2017年09月19日

●「3回連続汚染度悪化/追加の検査」(EJ第4607号)

 7月3日から書いてきた「中央卸売市場論」は、今回を含めて
あと4回で終了します。当初は30回程度でまとめたかったので
すが、調査していくと隠された事実が続々と出てきて、結局58
回まで膨らんでしまいました。しかし、大事なことはきちんと書
いたと自負しています。
 来年の秋に豊洲市場への移転を宣言した小池知事に対し、市場
関係者は「豊洲市場の安全宣言を出せ!」と迫っています。その
さなかのことですが、9月14日の日本経済新聞は次の記事を掲
載しています。
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 東京都は9月14日、豊洲市場の敷地内の地下水から8月中旬
に環境基準の120倍のベンゼンを検出したと発表した。昨年以
来、ベンゼンの濃度は100倍前後と高止まりが続いている。シ
アンとヒ素も基準超のまま。一方、同時期に実施した市場建物内
などの空気調査ではベンゼンなどの濃度は環境基準を満たした。
 土壌汚染対策の有識者からなる専門家会議は市場建物内の空気
について「科学的な安全は確保された状態にある」とのコメント
を公表した。地下水の結果に関しては「(従来に比べ)全体的に
見れば、大きく汚染状況が変化した傾向は確認できない」として
いる。豊洲市場では、地下水を生鮮食品の洗浄水や飲み水として
使わない。市場の業界団体は小池百合子知事に対して、豊洲市場
の「安全宣言」を求めている。  ──日本経済新聞電子版より
                http://s.nikkei.com/2x80HgX
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 ここで、この豊洲市場の地下水モニタリング調査は何のために
やっているのかを改めて考える必要があります。豊洲市場の地下
水調査は、東京都が土壌汚染対策工事を終えた2014年から2
年間の計画で調査し、1回〜8回はすべて環境基準以下をクリア
していたのです。そして、2017年1月公表の最後になる9回
目も環境基準以下がクリアできれば、改正土対法による汚染区域
(形質変更時要届出区域)のレッテルが外せたのです。ところが
第9回の調査結果は基準値の最大79倍のベンゼンなどが検出さ
れ、汚染区域のレッテルは現在も外せないままです。
 このことは、8月31日のEJ第4595号でも述べています
が、きわめて重大なことです。首都東京都の中央卸売市場が汚染
区域の上に建っているからです。
 なぜか、メディアは熱心に取り上げないのですが、この地下水
汚染調査は、不思議なことだらけです。なぜなら、石原、猪瀬、
舛添各知事のときの第1回〜第8回までの検査結果は、そのすべ
てが環境基準値以下であるのに、小池知事になってからの第9回
の調査結果だけが、なぜ、環境基準値の79倍のベンゼン検出な
のでしょうか。石原、猪瀬、舛添各知事が豊洲移転推進派であっ
たことを考えると、その調査結果に何らかの改竄があった疑惑は
否定できないと思います。
 おかしなことはまだあります。この9回目が突出して数値が高
かった理由について専門家会議は、9回目を担当した調査会社が
それまでと異なることや、調査手法が異なること、それに加えて
9回目のサンプル採取が地下水管理システムが稼働した直後だっ
たので、その違いが出たのではないかと述べています。
 専門家会議のこの発言は明らかにおかしいです。業者が違って
も、地下水の汚染調査の方法は、改正土対法に詳しく定められて
おり、誤差が出てもせいぜい数倍程度であって、79倍の差が出
るはずがないからです。
 それに、地下水管理システムが稼働した直後の地下水サンプル
採取だったというのも限りなく疑わしいです。それなら、専門家
会議のメンバーが主導して実施した第10回の地下水モニタリン
グ調査では、豊洲市場の29ヶ所の調査結果でも100倍にのぼ
るベンゼンが検出されたことです。数字が悪化しており、地下水
管理システムが稼働しているならば、数値が改善するか、現状維
持であるべきなのに、数値が悪化しているのは、地下水には深刻
な土壌汚染がまだあるということです。
 この仮説が明確に裏付けられたのが、第11回目に当たる今回
の調査結果です。なんと12O倍のベンゼン検出です。さらに数
値が悪化しています。
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         第 9回調査: 79倍
         第10回調査:100倍
         第11回調査:120倍
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 これについて、専門家会議の見解は、とても納得のいくもので
はありません。専門家会議は次のようにコメントしています。
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 地下水は、有害物質の濃度が低下傾向にある地点もあり、全体
的に見れば大きく汚染状況が変化したとは確認できない。市場で
地下水は使わず、大気も汚染されていないため安全である。
                   ──専門家会議の見解
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 随分甘い見解であると思います。79倍、100倍、120倍
と数値が高くなっていることには触れず、有害物質の濃度が低下
傾向にある地点があることをことさら強調し、数値の上昇につい
てはコメントしていないのです。明らかに逃げています。
 それに「市場では地下水は使わない」は、明らかに今までより
もハードルを下げています。しかも、ベンゼンは揮発性があり、
空気中に拡散し、当然市場内にも入ってきます。そのために専門
家会議は盛り土を提案したはずです。その盛り土がなかったので
すから、ベンゼンが空気中に拡散することになります。
 「地上と地下に分けて考える」──専門家会議のこの発言は、
土壌汚染が結局は除去できなかったことのエクスキューズに聞こ
えます。豊洲市場は、改正土対法の汚染区域の上に建っている事
実です。          ──[中央卸売市場論/054]

≪画像および関連情報≫
 ●「地上」の健康リスク指摘した報告書を都の専門家は無視
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   東京都の築地市場(中央区)の移転先である豊洲市場(江
  東区)の地下水から、今年1月に環境基準の79倍のよベン
  ゼンが検出されたことを受けて再調査をしていた都の専門家
  会議(座長=平田健正放送大学和歌山学習センター所長)は
  3月19日、79倍が検出されたのと同じ井戸から100倍
  のベンゼンが検出されたと発表した。
   しかし、平田座長は、「(市場の建物内の)地上と地下は
  分けて考えるべき。地上の観測値に変化はなく、地上は安全
  だ」と述べた。実は都は今回のベンゼンが環境基準の100
  倍という結果では地上も安全とは言えない試算をした報告書
  を、日水コン(東京都、野村喜一社長)というコンサルタン
  ト会社にまとめさせていた。だが、同日の専門家会議ではそ
  の報告書にはまったく触れなかった。
   専門家会議は、ベンゼンなど揮発性ガスの上昇を抑える効
  果があるとして盛土を対策の柱として提言、2008年に一
  度解散した。だが昨年9月、肝心の盛土がないことが発覚、
  小池百合子都知事が新たな対策を提言してもらうために専門
  家会議を再招集した。2008年の提言では、地下水から揮
  発したベンゼン、シアンなどがガスとしてすき間などから地
  上の建物内に入り、人の健康や生鮮食料品にどの程度影響を
  与えるかを試算した。その結果、市場の地下水が環境基準以
  下に維持されていれば人の健康に問題はなく、食の安全・安
  心への悪影響も小さいと結論付けた。ただ、これはあくまで
  も盛土があることが前提だった。  http://bit.ly/2jBja2b
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豊洲の地下空間を調べる平田座長.jpg
豊洲の地下空間を調べる平田座長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中央卸売市場論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする