2017年08月18日

●「『盛り土なし』技術会議の決定か」(EJ第4586号)

 専門家会議は、豊洲新市場の土地にどのような調査をしたので
しょうか。
 専門家会議は土壌汚染対策法(土対法)にしたがい、10メー
トルメッシュ(10メートル×10メートルの方眼)に分け、区
画ごとにサンプラー(サンプルをとる管)を土中に挿して、地下
水の概況調査を行っています。
 全体で約4100区画を調べた結果、ベンゼン4万3千倍、シ
アン化合物860倍の高濃度の汚染が見つかり、豊洲新市場全域
に高濃度汚染が広がっている可能性が出てきたのです。
 専門家会議の平田健正座長は、この汚染状態を重視しして、追
加調査を行っています。その結果、サンプラーがたまたまタール
溜まりを貫通した結果であることが判明したといいます。なぜ、
そんなことがいえるかというと、汚染が見つかった周辺の土にサ
ンプラーを挿して調べた結果、同様の汚染が発見できなかったか
らであるという説明をしています。
 この平田座長の言葉から、専門家会議が当初実施した土壌汚染
の調査方法がわかります。区画(メッシュ)の中心部分にサンプ
ラーを挿し、地下水を採取して調べます。もし、何も出なければ
その区画は土壌汚染なしと判断し、その区画については、何もし
ないのです。これに対して、もしある区画で高濃度の汚染が出た
場合は、その区画の他の部分をいくつか調べて、汚染がなければ
汚染の発覚した場所は、たまたまタール溜まりだったと判断し、
その周辺の土をすべて入れ替えるというやり方です。
 しかし、10メートルメッシュでそのやり方をすれば、ほとん
どの汚染を見逃してしまうことになります。おそらくタール溜ま
りはそれぞれの区画にまだら模様に存在していると考えられるか
らです。たまたま汚染がなかったからといって、その区画を「汚
染なし」と判断できないからです。さらにもっと問題なのは、ベ
ンゼンなどの揮発性物質のガスの上昇です。それを防ぐのに有効
なのは盛り土なのです。
 そのため、専門家会議は、全区画の2メール以下の土をすべて
入れ替え、その上に2・5メートルの盛り土をするという提言に
なったものと思われます。この専門家会議のこの汚染土壌処理に
ついて、一級建築士の水谷和子氏は、次のように述べています。
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 「ベンゼンやシアン化合物を含んだタールだまりはクラスター
爆弾のように散らばっている」と、日本環境学会・坂巻幸雄土壌
汚染ワーキンググループ長は発言しています。散らばったタール
だまりを全部探し出すことは、実際のところ不可能です。
 平田座長の結論も「汚染(タールだまり)を全部見つけること
はできない。したがって上部2メートルは全部土壌を除去、その
下は見つかった汚染は除去するが、見落とす汚染もあるから、地
下水も汚染される」でした。したがって「4・5メートルの健全
土を盛り土するが、盛り土が汚染されないように地下水位を管理
する」、以上が専門家会議の結論となったのです。
            ──中澤誠/水谷和子/宇都宮健児著
           『築地移転の闇をひらく』/大月書店刊
─────────────────────────────
 専門家会議はこの提言をまとめて解散し、その実施は、専門家
会議の解散直後に立ち上げられた「技術会議」に委ねられます。
しかし、この技術会議はメンバーや検討内容は非公開になってお
り、おそらくその技術会議のなかで、市場施設の地下の盛り土は
行わない決断がなされたものと思われます。
 専門家会議と技術会議──この2段構えの提言の実現機構につ
いては、8月2日付、EJ第4575号でも取り上げているよう
に、多くの疑惑があります。それは、技術会議が提言の骨抜きを
やっている疑惑があるからです。    http://bit.ly/2uT9y6x
 この場合、もし後になってそれが発覚しても、メンバーが非公
開であれば、追求しようがないからです。座長は原島文雄教授で
あると公開されていますが、原島教授はロボット工学の専門家で
あり、土壌汚染について専門外です。
 このように、証拠はありませんが、おそらく「盛り土なし」は
技術会議で決められたものと考えます。したがって、豊洲新市場
の設計段階から「盛り土なし」は前提になっていたのです。東京
都の新市場整備部は、市場関係者にはこのことを知られてはなら
ないと考えて、表向きは「盛り土あり」の概念図を公開していた
のです。どうせ建物の地下の話であり、建物が建ってしまえばわ
かるはずがないと考えたのでしょう。技術会議で決めたとすれば
石原知事がこの事実を知らないはずはないと考えます。
 しかし、設計が相当程度進んだ段階になって、新市場整備部は
「盛り土なし」が心配になり、「盛り土あり」の設計に変更しよ
うとしたフシがあります。永尾俊彦氏は、開示資料に基づいて、
次のように記述しています。
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 都は、盛土がなくても安全なのか不安だったらしく、「修正設
計報告書」では盛土がない場合のリスク評価まで行っていた。地
下水から揮発したベンゼンなどがガスとして隙間や亀裂から建物
内に入り、人の健康や生鮮食品にどの程度影響を与えるかを「レ
ベッカ」という計算式で試算した。これは専門家会議も使った式
を踏襲した。結論は10万人に1人という「目標発がんリスク」
をクリアするのは、ベンゼンの場合、地下水の環境基準は1リッ
トル当たり0・01ミリグラムだが、その約10倍の0・118
ミリグラムまでは許容されるとなっている。
         ──永尾俊彦著/岩波ブックレット/968
「ルポどうなる?どうする?築地市場/みんなの市場をつくる」
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 この「修正設計報告書」は、日本共産党都議団が入手したもの
です。「盛り土なし」の事実を東京都が最初から知っていたとす
れば、それは都民への裏切りそのものです。
              ──[中央卸売市場論/033]

≪画像および関連情報≫
 ●都がまたウソ 豊洲新市場“地下空間の危険性”認識
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   豊洲市場問題をめぐって、またまた東京都の役人のウソが
  発覚した。土壌汚染対策として専門家会議が提言した「盛り
  土」を無視し、主要建物の地下部分に巨大な空間を設けてい
  たことについて、都は「土壌汚染対策法でベンゼンの拡散を
  防ぐには、厚さ10センチ以上のコンクリートで遮断すれば
  いいと定められており、安全性に問題はない」と釈明してい
  る。しかし、都は土壌汚染対策に着手した2007年当時か
  ら、地下空間の危険性を認識していたことが分かったのだ。
   2016年9月14日の読売新聞によると、都は07年5
  月に土壌汚染対策を検討する専門家会議を設置。その初会合
  で、建物の下に地下空間を設け、市場で運搬用に使われるタ
  ーレー(荷台付き小型三輪車)置き場などに使用する案を提
  示した。
   これに対して委員である専門家は「ベンゼンなど揮発性の
  物質は、ちょっとでも隙間や亀裂があれば室内に入り込む可
  能性がある」と指摘。都はこれを受けて、ターレー置き場を
  地下から地上に変更した。
   ところがその後、都は独断で地下空間を設けることを決め
  11年3月に市場建物の基本設計の入札を実施した。ウソに
  ウソを重ねる都庁の役人に、もはや市場移転問題を担当する
  資格はない。もし民間企業だったら「全員クビ」が当たり前
  だ。               http://bit.ly/2w9xowC
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原島文雄氏.jpg
原島 文雄氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中央卸売市場論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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