2017年09月27日

●「日本の15歳の能力は極めて高い」(EJ第4613号)

 科学雑誌『ネイチャ−』によると、日本の科学成果の発表の水
準は低下しており、ここ10年間で他の科学先進国に大きく遅れ
をとっていることが明らかになっています。『ネイチャ−』は次
のようにそのことを伝えています。
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 ネイチャー・インデックスに収録されている高品質な科学論文
に占める日本からの論文の割合は、2012年から2016年に
かけて6%下落しました。中国の急速な成長の影響により、米国
などの科学先進国が占める割合は相対的に低下していますが、日
本からの論文発表は、絶対数も減少しています。
 ネイチャー・インデックスに収録されている高品質の自然科学
系学術ジャーナルに掲載された日本の著者による論文数は、過去
5年間で8・3%減少しています。   http://bit.ly/2xtuzVi
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 これは、科学教育、すなわちSTEMや基礎研究開発に関わる
国策の失敗によるものといえます。このままでは今後日本のノー
ベル賞受賞者の数は激減してしまう恐れがあります。しかし、日
本人の科学技術に関する資質、能力は非常に高いのです。
 2012年にOECDが行った「OECD生徒の学習到達度調
査」(PISA)では、日本は、読解力と科学的リテラシーでは
第1位、数学リテラシーでは第2位と、ずば抜けています。日本
の15歳はきわめて優秀であるといえます。
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 ◎PISA2012調査による国際比較/ベスト5
       数学リテラシー          読解力
   @韓国     554  @日本     538
   A日本     536  A韓国     536
   Bスイス    531  Bフィンランド 524
   Cオランダ   523  Cアイルランド 523
   Dエストニア  521  Dカナダ    523
   OECD平均  494          496
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      科学的リテラシー
   @日本     547
   Aフィンランド 545
   Bエストニア  541
   C韓国     538
   Dポーランド  526
   OECD平均  501 ──成毛真著/SB新書375
 『AI時代の人生戦略/「STEAM」が最強の武器である』
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 しかし、この順位をみるさい注意すべきことがあります。中国
はOECD加盟国ではなく、主要パートナーであり、統計に入っ
ていないことです。台湾は中国の妨害にあってこの統計から外さ
れています。シンガポールはOECD加盟国ではありません。
 そこで、OECD平均値より上位の国・地域でベスト5をとっ
てみると、次のようになります。上位はほとんど中国(上海、香
港、台湾)に席巻されてしまいます。中国恐るべしです。ちなみ
に、数学リテラシーで日本は第7位(536)です。
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 ◎OECD平均値より上位の国・地域/ベスト5
       数学リテラシー          読解力
   @上海     613  @上海     570
   Aシンガポール 573  A香港     545
   B香港     561  Bシンガポール 542
   C台湾     560  C日本     538
   D韓国     554  D韓国     536
  ―――――――――――――――――――――――――
      科学的リテラシー
   @上海     580
   A香港     555
   Bシンガポール 551
   C日本     547
   Dフィンランド 545   ──成毛真著の前掲書より
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 この2012年の調査結果を見て、ショックを受けたのは、当
時のオバマ米大統領です。米国が上位に入っていないからです。
米国の順位は、数学リテラシーが36位、読解力が24位、科学
的リテラシーが28位とさんざんな結果です。
 これを受けて、オバマ大統領は、2012年11月に再選を果
たすと、CNNに次の寄稿をし、「コミュニティ・カレッジ」に
よるSTEM教育を強化したのです。
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 変革とは、どんな年代の人でも、良質な職に就くための技能と
教育を得られる国にすることだ。私たちは、銀行が数十年間にわ
たって学生口−ンに過重な金利を課してきた状況を改め、大学に
進学する数百万人の費用負担を軽減した。
 今後は高技術・高賃金の雇用が中国へ流れないよう、数学と科
学の教師を10万人採用し、コミュニティ・カレッジでは地域産
業界がまさに今必要としている技能の訓練を、200万人の労働
者に提供する。             ──オバマ米大統領
                 ──成毛真著の前掲書より
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 コミュニティ・カレッジは、職業訓練に重点を置いた2年制の
高等教育機関です。ここで、徹底的にSTEM教育を実施するの
です。日本でいえば、専門学校であり、ここを卒業して大学に行
くか、そのまま就職する人もいます。
 日本は米国よりはかなり上位にいるものの、中国などのアジア
勢のレベルは高く、日本はSTEM教育のために、大学入試制度
などの改革が必要です。 ──[次世代テクノロジー論/03]

≪画像および関連情報≫
 ●日本の科学研究の実力が急速に低下している
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   2017年度版の「科学技術白書」(6月2日政府、閣議
  決定)によると、主要な科学論文誌に発表された論文のうち
  引用された件数の多い論文の国別順位で、日本はこの10年
  間で4位から10位に下がっており、基礎研究力の低下が著
  しいと指摘されている。
   すでに日本の基礎研究力の低下は議論されており、政府は
  4月に行われた総合科学技術・イノベーション会議(議長は
  安倍晋三首相)で名目GDP(国内総生産)600兆円の達
  成に向け、技術革新を推進するための研究開発への投資額を
  来年度から3000億円上積みする方針を固めた。
   生産性向上のためには科学技術のブレークスルーが必要と
  なるが、日本の財政を考えると大盤振る舞いできる状況には
  ない。第5期科学技術基本計画で示されている「(政府研究
  開発投資は)対GDP比の1%にすることを目指す」を中心
  に議論せざるをえないため、研究開発投資の金額を増やすた
  めにはGDPを増やす必要がある。これはつまり、「高い経
  済成長をするためには高い経済成長が必要である」と言って
  いることになり、とても苦しい状況だ。3月23日に英国の
  科学誌『ネイチャー』は「日本の科学成果発表の水準は低下
  しており、ここ10年間で他の科学先進国に後れを取ってい
  る」と発表した。         http://bit.ly/2wLFAUM
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日本の科学技術関係費は伸びていない.jpg
日本の科学技術関係費は伸びていない
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 次世代テクノロジー論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする