2017年09月01日

●「専門家会議で改正土対法の先読み」(EJ第4596号)

 ここまでの経緯で既にわかると思いますが、なぜ豊洲の建物の
地下に地下空間が必要であったかについてまとめます。2001
年以降の土壌汚染対策関連の条例及び法律を再現します。
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  1.   環境確保条例/2001年10月 1日施行
  2.  土壌汚染対策法/2003年 2月15日施行
  3.改正土壌汚染対策法/2010年 4月01日施行
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 築地市場を豊洲に移転させる決断は、2000年のはじめに石
原元知事によって行われています。ただ、石原氏は、日本の技術
は世界一であるという信念を持っていて、土壌汚染ぐらい日本の
技術をもってすれば十分消滅させることができると信じていたの
です。だからこそ都知事選3期目の公約として「豊洲の土壌汚染
を解消させる」を掲げ、当選しています。
 この公約に基づいて石原都政がつくったのが、平田健正氏を座
長とする「専門家会議」であり、2007年5月19日に第1回
の会合を開いています。その時点で東京ガスは、都の環境確保条
例に基づく土壌汚染対策工事を行い、「汚染防止措置完了届」を
東京都にを提出しています。土対法の施行以前の対策工事なので
土壌汚染はまだ残っているものの、次の附則第3条により、土対
法の適用を免れることができたのです。
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【附則第3条】
 第3条の規定は、この法律の施行(2003年2月15日)前
に使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場又は事業場
の敷地であった土地については、適用しない。
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 土対法は、2003年2月の施行ですが、専門家会議が設置さ
れた時点で既に2010年4月に改正土対法が施行されることは
決まっていたのです。問題は、その改正で上記の附則第3条が撤
廃されるという情報が出ていたことです。
 そうなると、東京都は土地の買主でありながら、莫大な費用を
かけて、改正土対法に基づく大がかりな土壌汚染対策をしなけれ
ばならなくなります。まして、東京ガスとの契約では瑕疵担保条
項を外しているので、すべて東京都が負担しなければならなくな
ります。そういうわけで、専門家会議では、これにどう対応する
かが重要な課題になったのです。
 ジャーナリストの藤野光太郎氏は、これについて、次のように
述べています。
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 言うまでもなく、東京ガスが豊洲の地の使用を廃止したのは土
対法の施行前である。もし、法改正でこの附則第3条が外された
り、または本則のどこかに新たに厳しい規定が盛り込まれるなど
して、豊洲の予定地が土壌汚染対策法の規制対象区域に指定され
れば、そこは「汚染地域」として確定し、手続き上、大掛かりな
汚染調査と根本的な汚染対策が義務づけられることになる。豊洲
の用地取得で都は、所有者である東京ガスが汚染対策を免れ得る
「瑕疵担保特約」を差し出して買収契約を成功させていたからで
ある。そうした経緯から、ただでさえ莫大なコストが発生するの
に、盛り土だけで埋め尽くしてしまえば、当然、その後の汚染再
発時に対策のための機器やシステムが搬入・設置できず、工事で
稼働させることになる重機の出入口もなくなる。
 東京都の幹部や担当者、専門家会議の委員たちが法改正の行方
を注視していたのは、豊洲予定地にそうした対策が必要になるか
否かで変わる土壌汚染対策の必要枠である。都の担当者は当時、
法改正で豊洲の敷地が汚染指定区域になった場合を想定し、前述
の諸作業に備えた建物下の空間確保がどうしても必要だったわけ
だ。こうした懸念から「盛り土が地下空間に化けた」のである。
                   http://bit.ly/2vtUQFj
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 専門家会議には、いうまでもないことながら、東京都の関係部
署の幹部が参加しています。彼らが最も恐れたのは、附則第3条
がなくなり、豊洲新市場の用地が「汚染地域」のレッテルを貼ら
れることです。それもこれもこれまでの土壌汚染をきちんとやっ
てこなかったからです。
 いやそれよりも問題なのは、そもそもひどい土壌汚染があるこ
とがわかっているガス工場の跡地を築地市場の移転地に選定し、
東京ガスに過分の恩典を与えてまで、購入したことです。常識で
は考えられない石原都政の最悪の決断といえます。
 専門家会議のメンバーの心配した通り、改正土対法から附則第
3条を撤廃され、豊洲新市場は「形質変更時要届出区域」に指定
されています。これは豊洲新市場が、土壌汚染区域であるという
レッテルそのものです。このレッテルは何としても外す必要があ
ります。そのための2年間の地下水のモニタリング調査だったの
ですが、最後の最後の9回目の調査で環境基準を大幅に上回る汚
染物質が生じています。
 しかし、建物は既に完成しており、東京五輪までにあと3年を
切っています。藤野幸太郎氏は、最後に次のような興味深いこと
を述べて、このテーマを閉じています。
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 ちなみに、旧法施行から約半年後に環境大臣となったのが、い
ま辣腕を揮っている小池百合子都知事である。環境大臣として3
年間在任中は、今回の汚染問題の急所である「附則第3条」が有
効な土対法が運用された。とはいえ、改正法の諸規定にも同様の
甘い規定が残っている。その改正法にさえ「形質変更時要届出区
域」として指定された豊洲予定地は、誰が判断しても明らかに生
鮮食料品の市場としては不適と言わざるを得ない。
                   http://bit.ly/2vtUQFj
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              ──[中央卸売市場論/043]

≪画像および関連情報≫
 ●もう「地下空間」というのはやめたらどう?/高橋洋一氏
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   テレビでは依然として築地市場の豊洲移転に関する報道が
  多いが、実態としては先週の本コラムで書いた方向になって
  いる。つまり、マスコミがいくら「地下空間」という謎めい
  た名称で報道しようとも、地下ピットの水質調査や空気測定
  の結果は「環境基準の範囲内」、つまり安全なのだ。
   どこの建物にもある地下ピットを、「地下空間」と呼ぶこ
  とを筆者は疑問に思っていた。実際、筆者が出たテレビ番組
  では、そのスタジオがある建物にも、配管修繕のために地下
  ピットがあると説明したのに、それでも豊洲のピットのこと
  は地下空間と呼んでいたからだ。
   知人のメディア関係者は、どの建物にも地下ピットはある
  ものと分かっても、それでは視聴者がそれを問題あるものと
  見てくれないので、あえて問題があるような「地下空間」と
  いう表現を使うと言っていた。この話を聞いて、マスコミの
  底の浅さが改めてわかった。
   先週のテレビ報道では、鉛が出たとか一部マスコミはまだ
  騒いでいた。環境測定は、一定の方法で行うので、都議会の
  各政党が「独自調査でこれこれが出た」というのはあまり報
  道するに値しないのだが、何か出ないとマスコミとしても困
  るのだろう。しかし、結果として、都だけが調査するよりも
  はるかに都民を安心させることになった。
       2016年9月の記事/ http://bit.ly/2xzLpkJ
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ジャーナリスト/藤野光太郎氏.jpg
ジャーナリスト/藤野光太郎氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中央卸売市場論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする