して
  そのモノを作って販売するところまでが製造業の仕事であっ
  た。しかし、IoTになれば話が違う。製造業の方が作るモ
  ノもまたインターネットにつながるのだ。そうなると、消費
  者にモノである商品が手渡った後でも、モノから発せられる
  データから、そのモノの状況が把握できるのだ。そうなると
  製造業の方が、壊れそうなのか、安全に使用されているかな
  どが把握できることとなる。モノがインターネットにつなが
  ることによって知り得たこれらの情報に対して、何かをサポ
  ートできるならば、ユーザにとってとても大きなメリットと
  なる。うまくやれば、ユーザが気づく前に、ユーザが安心し
  てそのモノを使うためのアフターサービスをすることができ
  るというわけだ。製造業はモノを作るだけで終わっていたの
  が、ユーザが満足してそのモノを満足して使用できる環境を
  提供するサービス業として生まれ変わるのだ。
                   http://bit.ly/2y9AAYY
  ───────────────────────────

テスラ/モデルS.jpg
テスラ/モデルS
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2017年10月12日

●「イメルトが目指したGEの大変革」(EJ第4623号)

 大前研一氏によると、大企業はIoTに対応できないといって
います。自動車の所有者と自動車に乗りたい人がつながることで
実現した配車サービスのウーバー(Uber)──このアイデアを大
企業で実現させることはきわめて困難であるとして、大前研一氏
は次のように述べています。
─────────────────────────────
 もし、三菱自動車がこのウーバーのアイデアを思いつき、事業
化を試みても、関係者に説明するだけで5年、実現するには一世
紀かかるのではないだろうか。会社というのは、ストレッチでき
ないと思った方がよい。大企業でIoTに取り組むのであれば、
柔軟な頭をもった3人をピックアップし、半年に一回だけ報告す
るという条件で、あとは自由にさせるといった方法くらいしかな
いのである。──大前研一著『IoT革命/あらゆるものがイン
  ターネットにつながる時代の戦略的発想』/プレジデント社
─────────────────────────────
 大前研一氏のこうした厳しい主張にもかかわらず、唯一の例外
があります。世界に冠たる米国の製造業の巨人、ジェネラル・エ
レクトリック(GE)です。その立役者は、この8月1日付で退
任したCEOのジェフリー・イメルト氏です。
 イメルト氏は、2001年から2017年までGEのCEOを
務め、世界で一番激しい変革を断行した経営者です。2014年
10月にイメルトCEOは、次の発言をしています。
─────────────────────────────
 前夜、工業会社として眠りに就き、翌朝起きると、ソフトウェ
ア解析の会社になっているかもしれない。全ての工業会社は、ソ
フトウェア会社への劇的な転身を図らないと生き残れない。
           ──ジェフリー・イメルトGM/CEO
─────────────────────────────
 GEという企業は、ジェネラル・エレクトリックという名前か
らもわかるように製造業として発展してきた企業です。しかし、
イメルト氏の先代CEOであるジャック・ウェルチ氏の時代には
単なる製造業を脱却し、金融やメディア事業なども抱える超コン
グロマリットとして大きく成長してきたのです。つまり、製造業
からの変身に成功し、GEは大きく発展しています。
 ところがイメルトCEOはこの路線を大胆に変更し、2015
年4月に重大な発表を行っています。それは、金融事業からの実
質撤退と製造業への回帰です。だが、「製造業への回帰」といっ
ても過去のようなアナログな工場へ戻るのではなく、ソフトウェ
アに徹底的に注力することで、製造業を次のレベルに進化させる
ことをGEは狙っているのです。その具体的な目標として、イメ
ルトCEOは次の目標を掲げています。
─────────────────────────────
 2020年までにGEは、世界トップ10のソフトウェア会
 社を目指している。         ──イメルトCEO
─────────────────────────────
 具体的にいうと、2015年10月に設立してわずか4年のソ
フトウェア部門を「GEデジタル」として統括部門に昇格させ、
上記のように2020年までに世界トップ10入りを目指すと宣
言したのです。
 GEといえば、米国東海岸出身の伝統的企業ですが、2011
年にサンフランシスコ国際空港から車で約40分のところにある
ICT企業の聖地、シリコンバレーにソフトウェア部門をゼロか
ら立ち上げ、わずか4年間で、社員を1200人以上に増やした
のです。つまり、ICTに強い人材を求めて、シリコンバレーを
本拠地にし、実際にグーグルやフェイスブックなどからも多くの
人材を採用して技術陣を固めています。
 イメルトCEOは、どうしてこのような大転換を決断したので
しょうか。
 それは2009年のちょっとした会話でヒントを得たといわれ
ています。イメルト氏は、ニューヨーク州ニスカユナにあるGE
のグローバル・リサーチセンター本部で、科学者たちと会話をし
たとき、航空エンジンへのセンサー埋め込みの効果についての話
を聞いたのです。ある科学者は、イメルトCEOに、次のように
力説したといいます。
─────────────────────────────
 航空機エンジンは単に飛行機を飛ばすだけではありません。ひ
とたび回転をはじめると数兆バイトものデータを生成し、信じら
れないほど価値のある、エンジン内部の動作状態を覗き見られる
「窓」を与えてくれるのです。そこから得るインサイトを活用す
れば、エンジンのオペレーションを最適化したり、将来のより優
れたエンジンの開発につなげることも可能なのです。
                   http://bit.ly/2kF5ELA
─────────────────────────────
 この会話がヒントになって、イメルトCEOは、GEをまった
く新種の企業に変革させようと考えます。目指したのは、デジタ
ル・インダストリアル・カンパニーです。GEの専門分野である
産業分野の機器設備をネットワークにつなげることによって、生
産性の天井を解き放そうというのです。ハードとソフト──この
一見正反対に見える両者を融合させようというわけです。
 このときから8年間、イメルトCEOは、この一大テーマに取
り組み、GEをソフトウェア会社に転換させつつあります。しか
し、2017年8月1日をもって、イメルト氏は、CEOをジョ
ン・フラナリー氏に引き継ぐと宣言し、自身は会長に退いたので
すが、その会長職も10月2日には退任しています。この原因は
どうやら株価の低迷にあるといわれます。イメルトCEOの就任
時には40ドルであった株価は、最近は30ドル前後に低迷して
います。
 しかし、変革の方向性は間違っておらず、明日のEJでは、G
Eの変革の具体的内容について述べることにします。
            ──[次世代テクノロジー論/13]

≪画像および関連情報≫
 ●「GEになれなかった東芝」
  ───────────────────────────
   GEになれなかった東芝という記事が日経ニュースメール
  で配信されたので開いてみると有料の講演なので興ざめした
  が、あまりにも分かりやすい話なので興味がわいた。私は東
  芝の仕事を何回かしたことがあった。その頃はまだ、東芝は
  元気な頃で昨今のような状態になるなど誰しも想像が出来な
  い時代であった。
   いくつかの事業部の仕事をした記憶があるが、一番スマー
  トだったのは医療チームからの仕事であった。CTスキャナ
  のネーミングシステムの依頼でネーミングとシステムを提案
  した。担当者はアウトプットのイメージとゴールを持ってい
  たようだったのでわれわれを上手くハンドリングして双方満
  足いく結果を出してプロジェクトは終了した。そのプロジェ
  クトは海外の市場向けのブランド開発だったので、厳しい商
  標チェツクをクリアした結果、大きな売上結びついた。今回
  の東芝の問題でいまでも医療部門は黒字を出している部門と
  聞いたが、当時の印象からすると当然のような気がした。
  その反対だったのはパソコン関連のプロジェクトであった。
  どんな内容だったか詳細は忘れてしまったが、スタッフの一
  人はわれわれのような外部のコンサルが入るのが気にいらな
  かったようで、提案するものに何かとケチを付けられた。挙
  句の果ては同じ課題を自分もやってのけて、自分の方がいい
  提案だというようなことをプロジェクト進行中に、やり始め
  た。考えてみれば随分と無駄なことをやっているプロジェク
  トであった。           http://bit.ly/2gu1p0Z
  ───────────────────────────

ジェフ・イメルト氏/ジョン・フラナリ氏.jpg
ジェフ・イメルト氏/ジョン・フラナリ氏
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2017年10月13日

●「GEは変革で何を目指しているか」(EJ第4624号)

 GEが力を入れているのは、IoTのプラットフォーム「プレ
ディックス」です。プレディックスで、GEと米マイクロソフト
社は提携しており、プレディックスは、マイクロソフト社のクラ
ウラドサービス「アジュール」経由で提供されます。
 このプレディックスによって、航空エンジンから、風力発電装
置、石油掘削装置、医療機器のMRIなど、GEの持つあらゆる
産業機器がつながるのです。
 GEは、1980年〜90年代に単に重電製品を製造して売る
業態から、保守点検のサービス事業に踏み出し、サービスを充実
することによって利益率を高めていたのです。それをさらに高め
るのが、ソフトウェアを通じた新しい価値の提供です。
 当時CEOのジェフ・イメルト氏による変革で最もわかりやす
いのが航空機部門への取り組みです。GEは航空エンジンでトッ
プシェアを誇り、2万5000基が世界の航空会社で採用されて
います。これは、2秒間に1回、GEエンジンを搭載する飛行機
が離陸する計算になります。
 ボーイング787というと省エネで有名ですが、これには「G
Enx」というGEの最新鋭のエンジンが搭載されています。こ
れには26個のセンサーから、毎秒5000種類のデータが取得
可能です。米国の西海岸から日本までの飛行中に収集されるデー
タは、実に15億個、容量でいうと、512GBもあるのです。
 しかし、これらの膨大なデータは、これまではすべて捨てられ
ていたのですが、それらのデータを飛行中にリアルタイムに把握
することができれば、GEはそれらのデータを解析して、安全な
飛行に活かす技術を持っているのです。
 たとえば、飛行中の航空エンジンの摩耗や損傷をモニタリング
することで、摩耗率を正確に予測し、その寿命を知ることができ
ます。これに加えて、これまでは飛行距離を基に予測するしかな
かったオイル交換の時期も、飛行エリアや飛行方法を機体ごとに
正確に把握できます。
 これについて、GEの航空部門のディブ・バートレットCTO
は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 医者が体温や心拍数を測るように、これらのデータを通してわ
れわれは飛行機の状況をリアルタイムで知ることができる。エン
ジンの状態を正確に把握することで、欠陥便の減少や燃料の節約
さらに無駄な整備時間の減少ができ、10億円単位のコスト削減
ができる。  ──ディブ・バートレットGEの航空部門CTO
       『週刊ダイヤモンド』/2015年10月3日号
─────────────────────────────
 これによってGEのビジネスは、単に航空機エンジンを製作し
ている売るモデルから、航空会社の安全とコスト削減を約束する
総合的なサービスモデルに転換したことになります。
 これらのGEのIoT戦略は、現在のところは顧客サービスの
強化が主目的ですが、今後はエンジンの開発にも活かされる可能
性があります。GEソフトウェアのグレッグ・ペトロフ最高経験
責任者は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 飛行機は、飛ぶエリアによって、ダメージや摩耗が異なる。そ
うしたデータが集まれば、今後は運航する会社によって、エンジ
ン素材も変えていくかもしれない。
           ──グレッグ・ペトロフ最高経験責任者
       『週刊ダイヤモンド』/2015年10月3日号
─────────────────────────────
 グレッグ・ペトロフ氏がいっているのは、例えば、中国の空を
飛ぶと、大量の煙を吸い込むし、中東の空は、砂漠によって砂が
入る。これによるエンジンの損傷のデータを集めて分析し、エン
ジン開発に活かそうというのです。航空エンジンひとつとっても
従来はできなかったサービスがこれだけ可能になるのです。
 元シスコシステムズの副社長を務めていたビル・ルー氏をGE
に引き抜き、GEのデジタル戦略をまかせたのは、ジェフ・イメ
ルト前CEOです。ビル・ルー氏は、GEソフトウェアをシリコ
ンバレーにゼロから立ち上げた立役者です。ビル・ルー氏はIo
Tで成功するには、シリコンバレーのスピードに学ぶ必要がある
と次のように述べています。
─────────────────────────────
 IoT時代の改革で何よりも重要なのは、スピードです。今は
製造業もシリコンバレーのスタイルで動かなければ生き残れませ
ん。いきなり完成形を提示するのではなく、まずやってみて、失
敗から学習し、もう一度やり直すというプロセスを、他社を引き
離すまで繰り返すのです。日本でのソフトウエア販売でソフトバ
ンクと提携したのも、彼らにこのスピードがあるからです。
 プレディックスは日米や中国、独仏など産業国にまず需要があ
ると思っています。  ──ビル・ルーGE最高デジタル責任者
       『週刊ダイヤモンド』/2015年10月3日号
─────────────────────────────
 しかし、ジェフ・イメルト前CEOは、製造業をソフトウェア
企業に変身させるために、稼ぎ頭の金融事業を売却しなければな
らなかったのです。しかも、GEの金融事業は、20世紀最大の
経営者といわれるジャック・ウェルチ元CEOが築いたビジネス
モデルであり、なかなかできる決断ではなかったのです。
 2015年7月9日、東京・六本木のグランドハイアット東京
には、GEジャパンの社員が250人集まっていたのです。来日
したイメルト氏は、「本当に売ってしまうのですか」と聞かれる
と、涙を浮かべ、次のようにいったといわれています。
─────────────────────────────
      GEは変わらなければならないのです
             ──ジェフ・イメルトGE・CEO
─────────────────────────────
            ──[次世代テクノロジー論/14]

≪画像および関連情報≫
 ●GEの変身/「募るアイデア賞金は2億ドル!」
  ───────────────────────────
   「クラウド・ソーシング」という言葉をご存じだろうか。
  クラウドは今はやりの「雲」(クラウド)ではなく、群衆の
  のこと。「ソーシング」はアウトソーシングのソーシングで
  調達を意味する。意訳すれば、「どこの誰だか分からない群
  衆から何かを調達する」とでもなるだろうか。
   米ゼネラル・エレクトリック(GE)が企業にとって最も
  大切なモノをクラウド・ソーシングするという。最も大切な
  モノとは、価値を生むための「新しいアイデア」だ。
   GEのジェフ・イメルト会長は2010年7月13日、米
  シリコンバレーの地で、スマートグリッド「次世代送電網」
  についてアイデアを世界中から募り、優れたものには総額2
  億ドル(約174億円)の賞金を与えると発表した。
   東京でも日本GEが7月14日、スマートグリッドをめぐ
  るシンポジウムを開催した。冒頭あいさつに立った日本GE
  の藤森義明社長は「スマートグリッドがらみで面白いアイデ
  アがあっても、研究資金がないといった理由でそのまま眠っ
  ているモノも多いはず。大学の研究室やものづくり系の企業
  の皆さんから、積極的な応募を期待したい」と呼びかけた。
  GEといえば創業者のエジソン以来、電力システムの開発で
  は世界のトップを走ってきた。そんな名門企業がどこの誰と
  も知らない人からなぜアイデアを募るか。
                http://s.nikkei.com/2i2rBTK
  ───────────────────────────

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ビル・ルーGE最高デジタル責任者
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2017年10月16日

●「IoTのキーデバイス/センサー」(EJ第4625号)

 IoTに不可欠なものの一つに「センサー」があります。現在
あらゆる機器やシステムのなかにセンサーは組み込まれ、データ
を発信し、IoTを実現しています。
 ところで、センサーとは何でしょうか。
 ごく身近なところににあります。「iPhone 7 Plus」 には10
種類15個のセンサーが搭載されています。これらのセンサーか
ら取り込むデータをいくつか上げると、操作用ジェスチャー、映
像、音声、指紋、加速度、角速度、地磁気、気圧、近接物、環境
光と多岐にわたります。
 これに加えて、位置を測っているGPSも、センサーとして使
われています。その内部に組み込まれた半導体チップのなかにも
温度や電流、電圧を測るセンサーが組み込まれているからです。
アイフォーンに限らず、およそスマホというものは、センサーの
集合体のようなものです。
 このセンサーのお蔭で息を吹き返した企業があります。ソニー
です。証券業界がみるソニーの2017年の予想営業利益は50
70億円。これは20年来の高水準になります。2017年5月
29日、ブルームバークはソニーついて次の報道をしています。
─────────────────────────────
 ソニーが今年の業績向上を壮語する理由は、スマートフォンな
どに使われるイメージセンサー市場の好況のおかげだ。イメージ
センサーは、コンソールゲーム機の「プレイステーション4」と
ともにソニーの業績を牽引する見通しだ。スマートフォン用カメ
ラに使われるイメージセンサーは人の表情など被写体の動きを感
知して撮影できるように助ける。光信号を電子信号に変える技術
だ。微笑を浮かべれば、自動で写真を撮影するのがイメージセン
サー技術の一例だ。      ──ブルームバークの報道より
─────────────────────────────
 ソニーは、アップルのアイフォーンに使われるセンサーを納品
しています。ソニーの2016年の世界市場でのシェアは、売上
額基準で45%。2位のサムスン電子のシェアは18%ですから
圧倒しています。ソニーは、今年ドル当たり円相場が110円水
準を継続するなら、イメージセンサー事業だけで1000億円の
営業利益を出せると見込んでいます。ソニーは、センサーで復活
したといえるでしょう。
 センサーそのものについて考えます。工場などにあるセンサー
をその検出方法で分けると、次の5つになります。いささか専門
的な説明になりますが、その特徴を簡単にご紹介します。
─────────────────────────────
       1.  「光」で検出する方式
       2.「渦電流」で検出する方式
       3. 「接触」で検出する方式
       4.「超音波」で検出する方式
       5. 「画像」で検出する方式
                   http://bit.ly/2zmANH4
─────────────────────────────
 1は「光」で検出する方式です。
 このタイプのセンサーは「光電センサー」と呼ばれます。光電
センサは、可視光線、赤外線などの「光」を、投光部から発射し
検出物体によって反射する光や、遮光される光量の変化を受光部
で検出し、出力信号を得るのです。
 2は「渦電流」で検出する方式です。
 このタイプのセンサーは「近接センサー」と呼ばれます。近接
センサーは、リミットスイッチやマイクロスイッチなどの機械式
スイッチにかわるもので、非接触で検出物体が近づいたことを検
出するセンサです。
 3は「接触」で検出するセンサーです。
 このタイプのセンサーは、「接触式変位センサー」と呼ばれま
す。名前が示す通り、検出体に接触子が直接触れることで位置な
どを測定するセンサです。
 4は「超音波」で検出するセンサーです。
 このタイプのセンサーは「超音波センサー」と呼ばれます。こ
のセンサーは超音波を使用して距離などを測定するセンサです。
センサヘッドから超音波を発信し、対象物から反射してくる超音
波を再度センサヘッドで受信します。超音波式センサは、発信か
ら受信までの「時間」を計測することで、対象物までの距離を測
定しています。
 5は「画像」で検出するセンサーです。
 このタイプのセンサーは「画像判別センサー」と呼ばれます。
このセンサーは、カメラで撮影した画像を使用して対象物の有無
や違いを判別するセンサーです。画像検査「システム」と違い、
カメラ/照明/コントローラが一体型であったり、構成や操作が
シンプルです。また、画像という「面」で広くとらえる原理のた
め、対象物の動きが一定でなくても検出可能です。
 センサーが注目されるようになったのは、各種センサーから得
られる膨大なデータを解析できるようになったからです。これに
はAI(人工知能)の発達が大きく貢献しています。
 これまで家電メーカーは、販売した製品については、サポート
や修理の依頼がない限り、かかわることはなかったのですが、製
品にセンサーを組み込むことによって、それがどのように使われ
現在どのような状態にあるかをリアルタイムで把握できるように
なったのです。これは、あたかも、ユーザーのそばに、アドバイ
ザー、保守要員、セールスパーソン、マーケッターが常駐してい
る状態と同じであるといえます。
 このセンサーを活用したビジネスモデルの転換の必要性にいち
早く気づき、事業の転換に成功した企業の代表例として、日本で
は建設建機のコマツ、米国ではGEが上げられます。この変化は
単にメーカーだけでなく、保険業などの金融業にも大きな影響を
もたらしつつあります。EJでは、引き続き、センサーについて
考えていきます。    ──[次世代テクノロジー論/15]

≪画像および関連情報≫
 ●IoT保守・メンテナンス事例/センサーデータで見える化
  ───────────────────────────
   道路、橋梁、トンネル、上下水道などの社会インフラは、
  1960年代の高度経済成長期以降に急ピッチで建設されて
  きた施設が多く、耐用年数とされる50年を超え、建て替え
  の時期を迎えつつあります。国土交通省の試算によると、こ
  うした社会インフラの維持管理・更新費用は2030年度に
  18兆円に達するとされており、厳しい財政状況の中で、施
  設の長寿命化と維持管理コストの低減を実現する新たな施策
  の確立が求められています。
   企業の抱える生産設備も同様です。グローバルな厳しい企
  業間競争に勝つためには、生産ラインを停止させないよう各
  種設備の稼働率の向上が重要なテーマとなっています。それ
  だけでなく出荷済み製品の継続的な維持管理のための遠隔監
  視やオペレーションコストの削減、熟練工のノウハウ伝承な
  ども重要性を増してきています。保守・メンテナンス業務に
  関わる課題は日本特有のものではなく、海外においても同様
  の課題を抱えているのです。
   こうした課題解決に向けたアプローチに不可欠なこと。そ
  れは、高齢化と、人材不足が懸念される現場管理で熟練者の
  「暗黙知」を、いかに「形式知」にしていくかです。という
  のも、社会インフラでも生産設備でも、その保守・メンテナ
  ンスの現場では、経験を積み重ねた熟練者の知識や技術をも
  とにした判断が、リスク回避の意思決定を大きく左右してい
  るからです。           http://bit.ly/2xFMhZ5
  ───────────────────────────

CCDイメージセンサー.jpg
CCDイメージセンサー
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2017年10月17日

●「センサーはどこまで進化をしたか」(EJ第4626号)

 今や、センサーやIoTの話題が新聞にニュースとして掲載さ
れる日が多くなっています。とにかくスマホには各種センサーが
付いているので、これを利用して、今まででは考えられなかった
アイデアが続々と実現しています。
 10月16日付の日本経済新聞朝刊には、次の記事が掲載され
ています。
─────────────────────────────
    生活にIoT/広げるVB(ベンチャー企業)
             ノバルス/玩具を遠隔操作
             マモリオ/忘れ物自動通知
         ──2017年10月16日/日本経済新聞
─────────────────────────────
 第1は、2015年創業のノバルスというベンチャー企業が開
発した「マビー/MaBeee」が紹介されています。
 マビーは単4電池をセットするケースのようなもので、単3電
池サイズです。単4電池は4個までセットすることができます。
そうすることによって、専用アプリによって、ブルートゥースを
通じて通信できる一種のセンサーのような役割をします。
 専用アプリをスマホにダウンロードし、マビーを玩具の電車に
セッティングし、動力に接続すると、電車の発車と停止、スピー
ドのコントロールなどがスマホからできるようになります。
 本来電池というものは、オンとオフしかコントロールできない
ものですが、マビーを介すと、電池を自由にコントロールするこ
とが可能らなります。また、マビーを使えば、今までオン/オフ
しかできなかったLEDライトの調光が可能になります。クリス
マスツリーの調光もスマホから可能になります。これらはIoT
モノインターネットの典型です。
 第2は、マモリオというベンチャー企業開発の「マモリオ」と
いう商品が紹介されています。
 商品自体は、長さ3・5センチのタグです。これがセンサーに
なっています。これを財布などの貴重品に付けておきます。マモ
リオの購入者は専用アプリをスマホにダウンロードし、必要な登
録をします。
 そうすると、タグとスマホが30メートル程度離れると、通知
がスマホに届くようになっているのです。他人が財布を奪って逃
げても追跡できます。最近は鉄道会社と提携し、主要な駅の拾得
物を管理する場所に専用アンテナ「マモリオスポット」を設置し
タグ付きの物品が届くと、自動的に本人に通知が届くようになっ
ています。これもIoTです。
 もともとセンサーは、急に出現したものではなく、前から家電
製品などに付けられていたのです。オーブンレンジには、設定し
た内部の温度制御を行う温度センサーが搭載されていたのです。
この他、自動ドアには、人の接近を検知する人感センサーが付け
られています。しかし、それはあくまで裏方としての機能であり
人々の認識に上ることはなかったのです。
 しかし、ここにきて、センサー自体や周辺技術が大きく進化し
たため、IoTとして、にわかに注目を浴びるようになったので
す。添付ファイルをご覧ください。これは、センサー技術の進化
をあらわしています。センサーの進化のプロセスは、次の3つの
段階にわたって大きな変化を遂げています。
─────────────────────────────
        1.    過去のセンサー
        2.デジタル時代のセンサー
        3.システム化したセンサー
─────────────────────────────
 「1」は「過去のセンサー」です。
 過去のセンサーとは、従来のセンサーのことです。物理現象や
化学現象などを検知するセンサーは、データを検知するだけの働
きしかできなかったのです。これは、完全に裏方の仕事です。
 「2」は「デジタル時代のセンサー」です。
 このセンサーは、単にデータを検知するだけでなく、検知した
データに一定の処理を行うところまでやってくれます。これだけ
でも人間としては非常に助かります。
 「3」は「システム化したセンサー」です。
 これが現在のセンサーです。現代のセンサーの進化について、
株式会社エンライト代表の伊藤元昭氏は、デジタルカメラの進化
に関連して次のように述べています。
─────────────────────────────
 こうしたセンサーの進化を最も身近に感じられるのがデジタル
カメラである。登場まもない頃のデジタルカメラは、撮影範囲の
中央にある被写体に自動的にピントを合わせていた。それが、人
物を見分けてピントを合わせられるように進化した。いまでは、
笑顔になった時だけシャッターを切る、動きまわる子どもにいつ
もピントを合わせるといったことができるようになった。
 データを取り込むイメージセンサーは、大幅な性能向上はして
いるが、原理的にはそれほど大きな変化はない。デジタルカメラ
こうした変化は、取り込んだ画像を処理・分析・解釈する技術の
発達によるものだ。      ──伊藤元昭氏論文/洋泉社刊
  「世界を変える7つの次世代テクノロジー/センサー革命」
─────────────────────────────
 澁谷のスクランブル交差点を渡った人数を計測するのは、デジ
タル時代のセンサーでもできますが、システム化したセンサーで
あれば、渡った人数だけでなく、男女の比率、外国人の数まで把
握可能になります。
 AI(人工知能)が加わることによって、交差点を渡る人の顔
や体の認識や分析が出来るようになり、男女や外国人の識別まで
が可能になっています。このまま技術革新が進むと、センサーは
さらに強力な認識能力を持つことになり、「AIの目」としての
機能を果すことができるようになります。
            ──[次世代テクノロジー論/16]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ、今センサなのか/伊藤元昭氏
  ───────────────────────────
   革新的な機器の中で、センサが効果的に活用されている例
  が目立ってきた。例えばアップル社の「iPhone 6」には、わ
  ずか123・8ミリ×58・6123.8nl×7・6ミリ
  の筐体の中に800万画素のメインカメラと120万画素の
  フロントカメラ、マルチタッチセンサ、マイク、その他にも
  指紋、加速度、3軸角速度(ジャイロ)、近接、環境光、指
  紋認証、気圧などを検知するセンサがそれぞれ搭載されてい
  る。まさにセンサ技術のデパートといった様相である。
   電子機器や家電製品、家庭や工場などで使われる設備にセ
  ンサが組み込まれるようになったのは、今に始まったことで
  はない。オーブンレンジには設定した庫内の温度制御を行う
  温度センサが搭載されてきた。自動ドアには人の接近を検知
  する人感センサが搭載されてきた。ハードディスクドライブ
  のように、一見センサに関係無いような機器にも、機器の落
  下を検知する加速度センサが搭載され、衝撃に弱い読み書き
  機構を故障から守るために使われてきた。ただし、さまざま
  な場所で使われていたセンサではあったが、その役割は、機
  器の本来の機能を支える脇役としての仕事が中心だった。と
  ころが近年、センサを効果的に活用することで、機器や設備
  に新たな価値を盛り込む動きが活発化してきた。
                   http://bit.ly/2gcrilc
  ───────────────────────────

センサー技術の変化.jpg
センサー技術の変化
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2017年10月18日

●「現代はトリリオンセンサーの時代」(EJ第4627号)

 昨日のEJでご紹介した「マビー/MaBeee」には、面白い機能
があります。例えば、プラモデルのミニ四駆にマビーをセットし
専用アプリをスマホにダウンロードしてスタートさせるとき、ス
マホを上下に振るだけでよいのです。この振りを強くすると、ミ
ニ四駆はスピードアップし、ゆっくり振るとスピートダウンしま
す。しかも、スマホ一台でミニ四駆を10台まで同時発車できる
ので、カーレースを楽しむことができます。
 問題は、どうしてこんなことができるかです。それは、スマホ
には「加速度センサー」が付いているからです。マビーはそれを
利用しているのです。
 加速度センサーとは、モーションセンサーともいわれますが、
スマホにかかる動きの検知に使われます。スマホが机の上に置か
れているのか、手に持っている状態なのか、それともポケットに
入れて歩いているのかなどをつねに検知しています。
 スマホの状態に合わせた画面の回転、振り回すシェイク機能や
歩数計、睡眠時の寝返り判定などは、この加速度センサーがある
からできるのです。手にスマートフォンを持って振り回したとき
振りはじめたときにはプラスの加速度、止めたときはマイナスの
加速度がかかるようになっています。
 加速度センサーを利用したゲーム機に、任天堂の「Wii」 やマ
イクロソフトの「Kinect」がありますが、スマホには加速度セン
サーが装備されているので、このセンサーを利用して、同じよう
なアプリを作ることが可能です。
 もうひとつスマホには「気圧センサー」というものが装備され
ています。ハードウェアにしては、一辺3ミリにも満たない小さ
いセンサーです。これは、アイフォーン6から付いているのです
が、どのようなときに使えるのでしょうか。実際に、アップスト
アで調べてみると、このセンサーを使ったさまざまなアプリが用
意されていることがわかります。これに関する「産経ニュース」
の記事を次に示します。
─────────────────────────────
 スマホはいつも持ち歩くため、健康を管理する機能も期待され
ているが、気圧計があれば、従来の歩数計測に加えて階段や坂道
での上下動も分かるため、よりカロリー計算などのデータが正確
に計測できる。ネット上では「低気圧のときは頭痛がひどい」な
ど、気圧と頭痛の相関性についての記述が多く見られる。そして
頭痛の到来を予想する「頭痛−る」なるアプリもあった。
 2015年の「シーテックジャパン」のあるブースでは、急激
に気圧が低下する「爆弾低気圧」や竜巻などの異常気象の察知が
できるようになれば、キーアプリになるのではないかという声が
聞かれた。確かに昨今、こうした異常気象による災害が目立つ。
思わぬ災害を避けられるかもしれない。 http://bit.ly/2ywyRxL
─────────────────────────────
 「トリリオン・センサー・ユニバース」──こういう構想があ
ります。トリリオン(Trillion)とは「1兆」という意味です。
したがって、トリリオン・センサーは、1兆個のセンサーという
ことになります。「トリリオン・センサー・ユニバース」という
のは、1兆個を上回るセンサーを活用し、社会に膨大なセンサー
・ネットワークを張り巡らすことにより、地球規模で社会問題の
解決に活用しようとする壮大な構想です。
 現在、世界の人口は、約72億人と推計されているので、毎年
1兆個以上というのは、一人当たりおよそ150個という数にな
ります。1年間に使われるセンサーは約1000億個なので、1
兆個のセンサーは年間需要の100倍ということになります。
 このトリリオン・センサー・ユニバースに似ている試みがあり
ます。「スマート・ダスト」(賢い塵)です。これは、カルフォ
ルニア大学・バークレー校のクリストファー・ピスター教授が、
1998年に発表した構想です。「賢い塵」の構想は、次のよう
なものです。
─────────────────────────────
 プロセッサ1基と、わずかなコンピュータメモリ、そして低電
力の無線トランシーバー、電源などが納められた「mote」(塵)
と呼ばれる小型センサを大量にばらまくことで、自然環境を観察
したり、ビルや工場などを監視したりして得た情報を、防災、環
境の観察、軍事目的などに利用しようというものです。この考え
は1990年代の末に提唱されたものですが、「mote」のコスト
やサイズ、エネルギー効率などの問題、通信の標準化の問題、セ
ンサから送られてくる膨大なデータをフィルタリング・解析する
ツールの開発の問題などもあり、現在のところ、コンセプトの一
部がセンサーネットワークとして、農場や工場などの監視用途で
使われているにすぎません。スマート・ダストではビルのコンク
リートや道路のアスファルトの中にも混ぜたりして、遠方の道路
の状態や建物の中の状態を把握するとか、空中に散布するという
アイデアなどもだされていたようです。 http://bit.ly/2xKnT3p
─────────────────────────────
 センサーを利用する研究は、さらに意外な方向に発展しつつあ
ります。「センサーを内蔵した錠剤」です。抗精神病薬に使われ
ています。錠剤に埋め込んだ1ミリ角大のセンサーには、微量の
マグネシウムと銅が含まれており、服用すると胃液と反応して電
流が発生し、センサーから信号が医師に発信されるようになって
います。患者が薬を飲んだかどうかをチェックするのです。
 グーグルは、涙に含まれる糖の値を測り、糖尿病患者の血糖値
を常時記録できるセンサー付きコンタクトレンズを開発していま
す。レンズはシリコーン製の樹脂でセンサーを組み込んだリング
状のアンテナが挟まれた構造になっています。これによって測定
した血糖値はスマホやPCに送られ、そこで管理をしたり、外部
に転送したりしています。
 この他、人の身体につけて使うシート型スキャナや触角を持つ
人工皮膚なども開発されており、健康状態をモニタリングできる
ようにもなっています。 ──[次世代テクノロジー論/17]

≪画像および関連情報≫
 ●トリリオン・センサー時代に日本は巻き返し可能か
  ───────────────────────────
   VLSIシンポジウムは、LSIに関する最先端の成果が
  毎年報告される世界最高峰の国際会議。「半導体のオリンピ
  ック」と呼ばれる国際固体素子回路会議(ISSCC)は回
  路技術のみ、国際電子デバイス会議(IEDM)はデバイス
  技術のみを扱う。一方、VLSIは回路とデバイス技術の両
  面から議論するのが特徴だ。
   2016年の会議のテーマは「スマート社会への変革の兆
  し」。半導体の微細化のスピードが鈍化する中で、システム
  レベルのイノベーションが産業の変革を促すと見通す。従来
  のように、汎用の半導体を量産するだけでは顧客のニーズを
  十分に満たせない。会議では、システムを明確に志向した先
  端半導体の論文が発表される。
   なかでも、VLSI回路シンポジウムのジェフリー・ギー
  ロウ実行委員長が「IoTによる産業エレクトロニクスの変
  化が一つの焦点になる」と表明するように、スマート社会を
  実現する大前提にIoT技術がある。
   IoT分野の注目論文の一つが米インテルが発表する自己
  給電可能な無線のセンサー端末だ。太陽電池で給電し、10
  00ルクスと暗い室内の照明でも連続的に動作する。周囲の
  環境から採取した微小なエネルギーを利用する環境発電(エ
  ネルギーハーベスティング)技術を使って、完全無線による
  自己駆動を実現した。       http://bit.ly/2yugRUv
  ───────────────────────────

加速度センサー.jpg
加速度センサー
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2017年10月19日

●「日本のガラケーはスマホの先取り」(EJ第4628号)

 トム・スタンデージという人がいます。英誌『エコノミスト』
の副編集長兼デジタル戦略責任者です。彼は、2050年のテク
ノロジーの未来予測に関して、次のように述べています。
─────────────────────────────
           過去、現在、SFで描かれる未来。
     この3つが2050年を見通すための鍵になる。
  15年前、スマートフォンの登場を予測していた人々は
  日本人の女子高生に注目した。
         ──英『エコノミスト』編集部/土方奈美訳
   「2050年の技術/英『エコノミスト』誌は予測する」
                       『文藝春秋』
─────────────────────────────
 トム・スタンデージ氏は、2050年の未来のテクノロジーを
予測するには、最初に「過去」を振り返ってみるべきだと説きま
す。テクノロジーの歴史には、繰り返し、登場するパターンが存
在するからです。まず、トム・スタンデージ氏による次の文章を
読んでいただきたいと思います。
─────────────────────────────
 新たなネットワーク・テクノロジーは、長距離通信に革命的変
化をもたらす。通信はそれまでより圧倒的に安く、便利になる。
企業はそれを熱狂的に受け入れて、投機ブームが巻き起こる。新
たなテクノロジーは支持者からはひたすら称賛され、反対派から
は徹底的に中傷される。また、新たなビジネスモデルが可能にな
ると同時に、かつてない犯罪にも道を拓く。政府は暗号技術の拡
散防止に手を尽くし、あらゆる通信の開示を求める。個人はネッ
トワークを使って友達を作り、恋に落ちる。コミュニケーション
によって国境は消え、人類は一つになる。そのため、新たなテク
ノロジーは世界平和につながると見る者もいる。
        ──英『エコノミスト』編集部著の前掲書より
─────────────────────────────
 これは、どう考えてもインターネットの描写としか思えません
が、実は19世紀半ばの電報についての話なのです。1837年
9月のことですが、サミュエル・モールスは、電気的テレグラフ
の公開実験を行っています。
 レジスタという通信文を紙のテープに記録するための端末装置
が開発され、公開実験によって、首尾よく5キロメートル離れた
ところまで通信文を送ることに成功しています。そして1844
年5月には、ワシントンDCとボルティモア間の64キロの通信
に成功しています。電信的電報システムがこのときからはじまっ
たのです。
 このような新しい「メディア」の登場は、それが斬新であれば
あるほど、そのときの社会には大きな影響を与えます。それは、
多大なる賞賛と期待がある一方で、それに匹敵する量の批判や不
安があるものです。電報の場合でも、現代のサイバー犯罪ともい
うべき問題が発生していたのです。「犯罪者ほど科学の最新の成
果を迅速に取り入れる集団はない」といわれます。これは、その
後のビデオの導入や、インターネットでウェブサイトが見られる
ようになったときでも同様に起きています。
 テクノロジーについて知る場合、その技術の開発の歴史を調べ
ることは重要です。誰が、いつ、どのようなニーズのもとに、そ
の技術を誕生させ、どのように普及していったのかについて知る
ことは、未来のテクノロジーを開発するときに役に立つのです。
そのため、「過去を振り返る」ことは、新しい技術を生み出す原
動力になるといえます。
 「過去」に続いて「現在」をよく観察する必要があります。テ
クノロジーは、突然登場するように見えますが、実はその前身に
なるものは、とっくの昔に姿をあらわしているのです。つまり、
明日のテクノロジーは、今日既に登場し、普及している可能性が
高いのです。トム・スタンデージ氏は、その典型は21世紀初頭
における日本のガラケーであるといっています。よく考えてみる
と、ガラケーは現代のスマホそのものといえます。
─────────────────────────────
 2001年の日本ではカメラ付き、カラーディスプレイ付きの
携帯端末が当たり前に普及していた。道案内付きの地図を表示で
き、電子書籍、ゲームなどのアプリもダウンロードできた。ジャ
ーナリストやアナリストは、そんな電話を見るために日本詣でに
いそしんだ。欧米の技術系カンファレンスで日本人が懐から携帯
端末を取り出すと、それは時空の切れ目から落ちてきた貴重な未
来のかけらのように丁重に扱われた。日本が他国に先駆けで未来
に到達したのは、通信業界が孤立した独占的性質をもち、また国
内市場に十分な規模があったためである。これによって、日本の
ハイテク企業は、他国のシステムとの互換性など気にせずに、創
意工夫することができたのだ。
        ──英『エコノミスト』編集部著の前掲書より
─────────────────────────────
 日本人が何も考えずにガラケーを使っていたとき、欧米をはじ
めとする世界の人々はそれを驚きのまなざしで観察していたので
す。米国の「WIRED」誌には、しばらくの間、「日本の女子
高生ウオッチ」なる連載コラムがあったほどです。そして、この
観察の結果、日本のガラケーは、遂にアップルのアイフォーンに
姿を変えて、鮮烈なデビューを果たしたのです。
 まず、コンセプトが違います。日本の携帯電話は、多機能では
あっても、あくまで電話機であるのに対して、アップルのそれは
電話機能を持つ小型のコンピュータというコンセプトのマシンで
あり、OSを搭載し、ソフトウェア(アプリ)のダウンロードに
よって付加価値をつけるという画期的なかたちで登場したので、
日本独特スタイルのガラケーは敗退せざるを得なかったのです。
このように、現在すでに普及し、使われているもののなかに未来
の技術の基になるものが必ずあるのです。
            ──[次世代テクノロジー論/18]

≪画像および関連情報≫
 ●「ガラパゴス化は勝ち筋戦略」/高杉康成氏
  ───────────────────────────
   赤道直下のエクアドル共和国から西へ約900キロの太平
  洋上にガラパゴス諸島があります。ダーウィンの進化論で有
  名なこの島々は、外界から遮断された結果、そこに住む生物
  が独自の進化を遂げた珍しい地域です。
   ビジネスの世界では、これに習って「ガラパゴス化」と揶
  揄されることもあります。有名なのは「ガラパゴス・ケータ
  イ(ガラケー)」です。世界のモバイル・IT事情とは異な
  った、日本独自の進化を遂げた日本の携帯電話のことで、先
  進的な技術や機能がありながら、海外では普及しませんでし
  た。スマートフォン(スマホ)の普及とともに徐々に市場を
  失い、多くの日本企業が携帯電話ビジネスから撤退していき
  ました。このようにビジネスにおいてガラパゴス化は、とも
  すれば「悪い例え」に聞こえます。しかし、本当にそうなの
  でしょうか。そこで今回は、このガラパゴス化について深く
  掘り下げて考えていきます。
   なぜスマホが売れてガラケーは衰退していったのか。ビジ
  ネスパーソンであれば、この問題について一度は、ウェブ、
  雑誌、新聞などで記事を目にしたことがあるでしょう。諸説
  がある中で、筆者は以下のような見立てをしています。
                  http://nkbp.jp/2gphFUd
  ───────────────────────────

女子高生とガラケー.jpg
女子高生とガラケー
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2017年10月20日

●「SF映画から未来予測はできるか」(EJ第4629号)

 英誌『エコノミスト』副編集長であるトム・スタンデージ氏に
よると、2050年を見通す鍵は、過去、現在、そして「SFで
描かれる未来を調べること」とあります。
 確かに、大半が未来のことを描いているSFは、小説であれ、
映画であれ、作者は何らかの根拠に基づいて書いているはずなの
で、未来を予測するヒントになり得るといえます。その典型的も
のに、次のSF映画の傑作があります。
─────────────────────────────
           映画『2001年宇宙の旅』
            原題:2001:A Space Odyssey
     製作・監督:スタンリー・キューブリック
─────────────────────────────
 この映画は、1968年4月6日に公開されているのですが、
この映画の表題になっている「2001年」は、映画の公開から
33年後の世界です。まさにSFです。
 映画のなかでは、木星探査の宇宙船ディスカバリー号には「H
AL」という名のコンピュータが搭載されています。HALは、
宇宙船乗務員が「音楽を頼む」といえば、音楽が流してくれ、話
しかけると、適切に応答してくれる音声認識のできるAI(人工
知能)そのものです。このことは、映画公開後、約50年で、既
にわれわれのスマホで実現しています。やはり、この映画は、約
50年後のコンピュータを予測していたといえます。このAIコ
ンピュータ「HAL」には、次の隠された意味があるのです。
─────────────────────────────
           次のアルファベット
         H ・・・・・・・ I
         A ・・・・・・・ B
         L ・・・・・・・ M
─────────────────────────────
 HALの3文字のアルファベットの次の文字は、それぞれIB
Mになります。つまり、当時のコンピュータの巨人のIBMより
も優れたコンピュータであるという意味です。
 この未来の予測に関して、トム・スタンデージ氏は次のように
述べています。
─────────────────────────────
 SFは単に未来を予測するだけではない。技術者が新しいもの
を生み出すためのひらめきも与える。たいていの技術者はひと皮
むけばSFファンだ。1990年代のフリップ開閉式の携帯電話
などは、1960年代のテレビ番組『スタートレック』に登場す
る携帯通信機に触発されたように見える。また、コンピュータと
直接会話するというのも『スタートレック』に登場していたアイ
デアだが、このところ新たな潮流としてアマゾンの「アマゾン・
エコー」をはじめ、音声を基本的なインターフェースとする、常
時オンの手ぶらで使えるコンピュータ端末が登場している。
         ──英『エコノミスト』編集部/土方奈美訳
   「2050年の技術/英『エコノミスト』誌は予測する」
                       『文藝春秋』
─────────────────────────────
 テレビ番組『スタートレック』は、23世紀の宇宙船USSエ
ンタプライズのクルーが、未知の宇宙を探索する物語です。若く
有能なジム・カーク船長、ヴァルカン人と地球人のハーフである
スポック、皮肉屋ドクター・マッコイの3人を中心として展開。
毎週のように登場する異星人や未知の惑星との遭遇が、基本形と
なって話が展開します。
 『スタートレック』は、あのスティーヴン・ホーキングが熱烈
なファンであり、自らの講演でよく引用するそうです。エンジニ
アのファンの多い番組といわれます。
 この『スタートレック』というテレビ番組に対して、『スター
ウォーズ』という映画があります。名前がよく似ていますが、全
然違う作品です。この両作品のメガフォンをとったJ・Jエイブ
ラムス氏は、この両作品の違いを次のように述べています。
─────────────────────────────
 『スター・ウォーズ』は、常におとぎ話のようなファンタジー
だ。そして『スター・トレック』はSFなんだ。『スター・ウォ
ーズ』は遠い昔で、一方の『スター・トレック』は未来が舞台と
いうのもおもしろい違いだね。もちろん似ている点があるのも確
かだよ。宇宙船とかエイリアンとかね。でも根本的に違うんだ。
違うトーンに、違う感情だし。    ──J・Jエイブラムス
─────────────────────────────
 これに対して、グーグルは『スターウォーズ』の新作が封切ら
れると、マウンテンビューにある2つの映画館を借り切って、全
社員に『スターウォーズ』を見せています。業務命令です。梅田
望夫氏が、作家の平野啓一郎氏との対談のなかで、そのことを明
かしています。
─────────────────────────────
◎梅田:少なくとも彼らが政府とか言うときのイメージってすご
    く単純ですよ、そこに人文科学系の深みのようなものは
    ないです。「スター・ウォーズ」といえば、公開される
    前日は、シリコンバレーのマウンテンビュー市の映画館
    全部がグーグルの貸切だったんですよ。
◎平野:えっ、そこまで?社員全員が見るんですか?みんながそ
    の価値観を共有しているんですか?
◎梅田:価値観を共有」といえば強すぎるけれど、けっこう影響
    はされていると思う。それは「はてな」の近藤(淳也社
    長)たちも一緒で、僕は取締役になるための通過儀礼と
    して「スター・ウォーズ」のDVDを全部見てくれって
    言われたんですから。  ──梅田望夫/平野啓一郎著
                『ウェブ人間論』/新潮新書
─────────────────────────────
            ──[次世代テクノロジー論/19]

≪画像および関連情報≫
 ●『スター・トレック』『スター・ウォーズ』は全然違う!
  ───────────────────────────
   映画界のみならずカルチャーシーンにも多大な影響を与え
  てきた2大メガシリーズ『スター・トレック』と『スター・
  ウォーズ』の両作品でメガホンを取った、唯一の存在、J・
  J・エイブラムスが、『スター・トレック・ビヨンド』のプ
  ロモーションで来日した際に、両シリーズの違いなどについ
  て語った。
   2009年にエイブラムスがリブートさせた新『スター・
  トレック』シリーズの第3弾にあたる『スター・トレック・
  ビヨンド』。本作では、『ワイルド・スピード』シリーズの
  ジャスティン・リンがメガホンを取り、エイブラムスは製作
  にまわった。「ジャスティンは、とてもよくやってくれたと
  思う。特にアクションシーンは僕にとってとても勉強になっ
  た。彼はアクション映画のプロだからね」と今作について切
  り出すエイブラムスは、「正直、嫉妬したね。だって、俳優
  陣は素晴らしいし、(サイモン・ペッグとダグ・ユングの書
  いた)脚本はとてもおもしろい」と打ち明ける。
   実は、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の編集真っ
  只中で、本作の撮影現場にあまり行くことができなかったの
  だという。「彼らに重大な課題を託していったわけだけど、
  彼らがとても素晴らしい仕事をこなしてくれて本当に感謝し
  ているんだ」とキャスト&スタッフをねぎらう一幕も。
                   http://bit.ly/2xNUQAV
  ───────────────────────────

映画「2001年宇宙の旅」.jpg
映画「2001年宇宙の旅」
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2017年10月23日

●「なぜ、『スターウォーズ』なのか」(EJ第4630号)

 グーグルは、なぜ、わざわざ、マウンテンビューの映画館を借
り切ってまで、全社員に映画『スターウォーズ』を見せているの
でしょうか。今やグーグルは時代の先端を走っている企業であり
この“なぞ”を解いてみる価値はあると思います。
 その前に映画『スターウォーズ』について少し述べる必要があ
ります。この映画は一言でいうと、次のように表現できます。
─────────────────────────────
 映画『スターウォーズ』とは・・・・・
  遠い昔、遥か彼方の銀河系を舞台に、映画、アニメーショ
 ン、小説、コミック、ゲームなどによって展開されるスペー
 スオペラ・シリーズである。     ──ウィキペディア
─────────────────────────────
 このシリーズは、米国の映画監督にして映画プロデューサー、
脚本家でもあるジョージ・ルーカス氏の構想に基づいて、自らが
監督として率いるルーカスフィルムが制作したものです。
 この映画は、構想としては「エピソード1」から「エピソード
9」まであるのですが、「エピソード1」からはじめるのではな
く、冒険活劇として完成度の高いと自負する「エピソード4」か
らはじめたのです。連作映画の場合、第1作で失敗すると、資金
繰りの関係から次の映画を制作できなくなるからです。
 さいわい「エピソード4」は成功したので、ルーカスはこの作
品が全9作であることを明かしています。しかし、その後、この
作品は6作で終了すると宣言し、「エピソード3」でこの作品は
終了したのです。製作費の関係であると思われます。
 しかし、2012年10月、ウォルト・ディズニーがルーカス
フィルムを買収し、このシリーズは、全9作すべてが制作される
ことになったのです。そして、2015年に「エピソード7」、
2017年12月には「エピソード8」が公開予定です。「スタ
ーウォーズ」全9作は次のようになっています。
─────────────────────────────
   1977年/エピソード4/    新たな希望
   1980年/エピソード5/    帝国の逆襲
   1983年/エピソード6/  ジュダイの帰還
   1999年/エピソード1/ファントム・メナス
   2002年/エピソード2/  クローンの攻撃
   2005年/エピソード3/    シスの復讐
   2015年/エピソード7/  フォースの覚醒
   2017年/エピソード8/  最後のジュダイ
   2019年/エピソード9/      未発表
─────────────────────────────
 なぜ、『スターウォーズ』なのでしょうか。それは、どうして
も『スターウォーズ』でなければならない理由があるのです。そ
のヒントは梅田望夫氏と平野啓一郎氏の対談のなかにあります。
─────────────────────────────
平野:映画『ブレードランナー』や『マトリックス』じゃなくて
   『スターウォーズ』ってところがミソですね。
梅田:そうです。まさに恐るべき子供たちですよ。大好きな数学
   とプログラミング技術を駆使した凄いサービスを開発して
   『スターウォーズ』の世界をイメージしたりしながら、世
   界中の情報をあまねくみんなに行き渡らせたいと思ってい
   る。           ──梅田望夫/平野啓一郎著
                『ウェブ人間論』/新潮新書
─────────────────────────────
 映画『マトリックス』は、VR(仮想現実)のことを描いてい
るので論外として、映画『ブレードランナー』は宇宙のことを描
いており、『スターウォーズ』と関連があります。
 『ブレードランナー』は1982年公開の映画ですが、それか
ら37年後には、環境破壊により人類の大半は宇宙に移住し、地
球に残った人々は人口過密の高層ビル群が立ち並ぶ大都市での生
活を強いられていたとの想定に立っています。
 宇宙開拓の前線では、遺伝子工学により開発された「レプリカ
ント」と呼ばれる人造人間が、過酷な奴隷労働に従事していたの
です。この人造人間には4年の寿命しか与えられていないのです
が、なかには人間社会に紛れ込もうとするレプリカントもいたの
です。そのレプリカントを摘発する専任捜査官が「ブレードラン
ナー」という役回りです。
 しかし、同じ宇宙空間のことを描いていても、『スターウォー
ズ』の方がはるかにスケールが大きいのです。平野啓一郎氏は、
梅田望夫氏との対談で次のように述べています。
─────────────────────────────
平野:『スターウォーズ』はあの広大な宇宙空間を自在に行き来
   して、その中に異形の生物だとか、妙な惑星なんかが満ち
   溢れていて、そこに出会いや発見の驚きがあり、ヨーダみ
   たいなのから知識を得て・・というあの映画の風景は、確
   かにネットの風景と重なり合う感じがします。そこにルー
   ク・スカイウォーカーの世界を変えてやろうというピュア
   な情熱が加わるのかな。
梅田:だからプログラムを作っている彼らは、自分で新世界の創
   造に参加しているというか、自分でプログラムを書くこと
   によって、小さな奇跡を起こすということのワクワク感の
   中にいるんでしょう。
          ──梅田望夫/平野啓一郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 結局、『スターウォーズ』の世界は、インターネットがさらに
高度に発展した世界を描いているのではないかと考えます。現実
には、あり得ない世界を描いているようでいて、そのなかには実
際に実現出来るものが多く含まれており、多くのヒントが得られ
るのです。だから、グーグルでは『スターウォーズ』を全員で見
ることが恒例になっているのです。
            ──[次世代テクノロジー論/20]

≪画像および関連情報≫
 ●ルーカス/『スター・ウォーズ:フォースの覚醒』を語る
  ───────────────────────────
   10年ぶりの正伝新作にして、初のディズニー製作となっ
  た『スター・ウォーズ:フォースの覚醒』について。これま
  で無難な発言でお茶を濁してきたジョージ・ルーカスが「レ
  トロ映画。気に入らない」「スター・ウォーズファン向け」
  と語るインタビューが公開されました。
   シリーズの生みの親であるルーカス氏は、新作の物語につ
  いて自身の案が、ディズニーに却下されたこと、当初は『帝
  国の逆襲』『ジェダイの帰還』のように製作に関わるつもり
  だったものの干渉が多く断念したことなども発言。『スター
  ・ウォーズ』をディズニーへ売却した後の葛藤について「愛
  する我が子を奴隷商人に売ってしまった」と口を滑らせて後
  に不適切な表現を詫びるなど、内面を吐露したインタビュー
  内容です。
   ジョージ・ルーカス氏が『フォースの覚醒』について語っ
  たのは、米国のテレビ番組ホスト Charlie Rose 氏とのイン
  タビューの席。収録は『フォースの覚醒』ワールドプレミア
  前ですが、放送は映画公開から一週間ほど経過したタイミン
  グです。時期的には新作公開あわせではあるものの、内容は
  『スター・ウォーズ』ばかりでもなく、スピルバーグとのラ
  イバル関係やコッポラとの関係、自身の映画観や監督業、映
  画業界の課題などなど、約55分にわたって、幅広い話題を
  扱っています。         http://engt.co/2yx1g73
  ───────────────────────────

『スター・ウォーズ:フォースの覚醒』.jpg
『スター・ウォーズ:フォースの覚醒』
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2017年10月24日

●「仮想空間SLとVR/ARの融合」(EJ第4631号)

 映画『スターウォーズ』のどのシリーズかは忘れましたが、円
卓テーブルで会議をやるシーンがあります。何人かが会議に参加
しているのですが、小柄な老人という異形のスタイルのヨーダも
参加しています。よく見ると、会議参加者の何人かは身体が透き
通っているのです。
 身体が透き通っている会議参加者は、本人は別の星にいて、会
議に参加しているのです。基本的にはテレビ会議と同じですが、
『スターウォーズ』での会議は、身体が透明であるとはいえ、本
人が会議に参加して、出席者の話を聴いたり、発言したりしてい
るのです。リアルの世界の実際の会議とほとんど変わりません。
そんなことはできるはずがない。おとぎ話の世界である──少な
くともこの映画が公開された時点では、そんなものが実現すると
はだれも考えてなかったと思います。
 ところが、これは2000年代後半に、仮想空間「セカンドラ
イフ」のなかで、ほとんど実現しています。米IBM社は、セカ
ンドライフという仮想空間のなかに会議室を作り、そこに支店長
がアバターとして出席して会議を行う「セカンドライフ支店長会
議」を実験としてやっています。これなら、わざわざ出張する必
要もないので、コストもかからないのです。ネットに接続できる
少し性能の高いPCがあれば十分可能です。
 仮想空間セカンドライフについては、2007年9月にEJで
も取上げています。そのなかで、IBMの支店長会議にも言及し
ているので、その号をご紹介しておきます。
─────────────────────────────
        2007年9月20日付/EJ第2169号
 「セカンドライフでの支店長会議」 http://bit.ly/2zGuYEC
─────────────────────────────
 もっともこの場合、仮想空間に入るのは、あくまで本人のアバ
ターであり、本人はリアル空間にいて、そこで話したり、聴いた
りすることになります。これを逆にして、リアル空間での実際の
会議に、別の場所にいる本人のアバターが登場すれば、『スター
ウォーズ』の会議に近くなりますが、これは現在では「AR(拡
張現実)」の技術を使えば、実現可能ではないかと考えます。
 このようにSF映画から、未来の技術を読み説くことは、きわ
めて意義のあることなのです。
 これについて、英誌『エコノミスト』のトム・ブランデージ氏
も、スマホによって仮想現実(VR)と拡張現実(AR)の融合
が起きるとして、次のように述べています。
─────────────────────────────
 これからどうなるのか。現在のトレンドは、パソコンではなく
スマートフォンが、中核的デバイスとなる方向を明確に示してい
る。このため、パソコンやゲーム機ベースのVRは過渡的段階に
過ぎず、VRの未来はスマートフォン・ベースのメディアになる
ように思える。(中略)
 今後について技術者やSF作家のあいだには、VRのイメージ
を現実世界と融合させた拡張現実(AR)が、タッチスクリーン
に続く新世代のコンピュータ・インターフェースになる可能性が
高いという共通認識がある。空想と現実が重なり合う世界という
のはSFにおなじみのテーマだ。
         ──英『エコノミスト』編集部/土方奈美訳
   「2050年の技術/英『エコノミスト』誌は予測する」
                       『文藝春秋』
─────────────────────────────
 1950年代のことですが、「シネラマ」という立体映画が日
比谷の帝国劇場で上映されていたことがあります。3台の撮影機
でパノラマ式に撮影し、これを横長の画面に3台の映写機で写す
映画ですか、少し立体的に見えるだけのことです。
 現代では、その画面のなかに入っていくことができます。VR
(仮想現実)です。VRは現在、ブームになりつつありますが、
技術自体は昔からあるのです。VRは、1968年にユタ大学の
アイバン・サザーランド氏によって、ヘッドマウントディスプレ
イが開発されています。ちなみに、サザーランド氏は、インター
ネットの前身といわれるアーパネットの開発者の一人です。
 VRよりもビジネスでの利用が進んでいるのは、AR(拡張現
実)です。これは、VRの変種といわれています。そのとき、周
囲を取り囲む現実環境に情報を付加・削除・強調・減衰させ、人
間から見た現実世界を拡張させるものをARといいます。
 ARは実際に見る方がわかりやすいので、次のURLをクリッ
クしていただきたいと思います。リアルの空間にあるはずのない
ヘリコプターが出現し、部屋中を飛び回ります。
─────────────────────────────
     「リアル空間を飛び回るヘリコプター」
             http://bit.ly/2xXKdfa
─────────────────────────────
 現在、ARはビジネスに多用されています。セールスパーソン
は、販売する商品を3D化し、スマホかタブレットにダウンロー
ドして、客先に持っていき、ARの技術で、実際の部屋などに再
現して顧客に見せることが一般化しています。たとえば、家具営
業では、リアルの部屋にその家具を置いたイメージをプレゼンで
きるのです。といっても、なかなかピンとこないと思うので、そ
のプレゼンの様子を次のURLをクリックして見ていただきたい
と思います。スマホやタブレットはここまで活用できるのです。
─────────────────────────────
       「ARによる営業でのプレゼン」
            http://bit.ly/2irGwY0
─────────────────────────────
 ここまで述べているように、過去に実現できている技術が現実
のビジネスで幅広く使われるようになっているのです。このよう
な技術の応用は、その技術のことを理解することが何よりも必要
になります。      ──[次世代テクノロジー論/21]

≪画像および関連情報≫
 ●セカンドライフの思い出
  ───────────────────────────
   インターネット上の仮想世界で、ユーザーは、好みのアバ
  ターになって生活します。いわゆるMMORPG(オンライ
  ンゲーム)とは違って、ゴールや目標などはありません。こ
  の三次元世界を模した仮想世界で、何をしようと自由です。
  運営は米国のリンデンラボ社が行っています。このセカンド
  ライフ、人口も最盛期と比べるとガクッと減ったようですが
  今も細々と運営されているようですね。かくいう私は、最盛
  期当時、セカンドライフ(以下、SLと略します)にはまっ
  て、あの仮想空間で3年ほど遊びました。その思い出話も絡
  めつつ、SLについて書きます。
   私がSLをやっていたのが2006〜2008年頃だった
  と思います。SLが最も賑わっていた時期でした。世界や日
  本の著名な企業の参入も相次ぎ、TVや書籍などで大いに紹
  介されて、ユーザー数(人口)も激増しました。トヨタが支
  店を出したり、電通がSL内の広大な土地を買い占めたりと
  あの頃はバブルだったなあ〜
   2006年、私も好奇心でSLに登録しました。登録は現
  在も無料で行えるようです。始めた当初は、SL内の広大な
  仮想空間をうろうろと見て回っていたのですが、そのうち探
  検にも飽きてビジネスのまねごとを始めました。商品販売の
  仕事です。            http://bit.ly/2itgPGt
  ───────────────────────────

映画「スターウォーズ」での会議.jpg
映画「スターウォーズ」での会議
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2017年10月25日

●「『ムーアの法則』について考える」(EJ第4632号)

 梅田望夫氏の代表作である『ウェプ進化論』(ちくま新書)は
今改めて読み直してみても名著であると思います。いわゆるIC
T革命の方向性が実によくわかるからです。この本の冒頭に「チ
ープ革命が生む方向性」と題して、「ムーアの法則」に関する次
の記述があります。
─────────────────────────────
 情報技術(IT)が社会に及ぼす影響を考える上で絶対に押さ
えておかなければならないことがある。インテル創業者ゴードン
・ムーアが1965年に提唱した「ムーアの法則」に、IT産業
は40年たった今も相変わらず支配され続けており、これから先
もかなり長い間、支配され続けるだろうという点である。
 もともとは「半導体性能は一年半で2倍になる」というシンプ
ルな法則だったものが、現在は広義に「あらゆるIT関連製品の
コストは、年率30%から40%で下落していく」という意味に
転じた。新しい製品分野が登場してすぐは、「こんな機能もほし
い」「もっと高い性能を」「より使いやすく」という顧客ニーズ
が多いから、製品価格が下落するのではなく、同じ価格の製品の
機能・性能・使いやすさが向上していく。しかしその製品分野が
十分成熟し、顧客にとって「必要十分」の機能が準備されると一
気に価格下落が急となる。「ムーアの法則」が40年も続いてき
た結果、ついに私たちは今「チープ革命」とも言うべき状況の恩
恵を蒙る時代に入ったのではないか。こんな問題提起をしている
のが、米フォーブス誌コラムニストのリッチ・カールガードであ
る。           ──梅田望夫著/ちくま新書582
     『ウェブ進化論/本当の大変化はこれからはじまる』
─────────────────────────────
 梅田氏の『ウェプ進化論』の第1刷は2006年2月に刊行さ
れています。ICTの変化にとって大きな第1の波は2005年
からはじまっています。「ウェブ2・0」といい、ブログなどが
登場し、ウェブの新しい波がはじまったのです。この本はそうい
う時期に刊行されています。
 しかし、それから、約10年が経過していますが、少し事情が
変化しています。それは「ムーアの法則」に関する梅田氏の次の
記述です。「『ムーアの法則』は、これから先もかなり長い間、
支配され続けるだろう」という部分です。実は、最近ムーアの法
則の限界がいわれるようになっているのです。
 そこで、ムーアの法則についてしばらく考えることにします。
改めて、ムーアの法則とは何でしょうか。
 ムーアの法則は、米インテルの創業者の一人であるゴードン・
ムーア氏が、1965年にまだ登場していない集積回路の進歩を
展望する自らの論文に予測として書いたのがはじめてですが、後
に公式化されているのは次の通りです。
─────────────────────────────
 集積回路上のトランジスタ数は、18か月(=1・5年)ご
 とに倍になる。            ──ムーアの法則
─────────────────────────────
 トランジスタは、半導体チップの基本素子ですが、これを電子
スイッチとして使います。すなわち、スイッチの「オン」と「オ
フ」を切り替えることによって、情報の最小単位である「0」と
「1」を表現します。
 計算の高速化は、トランジスタを集積回路上に積み上げること
によって得られます。したがって、トランジスタは小さくなれば
なるほど、1つのチップに収まる数を多くすることができるので
その微細化を追究することで性能を向上させてきたのです。さら
にインテルは、チップ自体の微細化も実現するため、回路の線幅
を細くする技術を開発しています。
 1971年にまだ無名だったインテルは「4004」という半
導体チップを発表しています。このチップの線幅は10マイクロ
メートル(マイクロは100万分の1)で、そこに赤血球ほどの
大きさのトランジスタが2300個組み込まれています。世界初
の商用プロセッサの誕生です。これによって、インテルは半導体
業界の雄になったといえます。
 そして2015年、いわゆるムーアの法則にそってチップの開
発を進めたインテルは、最新のマイクロプロセッサ「スカイレー
ク」を発表します。このチップの線幅は14ナノメートル(1ナ
ノメートルは100万分の1ミリ)になっており、10億個以上
のトランジスタを搭載するまでになっています。インテルによる
と、プロセッサの計算能力は、半世紀で3500倍になっている
といっています。
 半導体の微細加工とはどういうものなのでしょうか。
 シリコン基板の表面にトランジスタなどの素子を作り込み、回
路を作成します。感光樹脂を塗って、回路を描いたフォトマスク
を重ね、これを露光装置で焼きつけます。その後、回路以外の部
分の樹脂を流し、シリコンに不純物を注入する作業を行い、絶縁
膜を作る工程などを繰り返します。インテルは、これらの微細加
工技術を磨き上げ、それを進化させていったのです。
 ムーアの法則は1971年の「4004」から始まったのです
が、それは現在まで、22回のサイクルを刻んできています。そ
の原動力になったのは、1974年にIBMの職員であったロバ
ート・デナード氏が提唱した「デナード則」にあります。
 デナード則とは、簡単にいうと「コンポートネントを小型化す
るほどチップは高速かつ省電力になり、製造コストも低くなる」
という理論です。つまり、チップ(CPU)は、1年半ごとに倍
速になり、価格も低くなるということです。これなら、インテル
としては、消費者に1年半ごとに最新PCを買い替えるよう説得
できるし、実際に消費者もほぼ2〜3年ごとにPCを買い替えて
きたといえます。
 しかし、ムーアの法則はここにきて、限界を露呈しつつありま
す。もし、この法則が止まると、多くの面に影響が出てくること
は必至です。      ──[次世代テクノロジー論/22]

≪画像および関連情報≫
 ●ムーアの法則が通用するのは2021年まで
  ───────────────────────────
   ムーアの法則は、これまで数十年間にわたって集積回路の
  イノベーションの進歩を支配してきたが、2021年には通
  用しなくなるかもしれない。最近、米国半導体工業会(SI
  A)が、発表したレポート「国際半導体技術ロードマップ」
  (ITRS)によれば、この年には、マイクロプロセッサで
  使用されるトランジスタをこれ以上微細化することは現実的
  ではなくなるという。
   ムーアの法則とは、集積回路に使用されるトランジスタの
  数に関する経験則だ。この法則の名前は、1965年に初め
  てこの予想を発表し、1975年に修正したインテルの共同
  設立者ゴードン・ムーア氏にちなんでいる。
   シリコンチップにより多くのトランジスタを詰め込むため
  には、トランジスタそのものが微細化される必要がある。し
  かし、451リサーチアナリストチーフアナリストのエリッ
  ク・ハンセルマン氏は、ITRSの中で2021年になると
  トランジスタはそれ以上微細化できなくなり、「シリコンウ
  エハ上に、より微細なジオメトリを作り出すために使ってき
  たトリックは種切れになる」と述べている。「ITRSのレ
  ポートが明らかにしたのは、これ以上は、手品のようにシリ
  コンの帽子から兎を出してムーアの法則を維持することはで
  きないということだ」とハンセルマン氏は述べている。
                   http://bit.ly/2gC9q7k
  ───────────────────────────

ゴードン・ムーア氏.jpg
ゴードン・ムーア氏
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2017年10月26日

●「ムーアの法則を続けるテクノロジ」(EJ第4633号)

 限界説が出ているとはいえ、「ムーアの法則」がここまで続い
ている原動力になっいる「デナード則」、正確には「デナード・
スケーリング則」について、もう少し詳しく説明します。デナー
ド則というのは、IBMのエンジニアのロバート・デナード氏が
提唱した法則で、定義は次のようになっています。
─────────────────────────────
 半導体の回路をK分の1に細かくすると、細かくした分だけ動
作速度がK倍上がり、回路の集積度はKの2乗になり、一方で消
費電力がK分の1に下がる。         ──デナード則
─────────────────────────────
 なぜインテルが、困難なICの高集積化に挑んだのかというと
それには企業としての大きなメリットがあるからです。集積度が
上がるとICのサイズは小さくなります。チップのサイズが小さ
くなると、材料も少なくなり、製造コストが下がります。
 機能面ではチップ内の素子から素子への配線は短くなり、省電
力化・高速化につながります。インテルの世界初のマイクロプロ
セッサ「4004」には2300個のトランジスタが使われてい
ましたが、最新の「スカイレーク」には10億個を超える数のト
ランジスタが使われています。2つの性能を比較すると、性能は
3500倍、電力効率は、90000倍、トランジスタの単価は
60000分の1になっています。これがレナード則といわれる
ものです。
 しかし、インテルが、最先端のプロセッサである「スカイレー
ク」を発表した2015年以降のことですが、ムーアの法則の限
界が指摘されるようになったのです。それは、次の2つ要因に基
づくものです。
─────────────────────────────
     1.微細化したトランジスタの機能不全
     2.高集積度の回路から発する熱の問題
─────────────────────────────
 第1の要因は「微細化したトランジスタの機能不全」です。
 チップの微細化が高度に進むと、電子が配線から漏れ出すよう
になり、それが指数関数的に増えて、やがてトランジスタが機能
しなくなります。「スカイレーク」は線幅が14ナノメートルで
したが、微細化の最大の壁は、線幅7ナノメートルであるといわ
れています。ムーアの法則がこのまま続くとすると、線幅が7ナ
ノメートルになるのは2020年頃になります。
 7ナノメートルの壁に関しては、トランジスタの形状を変化さ
せて、ムーアの法則を継続させる考え方があります。これに関し
て、英『エコノミスト』の科学記者のティム・クロス氏は、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 コンピュータの性能をこれまでのようなペースで向上させつづ
けるには、もっと劇的な変革が必要になるだろう。たとえばチッ
プの3次元化によって、ムーアの法則を持続させるといったこと
だ。現代のチップは本質的に2次元(平面)だが、すでにコンポ
ーネントを積み重ねるチップの開発が進んでいる。それによって
チップの底面積は縮小しないかもしれないが、高層ビルのほうが
低層ビルより多くの人を収容できるのと同じで、チップに組み込
むコンポーネントの数を増やせることになる。
         ──英『エコノミスト』編集部/土方奈美訳
   「2050年の技術/英『エコノミスト』誌は予測する」
                       『文藝春秋』
─────────────────────────────
 チップの3次元化はきわめて実現性のある技術です。微細化に
頼らずに、チップを何層にも積み重ねて立体的に接続することで
性能を高めることができます。フラッシュメモリでは、30層〜
40層に積み重ねる技術が既に完成し、商品化されています。こ
のような既存の技術を活用すれば、チップの3次元化は十分可能
であるといえます。
 第2の要因は「高集積度の回路から発する熱の問題」です。
 集積度を高めた回路を高速で動かすと、高い熱が発生します。
トランジスタを動かす電圧を低くすることで、ある程度対応でき
ますが、0・7ボルト以下にすると、トランジスタの動作が不安
定になることがわかっています。
 チップの熱、とくに3Dチップの場合は頭の痛い問題です。現
状のヒートシンクやファンでは、どうしても限界があります。こ
れに関して、科学記者のティム・クロス氏は、次のような画期的
な提案をしています。
─────────────────────────────
 熱を逃すための表面積は発熱量の増加に見合うスピードでは増
えないし、同じ理由から、3Dチップに十分な電力とデータを供
給しつづけるのも難しい。このためIBMが靴箱並みのスーパー
コンピュータをつくるには液体の冷却材が必要だ。そして冷却液
を循環させるため、個々のチップには微細な経路を開けなければ
ならない。冷却液は冷却に加えて、電源の役割も担えるとIBM
は考えている。つまり冷却液をフロー電池の電解質としで使うの
だ(フロー電池では電解質が固定された電極を通過していく)。
        ──英『エコノミスト』編集部著の前掲書より
─────────────────────────────
 コンピュータチップから発する熱は、多くの場合、ファンで冷
却するのが通例ですが、水冷、つまり液体の冷却液で冷やすとい
うアイデアは斬新です。
 かつて私は、水冷のPCを使っていたことがあります。NEC
の特殊な一体型のPCです。今どきのPCは十分オーディオ装置
として使えますが、PCには強力なファンがついているので、オ
ーディオ装置としては最悪です。ティム・クロス氏のいう液体の
冷却材のアイデアはそういう意味で斬新です。これだけのアイデ
アがあれば、ムーアの法則は、まだ十分に継続可能であるといえ
ます。         ──[次世代テクノロジー論/23]

≪画像および関連情報≫
 ●「ムーアの法則」終焉説は根拠なし
  ───────────────────────────
   自民党議員が安全保障関連法案に批判的なメディアに対し
  て、「マスコミを懲らしめるには広告収入をなくせばいい」
  などという発言を行ったことが明るみになり、世間を騒がせ
  た。日本国憲法第21条第1項では、「集会、結社及び言論
  出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定めら
  れており、メディアは批判的な報道をしても一向に構わない
  ことになっている。したがって、発言が出た同党若手議員に
  よる勉強会「文化芸術懇話会」代表の木原稔議員が同党青年
  局長を更迭されたのは、当然の処置である。
   しかし、明らかに間違っていることを報道した場合、その
  メディアは真摯に間違いを認めて修正報道を行い、陳謝すべ
  きである。それを怠ると、「吉田証言」「吉田調書」をめぐ
  る誤報問題で批判を浴びた朝日新聞のように、大きく信頼を
  失墜させることになる。最近筆者が気になっているのは「半
  導体の微細化」に関する日経グループの一連の報道である。
  彼らは、頭から「微細化は終焉する」と決めてかかって報道
  を行っている気配がある。そのため事実は歪曲され、それを
  読んだ半導体業界関係者をミスリードする危険性がある。本
  稿では、その間違いを指摘し、半導体の微細化は今後少なく
  とも10年は続くことを論じたい。
   月刊誌「日経エレクトロニクス」(日経BP社/4月号)
  は『さらばムーアの法則』というタイトルの記事で、ムーア
  の法則が終焉するという主旨の記事を掲載した。
                   http://bit.ly/2l9bTr7
  ───────────────────────────

インテルの「スカイレーク」.jpg
 
インテルの「スカイレーク」
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2017年10月27日

●「スパコンでも解けない問題がある」(EJ第4634号)

 ムーアの法則を継続させる──なぜこのことが問題なのかとい
うと、それが今後のコンピュータの発展を左右するからです。コ
ンピュータはつねに発展していかなければならないのです。
 スパコンについて、かつて民主党(当時)蓮舫議員は、「2位
じゃ、ダメなんでしょうか」という有名なことばを口にしました
が、2位じゃダメなのです。科学技術を発展させるためには、コ
ンピュータが最速である必要があります。コンピュータは、現在
も発展途上のマシンであるからです。
 スパコンの「京」でも解けない問題があります。それは、次の
ような循環セールスマン問題です。
─────────────────────────────
 セールスマンが、いくつかの都市を一度ずつすべて訪問して、
出発点に戻ってくるときに、移動距離が最小になるような経路を
求めなさい。           ──循環セールスマン問題
─────────────────────────────
 ちょっとできそうな問題に見えます。数学的にいうと、都市数
を「n」とすると、可能な経路は「n!/2n」通り存在するこ
とになります。「n」の値が小さいときは、全ての組み合わせを
調べられるので、最短経路はわかるのですが、「n」が大きくな
ると、この組み合わせの総数は爆発的に増加し、すべてを調べる
ことは困難になります。
 例えば、都市数を10としましょう。そのときの組み合わせの
総数は181440通りですが、30都市になると、次のように
なります。
─────────────────────────────
    30都市の場合 → 4・42×10の30乗
─────────────────────────────
 この計算を「京」で解くと、1401万年もかかるのです。事
実上計算は困難です。それでは、この問題を解くメリットは何か
というと、問題が解けると、あらゆる自動車の移動ルートを最適
化できるので、世界中から交通渋滞を解消させる可能性があるの
です。実現すれば大きなメリットがあります。
 また、これまであり得なかったような効き目の医薬品が開発で
きる可能性もあります。医薬品メーカーは、いまタンパク質の構
造をどう変えれば、薬効の高い医薬品ができるか、コンピュータ
を使って懸命に分析しています。このようなタンパク質の構造分
析も組み合わせの最適問題に属します。組み合わせ問題は、数学
好きなヒマ人の道楽ではないのです。
 このように、コンピュータにも「革新」が求められており、現
在「量子コンピュータ」の開発が進められています。量子コンピ
ュータは、量子力学の原理を応用して演算を行うコンピュータで
す。既存のコンピュータに比べて圧倒的に高速に計算できる夢の
マシンであり、1990年代から世界中で開発が進められていま
すが、現在のところ完成していないのです。
 しかし、今までのアプローチとは異なる「ディーウェーブシス
テムズ」と称する量子コンピュータができており、既にNASA
やグーグルで試験的に使われています。これによって、今までは
「近似解」しか出せなかったものが、「厳密解」を出せるように
なっているといいます。しかし、まだ実用化のレベルには達して
いるとはいえない状況です。
 ここでスパコンの話から従来のコンピュータ(PC)に話を戻
します。PCの速度は何によって決まるでしょうか。PCの速度
についてはさまざまの要素が絡みますが、基本的にはCPUの速
度で決まります。CPUはトランジスタで構成されていますが、
これは電子スイッチとして使われます。
 CPUには「クロック周波数」という数値がありますが、これ
はCPUの能力を示す尺度のひとつになります。クロック周波数
は、例えば「3・4GHz(ギガヘルツ)」というように表現し
ます。G(ギガ)は10億であるので、「3・4GHz」は、1
秒間に34億回オンとオフを繰り返す速度になります。なお、現
在の多くのPCはこのクロック周波数を上回っています。
 1秒間に34億回ですから、速いというイメージはありますが
1969年にはじめて月面着陸に成功したアポロ11号のクロッ
ク周波数が「1MHz」程度でしかなかったことを考えると、こ
れは物凄い速度です。
 CPUはどのような構造になっているでしょうか。簡単にいう
と次の3つから構成されます。
─────────────────────────────
           1.   コア
           2.キャッシュ
           3.   バス
─────────────────────────────
 中心部は1の「コア」です。各種の演算処理を行う中心部分で
あり、CPUそのものです。2の「CPUキャッシュ」はデータ
を一時的にストックしておくメモリで、処理速度を向上させるも
のです。3の「バス」は外部とつながる経路です。
 コアは、2000年までは1個であり、ムーアの法則により、
年々速度を上げてきたのです。8ビットCPU、16ビットCP
U、32ビットCPUまではコアはあくまで1つであり、シング
ルチップといわれます。
 しかし、64ビットCPUからはシングルチップでも出ました
が、多くは、コアは2個ないし、4個になっています。これは、
CPUの微細加工の限界と、速度を上げることに伴うCPUの発
熱を回避するため措置なのです。なお、CPUの数によって、次
の名称があります。
─────────────────────────────
     1.CPUが2個 ・・ デュアル・コア
     2.CPUが4個 ・・ クアッド・コア
─────────────────────────────
            ──[次世代テクノロジー論/24]

≪画像および関連情報≫
 ●デュアルコア/クアッドコア/オクタコア
  ───────────────────────────
   スマートフォンやタブレットの宣伝だけではなく、コンピ
  ュータの宣伝でも見かけることの多い「クアッドコア」とか
  「オクタコア」という言葉ですが、そもそもどういう意味な
  のでしょうか?クアッド(Quad)とは英語で4倍を意味する
  言葉で、オクタ(Octa)とは同様に8倍を意味します。つま
  り、CPUにコアが4個であるとか、8個搭載されていると
  いう意味になります。少数派では有りますが、6個のヘキサ
  コアであるとか、12個のドデカコアもあります。
   昔のCPUはひとつのコアしか搭載していませんでした。
  しかしCPUがどれだけ高速になっても、1つのコアは同時
  に1つの事しか行うことが出来ません。CPUを早くしても
  一度に一つのことしか出来ないので、コアを増やして一度に
  複数のことを同時に行えるようにしたのが、デュアルコアや
  クアッドコア、オクタコアと呼ばれるマルチコアCUです。
  そのため、コアの数イコール性能といううわけではありませ
  ん。コアの数の多さのみをあらわしています。オクタコアや
  クアッドコアでコアを沢山積んでいても、一つ一つのコアの
  性能が低く計算が遅いようでは、CPUとしての性能は高く
  は有りません。なお、この計算の速さをクロック数と呼び、
  1・8GHzとか書かれている数字が、クロック数です。厳
  密には、CPUの性能はこれだけでは比較できないのですが
  今回の記事では割愛します。    http://bit.ly/2iA2oR1
  ───────────────────────────
 ●図形出典/岩本敏男著/『IT幸福論』/東洋経済新報社刊

デュアルコア/クアッドコア.jpg
デュアルコア/クアッドコア
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2017年10月30日

●「『テクノロジー4・0』とは何か」(EJ第4635号)

 現代をどのような時代として捉えるべきでしょうか。大前研一
氏は、現代を「テクノロジー4・0」と呼んでいます。3つのテ
クノロジー革命を経て、現代にいたっているというのです。
─────────────────────────────
      ◎テクノロジー1・0
       ・技術革新に伴う産業上の変革
      ◎テクノロジー2・0
       ・工業化による大量生産の時代
      ◎テクノロジー3・0
       ・情報革命による通信変革時代
      ◎テクノロジー4・0
       ・スマートフォンセントリック
          ──大前研一著/『テクノロジー4・0/
         「つながり」から生まれるビジネスモデル』
                     KADOKAWA
─────────────────────────────
 「テクノロジー1・0」とは、18世紀から19世紀にかけて
英国で起きた産業革命のことを指しています。モーターが開発さ
れ、電気が普及し、ジェームス・ワットが新方式の蒸気機関を開
発し、機関車が動いたあの産業革命です。これによって、内燃機
関、機械設備を持つ工場が稼働するようになり、大量生産の体制
ができるようになったといえます。
 「テクノロジー2・0」とは、工業化による大量生産の時代を
意味しています。工業化が進展し、各家庭に比較的安い価格で家
電製品が入るようになり、勤労者のなかに中産階級が育つように
なります。
 「テクノロジー3・0」とは、いわゆる情報革命です。電話や
PCが企業はもちろん家庭にも普及し、メールをやりとりし、通
信革命が起きます。このテクノロジー3・0について、大前研一
氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 電話線によっていろいろな人かつながり、情報伝達の手段が充
実するようになります。留守番電話ができ、その場にいなくても
メッセージを受け取れるようにもなりましたし、ファクシミリに
よって離れた相手に文字などの情報を一瞬にして伝えられるよう
になりました。それが情報革命の初期であり、さらにパソコン通
信ぐらいまでが、テクノロジー3・0時代と位置付けられます。
(中略)トフラーの言った第3の波とは、「張り巡らされたネッ
トワーク」によって世界中のコンピュータがつながっていくこと
を意味しており、いわゆるインターネット第一世代を指していま
す。              ──大前研一著の前掲書より
─────────────────────────────
 大前研一氏は、テクノロジー3・0を「パソコン通信ぐらいま
で」といっています。パソコン通信といっても、インターネット
世代の若い人は知る由もありませんが、特定のサーバ(ホスト)
とその参加者(会員)の間だけの閉じたネットワークサービスの
ことです。1980年代から1990年代が最盛期です。199
5年のウインドウズ95の発売までは、インターネットは日本で
はほとんど普及していなかったのです。
 その後に「テクノロジー4・0」の時代がやってくるのです。
そして現在はまさにその真っ只中にあります。大前研一氏はこの
テクノロジー4・0の時代を経済に関連させて論じ、フィンテッ
ク、位置情報ビジネス、IoTなどに関わる新時代のビジネスモ
デルについて論じていますが、その内容はなかなか深く、時代を
読む参考になります。
 コンピュータが進化することによって、あらゆるものにデジタ
ル化が進みます。ファクシミリ、電話、録音機、カメラ、そして
テレビ、ビデオなど──すべてにアナログからデジタルへの変化
が進行したのです。
 これらは、そのひとつひとつがモノを中心とした島、デジタル
アイランドを形成します。それぞれが独立した島です。やがて、
これらのデジタルアイランドがひとつにつながり、デジタルコン
チネント(大陸)になる変化が起きます。これについて、大前研
一氏は次のように説明しています。
─────────────────────────────
 これまでの状況は、商品別に独立した島があったようなもの。
つまりデジタルアイランドだったわけだ。ところが、今後はそれ
らがつながっていって、大陸(コンチネント)が生まれていく。
例えば、登場当初はただの定期券の発展版に過ぎなかったスイカ
(Suica) が、いつの間にやらコンビニ決済機能まで持つように
なったのはその典型である。
 「デジタルアイランドからデジタルコンチネントへ」とは、業
界の大再編が行なわれようとしている、ということを意味してい
る。この動きが理解できれば、新しい事業機会を予見できるので
はないだろうか。そのためには、今やっていることが淘汰される
側にあるのか、成長する側なのかをしっかり考えることだ。デジ
タル社会はスピードが速いので、ぼやぼやしていると取り残され
る危険がある。気が付いてから対応したのでは間に合わない可能
性もあるのだ。           http://nkbp.jp/2y9SIDJ
─────────────────────────────
 大前研一氏は、このデジタルコンチネントのことを「見えない
大陸」と呼んでいます。大前氏は2001年に『新・資本論/見
えない大陸へ挑む』(東洋経済新報社)を上梓していますが、副
題に「見えない経済大陸」という言葉を使っています。この本の
なかで、この大陸の覇者になるのは、従来のビジネスモデルを超
える発想がないと、成功はできないといっています。
 テクノロジー4・0は、このデジタルコンチネントにおける情
報革命であり、物流革命であり、生活革命であり、企業競争の革
命であると大前氏は主張しています。
            ──[次世代テクノロジー論/25]

≪画像および関連情報≫
 ●「テクノロジー4・0が生む『新しい格差』」/大前研一氏
  ───────────────────────────
   テクノロジー4・0を理解するうえで重要なのは、「テク
  ノロジー」という言葉が使われているからといって、テクノ
  ロジー4・0を電子技術やコンピュータ技術だと思うのは大
  間違いということです。
   インターネットの発達でサイバースペースが広がり、マル
  チプルでデジタルコンチネントが加速度的に構築され、国境
  がないボーダレス経済となっても、パン屋さんがパンを焼き
  配送トラックが街を走るといったリアル経済の空間はなくな
  りません。むしろ、ほかの空間で成長が起きれば、リアル経
  済の成長が促されることもあるでしょう。
   従来どおりのリアル経済、ボーダレス経済、サイバー経済
  の中で、マルチプルという飛び道具を使って、見えない大陸
  =デジタルコンチネントを切り開いていく。そして従来型の
  企業を凌駕していく。それがテクノロジー4・0時代に成功
  するためのビジネスモデルなのです。
   これからのビジネスマンに必要なのは、テクノロジー自体
  の理解はもちろんのこと、「それぞれのテクノロジーのつな
  がりを俯瞰する視点」です。位置情報とIoTを組み合わせ
  て新しいサービスを提供する、IoTをベースとしたサービ
  スを利用する際にフィンテックによって生まれた決済方法を
  利用するなど、テクノロジーを組み合わせることで新しいビ
  ジネスモデルが誕生しています。テクノロジーのつながりを
  俯瞰することで、ビジネスのアイデアが生まれやすくなりま
  す。               http://bit.ly/2hdT6qr
  ───────────────────────────

大前研一氏.jpg
大前 研一氏
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2017年10月31日

●「グーグルの独自のビジネスモデル」(EJ第4636号)

 「見えない経済大陸」でビジネスに成功するには、従来のビジ
ネスモデルを超える発想がないと、成功できない──昨日のEJ
の最後に書いた言葉です。ここでいう従来のビジネスモデルを超
える発想とは何でしょうか。
 わかりやすい例として、グーグルとアマゾンの成功が上げられ
ます。これら2つの企業は、まさに見えない経済大陸、すなわち
インターネットの世界での覇者といえるからです。これについて
は異論がないと思います。
 グーグルについて私が認識を改めたのは、梅田望夫氏の『ウェ
ブ進化論』(ちくま新書)を読んでからです。この本は、ブログ
が登場した頃の2006年に刊行されており、インターネットの
世界がまだ少ししか見えていないときです。そのとき、多くの人
は、グーグルという企業は、検索エンジンを作る技術を持つ企業
で、インターネット上の広告を扱うらしいぐらいの認識しか、な
かったと思います。梅田望夫氏の『ウェブ進化論』に印象深い次
の一節があります。
─────────────────────────────
 文章を書く、写真を撮る、語り・対話・議論を録音する、音楽
を作る、絵を描く、ホームビデオで録画する、映像を作る。そし
て、その結果を皆がインターネット上に置く。ではそれで何が起
こるのか。
 確かにこんなことはインターネットが登場してまもない10年
前から盛んに議論され、たくさんのビジネスが試されては消えて
いった。バブル崩壊と共に終了した第1次インターネット・ブー
ム時の結論は「何も起こらない」だった。
 「普通の人が何かを表現したって誰にも届かない」が当時の結
論。でもそれは、玉石混交の彪大なコンテンツから「玉」を瞬時
に選び出す技術が、当時はまだほとんど存在していなかったから
である。         ──梅田望夫著/ちくま新書582
     『ウェブ進化論/本当の大変化はこれからはじまる』
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 ウェブサイトが普及し、ほとんどの企業がウェブサイトを持つ
ようになったとき、当時は「そんなもの作ったって、誰も見やし
ないよ」という声が多くあったことは確かです。実際に、第1次
インターネットといわれる2005年まではそうだったのです。
 当時ウェブサイトを検索するには、インターネット・エクスプ
ローラを使っていたのですが、その検索能力のレベルは、今から
考えると、きわめて低いものであり、目指すウェブサイトにたど
りつくには、URLを正確に入力しないとできなかったのです。
 グーグルが創業したのは1998年のことです。最初にやった
ことは、検索エンジンを無料で頒布したことです。その検察の精
度は、明らかに当時のインターネット・エクスプローラを超えて
いたのです。そこで多くの人がグーグルの検索エンジンを使うよ
うになります。その精度は年を追って高くなり、URLではなく
キーワードでの検索がはじめて可能になったのです。
 グーグルは2004年に株式公開を果たし、2005年10月
にその時価総額は10兆円を超えています。それは、検索エンジ
ンの性能アップによって、玉石混交の膨大なコンテンツのなかか
ら「玉」を選び出すことが少しずつ可能になったことを示してい
ます。誰でも無料で使える検索エンジンの性能が上がればブログ
を含むどのようなウェブサイトも見つけられるようになり、グー
グルの広告は拡大発展するからです。梅田望夫氏は、これについ
て次のように述べています。
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 グーグルの登場は世界中のIT関係者を刺激した。「増殖する
地球上の膨大な情報をすべて整理し尽くす」という領域について
の研究、技術開発、ビジネス創造が今や大変な勢いで行われるよ
うになった。ここが、ポスト・ネットバブルたる現代の本質で、
90年代後半とは全く様相を異にしているところである。そして
それはすべて、インターネット登場以来の懸案だった玉石混交問
題の解決につながる営みなのである。
 それと同時に「チープ革命」も粛々と進行中で、表現行為のた
めのコスト的敷居は年々低くなり、道具は誰にでも使える方向に
進化するから、表現者は増加の一途をたどる。グーグルと「チー
プ革命」が相乗効果を起こす形での「本当の大変化」はこれから
始まるのである。        ──梅田望夫著の前掲書より
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 ここに「チープ革命」という言葉が出てきます。これはどのよ
うな意味なのでしょうか。
 コンピュータやネットワークの発達によって、膨大なコンテン
ツがネット上に広がりますが、それを見つける道具をインターネ
ットを利用する全員が持つと、人々は大陸というよりも宇宙に匹
敵するほどの広大なネットのなかから、必要なコンテンツを見つ
けられるようになります。そのため、ネット広告をはじめとする
あらゆるビジネスを展開・拡大することが可能になります。だか
らこそグーグルはその道具である検索エンジンを売らずに無料で
頒布したのです。これは、今までになかったビジネスモデルであ
り、梅田氏は「チープ革命」と呼んでいるのです。これは従来の
ビジネスモデルを超える発想です。
 改めてチープ革命というのは、ICTに関するほとんどのハー
ドやソフトが、きわめて低コスト、いや多くは無料で入手できる
ことをいうののです。つまり、ICTに使う道具はタダ同然に手
に入れられるということです。
 これは、スマートフォンについてもいえることです。マシン自
体はかなりコストがかかっているのですが、メーカーや携帯電話
会社は、さまざまな工夫によって、誰でも手に入れられるように
しています。いわゆる「実質ゼロ円」の戦略です。少しでも多く
の人に保有させ、毎月の通信料で稼ぐ──これもチープ革命であ
るといえます。総務省はこれにブレーキをかけていますが、時代
錯誤の判断です。    ──[次世代テクノロジー論/26]

≪画像および関連情報≫
 ●2045年のチープ革命
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   鈴木健です。梅田望夫さんは、漸進的なコンピュータの性
  能向上が、いかにして新しい技術やサービスを生み出すかを
  チープ革命という概念で説明します。これは、フォーブス誌
  コラムニストのリッチ・カールガードがもともと発明した言
  葉です。それまでであれば無駄だと思われていたようなリッ
  チなリソースの使い方が、チープ革命によって十分可能な領
  域に入ると、新しいイノベーションが起きるのです。
   産業技術総合研究所から、最近アップル社に移籍したイン
  ターフェイス研究者の増井俊之さんにいわせれば、富豪的プ
  ログラミングということになるでしょうか。
   チープ革命がどのように進行するかを予測すれば、次のト
  レンドがどこにあるのかを言い当てることができそうです。
  たとえば、アップルのアイポッドは、小型HDDの容量が音
  楽を1000曲格納可能なところまで増えたことから可能に
  なりましたし、近年のユーチューブなどの動画共有サイトの
  勃興は、ブロードバンドの普及率が閾値を超え、サーバー側
  のストレージ容量も動画を置くのに十分なほど安くなったこ
  とから可能になりました。そこで、2045年までに、この
  チープ革命がどのように進行するかを予測して、そこから見
  えてくる世界を想像してみましょう。
                   http://bit.ly/2zO4RKO
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梅田望夫氏.jpg
梅田 望夫氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする