2017年08月04日

●「社会福祉総合学院事件の深層探る」(EJ第4577号)

 1999年4月に東京都知事に初当選してから、少なくとも、
2007年4月の都知事第3期当選の頃までの石原都政は、石原
慎太郎氏個人の政治家兼作家の高い人気に支えられ、高い支持率
を誇っていたといえます。2003年に都議会議長に就任した内
田茂氏の率いる都議会自民党も、当初この石原知事の高い人気を
利用しようと考えていたフシがあります。
 しかし内田氏にとってうるさい存在になってきたのは、石原知
事の命を受けて忠実に動く浜渦武生副知事(当時)の存在です。
石原都政は、長い間にわたって守り続けてきた都議会自民党の利
権にまで手をつけようとしてきたからです。
 元来政治家としての石原慎太郎氏は地方の首長よりも国会議員
に向いていると思います。一時期「石原慎太郎を総理にしたい」
と本気で考えていた国民が多くいたことは確かです。「彼なら日
本政治の閉塞感を一掃してくれる」と期待したからです。
 しかし、国会議員としての石原氏はポストに恵まれず、「東京
から日本を変える」をスローガンに東京都知事選に打って出たの
です。それに「伏魔殿といわれる都議会を変える」という強い意
思と正義感をもって都政に臨んだことは確かです。
 ところで、浜渦武生氏という石原慎太郎氏の腹心の部下といわ
れる人物は、2005年7月に100条委員会にかけられ、偽証
をしたとして辞任させられています。それから12年後の今年の
5月に、築地市場の豊洲移転における東京ガスとの交渉において
またしても100条委員会にかけられ、都議会から偽証と認定さ
れています。2回にわたる100条委員会です。
 この事実だけを見ると、浜渦氏は、よほど悪いことをした人物
のように思えますが、2007年の偽証告発の理由について都民
は知る必要があります。それによって、当時の都議会自民党の実
態がわかるからです。浜渦氏が最初の100条委員会にかけられ
たのは、「東京都社会福祉総合学院」に関する事件の関連です。
浜渦氏は、東京都の監理団体の担当を任されていたのです。
 2005年2月23日のことです。東京都政の包括外部監査で
東京都の補助金で建設された東京都社会福祉総合学院の施設が民
間の学校法人に、格安で転貸されている実態が明るみに出たので
す。自民党都議会議員にとって、福祉関係の利権はきわめて重要
です。それを都議会のドンといわれる内田茂都議会議長(当時)
が仕切っており、知事といえども踏み込めない牙城といわれてき
たのです。しかし石原知事は、浜渦副知事を監理団体担当者に任
命し、そこへの切り込もうとしたのです。
 そもそも「東京都社会福祉総合学院」は何であり、何が問題な
のでしょうか。
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 この東京都社会福祉総合学院は施設の建設中に当初計画が変更
となり、学校教育を終え社会に一端出た後、最新の知識や高度な
技術を習得するために行なわれるいわゆるリカレント教育に特化
するということになった。その結果、東京都社会福祉総合学院は
開校時、昼間はほとんど施設を利用しないことになっていた。
 東京都社会福祉総合学院は、翌年、昼間に空いた教室を民間の
学校法人に貸し付けた。同時に、夜間行なっている学院の事業も
同じ民間の学校法人に運営委託するとしたのである。その後、民
間の学校法人は、東京都社会福祉事業団と5年間の定期建物賃貸
借契約を結ぶとともに、新たな専門学校である臨床福祉専門学校
を設立し、昼間の空いた教室を使用し現在に至っている。
                   http://bit.ly/2u61jFo
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 社会福祉事業団は、金融機関から融資を受けて校舎を建設して
います。当然、支払いが発生しますが、それは全額東京都からの
補助金で支払えるのです。そもそもなぜ補助金が出るかというと
社会福祉事業団の事業を援助するためです。
 しかし、社会福祉事業団は学校施設を民間の学校法人に貸し付
け、本来事業団が行うべき事業(リカレント教育)もその学校法
人に委託しています。もちろんは学校施設のテナント料は入りま
すが、結果として、東京都が民間の学校法人に補助金を継続的に
出しているのと同じになります。包括的外部監査報告によると、
その総額は21億円以上になるというのです。
 浜渦副知事は、知事の指示をバックに、包括外部監査人と都庁
の総務、財務、福祉保健の3局長に対して、精力的に調査をはじ
めたのです。その都度浜渦副知事から報告を受けている石原知事
は、定例会見でこの問題について次のように発言しています。
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 とても大事な問題が出てきて私もちょっとびっくりしている。
都有地を使って、特定の学校法人が学校を設置して運営している
ということだが、私は認めた覚えはない。(平成)13年11月
に民間に委託するということだけは聞いたが、かなり無理なこと
をしている感じがする。大体、学校なんて、前後合わせて3ヶ月
でできるもんじゃない。しかも、残っている文書の中に「特例中
の特例」だとか、どういう権限で出たかわからない「念書」なる
ものがあって、とっても大変な問題だと思う。そういう形で運営
されていたのは初めて聞いた。正すものは正していかないといけ
ないと思っている。けが人が出るかもしらんね、この問題は。
                   http://bit.ly/2hpuwFv
─────────────────────────────
 「けが人が出るかもしれんね」──この発言は石原知事から都
議会のドンといわれる内田都議会議長に対する強烈な牽制になっ
たのです。石原知事が選挙中にいっていた「都知事の悪人を成敗
する」を実行に移すぞという都議会自民党への石原流の威嚇だっ
たと考えられます。
 しかし、石原知事も浜渦副知事も、少し事態を甘く見ていたよ
うです。結果としてこの悪人成敗は失敗し、石原知事は腹心の部
下である浜渦副知事を失うことになるのです。これについては来
週のEJで述べます。    ──[中央卸売市場論/024]

≪画像および関連情報≫
 ●政争に終わらせてはいけない東京都の社会福祉法人問題
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   学院の建物は、学院の委託事業および独自の福祉人材養成
  事業を学院の建物を用いて行うという条件のもと公募した結
  果、平成14年4月に特定の学校法人に5年間の定期建物賃
  貸借契約を結んで一括賃貸されており、建物の90パーセン
  ト相当部分は特定の学校法人が使用し、賃貸料収入は事業団
  の収益事業として計上されている。
   学院の建物は、特定の学校法人が継続的に使用する可能性
  があるが、借入金償還額および利息相当額は、すべて都から
  の補助金として事業団に支出されており、現況を維持すれば
  今後、平成22年までに約18億円、累積で約21億円が都
  から支出されることが見込まれている。
   学院建物の賃貸料はプロポーザル方式による提案額を参考
  として決定されている。平成15年度の賃貸料は56700
  千円であるのに対し、その維持コストは、東京都が所有する
  土地の地代を考慮しなくても現在の賃貸料より大きな費用で
  あり、学院建物の建設経緯と福祉人材養成機関としての性質
  を考慮しても現在の賃貸料とは大きな乖離がある。
   施設の活用状況を見ても、1)シャワー設備付きアリーナ
  2)防音装置付きピアノ練習室および3)OA室等の利用度
  はきわめて低いままになっている。
   よって、このような学院運営の実態を踏まえ、都からの補
  助を極力削減できるよう、学院の運営のあり方について抜本
  的な見直しを図られたい。     http://bit.ly/2vvoDwR
  ───────────────────────────

浜渦武生氏/内田茂氏.jpg
浜渦武生氏/内田茂氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中央卸売市場論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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