2017年08月01日

●「専門家会議と技術会議新設の理由」(EJ第4574号)

 石原都政の3期目──2007年4月〜2011年3月の知事
選では、石原知事は公約にはじめて「豊洲の土壌汚染の解決」を
掲げて当選しています。豊洲の土地の汚染状況が市場関係者だけ
でなく、都民も強い関心を持つようになったからです。
 3期目の石原都政は、この公約を実現させるため豊洲の土壌汚
染対策の提言をするための「専門家会議」を立ち上げ、2007
年5月19日に第1回の専門家会議を開催しています。専門家会
議の座長は、平田健正和歌山大学教授です。
 この会議は、小池都政になった2016年10月15日に同じ
メンバーで再招集されています。豊洲市場にあるべきはずの盛り
土がなく、それに対する対策を練るためです。なぜ、石原都政時
代と同じメンバーかというと、それが平田健正氏の座長を引き受
ける条件だったからです。しかし、この専門家会議の人選と平田
座長についてはあまり評判がよくないのです。以下は、『論座』
/2007年12月号に掲載された記事です。
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 専門家会議の座長である平田健正和歌山大学システム工学部教
授(環境水理学)は、三菱金属(現・三菱マテリアル)などが開
発した複合施設、大阪アメニティパーク(OAP)内のマンショ
ンを関連会社が土壌汚染を隠して販売した事件で、三菱側と住民
側が対策を話し合うために設置された検討会で、三菱側推薦の学
者として座長を務めているのだ。
 また、平田座長は土壌汚染の修復ビジネスに力を入れている三
井金属鉱業や前澤工業などから、01年〜06年の6年間に14
50万円も寄付を受けている。OAPの検討会では、住民側推薦
の学者として前出の畑教授も選ばれた。
 ところが、畑教授らの日本環境学会は豊洲の土壌汚染に早くか
ら取り組んできたのに、同学会の学者は都の専門家会議には一人
も選ばれなかった。都のいう「公正」さとは、私企業のそれにす
ら及ばない程度のものなのだ。
 また、首都直下型地震が今後30年以内に起こる確率は70%
とされるが、同会議には地震の専門家も入っていない。さらに食
品衛生の専門家も、何より最大の利害関係者である、市場で働く
人々の代表が入っていない。     http://amba.to/2u9f1mn
           ──『論座』/2007年12月号より
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 専門家会議のメンバーの選定に当たったのは当時の後藤正新市
場建設調整担当部長です。後藤部長は「公正に選定した」といっ
ていますが、後藤部長が独断で決めるということは考えられない
ことであり、石原知事サイドから、何らかの指示があったことは
間違いないと思います。石原知事はかつて環境大臣を経験してお
り、土壌汚染関係の専門家人脈を知っている可能性は大です。
 とうのは、東京都としては、この時点であまり学問的に厳格な
検査をやって欲しくはないはずです。ビジネス的観点からある程
度妥協のできる人物が座長であって欲しいのです。そういう意味
で公害訴訟において、企業側の座長の経験のある平田健正氏は、
石原都政では最適任だったのでしょう。
 そういう観点から、厳格な査定をすることで知られる日本環境
学会の畑教授や食品の専門家、市場関係者、地震学者などは選か
ら漏れているのです。石原知事は、今年の3月3日の会見で専門
家会議について次のように触れています。
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 豊洲市場は科学者が「問題ない」といっているんですよ。それ
なのに移転せず、築地で働いている人を生殺しにして、ランニン
グコストを無駄にしている責任は小池さんにある。
                ──石原慎太郎元東京都知事
                   http://bit.ly/2f087xA
─────────────────────────────
 この石原発言に関係しますが、都議選前に自民党都議の何人か
がテレビで、「小池知事は自分が選んだ専門家会議が『豊洲は安
全である』といっているのに移転を決められないでいる」と発言
していましたが、これは大間違いです。小池都政における専門家
会議は、小池知事自身が選んだメンバーではなく、石原都政のと
きの専門家会議が再現されたものだからです。
 この専門家会議を結成した2007年10月、東京都の調査で
豊洲の地下水から環境基準の1000倍のベンゼン、80倍のシ
アン化合物を検出したのです。これを受けて、東京都は土壌汚染
詳細調査を開始し、さらに2008年5月の詳細調査では、豊洲
の土壌から環境基準の4万3000倍のベンゼンなど高濃度の汚
染物質を検出したのです。
 この問題に対応するため、東京都は2008年8月、専門家会
議の提言を実現するための「技術会議」(座長/原島文雄東京電
機大学教授)を発足させています。しかし、この技術会議にも不
可解なことが多いのです。いちばん不可解なのは、メンバーが座
長以外は公表されていないことであり、原島座長の専門はロボッ
ト工学であり、土壌汚染の専門家ではないことです。これについ
て、あるサイトは次のように書いています。
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 技術会議の委員は、環境・土木・情報処理の各分野から学識経
験者5名を選定するというが、原島座長のみ公表で委員名は明ら
かにされていない。加えて原島座長はロボット工学が専門の電気
工学者であり、専門分野の不適合性は否めない。また、石原知事
の意向により、「なるべく低価格で短期間で実施できる新技術工
法を選定するために設置された」という。
                  http://amba.to/2uaQixG
─────────────────────────────
 さらに東京都は、任命直後に原島文雄氏を首都大学東京の学長
に招聘しているのです。2009年から4年間です。この事実か
ら原島座長は、やはり東京都に近い学者であるといえます。
              ──[中央卸売市場論/021]

≪画像および関連情報≫
 ●豊洲市場の設計に対する疑問/お墨付きを与えた技術会議
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   豊洲市場は、日建設計が都から発注を受け、設計図面・施
  工図面を書き上げた。それを都は発注条件を満たしているか
  細部にわたって検証し、必要あれば図面の書き換えなど要請
  し、最終図面を了承して、ゼネコン側に図面を渡し、ゼネコ
  ンは設計図面を忠実に施工する。
   施工の進捗については、日建設計は設計の管理・監修業務
  も請け負っており、また、都の担当局の専門家も図面どおり
  に進捗しているか必ずチェックに入る。
   以上が通常も行われている大型官庁工事の設計会社や施主
  官庁の進捗検査の有りようだ。下記図では都の説明図ではな
  い空洞が建物地下にあることが確認され、都は説明不足だっ
  た、説明を忘れていたとおトボケ答弁を繰り返している。
   東京に住むとわかるが地震が昔から多い、それも東日本大
  震災後は頻繁に発生している。豊洲市場は向こう何十年も使
  用するもの。30年以内に大きな地震の発生確率もすでに国
  や都から発表されている。建築物に対しての液状化対策工事
  はなされているが、地下に眠る有害物質が噴出してくる可能
  性は拭いきれない。万が一、地下空洞コンクリにひび割れが
  多数発生し、有害物質が地下室に噴出すれば、その対策工事
  に市場は長期にわたり閉鎖に追い込まれる可能性もある。
                   http://bit.ly/2vd8Guk
  ───────────────────────────

「専門家会議」の平田健正座長.jpg
「専門家会議」の平田健正座長
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2017年08月02日

●「豊洲の用地はブラウンフィールド」(EJ第4575号)

 2008年5月に豊洲移転予定地の地下水と土壌から大量の汚
染物質が検出されたことに対して、都の専門家会議は対策として
次の提言を行っています。その提言の内容については、今までで
あれば全面「海苔弁」であったのですが、小池知事の情報公開に
よって、永尾俊彦氏はその内容を入手しています。
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 これまで検討していた対策として、ガス工場の操業時の地盤面
から下2メートルの土を入れ替え、その上に2・5メートルの盛
り土をすることに加えて、今後検討するべき対策として、操業時
の地盤2メートル下から不透水層までの土壌の入れ替えも検討が
必要である。なお、この実施には約973億円の費用がかかる。
  ──2008年4月16日付、石原知事へのブリーフィング
         ──永尾俊彦著/岩波ブックレット/968
「ルポどうなる?どうする?築地市場/みんなの市場をつくる」
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 ここで「不透水層」とは、水を通さない粘性の土層のことで、
土対法では「難透水層」といいます。豊洲の場合、場所によって
それぞれ異なりますが、地下数メートルのところに2〜20メー
トルにわたって不透水層が存在しています。つまり、豊洲の対象
地域の不透水層までの土をすべて汚染のない土と入れ替えるべし
という提言です。もちろん大工事になります。
 東京都の市場当局は、この専門家会議の提案を技術会議に持ち
込み、実現可能な計画に変更させています。技術会議では、それ
を専門家会議が地下水の移動を止めるために盛り込んでいる建物
下の止水板をやめることで費用を586億円に削減しています。
しかし、それでも巨額な土壌整備費です。
 本来売り地の土壌汚染費用は売主の負担であり、東京ガスが負
担する義務があります。しかし、浜渦元副知事を中心とするこれ
までの東京ガスとの交渉では、2005年5月30日付で「豊洲
地区用地の土壌処理に関する確認書」が交わされており、東京ガ
スは、その確認書に基づき102億円かけて2007年4月27
日に工事を終了し、都環境局に「汚染防止措置完了届」を提出し
ています。つまり、それ以上の汚染が出ても、東京ガス側には負
担義務はないのです。
 ところが、2010年1月5日付の朝日新聞は、東京都と東京
ガスとの合意文書や確認書には、土地の売却後に汚染物質が出た
場合の汚染者負担での処理を義務付ける「瑕疵担保条項」がない
ことをスクープしたのです。
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 都は、豊洲地区(江東区)の予定地を所有していた東京ガスに対
策費約586億円の一部負担を求める協議を申し入れている。だ
が、同社との合意文書には、新たな汚染に対する同社の費用負担
などの義務を定めた条項がなく、障害になる恐れがあるという。
解決への道のりは不透明だ。
          ──2010年1月5日付、朝日新聞より
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 このことが新聞に出たことで、汚染原因者の東京ガスが負担し
ないのはおかしいとの声が上がり、東京都としては東京ガスに対
して追加費用の負担を求めざるを得なくなったのです。
 しかし、合意書や確認書で決められていることの処理は終わっ
ているとして、東京ガス側の抵抗は激しかったのです。その交渉
の模様について、永尾俊彦氏は次のように述べています。
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 その協議は2011年1月18日から始まった。当初、都は東
ガスに都独自の対策を行った分などを除く222億円の負担を求
めた。だが、東ガスの大幅値下げ要求に都はどんどん譲歩し、2
月7日には86億円を提示するが、東ガスは抵抗。2月25日の
交渉では、東ガスは「70億円」を提示したが、都は「知事に説
明している手前、最低80億円は死守したい」と譲らなかった。
「知事に説明」していたのだから、石原知事も暇庇担保責任を問
えないことや東ガス負担額について知っていた。結局78億円で
妥結する。           ──永尾俊彦著の前掲書より
─────────────────────────────
 ひどい話です。586億円かかる汚染土壌対策費のうち、東京
ガスは、値切りに値切って78億円で済ましているのです。結局
東京ガスは土壌汚染対策費は、180億円しかかかっていないの
です。東京都の収支計算は次のようになります。
─────────────────────────────
     豊洲用地費 ・・・・・・ 1882億円
     土壌汚染対策費 ・・・・  858億円
     防潮護岸工事費 ・・・・  330億円
     ―――――――――――――――――――
                  3070億円
       註:@用地費は東京ガス以外分を含む
         A防潮護岸工事は全額東京都負担
─────────────────────────────
 用地費1882億円に対して、土壌汚染対策費858億円で用
地費の45・5%。用地費の20%〜40%になると「ブラウン
フィールド」になるので、豊洲の土地は完全なブラウンフィール
ドで、本来売れない土地です。それを時価で買ってもらったこと
になるので、東京ガスは大儲けということになります。東京ガス
は汚染対策費としては180億円しか負担していないからです。
それだけに、石原元知事と浜渦元副知事には、重大な責任があり
ます。そもそもガス工場の跡地に中央卸売市場を移転させること
自体が間違いなのです。
 そのせいか、東京ガスは、2013年〜15年の3年間に都職
員を4人受け入れるなど、都庁の「天下り先」になっています。
都庁から人材を受け入れる理由を聞くと、「自治体の施策に精通
した人材へのニーズがある」と答えています。
              ──[中央卸売市場論/022]

≪画像および関連情報≫
 ●豊洲問題で都が技術会議録の改竄疑惑
  ───────────────────────────
   東京都が盛り土問題発覚後の2016年9月16日に、盛
  り土の工法を検討した「技術会議」の会議録に「『建物下に
  作業空間を確保する必要がある』と提言を受けた」との資料
  を追加し、公表していたことが分かった。技術会議の複数の
  元委員は、毎日新聞の取材に、「作業空間をつくる認識はな
  かった」と証言しており、都が会議録を改ざんした可能性も
  ある。
   都が追加したのはホームページ(HP)上に掲載されてい
  る第9回技術会議(2008年12月25日開催)の「技術
  会議が独自に提案した事項」との資料。資料では汚染物質の
  除去・地下水浄化の確認方法として「地下水から基準値を超
  える汚染物質が検出された場合、浄化できるように建物下に
  作業空間を確保する必要がある」と記載されている。
   追加掲載に当たって、都は一部の委員に「会議録に詳細な
  資料を追加する」と連絡したが、資料の内容は説明しなかっ
  たという。毎日新聞のこれまでの取材に、委員を務めた根本
  祐二氏や川田誠一氏は「盛り土をするという前提で議論して
  いた。技術会議では、空洞をつくるという話にはなっていな
  い」と証言している。追加資料が掲載されたことについて、
  委員を務めた長谷川猛氏は「技術会議が作業空間を設けるよ
  う提言をした事実はない。技術会議の提言とすることで責任
  転嫁しようとしているのではないか」と話した。【林田七恵
  芳賀竜也】            http://bit.ly/2vX3KaJ
  ───────────────────────────

朝日新聞のスクープ記事.jpg
朝日新聞のスクープ記事
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2017年08月03日

●「激しい対立と確執/浜渦VS内田」(EJ第4576号)

 ここで再び内田茂氏に話を戻します。以下は次の「週刊文春」
の記事を参照にして記述します。
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 「石原慎太郎とドン内田“無責任コンビ”の癒着『豊洲問題』
混迷の元凶」    ──「週刊文春」2016年10月6日号
                   http://bit.ly/2tXoIou
─────────────────────────────
 石原慎太郎氏がはじめて当選を果たした1999年4月の東京
都知事選。そのとき、都議会自民党幹部の内田茂氏は、森喜朗自
民党幹事長(当時)と一緒に、明石康元国連事務次長を擁立して
います。それに対する石原陣営は、内田茂氏を念頭に次のスロー
ガンを掲げていたのです。「ブラックボックスと戦う」といって
いた小池氏とよく似ています。
─────────────────────────────
          都政の悪人を成敗する
─────────────────────────────
 したがって、石原氏が知事になったときは、知事と都議会自民
党は険悪な関係にあったといえます。石原知事がそのことを思い
知るのは、腹心の友の浜渦武生氏を副知事に就任させる人事案が
議会で否決されたときです。当時都議会では自民党と公明党が過
半数を握っており、それに加えて内田氏が都議会運営に強い影響
力を発揮できたので、知事の人事案を否決できたのです。
 人事案だけではなく、予算案をはじめ、知事の出すほとんどの
案に対し、議会はことごとく反対します。これには、石原知事も
困り果て、当時の小渕恵三首相に「議会が回らないので、助けて
欲しい」と頼み込みます。結局、野中官房長官(当時)の仲介で
内田氏との手打ちの場が築地の料亭に設営されます。
 その場には、野中官房長官、内田茂氏と都議3人が顔を揃えた
のですが、その席で石原知事は「よろしくお願いします」と頭を
下げ、内田氏との手打ちが行われます。そして、その直後に石原
知事は築地を視察し、「狭い、古い、危ない」と発言しているの
です。築地市場の移転についても、その場で何らかのやり取りが
あったものと思われます。そして、約1年後の2000年7月に
浜渦氏の副知事就任を都議会は承認しています。
 浜渦氏は副知事に任命されると、石原知事の命を受け、豊洲の
土地取得のため、東京ガスとの交渉に辣腕を振うのですが、実は
豊洲のある江東区の区長にも手を打っています。東京都の優位性
をフルに使った巧みな交渉です。しかし、その結果、豊洲の土地
は取得できたものの、東京都にとって非常に高い買い物になって
しまったのです。
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 浜渦氏は、当時の江東区長に「豊洲に架かる橋を5本、環状2
号線の整備、観光施設の開設」を約束し、江東区長から東京ガス
に「跡地を新市場に」と要望させた。東京ガスにも工事費軽減な
どの“アメ”を与え、2001年7月に移転合意にこぎつけたの
です。しかしその後も東京ガスに譲歩を重ねた結果、都は“汚染
された土地”に“きれいな土地”並みの代金を支払う羽目になっ
た。その額は計1900億円近くにのぼります。(都庁幹部)
          ──「週刊文春」2016年10月6日号
─────────────────────────────
 石原元知事は、自分に関心のあることしか興味はなく、興味の
ないことは人任せにしてしまうところがあります。市場移転問題
も、興味のない仕事のひとつです。都庁への出勤も週に2〜3回
で、その分副知事、とくに信頼している浜渦氏にすべて任せてし
まうことが多かったといいます。そのため、浜渦氏は都庁内で大
変強い権限を握ることになります。そのことを「週刊文春」は次
のように書いています。
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 浜渦氏に説明に行く時は手紙を書かないといけない。手紙を見
て、来る必要のない職員には電話で断ったり、×と返事を出した
りしていました。気に入らないことをした職員には詫び状も書か
せていた。この“お手紙行政”によって、浜渦氏は情報をコント
ロールするシステムを作り上げたのです。(元都庁幹部)
          ──「週刊文春」2016年10月6日号
─────────────────────────────
 そういう浜渦氏に対して、内田茂氏は警戒を強めつつも、石原
知事の人気は利用できると考えます。「是々非々で行く」という
のが内田氏の考え方です。これは、石原都政では成功しましたが
小池都政には通じなかったといえます。
 2003年に内田氏は都議会議長に就任します。議長は権力の
象徴です。都議会自民党は、国との太いパイプを利用し、さまざ
きな利権を握ってきたのです。都知事と議会はどちらも東京都民
から選挙で選ばれており、「二元代表制」であるとして、どのよ
うな知事が就任しても都議会、なかんずく都議会議長は都政に対
して大きな影響力を持つことになります。しかし、浜渦氏が事実
上知事の権限を代行するようになると、内田氏の利権にもどんど
ん手を突っ込んできたのです。2004年に大手町の合同庁舎跡
地が三菱地所に払い下げられる計画をめぐり、浜渦氏と内田氏は
激突することになります。この場面に誰もが知っている意外な人
物が登場します。
─────────────────────────────
 国の都市再生本部の和泉洋人氏(現・首相補佐官)と連携し、
この計画を主導していたのが浜渦氏です。一方、地元業者から陳
情を受けていた内田氏は特定企業を優遇していると不満を持って
いた。04年末、議長室で内田氏は浜渦氏と話し合いましたが、
交渉は決裂。内田氏は激怒していました。浜渦氏は後に三菱地所
と都が出資する東京交通会館の副社長に天下りします。
          ──「週刊文春」2016年10月6日号
─────────────────────────────
              ──[中央卸売市場論/023]

≪画像および関連情報≫
 ●三菱地所などに恩恵/特定企業利する「都市再生」
  ───────────────────────────
   都心の国有地を入札なしの随意契約で安く売らせ、その後
  土地の容積率を一気に現行の2・4倍に当たる最高クラスの
  1690%にまで引き上げて延べ床面積を増やし、開発する
  三菱地所などに大きな利益をあげさせる――。石原都政と小
  泉内閣の肝いりで進んでいる「都市再生」プロジェクトの計
  画案が本紙の調べで判明しました。特定企業を利する不透明
  さに地元の東京・千代田区でも批判が出ています。
   この国有地は東京・大手町合同庁舎跡地約1・3ヘクター
  ル。もともと競争入札で売却される予定でしたが、石原都知
  事が2002年秋、塩川財務相(当時)に「大手町地区の街
  づくり」に向けた「処分」を要望。その後、政府の都市再生
  本部(本部長・小泉首相)が「大手町合同庁舎跡地の活用に
  よる国際ビジネス拠点」づくりとして第5次都市再生プロジ
  ェクトに決定しました。国、都はそれぞれ約6千万円、8百
  万円の調査費(04年度)をつけています。
   この実態を示すのが本紙の入手した独立行政法人・都市再
  生機構(旧都市基盤整備公団・地域振興整備公団)や三菱地
  所作成の資料です。資料によると、まず、都市再生機構が受
  け皿になって国有地を随意契約で安く購入。土地区画整理事
  業でこの土地を日本経団連などの土地と交換し、経団連など
  を跡地に移転させます(図)。   ──「しんぶん赤旗」
                   http://bit.ly/2uizNjo
  ───────────────────────────

大手町合同庁舎跡地をめぐる状況.jpg
大手町合同庁舎跡地をめぐる状況
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2017年08月04日

●「社会福祉総合学院事件の深層探る」(EJ第4577号)

 1999年4月に東京都知事に初当選してから、少なくとも、
2007年4月の都知事第3期当選の頃までの石原都政は、石原
慎太郎氏個人の政治家兼作家の高い人気に支えられ、高い支持率
を誇っていたといえます。2003年に都議会議長に就任した内
田茂氏の率いる都議会自民党も、当初この石原知事の高い人気を
利用しようと考えていたフシがあります。
 しかし内田氏にとってうるさい存在になってきたのは、石原知
事の命を受けて忠実に動く浜渦武生副知事(当時)の存在です。
石原都政は、長い間にわたって守り続けてきた都議会自民党の利
権にまで手をつけようとしてきたからです。
 元来政治家としての石原慎太郎氏は地方の首長よりも国会議員
に向いていると思います。一時期「石原慎太郎を総理にしたい」
と本気で考えていた国民が多くいたことは確かです。「彼なら日
本政治の閉塞感を一掃してくれる」と期待したからです。
 しかし、国会議員としての石原氏はポストに恵まれず、「東京
から日本を変える」をスローガンに東京都知事選に打って出たの
です。それに「伏魔殿といわれる都議会を変える」という強い意
思と正義感をもって都政に臨んだことは確かです。
 ところで、浜渦武生氏という石原慎太郎氏の腹心の部下といわ
れる人物は、2005年7月に100条委員会にかけられ、偽証
をしたとして辞任させられています。それから12年後の今年の
5月に、築地市場の豊洲移転における東京ガスとの交渉において
またしても100条委員会にかけられ、都議会から偽証と認定さ
れています。2回にわたる100条委員会です。
 この事実だけを見ると、浜渦氏は、よほど悪いことをした人物
のように思えますが、2007年の偽証告発の理由について都民
は知る必要があります。それによって、当時の都議会自民党の実
態がわかるからです。浜渦氏が最初の100条委員会にかけられ
たのは、「東京都社会福祉総合学院」に関する事件の関連です。
浜渦氏は、東京都の監理団体の担当を任されていたのです。
 2005年2月23日のことです。東京都政の包括外部監査で
東京都の補助金で建設された東京都社会福祉総合学院の施設が民
間の学校法人に、格安で転貸されている実態が明るみに出たので
す。自民党都議会議員にとって、福祉関係の利権はきわめて重要
です。それを都議会のドンといわれる内田茂都議会議長(当時)
が仕切っており、知事といえども踏み込めない牙城といわれてき
たのです。しかし石原知事は、浜渦副知事を監理団体担当者に任
命し、そこへの切り込もうとしたのです。
 そもそも「東京都社会福祉総合学院」は何であり、何が問題な
のでしょうか。
─────────────────────────────
 この東京都社会福祉総合学院は施設の建設中に当初計画が変更
となり、学校教育を終え社会に一端出た後、最新の知識や高度な
技術を習得するために行なわれるいわゆるリカレント教育に特化
するということになった。その結果、東京都社会福祉総合学院は
開校時、昼間はほとんど施設を利用しないことになっていた。
 東京都社会福祉総合学院は、翌年、昼間に空いた教室を民間の
学校法人に貸し付けた。同時に、夜間行なっている学院の事業も
同じ民間の学校法人に運営委託するとしたのである。その後、民
間の学校法人は、東京都社会福祉事業団と5年間の定期建物賃貸
借契約を結ぶとともに、新たな専門学校である臨床福祉専門学校
を設立し、昼間の空いた教室を使用し現在に至っている。
                   http://bit.ly/2u61jFo
─────────────────────────────
 社会福祉事業団は、金融機関から融資を受けて校舎を建設して
います。当然、支払いが発生しますが、それは全額東京都からの
補助金で支払えるのです。そもそもなぜ補助金が出るかというと
社会福祉事業団の事業を援助するためです。
 しかし、社会福祉事業団は学校施設を民間の学校法人に貸し付
け、本来事業団が行うべき事業(リカレント教育)もその学校法
人に委託しています。もちろんは学校施設のテナント料は入りま
すが、結果として、東京都が民間の学校法人に補助金を継続的に
出しているのと同じになります。包括的外部監査報告によると、
その総額は21億円以上になるというのです。
 浜渦副知事は、知事の指示をバックに、包括外部監査人と都庁
の総務、財務、福祉保健の3局長に対して、精力的に調査をはじ
めたのです。その都度浜渦副知事から報告を受けている石原知事
は、定例会見でこの問題について次のように発言しています。
─────────────────────────────
 とても大事な問題が出てきて私もちょっとびっくりしている。
都有地を使って、特定の学校法人が学校を設置して運営している
ということだが、私は認めた覚えはない。(平成)13年11月
に民間に委託するということだけは聞いたが、かなり無理なこと
をしている感じがする。大体、学校なんて、前後合わせて3ヶ月
でできるもんじゃない。しかも、残っている文書の中に「特例中
の特例」だとか、どういう権限で出たかわからない「念書」なる
ものがあって、とっても大変な問題だと思う。そういう形で運営
されていたのは初めて聞いた。正すものは正していかないといけ
ないと思っている。けが人が出るかもしらんね、この問題は。
                   http://bit.ly/2hpuwFv
─────────────────────────────
 「けが人が出るかもしれんね」──この発言は石原知事から都
議会のドンといわれる内田都議会議長に対する強烈な牽制になっ
たのです。石原知事が選挙中にいっていた「都知事の悪人を成敗
する」を実行に移すぞという都議会自民党への石原流の威嚇だっ
たと考えられます。
 しかし、石原知事も浜渦副知事も、少し事態を甘く見ていたよ
うです。結果としてこの悪人成敗は失敗し、石原知事は腹心の部
下である浜渦副知事を失うことになるのです。これについては来
週のEJで述べます。    ──[中央卸売市場論/024]

≪画像および関連情報≫
 ●政争に終わらせてはいけない東京都の社会福祉法人問題
  ───────────────────────────
   学院の建物は、学院の委託事業および独自の福祉人材養成
  事業を学院の建物を用いて行うという条件のもと公募した結
  果、平成14年4月に特定の学校法人に5年間の定期建物賃
  貸借契約を結んで一括賃貸されており、建物の90パーセン
  ト相当部分は特定の学校法人が使用し、賃貸料収入は事業団
  の収益事業として計上されている。
   学院の建物は、特定の学校法人が継続的に使用する可能性
  があるが、借入金償還額および利息相当額は、すべて都から
  の補助金として事業団に支出されており、現況を維持すれば
  今後、平成22年までに約18億円、累積で約21億円が都
  から支出されることが見込まれている。
   学院建物の賃貸料はプロポーザル方式による提案額を参考
  として決定されている。平成15年度の賃貸料は56700
  千円であるのに対し、その維持コストは、東京都が所有する
  土地の地代を考慮しなくても現在の賃貸料より大きな費用で
  あり、学院建物の建設経緯と福祉人材養成機関としての性質
  を考慮しても現在の賃貸料とは大きな乖離がある。
   施設の活用状況を見ても、1)シャワー設備付きアリーナ
  2)防音装置付きピアノ練習室および3)OA室等の利用度
  はきわめて低いままになっている。
   よって、このような学院運営の実態を踏まえ、都からの補
  助を極力削減できるよう、学院の運営のあり方について抜本
  的な見直しを図られたい。     http://bit.ly/2vvoDwR
  ───────────────────────────

浜渦武生氏/内田茂氏.jpg
浜渦武生氏/内田茂氏
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2017年08月07日

●「35年にわたる都議会の漆黒の闇」(EJ第4578号)

 就任2期目の2005年頃までの石原知事は、思うように仕事
が進まず、焦っていたように感じます。国会議員より自治体の首
長の方が、国のトップのようなものだから何でもできるといわれ
ますが、それには議会をコントロールする必要があります。
 日本では、憲法93条で、地方自治体の首長と地方議員を住民
が直接選挙で選ぶ「二元代表制」をとるよう定めています。二元
代表制では、議員は法律や予算などを審議・決定する権限を有し
ますが、その執行は行政の長が責任をもつため、立法権と行政権
の分離が徹底化されるといわれます。
 石原知事の2期目(1999年4月〜2007年3月)までは
都議会は自公両党が過半数を握っており、なかでも自民党の力が
強く、とくに当時議長の内田茂氏の力が突出しており、知事とい
えども内田氏の了解なしにはことが進まなかったのです。当時野
党第一党の民主党(当時/後の民進党)も、野党というよりも、
与党の自公両党に近いスタンスだったといえます。
 そこで石原知事としては、都議会自民党が死守している最大の
利権である福祉関係の利権のひとつを摘発しようとしたのです。
これが東京都社会福祉総合学院をめぐる事件です。石原知事と浜
渦副知事は、この摘発に乗り出そうとします。
 2005年1月20日のことです。都庁知事室には、包括外部
監査人の守屋俊晴氏(公認会計士)が、監査結果の事前報告にき
ていました。しかし、監査人からは、社会福祉総合学院について
詳しい説明がなかったので、浜渦副知事は、社会福祉総合学院に
ついて詳しい説明を要求します。
 その翌日の21日、再び守屋監査人が補助者の公認会計士を伴
い、浜渦副知事室を訪問し、どのような書類を作成するか知事の
リクエストを浜渦氏に求めたところ、副知事からは「時系列につ
いて報告して欲しい」という要望が出されたといいます。
 2月2日になって、包括外部監査人から「監査報告概要版の補
足説明」という書類が届けられます。そこには、次のようなこと
が書かれていたのです。
─────────────────────────────
◎「監査報告概要版の補足説明」
 敬心学園(社会福祉事業団から物件を借りている学校法人)の
収益事業に対して都が補助金を出していることにもなる。土地と
建物の財産的価値を考慮に入れた賃貸料で契約できるように交渉
し、それができないならば5年間の賃貸借契約の期間満了をもっ
て、更新せず、全庁的に本件資産の有効活用を図るなど、抜本的
な対策を講じる必要がある。
        ──「都政新法報」  http://bit.ly/2hpuwFv
─────────────────────────────
 社会福祉総合学院問題を、補助金の不正疑惑とみるかどうかは
見解の分かれるところですが、知事サイドは不正であると考えた
のです。しかし、不正とする以上は、もっと証拠を揃えるべきで
あり、その根拠とされる書類(上記)を監査人に要求して作らせ
ているところから、都議会自民党はこれを石原知事らによる「疑
惑の捏造」と判断したのです。
 しかし、知事サイドとしては、この問題を議会で取り上げるに
は野党に質問してもらう必要があります。石原知事の「けがにん
が出る」発言の直後に浜渦副知事は民主党の富田政調会長を自室
に呼んで次のように質問を要請します。2005年2月25日の
ことです。
─────────────────────────────
 予算特別委員会で質問をしてほしい。学院の件について、疑問
点を並べてくれればいい。知事が「けしからん。担当の副知事か
ら答弁させる」と言う。あとはすべて自分が答弁する。
                ──上掲「都政新法報」より
─────────────────────────────
 2005年3月3日、本会議の休憩中に民主党の名取憲彦幹事
長は、議長室に内田議長を訪問し、富田政調会長が浜渦副知事に
しつこく質問するよう頼まれ、困っていると相談しています。そ
のとき、内田議長もその件について多くの情報を握っており、名
取幹事長に次のようにアドバイスしています。
─────────────────────────────
 そんなことを民主党の会派として受けたら大問題にもなるし、
議会の中でも孤立する。あなたの会派もバラバラになってしまう
のではないか。議会の立場としても見過ごすことはできない。こ
の問題で私は、一切関与していないのだから、議会に手を突っ込
むようなことはやめさせた方がいい。質問はやらせない方がいい
んじゃないか。         ──上掲「都政新法報」より
─────────────────────────────
 結局、民主党は、知事サイドの要請を受けて、2005年3月
14日、予算特別委員会において、東京都社会福祉総合学院問題
について質問しています。このときの浜渦副知事の答弁が後の百
条委員会の設置に繋がるのです。
 この民主党の質問と浜渦副知事の答弁について、都議会自民党
と公明党は、内容に重大な疑義があるとして、これまで35年間
一度も開催されたことのない百条委員会の開催を決めます。35
年間開催されなかったのは、都議会と都庁との癒着が原因である
ことは明らかです。
 そして、2005年5月12日に百条委員会が開催されたので
す。しかし、そこで審議されたのは、百条委員会のメインの議題
であるべき社会福祉総合学院問題の内容ではなく、浜渦副知事が
民主党に対して議会での質問を働きかけた「やらせ質問」を重大
視し、浜渦氏の答弁を偽証と認定したのです。百条委員会が多数
を持つ与党ペースで、進んだからです。
 百条委員会の結果、浜渦副知事、福永副知事、横山教育長、櫻
井出納長が辞職する騒ぎになったのですが、これは与党勢力が浜
渦副知事を追い落とすための委員会であったことは明らかです。
              ──[中央卸売市場論/025]

≪画像および関連情報≫
 ●浜渦副知事更迭で何が見えたか/世田谷区長保坂展人氏
  ───────────────────────────
   東京都政で前代未聞の「副知事VS自公」の睨み合いは、
  石原知事の側近である浜渦副知事更迭で、いちおうの決着を
  見たかに見える。いかにも伏魔殿と呼ばれる東京都庁と都議
  会を象徴するような話じゃないか。税金の使い道をチェック
  するために議会があるのだとしたら、3月に民主党都議が、
  (浜渦副知事に依頼されたという社会福祉総合学院の運営を
  めぐる問題点)の徹底的な審議するべきだ。
   都議会民主党の対応が、いっそう事態を把握することを阻
  んではいないだろうか。浜渦氏に質問を依頼されたかどうか
  ――これが都議会の自民・公明側が問題にした点だが、「依
  頼されていない」と主張しながら百条委員会に出席しないと
  いう姿勢には疑問が残る。事実、民主党会派内からも批判の
  声もあがっている。
   橋梁をめぐる談合事件では都の発注する工事を請け負って
  きた建設会社に都のOBが天下り、都側の発注情報を得て談
  合調整を進めていたとの報道(5月29日朝日新聞)もあり
  石原都政下の「改革」なるものが官僚利権の撤廃にはほど遠
  いうわべだけのものだったことを示している。
   やがて来月、都議会議員選挙がある。本来なら、都庁・都
  議会を含めた大騒動の顛末が有権者の大きな注目・関心を集
  めてもおかしくないが、現実は正反対だという。「構図が複
  雑」すぎて、いったい何が問題で、誰と誰が衝突して、人事
  紛争となっているのか判らないので関心が持てないというの
  だ。               http://bit.ly/2ufwkXP
  ───────────────────────────

世田谷区長/保坂展人氏.jpg
世田谷区長/保坂展人氏
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2017年08月08日

●「百条委員会での浜渦副知事追放劇」(EJ第4579号)

 なぜ、社会福祉総合学院問題を詳細に書いているのかというと
小池知事が登場するまでの都庁と都議会の関係がどのようなもの
であったかの一端を知るためです。なぜ、市場関係者の意向を無
視して築地市場が豊洲のガス工場の跡地へ移転することになった
のかについても、このことと無関係ではないからです。
 当時、江東区選出の民主党都議会議員であった柿沢未途氏(現
民進党衆議院議員)は、ネット上の「定例会報告」のサイトで、
社会福祉総合学院問題と百条委員会の顛末について、痛烈に批判
しているので、概要をご紹介することにします。かなり長文なの
で、部分的に取りあげて解説します。
 まず、柿沢未途氏はこの百条委員会(2005年5月12日)
によって、なぜ、特別職の3人が辞任することになったのかにつ
いて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 特別職3人が辞表を出すという事態の裏側には、都議会の有力
議員の理事者側への働きかけがあったと言われています。そうし
た議会側の働きかけに応じる形で特別職が辞表を書いたという話
を私たちも聞いています。もしこれが事実だとするなら、議会か
ら執行機関側への重大な政治介入というべきであり、浜渦副知事
の議会への働きかけを云々する資格などありません。
 さらに言えば、強引な「偽証」認定こそ行ったものの、浜渦副
知事の「やらせ質問」に関する立証も十分とは言えません。わが
会派の名取幹事長の証言によれば、わが会派がこの問題に取り組
む端緒となったのは、浜渦副知事の働きかけというより、むしろ
石原知事からの問題提起だったことが明らかになっています。
          ──平成17年第2回定例会/柿沢未途氏
                   http://bit.ly/2vDGm5k
─────────────────────────────
 百条委員会で浜渦副知事は、民主党に「やらせ質問」の働きか
けを行ったのかと質問され、「やっていない」と答えています。
これが「偽証」と認定されたのです。しかし、当の民主党の名取
幹事長は、質問をしたのは浜渦氏というよりも、石原知事からの
問題提起であるといっています。実際、石原知事は2005年5
月20日の記者会見で次のように発言しています。
─────────────────────────────
 名取幹事長とある席で会った時に、「非常にこれについて関心
をもっているので、民主党もこの問題について考えてほしい。詳
しくは、監理団体担当の浜渦から聞いてくれ」と言った。その後
彼が呼ばれて説明をしたと思うが、そのとき、質問をやってほし
いと依頼はしてないはずである。        ──石原知事
                   http://bit.ly/2hpuwFv
─────────────────────────────
 浜渦氏の発言が虚偽であるとするから、「やらせ質問」をする
よう求められた富田政調会長の証言が必要になります。しかし、
富田氏は、自分は社会福祉総合学院問題とは無関係であることを
理由として百条委員会の出席を拒否したのです。そのため浜渦氏
の「やらせ質問」の立証は不十分のままです。
 百条委員会の調査項目は1〜5まであるのですが、「やらせ質
問」に当たるものはなく、強いていえば6の「その他調査に必要
な事項」に辛うじて該当しますが、これはあくまで1〜5に関連
するものであり、「やらせ質問」はテーマではないのです。しか
し、百条委員会では、肝心の社会福祉総合学院問題について質疑
はなく、「やらせ質問」があったなかったに終始したのです。ま
さに、都庁と都議会は伏魔殿そのものです。
─────────────────────────────
 そもそもこの百条委員会は、特定の個人を糾弾し、断罪するた
めに設置された委員会ではありません。社会福祉総合学院の運営
等に関して、違法、不法、あるいは不適正な点はないか、そのこ
とを調査するために設置されたものです。
 にもかかわらず百条委員会の議論は、浜渦副知事の「やらせ質
問」追及に終始し、さらにその立証を目的として、わが会派の富
田議員の証人出頭まで求めてきました。そして「社会福祉総合学
院の運営等と何ら関わりがない」ことを理由として、出頭要請に
応じないと、富田議員は刑事告発相当であるとの議決まで行いま
した。一体、何のために設置された百条委員会だったのか、浜渦
副知事を追い落とし、返す刀で民主党議員を吊るし上げようとい
う、そうした政治的な意図をもった委員会であったのかと勘ぐら
ざるを得ません。  ──平成17年第2回定例会/柿沢未途氏
─────────────────────────────
 これは、何が何でも政敵を追い落とすという当時の都議会自民
党と公明党の暴挙というべきです。さらに、柿沢未途氏は、次の
ように書いて、「定例会報告」を終えています。
─────────────────────────────
 社会福祉総合学院の施設の90%以上が、いや委託部分を含め
ると100%近くが、特定の学校法人の施設として使用されてい
る実態、そしてそれに対して都が総額21億円もの補助金を支出
している実態、包括外部監査でも指摘をされたこうした実態が、
都民の目から見て、はたして適正なものと言えるのか、非常に疑
問です。
 こうした疑問に対して詳細な検討がなされないまま、浜渦副知
事を辞職に追い込んだことをもって、百条委員会は、その幕を閉
じようとしています。まことに本末転倒と言わざるを得ません。
 議会と知事、そして官僚機構を巻き込んだ都庁内の「コップの
中の嵐」を、都民は冷ややかな目で見ています。
          ──平成17年第2回定例会/柿沢未途氏
─────────────────────────────
 このようにして、石原知事は腹心の部下である浜渦武生副知事
を失うのです。その後、石原知事はどのようにして、都政運営を
行ったのでしょうか。これについて興味深い事実があります。
              ──[中央卸売市場論/026]

≪画像および関連情報≫
 ●石原&浜渦都政の異常さを証言からみてみる
  ───────────────────────────
   2005年7月3日投票の都議会議員選挙まで1ヶ月をき
  りました。都議選を前に、石原都知事の30年来の側近・浜
  渦武生副知事の強権的な姿勢が明らかになってきています。
  週に2・3回しか都庁に来ない知事に代わって都庁を支配。
  都庁の各部署は、浜渦氏に事前に説明しないと知事にブリー
  フィング(事業説明)できない状況だったと報じられていま
  す。強権ぶりに気づかなかったという知事の姿勢は情けない
  限りですが。浜渦氏に指示をうけるため、「お手紙」と呼ば
  れる文書を出すことが当たり前。現場の声が届かないトップ
  ダウンの都政運営のもとで、福祉・保育施策も次々に切られ
  ているというのが実態です。
   具体的な証言でふれていきます。「彼は弱者といわれる者
  すべてが嫌いなのです。障害者、高齢者、女性、外国人、貧
  しい人、失業者、ホームレスなど。でも、地方自治体におい
  て、これらの人々のために行う施策は大きな比重を占めるも
  のであり、嫌だから切り捨ててよいものではないはずです。
  しかし、石原慎太郎は、それを行っているのです。弱者や福
  祉などという言葉は彼の前では禁句のようなものでしょう。
  (中略)想定問答を作る職員は、これまで作り上げてきた福
  祉の理念がガラガラと崩れるのを、自ら率先して、理論構成
  していかなければなりません。知事はそれを見て笑っている
  のでしょう。どうせ職員など、局長も含めて、奴隷のように
  しか見ていないでしょうから。   http://bit.ly/2vC2nk8
  ───────────────────────────

柿沢未途衆院議員.jpg
柿沢未途衆院議員
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2017年08月09日

●「『石原VS内田』の凄まじい暗闘」(EJ第4580号)

 もう一度東京都知事のポジションについて考えてみる必要があ
ります。石原慎太郎氏は、自民党の国会議員でしたが、だからと
いって、都議会自民党から支援を受けられるかというと、それは
関係がないのです。なぜなら、東京都知事も都議会議員も都民か
ら直接選挙で選ばれるからです。
 石原氏が1999年4月に都知事選に出馬したとき、都議会自
民党は、当時の森喜朗自民党幹事長とともに、元国連事務次長の
明石康氏を担いで、石原氏と戦っています。したがって、都議会
自民党と自民党にとって石原陣営は敵なのです。ちょうど小池知
事が立候補した状況とよく似ています。
 まして石原氏は、1995年の衆院本会議で勤続25年表彰を
受けた際の挨拶で議員辞職を表明しています。そのとき、おおよ
そ次のような刺激的な発言をしています。
─────────────────────────────
 私が所属する自民党を含めてすべての政党は、最も利己的で卑
しい保身に走っている。このような何もしない政党には、とても
いる気がしないので、この機会に国会議員を辞職したい。
             ──石原慎太郎衆議院議員(当時)
─────────────────────────────
 それだけに、1999年に突如都知事選に出馬を表明したとき
は、都民からかなりの驚きをもって受け止められ、既成政党批判
の受け皿にもなって、都知事選に勝利を収めています。しかし、
こういう状況で誕生した都知事は、都議会の運営には相当の苦労
を強いられるものです。石原都政も副知事人事すら決まらない状
況で最初からつまづいたことは、既に述べた通りです。
 権力というものは、それが何であれ、長期化すると、必ず腐敗
するものです。都議会自民党も長い間にわたって、自分たちの天
下がいつまでも続くように、それこそ営々と数多くの利権を作り
上げてきたのです。彼らにとってときどき代わる都知事に対し、
何かというと「二元代表制」を口にし、知事と都議会は車の両輪
であると主張し、どんな知事が誕生しようとも、何ら恐れること
はなかったのです。
 自分たちに従わなければ知事を潰すし、知事が従えば是々非々
で協力するものの、利権には知事といえども絶対に手を触れさせ
ない姿勢を堅持したのです。それが如実にあらわれたのは、20
09年の都議会議員選挙です。民主党が自民党に勝利し、政権交
代を成し遂げた年の都議選です。
 このとき、都議選で自民党候補は大量落選し、東京都連幹事長
を務めていた内田茂氏も落選しています。この事態に石原知事を
はじめ東京都選出の自民党国会議員たちは、チャンス到来とばか
り、内田氏を都連幹事長の座から外そうとしたのです。しかし、
それは失敗し、内田氏は落選議員でありながら自民党東京都連幹
事長の職を続け、利権を死守しています。
 そのときの自民党東京都連の混乱を元東京都議会議員で、現在
「都民ファーストの会」の代表を務める野田数氏は、ブログで次
のように述べています。
─────────────────────────────
 当時の石原慎太郎知事も加わり、石原伸晃都連会長以下、都連
の国会議員は、落選した内田氏を都連幹事長から外そうとしてい
た。しかし、都議会議員の数が圧倒的に多く、多勢に無勢であっ
た国会議員と石原知事は、都議会議員の抵抗になすすべがなかっ
た。加えて東京都連の幹事長職は、東京都内の各級選挙の公認権
を持ち、業界団体に対しての影響力も強いため、小選挙区選出の
国会議員は最後まで抵抗しきれなかったのである。そのときの抵
抗も内田氏本人が前面に出るのではなく、側近で現議長の川井し
げお氏(当時)が数少ない国会議員の前で机をバンバン叩いて威
嚇していたという。私も会派の控え室で「内田先生じゃないとカ
ネ作れないじゃないか!」と凄んでいるのを聞いたことがある。
        ──「私は「都議会のドン」内田茂の裏の顔を
       ここまで知っている!」 http://bit.ly/2aZ0sd3
─────────────────────────────
 2005年5月18日のことです。腹心の浜渦副知事が百条委
員会で答弁を偽証と認定された日の6日後です。石原知事は長男
の伸晃氏の仲介で、内田茂議長と話し合っています。その会談の
目的は浜渦氏を辞任させるので、告発を見送って欲しいという要
請であると思われます。
 内田議長はそれを了承し、ある提案をします。それは石原知事
の三男である宏高氏のことです。当時宏高氏は、みずほ銀行を退
職して、2003年11月の衆院選に東京3区から自民党公認で
出馬したものの落選し、浪人中であったのです。
 たまたま宏高氏の東京3区の隣の4区で、2005年10月に
補選が予定されていたのです。不祥事で同区の中西一善・自民党
衆院議員が辞職したことによる補選です。内田氏はこの4区の補
選で宏高氏が立候補するなら、東京都連として公認を出し、応援
すると提案します。東京都選出の国会議員は、選挙のさいは都議
会議員の応援を受けるので、願ってもない提案です。
 結局、石原知事は、息子を人質にとられ、「浜渦辞任」と「宏
高公認」を取り引きしたのです。実際には宏高氏は、この補選で
はなく、同年9月に突如行われた小泉首相による「郵政選挙」で
東京3区から立候補し、民主党(当時)の松原仁氏を破って初当
選しています。
 しかし、流石の内田茂氏も、腹心の川井前議長も、小池百合子
知事の前では何もすることができず、内田氏は自らの後継者も先
の都議選で当選させられなかったのです。都議会自民党は、20
09年の都議選のときより惨敗し、23名しか当選者を出すこと
しかできなかったのです。公明党と同数です。
 東京都知事が地域政党を立ち上げ、多数の候補者を擁立し、当
選させることによって知事自身の勢力を作る──これは今までの
都知事には誰もできなかったことであり、都議会を改革する新し
い方法であるといえます。  ──[中央卸売市場論/027]

≪画像および関連情報≫
 ●「都議会のドン」内田茂の裏の顔をここまで知っている!
  ───────────────────────────
   2011年7月1日に自民党所属都議会議員の樺山卓司氏
  が自殺した後、都議会上層部のご機嫌取りかウケを狙ったの
  かわからないが、若手の議員たちがこぞって樺山氏の自殺を
  揶揄するような発言をしていた。さらにベテラン議員たちも
  また酒の肴のように冒涜を通り越した言葉を発していたので
  ある。若手からベテランまで、まるで「ポイント稼ぎ」とし
  か思えないような異常ないじめ方だった。
   樺山氏が自殺した時も多くの国会議員に相談したが、誰一
  人として声を上げてくれる人はいなかった。みんな厄介ごと
  のように、樺山氏の問題を封印したのである。この自浄能力
  のない自民党都連が現状のままなら、都民にとっては不利益
  しか与えないだろう。
   東京都議会は首都東京を牽引する議会だから、開かれた議
  論闊達な場だとお思いの有権者も多くいただろうが、実態は
  そのようになっていない。都議会を一言で言えば、ムラ社会
  であり、ムラ議会なのである。議論など一切行われず、とり
  わけ都議会自民党の所属議員は上層部の決定に追随するだけ
  である。たとえ賛否が分かれる案件も一糸乱れることなく賛
  成するのはこのような体質によるものだ。本来であれば、政
  策も自民党内で様々な議論があり、意見集約を経た結果、賛
  成か反対か判断するはずだが、そのようなプロセスもない。
  このものを言わせない体質が大きな問題であり、都民からの
  不信感を呼んでいる。       http://bit.ly/2vdO82P
  ───────────────────────────

野田数都民ファーストの会代表.jpg
野田数都民ファーストの会代表
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2017年08月10日

●「なぜ内田茂氏はドンと呼ばれたか」(EJ第4581号)

 2005年7月、石原知事の側近の浜渦副知事が辞任に追い込
まれます。しかし、石原知事は、浜渦氏が辞任した後も、相変わ
らず週に2〜3回しか登庁しないのです。その間の仕事はすべて
部下に任せ切りです。
 2005年〜2007年までの知事日程表によると、知事の登
庁日数は次のようになっています。
─────────────────────────────
       2005年 ・・・・ 129日
       2006年 ・・・・ 126日
       2007年 ・・・・ 103日
─────────────────────────────
 これによると、石原知事は3日に一度しか登庁していないこと
になります。非常に良い身分です。石原氏は、この3年の間に作
家として次のベストセラーを出しています。
─────────────────────────────
 「俺は君のためにこそ死ににいく」(映画脚本)/2005
 「老いてこそ人生」(幻冬舎文庫)/2002
 「新・堕落論─我欲と天罰」(新潮新書)/2011
─────────────────────────────
 知事が3日に一度しか登庁しないので、その間の知事の仕事を
カバーしていたのは、かつての浜渦副知事であり、そのため浜渦
副知事は副知事でありながら、事実上知事の権限の一部を行使し
ていたといえます。これでは浜渦独裁になります。
 それでは、浜渦氏が辞めた後は誰がその役割をやっていたので
しょうか。
 その役割は、内田茂氏が浜渦氏から引き継いだのです。つまり
内田氏は、都議会議員として都議会議長を務めながら、浜渦氏に
代わって副知事の仕事を手伝い、さらに自民党東京都連の幹事長
も務めていたことになります。これが石原知事在任中は続いてい
たことになるので、これなら、東京都議会のみならず、東京都選
出の自民党議員に対しても、内田氏が絶大な権限を有していたこ
とが理解できると思います。もちろん、築地市場の豊洲移転につ
いても内田氏は深く関与しています。
 それでは、なぜ、石原知事は、内田茂氏に心を許したのでしょ
うか。都知事選のときは、内田氏のことを「都庁の悪人」といい
その悪人を退治するとまでいっていたのにです。
 これについて、東京都政に詳しい政治評論家の鈴木哲夫氏は、
ベテラン国会議員の言葉として、次のように述べています。
─────────────────────────────
 石原知事は都議会自民を守旧派に見立ててみずからの存在を高
めようとしていました。本来、都議会自民党は徹底的にケンカし
ていい敵でしたが、内田さんは逆に石原人気を利用し、むしろ味
方につければいいと考えるのです。石原知事側近であり、剛腕で
強敵の浜渦武生元副知事だけは表立って辞任に追い込み、一方で
は、石原知事の子煩悩を利用して2人の息子、伸晃さんと宏高さ
んをいわば人質≠ノした。         ──鈴木哲夫著
  『誰も書けなかった/東京都政の真実』/イースト・プレス
─────────────────────────────
 東京都政のトップという重要な役目を担いながら、3分の1し
か登庁せず、自分の関心のあることしか真面目に向き合おうとし
ない石原知事の仕事ぶりに心底怒りを覚えますが、それが築地市
場の移転にどのように影響して行ったのかについて、このあとの
EJで考えていくことにします。
 石原知事が設置した専門家会議は、2008年7月に土壌汚染
対策の専門家会議の結論をまとめて、解散しています。その結論
は、次の2つの柱から成っています。
─────────────────────────────
 1.東京ガスの工場のあった旧地盤面から2メートルの土を
   入れ替え、その上に2・5メートルの盛り土をする。
 2.地下水管理システムを設計・構築し、汚染地下水が上昇
   して盛り土を再汚染しないようにコントロールする。
─────────────────────────────
 もう少し詳しく解説します。まず、最も汚染のひどい旧ガス工
場の地盤面から地下2メートルまでの土をすべて入れ替え、その
上に2・5メートルの盛り土をするのです。盛り土は、ベンゼン
や揮発性ガスの上昇を抑えるのに有効な措置です。
 しかし、それでは、その盛り土の下に汚染された地下水が残っ
てしまい、せっかくの盛り土が再汚染される恐れがあります。そ
のため、地下水を浄化する管理システムを構築し、盛り土の再汚
染を防ぐというものです。
 この専門家会議の決定には、よくわからないながらも、それな
りの説得力があったので、仲卸業者などの豊洲移転反対派の市場
関係者の一部には「ここまでやってくれるなら」と、築地移転の
ための準備に取り組む業者も出はじめていたのです。
 しかし、小池知事の時代になって、この盛り土がなく、その部
分には地下空間ができていたことが判明したのです。これは、専
門家会議が結論として出した土壌汚染対策が無意味になることを
意味します。しかし、これについては、後から述べるとして、そ
の先を進めます。
 この専門家会議の結論は、2008年8月に新発足の技術会議
に委ねられ、2009年2月に「豊洲新市場整備方針」が決定さ
れます。この方針には、間違いなく盛り土はあったのです。
 土壌汚染問題が解決したことに自信を持った石原知事は、20
10年10月22日に議会で築地市場の豊洲移転を正式に表明し
ます。そして石原知事は次のように宣言したのです。
─────────────────────────────
 もし、議会が決めかねているならば、知事が大きく歯車を回す
ことになる。                 ──石原知事
─────────────────────────────
              ──[中央卸売市場論/028]

≪画像および関連情報≫
 ●「豊洲の盛り土」/専門家会議
  ───────────────────────────
   2007年に「4・5メートルの盛り土が前提」と答申を
  出した専門家会議が、問題発覚を受けて再結集した。座長の
  平田健正・放送大学和歌山学習センター所長が17日、都庁
  で会見を開き、今後の対策を示した。
   会見にはオブザーバーとして会議に参加する「市場問題プ
  ロジェクトチーム(PT)」の小島敏郎座長(元環境省審議
  官・弁護士)も臨席した。
   開口一番、平田座長は「前回と同じメンバーで、事務局も
  都から独立する形であればお引き受けする」と条件を都に突
  きつけたことを明らかにした。
   本来ならば、自分達が専門的見地から提言した事を頭から
  無視した東京都に、また協力する筋合いは無い。専門家会議
  は都からのフリーハンドを約束させた。再調査したデータも
  専門家会議で一元管理する。会議は全て公開の席上で行ない
  答申の時期も制約はないという。
   平田座長は、メディアに対しても公平でない部分が多々あ
  るとし、全て情報は会議を通すと明言した。
   この日、平田座長は冒頭発言だけでなく記者との質疑応答
  まで、会見の一切を取り仕切った。都に任せると都合のいい
  記者に都合のいい質問をさせるからだ。平田座長はまた「築
  地市場の方々とのコミュニケーションができるような雰囲気
  作りが一番大事。会議の席上でご意見を伺って行きたい」と
  述べた。             http://bit.ly/2d4TaJZ
  ───────────────────────────

都議会本会議における内田茂都議.jpg
都議会本会議における内田茂都議
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2017年08月14日

●「豊洲移転予算はなぜ成立したのか」(EJ第4582号)

 築地市場の豊洲移転を推し進めた石原都政にとって、大きな誤
算の1つは、2009年都議選における自民党の惨敗です。この
とき自民党は48議席を10議席減らし、38議席しか獲得でき
ず、第1党の地位を失います。これは1965年の黒い霧事件に
よる自主解散で日本社会党に第1党を奪われて以来の大敗です。
2009年7月12日の都議選の結果は次の通りです。
─────────────────────────────
      ◎2009年7月12日/都議選結果
            獲得議席  改選前議席
      自由民主党   38     48
      公明党     23     22
      民主党     54     34
      生活者ネット   2      4
      日本共産党    8     13
      無所属      2      4
─────────────────────────────
 当時豊洲移転を推進していたのは、自由民主党と公明党に無所
属であり、豊洲移転に反対していたのは民主党、生活者ネット、
日本共産党です。選挙前と選挙後の推進派と反対派の数は次のよ
うになります。
─────────────────────────────
        豊洲移転推進派  豊洲移転反対派
     選挙前     74       51
     選挙後     63       64
─────────────────────────────
 選挙の結果、たった1票差ではあるものの、豊洲移転反対派の
票が賛成派を上回ったのです。なお、この選挙で内田茂氏は落選
しましたが、自民党東京都連幹事長の職は続けています。確証は
ないものの、この間、内田東京都連幹事長は築地市場の豊洲移転
に向けて、種々の裏工作を行ったものと推定されます。
 この2009年夏の都議選について、日本共産党赤旗編集局は
次のように書いています。
─────────────────────────────
 09年夏の都議選で、共産党都議団は13から8議席に後退す
る一方、民主党は、「築地市場の移転に民主党はNO!自民党は
YES」とマニフェストに掲げ、34から54議席になり、築地
市場の豊洲移転問題で反対を表明する会派が多数となりました。
 その結果、その直後の9月の都議会第3回定例会で「東京都中
央卸売市場築地市場の移転・再整備に関する特別委員会」が設置
されます。
 翌10年の都議会第1回例会で、共産党都議団は、市場会計に
おける築地市場の1300億円近い豊洲新市場移転関連経費を削
除する修正案を提出しました。都議選で「移転ノー」を公約した
政党・会派が共同すれば、少なくとも移転用地購入費を削除でき
たのです。ところが民主党は、移転中止の公約を破り、共産党の
修正案に反対し、自らは修正案も提出せずに、予算に賛成したの
です。     ──赤旗編集局著/日本共産党東京都議団監修
     「徹底追及【築地市場の】豊洲移転」/新日本出版社
─────────────────────────────
 1票差であっても多数は多数です。「これで豊洲移転を阻止で
きる」と日本共産党東京都議団が考えても不思議はありません。
なぜなら、民主党は「豊洲移転NO!」を公約に掲げて選挙戦を
戦ったのですから当然のことです。
 しかし、多数をとったはずの民主党は、その後の重要な局面に
おいて不思議な行動をとることになります。なお、選挙後に設置
された上記の「東京都中央卸売市場築地市場の移転・再整備に関
する特別委員会」の委員長は、民主党の花輪智史氏という議員で
あることを覚えておく必要があります。
 このとき、豊洲移転の重要局面といえば、予算の都議会におけ
る承認です。
─────────────────────────────
  1.豊洲新市場予定地の用地取得費1260億円の可決
  2.豊洲移転の経費を含む中央卸売市場会計予算の可決
─────────────────────────────
 上記「1」については、都議会予算特別委員会において、第1
党である民主党は、反対であったはずの築地市場の移転関連予算
について、一転して賛成に回り、可決されています。これについ
て、「都政新報」(2010年3月30日)は、次のように報道
しています。
─────────────────────────────
 都議会予算特別委員会は28日未明、築地市場の移転関連経費
の扱いで対立していた中央卸売市場会計予算案に付帯決議を付け
て、民主、自民、公明の賛成多数で可決した。民主党は、豊洲新
市場予定地の用地取得費1260億円を削除する修正案を準備し
ていたが、提案を見送り、原案可決に回った。同党の大沢昇幹事
長は「修正案と同等の意味合いを持つ付帯決議がまとまり、我々
の要求が盛り込まれた」と語った。しかし、会派内からは「都が
現在地再整備をフェアに検討してくれるのか」と懸念する声も聞
かれた。本会議の採決は、きょう30日に行われ、都青少年健全
育成条例改正案を除くすべての議案が可決される見通し。
                   http://bit.ly/2hT3iao
─────────────────────────────
 豊洲移転反対の公約を掲げた選挙戦を戦って勝利したはずの民
主党は、なぜ移転関連予算に賛成したのでしょうか。もし、民主
党が反対すれば、1260億円の移転関連経費は予算から削除で
きたのです。それが一転しての可決です。そこに何らかの裏工作
があったのではないかと疑われているのです。
 民主党のいい分としては、「付帯決議が通ったので、修正案を
用意していたが、撤回した」といっているのですが、どのような
付帯決議でしょうか。    ──[中央卸売市場論/029]

≪画像および関連情報≫
 ●民主、予算案賛成へ「都民から裏切りだ」/しんぶん赤旗
  ───────────────────────────
   東京都が築地市場(中央区)を高濃度の有害物質で汚染さ
  れた江東区豊洲地区に移転させようとする問題で、都議会民
  主党は2010年3月27日、移転経費を盛り込んだ新年度
  都中央卸売市場  会計予算案に賛成し、移転予定地の購入
  費を削除する修正案の提出を取りやめる方針を固めました。
  昨年の都議選での公約を破るもので、都民から「裏切りだ」
  との批判があがっています。同党は土地購入費を削除する修
  正案を各会派に提示していましたが、自民党などと密室協議
  を重ねた結果、提出を取りやめたもの。
   27日の都議会予算特別委員会で民主党の和田宗春都議は
  「現在地再整備を検討すべきだ」としながら、土地購入費の
  削除は求めませんでした。
   日本共産党の大山とも子都議は、マスコミの世論調査でも
  6〜7割が豊洲移転に反対し、築地での再整備を望んでいる
  ことをあげ、「築地市場の現在地再整備は技術的には十分可
  能であり、再整備案を公募しないのは無責任だ」ときびしく
  批判しました。日本共産党は、土地購入費を含む移転関連経
  費1281億円を全額削除する修正案を発表。民主党などに
  対し土地購入費削除の一点で共同し、修正案を成立させるよ
  う申し入れていました。      http://bit.ly/2fAdROS
  ───────────────────────────

予算案可決後の石原知事.jpg
予算案可決後の石原知事
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2017年08月15日

●「豊洲予算への民主党の不可解対応」(EJ第4583号)

 東京都は、何回かに分けて、豊洲の土地を購入しています。東
京都はその都度予算案を議会の審議にかけて通しています。なか
でも節目というべき予算の可決は次の2つです。
─────────────────────────────
  1.豊洲新市場予定地の用地取得費1260億円の可決
               ──2010年3月30日
  2.豊洲移転の経費を含む中央卸売市場会計予算の可決
               ──2011年3月11日
─────────────────────────────
 これらの2つの予算案を阻めば、築地市場の豊洲移転は阻止す
ることはできたはずです。しかるに、結果としてこれら2つ予算
案は、当時都議会第1党の民主党が原因で、可決されています。
民主党は、2009年夏の都議選で圧勝し、54議席を獲得し、
都議会第1党になっています。ちなみに民主党は、都議選で「移
転反対」を公約にして勝利しているのです。
 「1」に関しては、昨日のEJで述べた通り、民主党は、付帯
決議として民主党の要望が盛り込まれたので、可決に賛成したと
主張していますが、その「付帯決議」とは次の通りです。
─────────────────────────────
 築地市場の老朽化を踏まえると、早期の新市場の開場が必要で
あるが、これを実現するためには、なお解決すべき課題が多いこ
とから、予算の執行に当たっては、以下の諸点に留意すること。
 1.議会として、現在地再整備の可能性について、大方の事
   業者の合意形成に向け検討し、一定期間内に検討結果を
   まとめるものとする。知事は議会における検討結果を尊
   重すること。
 2.土壌汚染対策について、効果確認実験結果を科学的に検
   証し、有効性を確認するとともに、継続的にオープンな
   形で検証をし、無害化された安全な状態での開場を可能
   とすること。
 3.知事は、市場事業者それぞれの置かれている状況及び意
   見などを聴取し、合意形成など「新市場整備」が直面し
   ているさまざまな状況を打開するための有効な方策を検
   討すること。
          ──「都政新報」 http://bit.ly/2hT3iao
─────────────────────────────
 この付帯決議は、築地市場の再整備について可能性を検討し、
豊洲に移転する場合は、市場関係者の合意と、豊洲市場の土壌汚
染対策をオープンで行い、無害化の状態で開場できるようにする
など、「築地市場の移転反対」を掲げていた党としては、きわめ
てゆるい条件といえます。そもそも「付帯決議」には法的拘束力
はなく、移転反対の公約に反する行動をとることの単なるエクス
キューズでしかないものです。
 「2」の予算案の可決の経緯について述べます。
 この予算は、豊洲移転の経費を含む中央卸売市場会計予算であ
り、これが決まると、築地市場の豊洲への移転は事実上決まって
しまう重要な予算です。
 この予算が審議されたときの都議会の情勢は、定員127人の
うち欠員が1人おり、議長を除くと125人、豊洲移転の賛否で
は「賛成62対反対63」で、反対派の方が1票ながら上回って
いたのです。
 ところが、反対のはずの民主党議員が1人裏切って移転賛成派
に回り、予算案は可決されたのです。またしても民主党によって
豊洲移転がほぼ確定することになります。そこには一体何があっ
たのでしょうか。
 裏切ったのは、「東京都中央卸売市場築地市場の移転・再整備
に関する特別委員会」の委員長を務めていた民主党の花輪智史議
員です。花輪氏は、都議会で議決の直前、民主党に会派離脱届を
出して、姿をくらましたのです。
 2011年3月11日の採決当日、行方不明だった花輪智史議
員は、自民党議員2人にガードされて議場に姿を現し、花輪議員
が予算案に賛成票を投じて、予算案は可決されます。この状況を
見れば、誰が考えても自民党の有力者があることを条件にして、
花輪議員を取り込み、寝返らせたことは明らかです。これを主導
したのは、落選中の内田自民党都連幹事長ではないかといわれて
います。その約1時間後にあの東日本大震災が起きるのです。
 花輪議員は、3月25日付で、会派離脱の理由と、なぜ自分が
築地市場の豊洲移転に賛成したかについて、次のブログで詳細に
述べています。その一部を掲載します。
─────────────────────────────
◎「私の決断」/2011年3月25日
 私は、一昨年の9月25日から「東京都中央卸売市場築地市場
の移転・再整備に関する特別委員会」委員長の職にありました。
 この特別委員会は、3人の学識経験者と15人の業界関係者な
どの参考人招致を含め、1年半にも及び、委員会と理事会を開催
し、土日も含めて、熱心かつ真摯な議論を重ねてまいりました。
また、大阪市中央卸売市場の視察も実施し、議論を深めてまいり
ました。公正中立な委員会の運営に努めるという使命を負った委
員長であったがゆえ、この間、私は、所属していた都議会民主党
の一議員という立場を超えて、築地市場の移転・再整備について
冷静に考えることができたと思っています。
 こうした議論と熟考を重ねた末、申し上げなければならないこ
とは、「この問題をこれ以上先送りすることは許されない」とい
うことです。私、花輪ともふみは、この時点で築地市場の移転・
再整備問題に「結論を出す」大きな決断をするに至りました。
 私は、都民のみなさんのために最良、最善の選択は何かを熟慮
した結果、今回、豊洲移転経費を含む東京都中央卸売市場会計予
算に賛成いたします。         http://bit.ly/2uzg9oo
─────────────────────────────
              ──[中央卸売市場論/030]

≪画像および関連情報≫
 ●カネのために魂を悪魔に売ると大災害が起きる?
  ───────────────────────────
   2011年3月11日の現実に起きたドラマは凄いもので
  ある。東日本大震災は2011年3月11日の14時46分
  頃。この14時46分頃という時刻はSF小説の小松左京著
  「日本沈没」での日本沈没が始まる時刻とほぼ同じ。そして
  2011年3月11日13時何分(正確には解らないが13
  時代)に、都議会で63票VS62票で築地市場の豊洲移転
  が決定する。
  ―――――――――――――――――――――――――――
    ◎築地市場豊洲移転決定
        →2011年3月11日13時××分頃
    ◎東日本大震災
        →2011年3月11日14時46分頃
  ───────────────────────────
   上記の二つの大事件は因果関係があるのか?ありそうであ
  る。しかしその関係をハッキリさせることは当然難しい。し
  かし世界には偶然というものは存在しない。この二つの大事
  件は非常に深く関係しているだろう。
   築地市場が豊洲市場に移転を決定する投票は、63票VS
  62票で決まった。たった1票差。しかもその大事な1票と
  投じた人物は、ずっと反豊洲移転派の民主党都議であった。
  しかし投票の直前に行方不明となり、2011年3月11日
  の投票日に豊洲移転推進派の自民党の都議に守られて、豊洲
  移転賛成に1票を投じたのである。http://exci.to/2wTPVcC
  ───────────────────────────

モーニング・ショーのフリップ.jpg
モーニング・ショーのフリップ
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2017年08月16日

●「豊洲移転反対/一貫性なき民主党」(EJ第4584号)

 都議会の「花輪造反事件」は、東日本大震災の騒ぎのなかで都
民には、ほとんど知られることなく忘れ去られたのです。それが
2016年に小池百合子氏が東京都知事選に出馬し、勝利したこ
とによってこの事件が蘇ったのです。小池氏が「都議会にはドン
がいる」と暗に内田茂氏の存在を指摘する発言をしたことにより
内田氏の剛腕ぶりを示す逸話のひとつとして、この事件がワイド
ショーなどに取上げられたからです。
 花輪智史氏は、世田谷区議を1期務めた後、2005年に民主
党から出馬し初当選、2009年の都議選でも再選し、民主党が
第1党になったことによって、市場移転特別委員会委員長に就任
するなど、有力中堅議員として活躍しつつあったのです。
 しかし、2011年3月11日、自民党の誘いに乗り、民主党
に会派離脱届を提出し、豊洲移転の経費を含む中央卸売市場会計
予算案に賛成、成立させたのです。その翌月、都議会議員を辞職
し、世田谷区議選に自公両党の推薦を受けて出馬したのです。こ
こまでは自民党との下約束があったものと思われます。
 しかし、自民党の幹部や石原知事の応援を受けたものの、あえ
なく落選。その後、2度にわたり選挙に挑戦したものの、次のよ
うにいずれも落選しています。やはり「裏切り者」のレッテルは
非常に重かったといえます。
─────────────────────────────
  ◎2011年04月24日
   ・世田谷区議選に出馬するも落選
  ◎2012年12月16日
   ・衆議院選挙に維新比例で出馬するも落選
  ◎2013年06月23日
   ・都議会議員選挙に日本維新の会で出馬するも落選
─────────────────────────────
 ところで民主党は、2010年3月の豊洲の土地取得費を含む
予算に賛成しています。このとき、民主党は第1党で多数を持っ
ており、豊洲の土地取得費を削除する修正案を通すことができた
のですが、ほとんど無意味ともいえる付帯決議を付けることで予
算案に賛成しています。
 それでいて民主党は、翌年の豊洲移転経費を含む予算案には反
対に転じましたが、与党は花輪議員の裏切りによって予算案を可
決させます。このように民主党の行動には一貫性がなく、都議選
でも公約を破っています。そういう意味では、豊洲移転を決めた
のは自公両党だけではなく、民主党も一枚噛んでいます。
 国会でも同様です。2009年の衆院選で自民党を倒して悲願
の政権交代を成し遂げながら、公約したことをきちんと実施しな
い一方で、やらないと約束した消費税の増税を党内の反対を押し
切って自公両党と一緒に実現させ、多くの議員を離党させる原因
をつくっています。要するに何事にも中途半端なのです。これで
は、都民を含む国民に支持が広がらないのは当然です。
 民主党の政権交代の立役者である小沢一郎自由党代表は、野党
としての民進党の中途半端さについて、『週刊ポスト』誌のイン
タビューで、次のように述べています。
─────────────────────────────
──:安倍政権に厳しく対峙すべき野党も、民進党をはじめ、本
   気で戦っているようには見えない。
小沢:無気力に見える。野党がやるべきはいい意味の政権批判。
   僕は、第1次安倍政権のときは、年金問題、次の福田政権
   はガソリン税問題で攻め立てた。「民の竈」の話だから、
   必ず国民の信頼が得られると信じていたから。それが響い
   て安倍さんは退陣した。今でも、野党が国民の暮らしを考
   えて反対すれば、共感を得られる。多少荒っぽいことやっ
   てもね。
──:それはどうだろうか。ガソリン国会の時のように院内でピ
   ケを張ったりすれば、国民に冷ややかな視線で見られるだ
   けではないか。
小沢:違います。政権と一体となったメディアが国民にそう思わ
   せようとしているだけだ。ガソリン国会では、野党がとこ
   とん騒いだから、メディアが報道し、国民に野党の主張が
   伝わった。今回の共謀罪だって、野党がもっと騒いで委員
   会で採決させずに国会を止めていれば、国民は「野党は何
   を騒いでいるんだ?」となる。野党は人数が少ないから、
   国民に知らせるために多少荒っぽいやり方は仕方がない。
──「反対ばかりするな」と批判されるのを恐れて、「建設的野
   党」になろうとしている。
小沢:法案を作る役人はあらかじめ修正の“のりしろ”を考えて
   提出しているから、野党が修正協議に乗ってくればしめた
   もの。本来、野党は対案を出さなくとも困らない。堂々と
   「基本的な考え方が違うから、政府の法案に沿った対案な
   んかない」と言えばよい。
        ──『週刊ポスト』/2017年5月26日号
─────────────────────────────
 築地市場の豊洲移転について、自民党と公明党は、一貫して賛
成の姿勢を取る一方で、日本共産党は一貫して反対しています。
これら3党は旗手鮮明ですが、民主党(民進党)だけは、どっち
つかずの姿勢です。当時の鳩山由紀夫代表(政権交代前)は、次
のように街頭で連呼していたのです。
─────────────────────────────
 築地市場移転をやめさせるためには、たった一つ、都議選で
 勝つことです。           ──鳩山由紀夫代表
─────────────────────────────
 これについては、「関連情報」の日本共産党「しんぶん赤旗」
を読んでください。政策がフラフラするようでは、何年経っても
国民の信用は得られないと思います。民主党(民進党)は、それ
にまだ気が付いていないようです。都議会の民進党はどちらかと
いえば自公寄りです。    ──[中央卸売市場論/031]

≪画像および関連情報≫
 ●都議会民主党 また公約破り/「しんぶん赤旗」
  ───────────────────────────
   都立3小児病院の廃止に続いて築地市場移転予算も賛成。
  民主党が自民党と密室協議を重ねたあげくに、築地市場の豊
  洲移転予算に賛成する方針に転じたことは、都議選公約を再
  び投げ捨てるものにほかなりません。
   民主党は昨年7月の都議選で「築地市場の移転に・・民主
  党は、「民主はNO/自民はYES」をマニフェストの最重
  点に掲げました。築地市場前での告示第一声で鳩山由紀夫代
  表は、「築地市場移転をやめさせるためには、たった一つ、
  都議選で勝つことです」と強調。多くの都議候補が「築地市
  場は現在地で再整備」と公約しました。
   都議選の結果、与党の自民党・公明党が過半数を割り、日
  本共産党、民主党、生活者ネット・みらいが過半数を占め、
  石原慎太郎知事の無謀な市場移転計画にストップをかけるこ
  とができる議会構成となりました。
   猛毒物質のベンゼン、シアン化合物、ヒ素で高濃度汚染さ
  れた豊洲地区への市場移転計画には、仲卸業者や消費者団体
  日本環境学会など各団体が反対、集会やデモには日本共産党
  のほか民主議員も参加しました。
   移転問題が焦点となった今都議会で、日本共産党は新年度
  の中央卸売市場会計予算案から移転関連予算全額を削除する
  修正案、民主党は用地取得費だけ削除する修正案を各会派に
  提示。「土地購入費削除」の一点で共同すれば豊洲移転にス
  トップをかけられる可能性が生まれました。
                   http://bit.ly/2vT9RQ7
  ───────────────────────────

現在の野党について語る/小沢一郎氏.jpg
現在の野党について語る/小沢一郎氏
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2017年08月17日

●「『盛り土なし』は早い段階で決定」(EJ第4585号)

 小池都政になった2016年8月25日、この日は、豊洲新市
場の食品を扱うすべての建物の地下が「地下空間」になっている
事実を東京都がはじめて認めた日です。
 事態を重大視した日本共産党都議団は、東京都に対し、現地視
察を申し入れ、9月7日に豊洲7街区の水産卸売棟地下の視察が
認められます。そのとき共産党都議団が目にしたのは、建物の地
下に広がる空間と、床一面に相当量の水が溜まっている光景だっ
たのです。その敷地は2メートルの新しい土の上に2・5メート
ルの盛り土で固められているはずだっのです。
 小池知事は、9月10日の土曜日に緊急記者会見を開き、衝撃
の事実を明らかにします。このときの記者会見のニュースのひと
つを再現します。
─────────────────────────────
 9月10日午後5時から開かれたの緊急会見の中で小池知事は
東京都が、敷地全体に行ったと説明してきた盛り土について、実
際には水産卸売場など主要な建物の地下では、行われていなかっ
たことを明らかにした。その上で「青果棟、水産棟などにおいて
4・5メートルの盛り土が、行われていなかったのではないかと
いった疑問が出てきた」とした上で、建物の下が空間になってい
て盛り土がない状態になっていたと説明した。「『全てが盛り土
がされている』というのは、現状において正しくないということ
で、ここで訂正したい」と表明。都のこれまでの説明に、問題が
あったという認識を示した。      http://bit.ly/2fEQ5Bs
─────────────────────────────
 翌日から各テレビ局のワイドショーはこのニュースを大々的に
取り上げ、豊洲新市場の地下がどのようになっているかについて
模型などを使って、連日報道が行われたのです。
 そもそも「盛り土」とは、どのような目的で、行われることに
なっていたかについて、8月10日のEJ第4581号で説明し
た専門家会議の結論を再現します。
─────────────────────────────
 1.東京ガスの工場のあった旧地盤面から2メートルの土を
   入れ替え、その上に2・5メートルの盛り土をする。
 2.地下水管理システムを設計・構築し、汚染地下水が上昇
   して盛り土を再汚染しないようにコントロールする。
─────────────────────────────
 このとき石原都政では、石原知事自身の考え方なのか、知事の
スタッフの知恵なのかはわかりませんが、実に巧妙な「科学的根
拠」づくりの仕組みをつくっていたのです。それは、専門家会議
の解散直後に「技術会議」を設置したことです。この会議の目的
は、専門家会議で提言されたものを具体化することです。
 しかし、この技術会議は、座長はロボット工学の権威である原
島文雄東京電機大学教授であることはわかっていますが、他のス
タッフは一切非公開です。したがって、誰がどのように発言し、
何を決定し、何をしなかったかは明らかにされないのです。
 そのため、専門家会議で提言されたことでも、その具体化が行
われるプロセスで技術会議で変更されてしまうことは十分あり得
ることです。仮に専門家会議の提言をそのまま実行すると膨大な
資金がかかるので、一部を実施しないで、価格を下げるようなこ
ともやっています。このように、スタッフも内容も非公開であれ
ば、何をされても都民にはわからないのです。
 さて、専門家会議の豊洲新市場の土壌汚染対策は、東京ガス工
場時代の地表面から2メートルの地下の土はすべてきれいな土に
入れ替え、その上に2・5メートルの盛り土をする──すなわち
4・5メートルの土を盛るというのが1つ目の柱です。
 それに加えて、汚染地下水が上昇して盛り土を再汚染させない
ため、地下水をAP(水位基準)2メートル以下に制御し、管理
する地下水管理システムを設置します。これが2つ目の柱です。
この2つがうまく機能すれば、土壌汚染は防げるというのが、専
門家会議の提言です。
 問題は、その提言を技術会議がどのようにして具体化したのか
についてはまったく不明なことです。しかし、これら2つの柱の
うち、建物の下にあるべきはずの盛り土はなく、地下空間がポカ
リと空いて、水がたまっていたのです。どうしてこのようになっ
てしまったのでしょうか。
 地下水管理システムの設計を請け負ったのは、日水コン(本社
東京/野村喜一社長)ですが、東京都に次の2つの設計報告書を
提出しています。
─────────────────────────────
      1.詳細設計報告書/2014年3月
      2.修正設計報告書/2015年3月
─────────────────────────────
 これら2つの報告書には「地下水管理システムの概要」と題し
た概念図が掲載されているのですが、この図には盛り土がなく、
地下空間が描かれています。なお、このシステムに関しては、東
京都の中央卸売市場の土壌汚染を所管する土木部門、システムの
設計監理を行う建設部門の担当になっています。
 したがって、これら2つの部門の担当者は、報告書を見ている
はずであり、盛り土のないことは最初から知っていたはずです。
しかし、小池知事に提出するためにまとめた「第1次自己検証報
告書」では、建設部門は知っていたが、土木部門は知らなかった
と記述しています。明らかに土木部門はウソをついています。
 もうひとつ不可解なことがあります。「土壌汚染対策工事と地
下水管理に関する協議会」という卸や仲卸など市場関係者と情報
交換する協議会があります。こ協議会にも「詳細設計報告書」は
配付されていますが、概念図に関しては盛り土がちゃんと載って
いるのです。つまり、東京都は市場関係者に関しては、盛り土が
あることにしていたのです。東京都の担当部署は、市場関係者に
対し、明らかにウソをついてきたことになります。
              ──[中央卸売市場論/032]

≪画像および関連情報≫
 ●豊洲問題で都が技術会議録の改竄疑惑?
  ───────────────────────────
   今朝、たまたま『モーニングバード』という、羽鳥さんの
  やってるモーニングショーを見てたら、スクープということ
  で、都がHP上の会議録を9月16日になって追加資料を掲
  載していた、ということが明らかになったそうだ。また、毎
  日新聞も同様の改竄疑惑を報じている。
   東京都が盛り土問題発覚後の9月16日に、盛り土の工法
  を検討した「技術会議」の会議録に「『建物下に作業空間を
  確保する必要がある』と提言を受けた」との資料を追加し、
  公表していたことが分かった。技術会議の複数の元委員は、
  毎日新聞の取材に「作業空間をつくる認識はなかった」と証
  言しており、都が会議録を改ざんした可能性もある。
   都が追加したのはホームページ(HP)上に掲載されてい
  る第9回技術会議(2008年12月25日開催)の「技術
  会議が独自に提案した事項」との資料。資料では汚染物質の
  除去・地下水浄化の確認方法として「地下水から基準値を超
  える汚染物質が検出された場合、浄化できるように建物下に
  作業空間を確保する必要がある」と記載されている。
   追加掲載に当たって、都は一部の委員に「会議録に詳細な
  資料を追加する」と連絡したが、資料の内容は説明しなかっ
  たという。毎日新聞のこれまでの取材に、委員を務めた根本
  祐二氏や川田誠一氏は「盛り土をするという前提で議論して
  いた。技術会議では、空洞をつくるという話にはなっていな
  い」と証言している。       http://bit.ly/2uCs84x
  ───────────────────────────
 ●図形出典/赤旗編集局著/日本共産党東京都議団監修「徹底
  追及【築地市場の】豊洲移転」/新日本出版社

豊洲新市場の地下の状況.jpg
豊洲新市場の地下の状況
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2017年08月18日

●「『盛り土なし』技術会議の決定か」(EJ第4586号)

 専門家会議は、豊洲新市場の土地にどのような調査をしたので
しょうか。
 専門家会議は土壌汚染対策法(土対法)にしたがい、10メー
トルメッシュ(10メートル×10メートルの方眼)に分け、区
画ごとにサンプラー(サンプルをとる管)を土中に挿して、地下
水の概況調査を行っています。
 全体で約4100区画を調べた結果、ベンゼン4万3千倍、シ
アン化合物860倍の高濃度の汚染が見つかり、豊洲新市場全域
に高濃度汚染が広がっている可能性が出てきたのです。
 専門家会議の平田健正座長は、この汚染状態を重視しして、追
加調査を行っています。その結果、サンプラーがたまたまタール
溜まりを貫通した結果であることが判明したといいます。なぜ、
そんなことがいえるかというと、汚染が見つかった周辺の土にサ
ンプラーを挿して調べた結果、同様の汚染が発見できなかったか
らであるという説明をしています。
 この平田座長の言葉から、専門家会議が当初実施した土壌汚染
の調査方法がわかります。区画(メッシュ)の中心部分にサンプ
ラーを挿し、地下水を採取して調べます。もし、何も出なければ
その区画は土壌汚染なしと判断し、その区画については、何もし
ないのです。これに対して、もしある区画で高濃度の汚染が出た
場合は、その区画の他の部分をいくつか調べて、汚染がなければ
汚染の発覚した場所は、たまたまタール溜まりだったと判断し、
その周辺の土をすべて入れ替えるというやり方です。
 しかし、10メートルメッシュでそのやり方をすれば、ほとん
どの汚染を見逃してしまうことになります。おそらくタール溜ま
りはそれぞれの区画にまだら模様に存在していると考えられるか
らです。たまたま汚染がなかったからといって、その区画を「汚
染なし」と判断できないからです。さらにもっと問題なのは、ベ
ンゼンなどの揮発性物質のガスの上昇です。それを防ぐのに有効
なのは盛り土なのです。
 そのため、専門家会議は、全区画の2メール以下の土をすべて
入れ替え、その上に2・5メートルの盛り土をするという提言に
なったものと思われます。この専門家会議のこの汚染土壌処理に
ついて、一級建築士の水谷和子氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 「ベンゼンやシアン化合物を含んだタールだまりはクラスター
爆弾のように散らばっている」と、日本環境学会・坂巻幸雄土壌
汚染ワーキンググループ長は発言しています。散らばったタール
だまりを全部探し出すことは、実際のところ不可能です。
 平田座長の結論も「汚染(タールだまり)を全部見つけること
はできない。したがって上部2メートルは全部土壌を除去、その
下は見つかった汚染は除去するが、見落とす汚染もあるから、地
下水も汚染される」でした。したがって「4・5メートルの健全
土を盛り土するが、盛り土が汚染されないように地下水位を管理
する」、以上が専門家会議の結論となったのです。
            ──中澤誠/水谷和子/宇都宮健児著
           『築地移転の闇をひらく』/大月書店刊
─────────────────────────────
 専門家会議はこの提言をまとめて解散し、その実施は、専門家
会議の解散直後に立ち上げられた「技術会議」に委ねられます。
しかし、この技術会議はメンバーや検討内容は非公開になってお
り、おそらくその技術会議のなかで、市場施設の地下の盛り土は
行わない決断がなされたものと思われます。
 専門家会議と技術会議──この2段構えの提言の実現機構につ
いては、8月2日付、EJ第4575号でも取り上げているよう
に、多くの疑惑があります。それは、技術会議が提言の骨抜きを
やっている疑惑があるからです。    http://bit.ly/2uT9y6x
 この場合、もし後になってそれが発覚しても、メンバーが非公
開であれば、追求しようがないからです。座長は原島文雄教授で
あると公開されていますが、原島教授はロボット工学の専門家で
あり、土壌汚染について専門外です。
 このように、証拠はありませんが、おそらく「盛り土なし」は
技術会議で決められたものと考えます。したがって、豊洲新市場
の設計段階から「盛り土なし」は前提になっていたのです。東京
都の新市場整備部は、市場関係者にはこのことを知られてはなら
ないと考えて、表向きは「盛り土あり」の概念図を公開していた
のです。どうせ建物の地下の話であり、建物が建ってしまえばわ
かるはずがないと考えたのでしょう。技術会議で決めたとすれば
石原知事がこの事実を知らないはずはないと考えます。
 しかし、設計が相当程度進んだ段階になって、新市場整備部は
「盛り土なし」が心配になり、「盛り土あり」の設計に変更しよ
うとしたフシがあります。永尾俊彦氏は、開示資料に基づいて、
次のように記述しています。
─────────────────────────────
 都は、盛土がなくても安全なのか不安だったらしく、「修正設
計報告書」では盛土がない場合のリスク評価まで行っていた。地
下水から揮発したベンゼンなどがガスとして隙間や亀裂から建物
内に入り、人の健康や生鮮食品にどの程度影響を与えるかを「レ
ベッカ」という計算式で試算した。これは専門家会議も使った式
を踏襲した。結論は10万人に1人という「目標発がんリスク」
をクリアするのは、ベンゼンの場合、地下水の環境基準は1リッ
トル当たり0・01ミリグラムだが、その約10倍の0・118
ミリグラムまでは許容されるとなっている。
         ──永尾俊彦著/岩波ブックレット/968
「ルポどうなる?どうする?築地市場/みんなの市場をつくる」
─────────────────────────────
 この「修正設計報告書」は、日本共産党都議団が入手したもの
です。「盛り土なし」の事実を東京都が最初から知っていたとす
れば、それは都民への裏切りそのものです。
              ──[中央卸売市場論/033]

≪画像および関連情報≫
 ●都がまたウソ 豊洲新市場“地下空間の危険性”認識
  ───────────────────────────
   豊洲市場問題をめぐって、またまた東京都の役人のウソが
  発覚した。土壌汚染対策として専門家会議が提言した「盛り
  土」を無視し、主要建物の地下部分に巨大な空間を設けてい
  たことについて、都は「土壌汚染対策法でベンゼンの拡散を
  防ぐには、厚さ10センチ以上のコンクリートで遮断すれば
  いいと定められており、安全性に問題はない」と釈明してい
  る。しかし、都は土壌汚染対策に着手した2007年当時か
  ら、地下空間の危険性を認識していたことが分かったのだ。
   2016年9月14日の読売新聞によると、都は07年5
  月に土壌汚染対策を検討する専門家会議を設置。その初会合
  で、建物の下に地下空間を設け、市場で運搬用に使われるタ
  ーレー(荷台付き小型三輪車)置き場などに使用する案を提
  示した。
   これに対して委員である専門家は「ベンゼンなど揮発性の
  物質は、ちょっとでも隙間や亀裂があれば室内に入り込む可
  能性がある」と指摘。都はこれを受けて、ターレー置き場を
  地下から地上に変更した。
   ところがその後、都は独断で地下空間を設けることを決め
  11年3月に市場建物の基本設計の入札を実施した。ウソに
  ウソを重ねる都庁の役人に、もはや市場移転問題を担当する
  資格はない。もし民間企業だったら「全員クビ」が当たり前
  だ。               http://bit.ly/2w9xowC
  ───────────────────────────

原島文雄氏.jpg
原島 文雄氏
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2017年08月21日

●「専門家会議の提言を検証してみる」(EJ第4587号)

 石原都政のときの豊洲関連の土壌汚染隠しは、正しいデータを
提出しなければならない専門家会議にも及んでいます。それらは
小池都政になってからの情報公開──「海苔弁はがし」によって
すべて明らかになっています。メディアもそのことはわかってい
るはずですが、さらに自民党の支持率を下げることにつながるの
で、無視しているようにみえます。
 きわめてテクニカルな話になりますが、どのようなデータを隠
したのか、そしてその隠したことが、どのような結果をもたらし
ているのかについて、知っていただきたいと思います。
 土対法関連の専門用語に「難透水層」というものがあります。
地下水を通しにくいか、通しやすいかという意味で使われる地層
のことです。地下水を通しやすい「透水層」に対して、粘土など
のように水を通しにくい層を「難透水層」といいます。完全に水
を通さない層は「非透水層」と呼ばれます。
 これに関して「透水係数」という言葉があります。これは、土
の中を水が移動する速度をあらわす言葉です。難透水層が多いと
透水係数の数値は小さくなり、汚染物質が上昇してこないことの
証になります。そのため、土対法では、土の下に連続した難透水
層がないか少ない、つまり透水係数が高いと判断された場合は、
深さ10メートルまでの汚染調査が求めています。したがって、
非常に経費がかかることになります。
 一級建築士の水谷和子氏は、東京都の役人がこの透水係数の数
値を誤魔化していたといっています。これも小池知事の「海苔弁
はがし」で明らかになったのです。水谷和子氏は次のように述べ
ています。
─────────────────────────────
 私がこの問題に取り組み始めたのは、専門家会議の半ばころで
す。友人に勧められて参加した築地見学会で、案内してくれた仲
卸のまぐろ屋さんと名刺交換をしたのがきっかけです。
 専門家会議の論争が気になり、初めて開示請求したのが地質調
査報告書でした。驚くことに、そこに書かれていた透水係数が専
門家会議で示されていたものとは違っていたのです。都は数値を
10倍安全側に書き換えて専門家会議に報告していました。都は
後日それを「誤記」としてホームページ上に訂正文を載せたので
すが、そのときは、すでに専門家会議は終了し、新たに技術会議
が開かれていました。都の虚偽報告が調査深度決定に及ぼした影
響は大きかったと思います。報告書の前提が変わるほどだったは
ずです。                  ──水谷和子氏
            ──中澤誠/水谷和子/宇都宮健児著
           『築地移転の闇をひらく』/大月書店刊
─────────────────────────────
 透水係数を10倍改竄しているということは、難透水層がない
のにあったといっているのに等しいのです。そうであるとすると
難透水層があるという前提で構築された専門家会議の土壌汚染対
策をきちんとやっても、汚染を防ぐことは困難であるということ
を意味します。まして、その肝心な盛り土がなかったのですから
土壌汚染対策にはなっていないということです。
 そこで、専門家会議の提言を少し詳しく以下に検証します。豊
洲新市場の地下構造図を添付ファイルにしてあるので、それを参
照しながら説明します。ここで「AP」について説明する必要が
あります。これは、土木関係用語であり、「高さ」を示す数値で
す。「AP」とは東京都中央区新川にある霊岸島水位観測所の最
低水位をもって定められています。
─────────────────────────────
    TP:トウキョウ・ペイル/東京湾の平均海面
    AP: アラカワ・ペイル/荒川の工事基準面
─────────────────────────────
 図のAP+2メートルには砕石層があります。それより以下に
ついては東京都は何もしていないので、そこには高濃度の汚染土
壌が残されています。そのため、砕石層を含め4・5メートルの
盛り土をして、汚染土壌が上昇してくるのを防いでいるのです。
確かに盛り土は行われているのですが、肝心の市場建物の下の盛
り土は行われておらず、地下空間になっています。
 問題は地下水の水位です。満潮時の海水面がAP+2メートル
です。しかし、台風などで大雨が降ったりすると、一挙に地下水
の水位が上昇し、砕石層よりも上に上がってきます。そうすると
本来きれいなはずの盛り土は汚染されてしまいます。
 しかし、ベンゼンなどの揮発性のガスについては盛り土によっ
て防ぐことができます。しかし、市場建物の地下は空間ですから
地下空間にはガスが充満し、いろいろな隙間から建物内部に侵入
してきます。これは防ぐことはできません。
 そのため、地下水管理システムが必要になったのです。この地
下水管理システムによって、地下水の水位をAP+1・8メート
ル以下に保つことができれば、満潮時はもちろん、増水時でも砕
石層よりも上部に上がってこないようにできるというのが専門家
会議の提言なのです。しかし、既出の水谷和子氏は、次のように
反論しています。
─────────────────────────────
 地下水管理システムが本格作動したのは2016年10月17
日と言われています。建物外にある観測井戸の5週間分の地下水
位を見てみると、低くて砕石層の上端AP2・5メートル前後、
高くてAP4・5メートル付近にあります。専門家会議の管理水
位AP2メートルまで下がった記録はなく、また技術会議の提言
した日常管理水位AP1・8メートルに至ってはもちろん1度も
記録したことはありません。満潮時の海水面がAP2メートル付
近ですから、AP1・8メートルで日常管理することはそもそも
物理的に難しく、机上の空論であったのではないかと思います。
      ──中澤誠/水谷和子/宇都宮健児著の前掲書より
─────────────────────────────
              ──[中央卸売市場論/034]

≪画像および関連情報≫
 ●盛り土/地下空間/汚染物質――豊洲市場問題とは何か
  ───────────────────────────
   2016年11月7日に築地から移転されるはずだった豊
  洲市場。汚染物質に対する安全性の検証の必要性から小池百
  合子都知事の移転延期決定後、「盛り土」「地下空間」など
  計画と異なる工事の実態が明るみになり、小池都知事の判断
  が注目を集めています。
   見えにくくなった豊洲市場問題の論点を建築という観点か
  ら、若山滋氏(建築家・名古屋工業大学名誉教授)が整理し
  ます。トランプ氏とクリントン氏の選挙戦は、嫌われ者どう
  し、史上最悪の大統領戦と言われ、アメリカを二分する接戦
  を演じたのだが、小池都知事の選挙戦は圧勝であった。結局
  日本でもアメリカでも、人々は「変化」を選択したのであり
  その余震がまだ続いている。
   圧勝の余勢を買って、新知事が就任後最初に問題としたの
  が、築地市場の豊洲移転である。いくつかの論点が浮かび上
  がったが、センセーショナルに報じられたのは盛り土問題で
  あった。今更、という印象もあるが「あれは一体何だったの
  か、建築の専門家として説明してほしい」という声も強いの
  で、正直な印象を述べてみたい。この話を聞いて、初めは何
  が問題なのかよく理解できなかった。すでに竣工した建築の
  下に、しかるべき盛り土が行なわれていない、というが、わ
  れわれの頭の中には、その程度の土は掘り返して工事するも
  のという考えがある。       http://bit.ly/2wlkwTx
  ───────────────────────────

豊洲新市場の地下構造.jpg
豊洲新市場の地下構造
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2017年08月22日

●「地下空間は基本設計前からの条件」(EJ第4588号)

 石原元知事は、築地市場の豊洲移転問題にはもともと関心は薄
かったものの、東京オリンピックの開催には強い意欲を持ってい
たのです。しかも、なぜか東京オリンピックの2016年開催に
は相当自信を持っていたようです。
 2009年2月6日、石原知事は「豊洲新市場整備方針」を決
定します。このときは「盛り土あり」の方針になっています。問
題なのは、この整備方針の巻末に記載されている豊洲新市場の開
場時期と環状2号線完成時期です。
─────────────────────────────
   ◎豊洲新市場開場時期及び整備スケジュール
    開場時期は平成26(2014)年12月
   ◎環状2号線完成スケジュール
    完成時期は平成28(2016)年 3月
─────────────────────────────
 環状2号線は、全長14キロの都道で、臨海部と都心を結ぶ大
動脈として機能させる予定の道路です。東京五輪では臨海部に選
手村を建築する予定のため、選手の移動にこの道路は不可欠にな
るのですが、この道路は築地市場が移転する前提で設計されてい
るのです。そのため石原知事は、豊洲新市場の開場時期をこの時
点で2014年12月と明記したのです。明らかに「2016年
東京五輪ありき」のスケジュールであるといえます。
 もうひとつ考慮すべきことがあります。2008年5月頃とい
えば、石原知事は自らの発案で設立した新銀行東京の経営が破綻
し、都が出資した1000億円を棄損、400億円の追加出資を
決めたことで、都議会や都民から厳しく批判されていた時期に当
たります。そういう時期に豊洲市場予定地の地下水から、環境基
準の4万3千倍のベンゼンが出て、石原知事にとって頭の痛い問
題が噴出した時期であったのです。
 そのため知事は、2008年7月に出された専門家会議の提言
──盛り土による市場整備にかかるコストのことを非常に気にし
ていたといいます。専門家会議の提言を実行すると、1000億
円ぐらいのコストかかるといわれていたからです。
 しかも、2009年には石原知事にとって計算外のことが2つ
も起きたのです。それは、2009年7月12日の都議選で「豊
洲市場への移転反対」を唱えていた民主党が自民党に勝利し、都
議会第1党になったことと、2009年10月2日にコペンハー
ゲンで開かれたIOC大会で、東京はオリンピックの開催地から
外れたことです。
 豊洲新市場の基本設計が「盛り土あり」ではじまったことは確
かです。しかし、2011年2月に基本設計プロポーザル(企画
提案型業者決定)で日建設計が採用されたときの基本設計には、
主要3棟の建物の地下には地下空間が描かれています。都が基本
設計に与えた条件のなかに、建物地下に「盛り土なし」の条件が
あったことになります。つまり、設計に当たって都が建物の下に
は地下空間を設けることを決めていたことは確かな事実です。
 小池知事の指示による「豊洲市場地下空間に関する調査特別チ
ーム」による「第2次自己検証調査報告書」によると、興味深い
ことがわかります。
 2012年5月30日の日建設計との打ち合わせで、都の担当
者は日建設計側に次の質問を行っているのです。
─────────────────────────────
 2012年5月16日に建物下の「盛り土なし」との指示を出
したが、以下の理由から、「盛り土あり」に変更は可能か。
            ──中澤誠/水谷和子/宇都宮健児著
           『築地移転の闇をひらく』/大月書店刊
─────────────────────────────
 「以下の理由」とは何かというと、「竣工後10年以降は、地
下水のポンプアップを中止する可能性があり、その場合、AP4
メートル程度まで地下水が上昇する可能性があるが、建物地下が
地下水のプールになるのを避けたい」というのが理由です。
 つまり、市場施設の建物下の「盛り土なし」で設計を指示して
おきながら、後で不安になり、変更を申し入れているのです。し
かし、日建設計は次のように変更を拒否しています。
─────────────────────────────
 これに対し日建設計は、「すでに6街区は図面がFIXし、社
内では実施設計を描き始め、後戻りできない状況である。さらに
埋土分の工期延長の懸念があることから、埋土なしの与条件で進
めていきたい」と回答しています。基本設計に着手した11年3
月から、盛り土なしは与条件として都から示されてきたことでし
たから、設計側から言えば今さらの感がある話だったのかもしれ
ません。設計の納期も全体の工期も待ったなしの状況で進められ
ていたことが、記録からも察することができます。
 東京都はその後、5、7街区の建物下の埋土についても同様の
要望を出していますが、その後、盛り土ありへの変更が実現され
ることはなく、全域での盛り土なしが確定しました。
      ──中澤誠/水谷和子/宇都宮健児著の前掲書より
─────────────────────────────
 「建物地下の空間がプールになるのを避けたい」──まさに現
在の状況を予測しています。小池都政になって地下空間が発見さ
れたとき、そこは地下水のプールになっていたのです。それは何
を意味するかというと、地下水管理システムが機能しないことの
証明であるからです。つまり、地下水の水位のコントロールがほ
ぼ不可能であることはあらかじめ予測されていたのです。
 それではなぜ、「盛り土あり」に設計を戻そうとしたのでしょ
うか。それは、盛り土があれば、ある程度の地下水は覆い隠すこ
とができるからです。つまり、豊洲の土地は、そんな難しいこと
をクリアしない限り、使える土地ではなく、まして生鮮食品を扱
う中央卸売市場として全く不適の土地なのです。建物が完成した
現在でも、その状況は何も変わっていないのです。
              ──[中央卸売市場論/035]

≪画像および関連情報≫
 ●卸売市場を建設することじたいが無理筋の計画
  ───────────────────────────
   まずは、これまでの経緯を簡単に整理しておこう。
  報道・世論が沸騰する真っ只中、東京都の内部聴聞で地下空
  間を設けた理由について問われた当時の関係職員たちは、そ
  れが「汚染再発時の作業スペースだった」と証言した。次い
  で、小池都知事の采配で9月30日に公表された「自己検証
  報告書」には、地下空間の必要性を「技術会議が独自に提案
  した」と記されていた。
   ところが、10月7日に開かれた都議会の経済・港湾委員
  会に呼ばれた岸本良一中央卸売市場長は、「地下空間の必要
  性を提示したのは技術会議ではなく都職員の誤りだった」と
  謝罪した。複数回にわたる技術会議の全体を通して「空間」
  が議論されたため「技術会議の提案」と記録されてしまった
  のだという。
   10月13日になって、事態はさらに急転する。
  基本設計の発注先候補へのヒアリングを目的として開かれた
  「プロポーザル技術審査委員会・第3回」(2011年2月
  4日)の議事録で、都はそれまで黒塗りにしてきた部分を開
  示した。すでに報じられたように、そこには応募企業「日建
  設計」の主任技術者が「盛り土ではなく地下空間を」と提案
  する発言記録があったのである。  ──藤野幸太郎氏論文
                   http://bit.ly/2uRpgkf
  ───────────────────────────

地下水のプール状態の豊洲新市場地下空間.jpg
地下水のプール状態の豊洲新市場地下空間
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2017年08月23日

●「『土壌ロンダリング』のマジック」(EJ第4589号)

 築地市場の豊洲移転について、石原都政での東京都は大きなウ
ソをいくつもついています。一級建築士の水谷和子氏は、そのな
かでも、最も許せない、犯罪性の高いウソをいくつか指摘してい
ますが、そのウソを取り上げることにします。
 2006年11月10日のことです。その日、東京都は、不動
産鑑定士らでつくる財産価格審議会(財価審)に対して、豊洲市
場予定地の売買価格が適正であるかどうかを審議してもらうため
の議案書を提出しています。その議案書には、次のように記述さ
れていたのです。
─────────────────────────────
 土壌汚染が発見された場合には、従前の所有者(仮換地前の所
有者:東京ガス[株])が処理対策を実施することになっている
ため、土壌汚染は存しない更地として評価する。なお、土壌汚染
調査の結果、(中略)汚染物質(シアン化合物、ベンゼンなど)
の存在が判明したが、既に条例に基づく適切な処理対策が実施さ
れ、その作業は完了しており、現在汚染物質は存在しない。
         ──永尾俊彦著/岩波ブックレット/968
「ルポどうなる?どうする?築地市場/みんなの市場をつくる」
─────────────────────────────
 土地の売買の場合、売却前はもちろんのこと、売却後であって
も、土地から汚染物質などが出た場合は、売り主が責任を持って
処置をすることはすべての不動産取引の常識になっています。
 豊洲の土地の場合、売主の東京ガスは、都の環境確保条例にし
たがって土壌汚染除去の処理を行い、完了届を提出しています。
したがって、現在汚染物質は存在しない状態なので、時価で購入
したものであると議案書には記述されています。この議案書につ
いて都の財産価格審議会は、豊洲の土地の売買価格は適正なもの
として承認しています。
 しかし、既に述べているように、都の環境確保条例は、土壌汚
染に対して厳格な処置を求める土壌汚染対策法(土対法)に先ん
じて都が制定した条例であり、土対法よりもゆるい土壌汚染対策
になっています。まるで、東京ガスのために制定した条約のよう
なものです。なぜなら、土対法の少し前に、都の環境確保条例は
制定されているからです。
 この議案書については、2010年11月16日の都議会経済
・港湾委員会で、民主党の伊藤ゆう都議が塩見清仁中央卸売市場
監理部長に質問しています。
─────────────────────────────
 伊藤:土壌汚染については、「土壌汚染物質が発見された場
    合には」ですから、新たに発見された場合には東京ガ
    スが処理対策を実施することになっていますと、普通
    の人はこう読むんじゃないですか。
 塩見:この評価条件を読む限りにおいては、そういったこと
    を一概にいえるということでも、いえないということ
    でもない。つまりこれからそういうことが読めない。
    (速記録)      ──永尾俊彦著の前掲書より
─────────────────────────────
 上記の塩見中央卸売市場管理部長の答弁は、何をいっているの
かさっぱりわかりません。いかにも尻尾をつかませない官僚答弁
の典型であるといえます。
 2007年6月21日の都議会経済・港湾委員会で、民主党の
大沢昇都議は、後藤正新市場建設調整担当部長に次の質問をして
います。やり取りを再現します。
─────────────────────────────
 大沢:もし都の調査で新たな汚染が見つかったら、誰が処理
    し、費用を負担するのか。
 後藤:豊洲新市場予定地における汚染物質の処理等につきま
    しては、汚染原因者(東ガス)の負担でございます。
    したがいまして、東京都は平成17(2005)年5
    月、東京ガス株式会社との間で処理基準(環境基準)
    を超える操業由来の汚染土壌について、同社が適切に
    処理を行うという内容の確認書を取り交わしておりま
    す。(速記録)    ──永尾俊彦著の前掲書より
─────────────────────────────
 しかし、東京都と東京ガスの契約書には「瑕疵担保条項」はな
く、契約後に土地から新たな汚染物質が出てきても──実際に何
回も出てきているが──東京ガスはいっさい負担する義務はない
のです。そうであるとすると、東京都は民主党の大沢都議の質問
に対して、明白なウソをついたことになります。
 東京中央卸売市場労働組合委員長の中澤誠氏は、「土壌ロンダ
リング」という言葉を使っています。汚い土地が東京都が制定し
た条例を通過させると、キレイな土地に変身するマジックのよう
だと皮肉っているのです。中澤誠氏の主張です。
─────────────────────────────
 東中労の中澤誠委員長は、汚染された土地が条例を通せば、法
令上はキレイな土地になる手品のような手法を「土壌ロンダリン
グ」と呼ぶ。麻薬売買など犯罪で得た金を、口座に移し替えて資
金の出所や受取人を分からなくするマネーロンダリング(資金洗
浄)になぞらえた造語だ。「市場が汚したんじゃない。東ガスが
汚したのに、何で市場がキレイにしなきゃなんないの」。
 2013年9月7日、東中労などが呼びかけて、久しぶりに移
転反対のデモが行われ、約400人が参加した。「ええじゃない
か。ええじゃないか。築地市場がええじゃないか。豊洲市場はダ
メじゃないか」。ドラムのリズムにあわせ、口々に唱和しながら
銀座周辺を練り歩いた。かつて水産仲卸が中心だった移転反対運
動は、水谷さんら市民有志や東中労の他、食の安全を心配する消
費者団体や女性団体がになうようになっていく。
                ──永尾俊彦著の前掲書より
─────────────────────────────
              ──[中央卸売市場論/036]

≪画像および関連情報≫
 ●豊洲新市場の土地売却の真相/ジャーナリスト松崎隆司氏
  ───────────────────────────
   東京都議会の議会運営委員会は2月20日の理事会で、築
  地市場の移転先としている豊洲新市場(江東区、東京ガス工
  場跡地)をめぐる問題を解明するため、地方自治法100条
  にもとづく調査特別委員会(百条委員会)を設置することで
  合意。石原慎太郎元都知事や岡本毅東京ガス会長ら19人の
  証人喚問を決めた。筆者は1月18日に東京ガスに対して、
  都への土地売却の経緯について公開質問状を提出していた。
  その内容について公開する。
  ――豊洲用地について、いつ頃にどういう経緯で東京都に売
  却したのか。
  東京ガス:もともと弊社は、弊社豊洲用地について独自に同
  用地の開発計画(商業、オフィス、住居等を念頭に置いた開
  発プラン)を立案し、開発案件の誘致に着手するとともに、
  具体的な取組みを推進しておりました。そのような中、東京
  都は、当初の築地市場における現在地再整備計画を方針転換
  し、1999年11月、弊社に対して、築地市場の豊洲地区
  (埠頭先端部)への移転、すなわち弊社豊洲用地の東京都へ
  の譲渡を打診してきました。弊社は東京都に対し、独自の開
  発計画が先行していることを説明し、市場移転先を東京都所
  有地のある埠頭根元とする事への再考のお願いと、併せて東
  京都に対し、後記の弊社が独自に実施した弊社豊洲用地の土
  壌汚染調査の結果を報告しております。
                   http://bit.ly/2wbBcx5
  ───────────────────────────

中澤誠東中労委員長.jpg
中澤誠東中労委員長
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2017年08月24日

●「豊洲液状化を隠そうとした東京都」(EJ第4590号)

 2011年3月11日14時46分──東日本大震災が起きた
日と時刻です。この日の午前中に都議会で築地市場の豊洲への移
転関連予算案が1票差で可決されています。
 東日本大震災では浦安市が液状化で最大の被害を受けましたが
新市場の予定地である豊洲でも液状化が起きています。豊洲市場
予定地では、いくつもの噴砂が確認され、護岸まわりの散歩道に
は大きな亀裂が入っており、地盤が水平方向に移動する「側方流
動」が起きていたのです。
 添付ファイルの写真は、左は3月13日(2日後)当時のもの
で、あちこちに、このような水の溜まった亀裂が発見されていま
す。右は地震からしばらく経過した後の豊洲予定地で、亀裂の部
分にブルーシートがかけられているのがわかります。しかし、豊
洲の液状化についてはメディアがあまり取り上げなかったことも
あって、多くの話題になっていません。
 小池都政になってからの海苔弁外しによって明らかになった技
術会議の記録によると、技術会議の安田進委員と長谷川猛委員が
現場の調査を行っていますが、その時間はせいぜい2時間程度の
ものであり、どれほどの事実がわかったのかは疑問です。しかし
その報告は次のようなものだったのです。
─────────────────────────────
       流動化は縦にしか起こっていない
                  ──技術会議委員の報告
─────────────────────────────
 重ねて技術会議の性格について述べると、その目的は専門家会
議の提言を具体化・実現化するための組織ではあるものの、その
実態は、実現化の過程で、提言を変更したり、予算を削ったりし
ているのです。そのため、専門家会議は、メンバーや会議内容は
オープンですが、技術会議は座長を除くメンバーは非公開である
うえ検討内容も非公開です。もっとも海苔弁外しによって、ある
程度の検討内容はわかるようになっています。
 「流動化は縦にしか起こっていない」──これは詭弁です。液
状化は、地震で地盤が液状化した際に、地盤が水平方向に移動す
る現象(側方流動)のことであり、「縦にしか起こっていない」
などということは考えられないからです。
 しかし、東京都は、当初「噴砂」は液状化ではないと主張して
いましたが、その後、液状化の事実は認めたものの、次のように
開き直ったのです。
─────────────────────────────
 液状化対策をしていない埋立地では液状化は発生して当然。だ
からこそ、液状化対策を確実に行うことが大切です。
         ──永尾俊彦著/岩波ブックレット/968
「ルポどうなる?どうする?築地市場/みんなの市場をつくる」
─────────────────────────────
 液状化の事実に市場関係者は愕然とします。なぜなら、「液状
化したら、市場は何日も使えなくなり、物流が変わってしまうか
らです。まして中央卸売市場は、都の震災対策条例で重要建築物
に指定されており、食料の供給基地にもなっているのです。
 市場関係者は、さいわいまだ建物は建っていないので、液状化
によって汚染がどのようになったのかについて再調査して欲しい
と東京都に申し入れをしたのですが、都はこの要求を次の理由に
より、拒否しています。
─────────────────────────────
 憤砂は、地震により液状化した部分の地下水に圧力が加わり、
地中から地表部に向かって、地下水とともに砂が噴出するという
メカニズムで発生する現象です。特に、新市場予定地のように、
地表がアスファルト舗装などで覆われていない場合には、地下水
が垂直方向へ向かう動きが阻害されないため、基本的には横方向
に動くとは考えにくい。     ──永尾俊彦著の前掲書より
─────────────────────────────
 何をいっているのかというと、豊洲市場予定地では、汚染物質
はタテに動くのであって、ヨコには動かないというのです。都と
しては、新市場の開場時期が大幅に遅延しており、再調査をすれ
ばさらに遅れるし、もし調査して汚染物質が移動などしていたら
土壌汚染対策をまた一からやり直すことになり、カネもかかるの
で、再調査を拒否したのです。
 東京都の主張は明らかに矛盾しています。激しい液状化が起き
た浦安市では、噴砂は垂直に動いたとみられ、跡は空洞化して陥
没しています。しかし、豊洲の場合は、陥没はしておらず、クレ
ーターのようになっているので、噴出個所の下部の横からも流動
化した砂が移動し、吹き上げた可能性が高いからです。
 ここに2011年3月29日付の東京都と日建設計の打ち合わ
せの記録があります。タイトルは「豊洲新市場建設工事基本設計
構造打ち合わせ(臨時)」となっています。都からの出席者は、
新市場整備部、施設整備課、基盤整備担当課の3人です。冒頭に
都の職員(氏名は黒塗り)は、次のように発言しています。
─────────────────────────────
 現在は、「建物周辺にのみ液状化対策を行い、建物直下には行
わない」方針となっている。液状化・土壌汚染・既存躯体撤去に
ついては、改めて再整理するべきと考えている。ただし、不安を
煽らないよう、このような状況であることを市場関係者には漏ら
さないで欲しい。           http://bit.ly/2vX9D9P
─────────────────────────────
 これは、明らかに東京都の日建設計に対する「口止め」です。
そもそも築地市場を豊洲へ移転させることに関して、ここまで述
べてきたように、都はさまざまなウソをついており、どうしても
隠蔽体質を持つようになってしまうのです。
 豊洲新市場の土壌汚染対策に関しては「盛り土なし」の問題に
加えて、この液状化の問題もあるのです。市場の建物は完成して
おり、小池知事の方針もあって、来年には豊洲市場に移る予定に
なっています。       ──[中央卸売市場論/037]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ、豊洲の液状化は騒がれるのか
  ───────────────────────────
   豊洲新市場の地下水の汚染は地上とは関係ない。これは、
  ネットでは当初から言われてきたのに、最近ようやくワイド
  ショーで言われるようになってきました。そこで「豊洲が大
  地震で液状化して地下水が噴出したらどうする」という、い
  ちゃもんがつけられています。ネット上ではとうの昔に論破
  されてるのですが、未だにツイッターではこの問題ではしゃ
  ぐ人がいるので整理しておきましょう。
  1.豊洲が液状化したら築地は潰れてる
   豊洲で地下水が噴出するほどの大地震が起きたら、直線距
  離で2キロしか離れていない築地も大地震に見舞われます。
  最新の建設物が壊れるくらいであれば、耐震基準も満たして
  いない築地の建物は崩壊し、営業できないどころか中で働く
  人が多数死傷し、周囲にアスベストがばらまかれて一帯は立
  入禁止になるでしょう。豊洲に移転しないほうが甚大な被害
  が予想されるんです。
  2.地下水が噴出しても汚染は微量では
   食の安全面で見れば、地下水が噴出し、それに含まれる有
  害物質(水のままか気化したものか)が食品に付着、その状
  態で出荷され小売店等を通じて食卓へ、という経路で汚染が
  広がる可能性が論理的にはありえます。
                   http://bit.ly/2vd4uYv
  ───────────────────────────

液状化の痕跡がある豊洲市場予定地.jpg
液状化の痕跡がある豊洲市場予定地
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2017年08月25日

●「豊洲市場の土壌汚染把握は不十分」(EJ第4591号)

 東京都が築地市場から豊洲新市場への移転に関してついたウソ
はたくさんあります。ここまでそのウソのいくつかについては指
摘してきております。一度ついてしまったウソは、そのウソを覆
い隠すために、さらに大きなウソを何回もつかねばならなくなっ
てしまうものです。
 なかでも絶対に許せないウソは、建物が建ったあとでは、どう
することもできないウソです。そういうウソは2つあります。既
に指摘している事実ですが、改めて、新しい観点から考察を加え
ることにします。
─────────────────────────────
    1.「透水係数」を大幅に改竄していること
    2.「盛り土」をせず、地下空間にしたこと
─────────────────────────────
 今回は「1」について、少していねいに検証します。
 少しややこしい話になりますが、豊洲新市場が中央卸売市場と
して使えるかどうかの判断の基準になりますので、しばらくお付
き合いください。
 「透水係数」というのは、各地層の水の通しやすさをあらわす
指標です。透水係数の数値が高ければ水を通しやすいし、低けれ
ば、通しにくいのです。さて、土壌汚染を調べるボーリング調査
では、土対法の規定により、地層の試料を次のように採取するこ
とになっています。
 まず、地表から50センチの土壌を採取します。それ以深につ
いては、10メートルまで、1メートルごとに土壌を機械的に採
取していく必要があります。しかし、途中に水がたまっている層
(帯水層)がある場合、その底面が難透水層であるときは、その
底面までの試料を採取すればよいことになっています。しかし、
これは汚染が連続していないことを前提としています。
 ここで「難透水層」とは、既に述べたように、水を通しにくい
粘土質の層のことをいいます。つまり、この難透水層が底になっ
ている帯水層は、それよりも下に汚染は拡散しないので、帯水層
の底面までの試料でよいことになっています。
 それでは、帯水層の底面が難透水層であるかどうかをどのよう
にして調べるのでしょうか。
 それには透水性測定機器を使って調べます。この場合、難透水
層の条件は土対法では、次のように決められています。
─────────────────────────────
 透水係数が「1.0×10のマイナス6乗センチ/秒」 より
 小さいとき、難透水層とする。
─────────────────────────────
 東京都はこの調査を行い、採取した31検体の透水係数を次の
ように報告しています。
─────────────────────────────
     1.08×10のマイナス7乗センチ/秒台
─────────────────────────────
 数値の意味は難解ですが、東京都はデータを大きく書き換えて
います。専門家会議ではその数値を真正なものとして、地下10
メートル以内の難透水層の存在を認め、土壌汚染対策を決めてい
ます。それは、それだけゆるい対策になっていることを意味しま
す。これについて、一級建築士の水沢和子氏は、次のようにコメ
ントしています。
─────────────────────────────
 一番危険側の数値を1ケタ安全側に書き換えていたのですから
「データ改ざん」といわれても仕方がないでしょう。仮に転記ミ
スだとしたら、都の管理能力が疑われ、都の提出した資料すべて
の信憑性にかかわります。          ──水谷和子氏
         ──永尾俊彦著/岩波ブックレット/968
「ルポどうなる?どうする?築地市場/みんなの市場をつくる」
─────────────────────────────
 難透水層の決定にはもう1つ条件があります。それは、「難透
水層は切れ目なく連続している」という条件です。難透水層が連
続しているかどうかは、豊洲新市場の全域にわたって調べる必要
がありますが、東京都は約40ヘクタールある広大な市場用地内
で、70ヶ所について調べたに過ぎないのです。
 これについて、東京都の担当者に問うと、担当者は次のように
答えています。
─────────────────────────────
 東京湾の埋立地である豊洲の地層の成り立ちを考えると、難透
水層は一定の連続性を持っていると考えるのが常識。それにボー
リング調査の結果をふまえて総合的に判断しました。専門家会議
も認めています。             ──東京都担当者
                ──永尾俊彦著の前掲書より
─────────────────────────────
 土対法において定められている上記の土壌汚染調査は「無単元
調査法」といい、この方法では、地層を正確に把握できないとさ
れ、汚染も把握できないといわれます。NPO日本地質汚染審査
機構理事長の楡井久茨木大学名誉教授は、無単元調査法について
次のように述べています。
─────────────────────────────
 土対法は(無単元調査法によって)骨抜きにされ、むしろ汚染
の拡大に寄与している。     ──楡井久茨木大学名誉教授
                ──永尾俊彦著の前掲書より
─────────────────────────────
 それではどうすればよいかについて楡井教授は、地層を一つの
単元とみて、地層ごとに汚染を確認する「単元調査法」を提唱し
ています。単元調査法は、病巣をレントゲンで撮るように、地層
を透視図で診断する方法です。東京都の調査は問題のある土対法
の無単元調査の数値を改竄し、難透水層の連続性についてもきち
んと調査しておらず、土壌汚染は相当びどい状態で残っていると
思われます。        ──[中央卸売市場論/038]

≪画像および関連情報≫
 ●豊洲市場の土壌汚染対策の問題点/「週刊金曜日ブログ」
  ───────────────────────────
   東京都は、豊洲市場用地(江東区)で、土壌汚染対策法施
  行規則で定められた地下水を通しにくい粘土層の上端(帯水
  層の底面)の土壌の試料採取を211箇所でやっておらず、
  発がん性物質ベンゼンの汚染調査をしていなかった。201
  6年10月15日に築地市場(中央区)内の講堂で開かれた
  豊洲の土壌汚染対策を話し合う専門家会議(座長=平田健正
  ・放送大学和歌山学習センター所長)第1回の審議の中で、
  都が初めて明らかにした。
   都内在住の一級建築士・水谷和子さんが、都に開示させた
  資料から、「ベンゼンによる汚染の可能性が高いのに、都は
  333箇所で帯水層底面の試料採取をしていません」と昨年
  8月に都庁で記者会見を開き、独自に作成した試料未採取箇
  所の分布図も公表、指摘していた。都はこれまで試料を採取
  していない箇所があることは認めていたが、箇所数は明らか
  にしていなかった。
   2010年に土壌汚染対策法が改正され、帯水層の底面の
  試料採取が義務付けられたが、都の調査は08〜09年に行
  なわれたもので、一部を除いて帯水層底面の試料採取をやっ
  ていなかった。          http://bit.ly/2w6xYIK
  ───────────────────────────

楡井久茨城大学名誉教授.jpg
楡井久茨城大学名誉教授
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2017年08月28日

●「盛り土の有無をめぐる多くの意見」(EJ第4592号)

 7月25日付、EJ第4591号で、東京都がついた絶対に許
せないウソを2つ上げましたが、それを再現します。
─────────────────────────────
    1.「透水係数」を大幅に改竄していること
  ⇒ 2.「盛り土」をせず、地下空間にしたこと
─────────────────────────────
 今回は「2」について詳しく検討することにします。いわゆる
「盛り土問題」を新しい視点から考えます。
 小池都政になって、豊洲新市場のほとんどの建物の下にあるは
ずの盛り土がなく、建物の下には地下空間が広がっていたことが
わかり、さまざまな批判が盛り上がっています。盛り土は、専門
家会議の提言であり、移転を渋る市場関係者に苦渋の決断を迫る
切り札であっただけに市場関係者の怒りは頂点に達したのです。
 2016年10月15日、築地市場内の講堂で、再招集された
第1回の専門家会議において、仲卸「山治」の山崎康弘氏は、次
のように怒りを爆発させています。
─────────────────────────────
 僕たち五回も(豊洲移転反対の)デモをやって、六万、七万の
署名を石原知事に持って行きましたよ。でも、僕ら中小企業の仲
買なんですよ。(豊洲新市場を)あそこまでつくられたら、自分
の信念曲げてでもやっぱ向こうに行かなきゃいけないんだなと断
腸の思いで移転の準備をしてきましたよ。でも(都は)、盛土や
るって言っていたのにやってないじゃないですか!
         ──永尾俊彦著/岩波ブックレット/968
「ルポどうなる?どうする?築地市場/みんなの市場をつくる」
─────────────────────────────
 市場関係者、とくに中小企業の仲卸業者のほとんどは、豊洲新
市場への移転には反対です。しかも、東京都は、市場関係者の意
見も聞かずに豊洲新市場を建設し、専門家会議が約束した土壌汚
染を防ぐはずの盛り土をやっていなかったのですから、彼らが怒
るのは当然です。
 そもそも4・5メートルの盛り土の根拠は何なのでしょうか。
平田健正専門家会議座長は次のように述べています。
─────────────────────────────
 平田座長は、水や土の汚染が広がる経路を遮断することはでき
ても、大気の経路の遮断は難しいことから、盛り土によるベンゼ
ンやシアン化合物などの揮発性の汚染物質について地上汚染阻止
の効果についてRBCA(米方式)の計算式を使って評価しまし
た。条件で入力したのが4・5メートルの盛り土です。地表に到
達する汚染の軽減を計算で求め、安全を確認したとしています。
            ──中澤誠/水谷和子/宇都宮健児著
           『築地移転の闇をひらく』/大月書店刊
─────────────────────────────
 ネットなどを見ると、豊洲新市場の地下に盛り土がなかったこ
とを問題にするのは、建築的な知識のない人のいうことであると
いう意見の人も多くいます。建築家で、名古屋工業大学名誉教授
の若山滋氏は、盛り土について次のように述べています。
─────────────────────────────
 すでに竣工した建築の下に、しかるべき盛り土が行なわれてい
ない、というが、われわれの頭の中には、その程度の土は掘り返
して工事するものという考えがある。木造住宅や軽量の鉄骨造は
盛り土の上に載せる感覚であるが、規模の大きい鉄筋コンクリー
ト造では、地下空間と基礎構造が一体化され、最下部にはほとん
ど人の入らない水槽、配管、メンテナンス・スペースなどが設け
られることも多い。
 そして地盤の悪いところでは、ボーリング調査によって地耐力
の出る支持層まで杭を打って構造体を支えるのである。冷凍など
市場特有の設備に加え、防災や情報の設備も多くなり、最近の建
築はパイプ類が増えており、これが地下に集中する。東京の地下
は、地上と同様に都市化が進んでいると言うべきであろう。
                   http://bit.ly/2wtEWdI
─────────────────────────────
 安倍政権の内閣官房参与の藤井聡氏は、豊洲新市場を「地下室
が有るケース」と「盛り土上の建物ケース」に分けた場合、前者
の方が衛生的であり、しかも安全であるという説をブログに書い
ています。
─────────────────────────────
 そもそも、建築物を建てるときには「基礎杭」をうつのですが
その基礎杭にそって、(毛細管現象によって)盛土下の地下水が
建築物下に上がってくることは想定範囲内の事実です。そしてそ
こまで上がってきた地下水は、コンクリート壁の打ち継ぎ目の目
地や壁そのものに存在する小さな割れ目などを通って、建物内に
も浸入することは避けられません。つまり「地下室有りケース」
のみならず、「盛り土上建物ケース」でも、基礎杭を打つ以上は
地下水が建物内に侵入することは不可避なのです。
 したがって、そういう建物のところまで昇ってきた地下水をく
み上げる排水システムは、いずれのケースでも必須なのです。こ
の時、A)「地下室有りケース」の場合には、(排水システムが
適正である限り)、(市場で活用される)地上階に、地下水が浸
入する可能性はほぼゼロになりますが、B)「盛り土上建物ケー
ス」においては、(市場で活用される)地上階に、地下水が直接
浸入する危険性があるのです!逆に言うなら、A)「地下室有り
ケース」の場合には、その地下室のおかげで、地下水と、地上階
の市場施設を「遮断」することが可能となるのです!
                   http://bit.ly/2ivAzZA
─────────────────────────────
 しかし、「盛り土なし」は、東京都がそのことを発見されるま
で隠蔽していたことが問題なのです。地下空間が正しいのであれ
ば、なぜ、専門家会議は、「盛り土あり」を提言したのでしょう
か。            ──[中央卸売市場論/039]

≪画像および関連情報≫
 ●豊洲新市場“盛り土案潰し” 真犯人は石原元都知事
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   信じられないデタラメが次々と発覚する豊洲新市場騒動で
  新事実が浮上した。「私はだまされた」と被害者面していた
  石原慎太郎元都知事が、実は盛り土案潰しの“真犯人”だっ
  たというのだ。
   石原氏は2016年9月13日のBSテレビで、豊洲新市
  場の建物下に盛り土がされず、コンクリートで固めた地下空
  間がつくられていた問題について、「私はだまされた。手を
  抜いて、していない仕事をしたことにして予算措置をした。
  都の役人は腐敗している」とまくし立てていた。
   ところが、在任中の2008年、敷地全体に盛り土すると
  の専門家会議の提言に難癖をつけ、地下にコンクリートの箱
  を埋め込む工法を都庁幹部に強く推していたことが分かった
  のだ。15日の東京新聞によると、石原氏は08年5月10
  日の定例会見で、豊洲の土壌汚染対策について「(盛り土案
  より)もっと費用のかからない、しかし効果の高い技術を模
  索したい」と語っていた。
   さらに同月30日の会見では「担当の局長にも言ったんで
  すがね。もっと違う発想でものを考えたらどうだと。どこか
  に土を全部持っていって(略)3メートル、2メートル、1
  メートルとか、そういうコンクリートの箱を埋め込むことで
  その上に市場としてのインフラを支える。その方がずっと安
  くて早く終わるんじゃないか」と語っていた。
                   http://bit.ly/2wtpLRA
  ───────────────────────────

内閣府参与/藤井聡教授.jpg
 
内閣府参与/藤井聡教授
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2017年08月29日

●「なぜ都は盛り土なしを隠したのか」(EJ第4593号)

 豊洲新市場の建物の地下に盛り土がなく、広大な地下空間が存
在していたという事実──小池都政がはじまってこのことが明ら
かになると、「盛り土か、地下空間か」の議論がはじまり、都政
ににわかに注目が集まります。テレビのワイドショーに連日取上
げられ、さまざまな議論が展開されたのです。
 しかし、この問題の本質は、専門家会議提言の盛り土が地下空
間に変更され、工事が行われたことを東京都が市場関係者や一般
都民に隠していたことにあります。たとえ「盛り土」が専門家会
議の提言であっても、都が諸般の事情から変更することは十分あ
り得ることです。盛り土をやめて地下空間に変更したのであれば
なぜそうする方がよいのかについて市場関係者と一般都民に説明
し、納得してもらえばよかっただけのことです。
 ところが東京都はそうしていない。それどころか設計図を盛り
土があるものと地下空間になっているものと2種類用意し、巧妙
に使い分けています。すなわち、建築関係者には地下空間のある
正規のものを示し、市場関係者に対しては盛り土のあるもの、そ
して一般都民には、ホームページなどで盛り土のある設計図を公
開しています。つまり、東京都はこのことで、市場関係者と一般
都民を騙したことになります。
 東京都はなぜそのようなことをしたのでしょうか。ネットなど
では、多くの人がこれについて書いていますが、ひとつだけ真実
に迫っているレポートを発見しました。それが、ジャーナリスト
/藤野光太郎氏の次のレポートです。
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  議事録で判明!豊洲「盛り土」が「空間」に化けた理由
             ジャーナリスト/藤野光太郎氏
                 http://bit.ly/2wPyUDK
─────────────────────────────
 以下、藤野光太郎氏のレポートをベースにして、EJが収集し
た情報も加えて、この問題を推理することにします。
 築地新市場の問題には、次の2つの土壌汚染関係の条例と法律
が絡んでいます。
─────────────────────────────
   1. 環境確保条例/2001年10月 1日施行
   2.土壌汚染対策法/2003年 2月15日施行
─────────────────────────────
 東京都の「環境確保条例」については、7月28日付のEJ第
4572号と7月31日付のEJ第4573号で詳しく書いてい
ますが、東京都が東京ガスから豊洲の土地を手に入れるために、
この条例は重要な役割を果たしています。
─────────────────────────────
 ◎7月28日付のEJ第4572号/「東京ガスを不当に儲
  けさせる内容」         http://bit.ly/2v1XbGr
 ◎7月31日付のEJ第4573号/「東ガスのシナリオに
  屈した東京都」         http://bit.ly/2v9wG1x
─────────────────────────────
 東京ガスは、当初ブラウンフィールドになることが確実な豊洲
ガス工場の跡地は売却するつもりはなかったし、売れるはずがな
いと考えていました。なぜなら、売却後に必ず生ずると思われる
土壌汚染の対策費用負担が耐えられないと判断したからです。そ
のため、東京ガス独自の土地の利用計画を策定していたのです。
 そこに東京都から豊洲の土地を買いたいという話があり、最初
は真剣に取り合わなかった東京ガスでしたが、石原都政になって
浜渦副知事から水面下での折衝を求められると、それに応ずるよ
うになります。
 2000年の暮れに浜渦氏から密かに持ちかけられた話は、東
京ガスにとって衝撃的なものでした。それは環境省が「土壌汚染
対策法」という法律の制定を準備しているという情報です。そし
て、東京都はそれに先駆けて土壌汚染対策に関わる条例を作るこ
とになっているが、いま売却を決断すればその条例に基づいて土
壌汚染対策を行うことになり、それは、国の土壌汚染対策法より
もはるかにゆるい基準で汚染処理が可能であるという話です。ま
さにこの条例が「環境確保条例」です。
 確証はないのですが、後で問題になる瑕疵担保条項の免除につ
いての密約もこの水面下の交渉で約束されていたと思われます。
これによって東京ガスは、豊洲の土地の売却に当たっての土壌汚
染対策は、土対法ではなく、東京都の環境確保条例で実施し、そ
の総額はたったの108億円で済んでいるのです。東京ガスは後
から78億円を追加支出し、土壌汚染対策費は合わせて180億
円負担しています。その代り、東京都は用地取得後の土壌汚染対
策費として858億円を支出していますが、それでも汚染は除去
できず、さらなる支出が必要になっています。これは本来東京ガ
スも負担すべき性格のコストですが、東京ガスとの売買契約には
瑕疵担保条項がないのです。
 さて、土壌汚染対策法は、2003年2月15日に施行されて
います。皮肉な話ですが、東京ガスはゆるい基準の環境確保条例
に基づき汚染処理を済ましているのに、豊洲の土地を購入した東
京都は、条例よりもはるかに厳しい基準の土対法で土壌汚染を処
理しなければならなくなっています。
 さらに土対法は、2010年4月1日に大幅に改正され、その
基準はさらに厳しくなっています。実は、このことと盛り土をや
めて地下空間を作ったこととは関係があるのです。
 土対法は、環境確保条例に比べれば、きわめて厳しい基準です
が、改正土壌汚染対策法(改正土対法)から見ると、ゆるゆるの
基準なのです。これについては明日のEJで述べます。
─────────────────────────────
     土壌汚染対策法/2003年 2月15日施行
   改正土壌汚染対策法/2010年 4月 1日施行
─────────────────────────────
              ──[中央卸売市場論/040]

≪画像および関連情報≫
 ●「豊洲の地下空間の謎」/小笠原誠治の経済ニュースゼミ
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   豊洲の主要建物の地下が空間になっていることが謎となっ
  ています。何故こんなところに特別な用途もない空間を設け
  たのか、と。
   それに対し、東京都は、配管のためだなどと説明していま
  すが・・・どうにも腑に落ちません。仮にそれがそうだとし
  ても、では、何故配管のため地下空間を作ったことを隠して
  いたのか、と。
   対外的には、主要建物の下も4・5メートルの盛り土がな
  されたことになっていたからです。おかしいでしょう?費用
  を浮かすためだったのか、なんて声も上がっていますが、私
  はそれは違うと思います。
   では、何故地下空間を作ったかというと・・・
  新しい市場が稼働し始めた後、万が一、新たに環境基準を超
  える汚染物質が計測された場合に備えたのではないかと、私
  は想像します。
   どういうことかと言えば、東京都の担当者たちは、地下2
  メートルまでの汚染された土壌を掘り出し、そして、その上
  に4・5メートルのきれいな土を埋めることによって汚染対
  策は万全を期すことができると対外的に説明していたものの
  仮に新市場が稼働した後、基準値を超える汚染物質が計測さ
  れたような場合、主要建物の地下を掘り返す必要などが生じ
  る訳ですが、そうなると市場を通常どおり稼働させることが
  物理的に不可能になり、生鮮食品の取引に重大な影響を及ぼ
  し兼ねないことを懸念してのことだと思うのです。
                   http://bit.ly/2wGGhyb
  ───────────────────────────

豊洲新市場の地下空間.jpg
豊洲新市場の地下空間
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2017年08月30日

●「改正土対法と豊洲市場の土壌汚染」(EJ第4594号)

 平田健正氏を座長とする専門家会議は、2007年5月19日
から2008年7月26日までの約1年間にわたって開催され、
「豊洲新市場敷地全体に4・5メートルの盛り土をする」ことを
提言し、解散しています。ちなみに専門家会議は小池都政になっ
て、平田座長の下に同じメンバーで再招集されています。
 専門家会議結成時点においては、2003年2月15日に土壌
汚染対策法(土対法)は施行されており、さらにそれが厳しい内
容に改正され、2010年4月1日から施行されるという情報は
メンバーには入っていたはずです。
 ジャーナリストの藤野光太郎氏によると、約1年間の専門家会
議では、土対法と改正土対法を強く意識する発言が相次いでいる
ことを指摘し、次のように述べています。旧専門家会議とは、石
原都政で設立された専門家会議のことで、小池都政になって再招
集された専門家会議(新専門家会議)と区別しています。
─────────────────────────────
 9回にわたって開かれた旧専門家会議の議事録を読むと、全体
を通して通奏低音のように東京都の担当者と専門委員との間で意
識されていることがあった。専門委員や都の担当者らのやりとり
に数回出てきた「土壌汚染対策法(土対法)」である。(中略)
 旧専門家会議で強く意識されていたのは、その土対法と、同時
期に環境省で審議されていた同法の改正(2008年5月参院通
過、09年4月公布、10年4月施行)にまつわる、関係者たち
の「心配事」である。「心配事」とは、端的にいうと、ユルユル
の法律である土対法の改正によって、豊洲予定地が汚染地域に指
定されるかもしれない、という懸念である。議事録には、そうし
た類の発言が散見される。       http://bit.ly/2gfjpie
─────────────────────────────
 専門家会議が改正土対法を「心配事」としてとらえたのは、東
京ガスから購入した豊洲の土地が、改正土対法で定めるところの
「要措置区域」に該当するからです。要措置区域とは、人の健康
被害のおそれがある土壌汚染が存在する土地のことで、法で定め
る措置が必要な土地なのです。豊洲の土地は、かつてガスを製造
していた工場の跡地ですから、その土壌は有害物質で汚染されて
おり、一定の土壌汚染対策が必要になります。
 しかし、豊洲の土地は、東京ガスによって時の東京都の環境条
例「環境確保条例」に基づいて土壌汚染処理が済んでおり、改正
以前の土対法では、それでOKだったのです。土対法は、200
3年2月の施行であり、それ以前に対策を済ましている土地には
適用されないからです。
 しかし、改正土対法ではその土地は「要措置区域」ではないも
のの、「形質変更時要届出区域」に指定されるのです。この場合
その土地をそのままのかたちで保有する場合は、人の健康被害の
おそれがないとして措置は不要ですが、その土地を宅地造成した
り、建物を建築する場合は、土地の形質を変更する土地として、
自治体に届け出し、法で定められた土壌汚染対策の措置を講ずる
必要があります。
 このことについて、第8回の旧専門家会議で、平田健正座長は
苦渋をにじませて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 土壌汚染対策法というのは何でもかんでも浄化しなさいという
ことではなくて、いわゆる有害物質があって、それが人に対する
健康影響を及ぼすような曝露経路は遮断しましょうということが
まず大前提。そのためには管理をしましょう。管理をするにも、
どこにどういう物質があって、濃度がどうであって、どういう管
理が必要かということをきちんとやりましょうというのが土壌汚
染対策法なのですね。
 ただし、附則のほうで、いわゆる平成15年ですか、2003
年の2月以前に対策を始めたものについては、土壌汚染対策法は
かかりませんよということだったのですが、今回は修正をされて
かかりますということですね。そうしたときにここはどうなるか
といいますと、また移転ありきかと言われるとつらいのですが、
東京都が東京都に対して計画書を出すわけです。そのときに環境
はどう判断をされるかというと、汚染があるわけですから、恐ら
く指定区域(「形質変更時要届出区域」)に指定をされると思い
ます。                http://bit.ly/2xCVWel
─────────────────────────────
 この場合、平田座長がいっているように、土地は東京都のもの
であるので、東京都が東京都に対して土壌汚染対策計画書を出し
て、東京都の決定に従うということになります。ここで問題にな
るのは、豊洲の土地は「形質変更時要届出区域」になるので、公
示されることです。これは、水産物などの生鮮食料品を扱う中央
卸売市場の土地や周辺の環境が、改正土対法の形質変更時要届出
区域であることが公開されることを意味します。いわゆる「豊洲
ブランド」を大きく損なうことを意味していてます。
 もっとも形質変更時要届出区域の指定を解除する方法はありま
す。平田座長は、専門家会議で次のように述べています。
─────────────────────────────
 指定区域に指定された後で、どういう対策をするのですかとい
うことを対策して、対策が終わった後、2年間は地下水をチェッ
クしてくださいということになるのですね。この骨格は変わりま
せんので、その間に地下水がオーケーであれば、指定区域は解除
をされるということになると思います。その手続があるというこ
とですね。              http://bit.ly/2xCVWel
─────────────────────────────
 結局、豊洲の土地は改正土対法に基づき、土地全域に4・5メ
ートルの盛り土を施すなどの土壌汚染対策を施し、2年間にわた
り、9回の地下水モニタリング調査を終了し、汚染が認められな
い場合に形質変更時要届出区域の指定が解除されるのです。しか
し、地下水モニタリング調査は、9回目の調査で高度の汚染物質
が検出されたのです。    ──[中央卸売市場論/041]

≪画像および関連情報≫
 ●築地市場の豊洲移転問題/大城聡氏
  ───────────────────────────
   豊洲市場予定地は東京ガスの工場跡地であり、昭和31年
  から昭和63年まで都市ガスの製造・供給が行われていた場
  所です。土壌からは、これまで環境基準を大きく超える汚染
  物質が見つかっています。
   東京都は土壌汚染対策を行ったとしますが、豊洲市場予定
  地は、現在でも土壌汚染対策法の汚染が存在する区域(形質
  変更時要届出区域)に指定されており、まだ指定解除されて
  いません。
   土壌汚染対策法は、土壌の特定有害物質による汚染の除去
  できた場合には、形質変更時要届出区域の指定を解除すると
  定めています(同法11条2項)。「汚染の除去」が完了す
  るためには、「地下水汚染が生じていない状態が2年間継続
  することを確認すること」が必要とされています(同法施行
  規則40条別表6)。これが2年間の地下水モニタリング調
  査の問題です。
   2014年11月18日から地下水を採取調査しています
  ので、2016年11月7日の移転予定日時点では、「地下
  水汚染が生じていない状態が2年間継続することを確認する
  こと」ができません。そのため、11月7日時点では、汚染
  が存在する区域(形質変更時要届出区域)の指定解除ができ
  ないのです。           http://bit.ly/2vhzxXf
  ───────────────────────────

専門家会議座長/平田健正氏.jpg
専門家会議座長/平田健正氏
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2017年08月31日

●「9回目地下水汚染調査が悪い理由」(EJ第4595号)

 そもそも東京都は、改正土壌汚染対策法で「形質変更時要届出
区域」に指定されるような土地を築地市場の移転用地として購入
すべきではなかったのです。この決断をした石原慎太郎都知事と
それを後押しした都議会与党の責任はきわめて重大です。
 なぜなら、中央卸売市場が形質変更時要届出区域であることは
生鮮食料品の安全・安心のうえで、きわめて問題があり、かつ対
外的にマイナスです。そこで東京都は、形質変更時要届出区域の
指定を外すため、改正土対法に基づき、土壌汚染対策を行い、そ
れに加えて、2年間にわたる地下水の水質モニタリング調査を実
施しています。2年間の調査で測定値が環境基準以下であれば、
形質変更時要届出区域の指定が外されるからです。
 問題はその地下水のモニタリング調査です。2年間の地下水モ
ニタリング調査が開始されたのは、2014年11月からです。
同じ月に第18回の技術会議で汚染対策工事完了の確認が行われ
ています。ちなみに同年2月に舛添都政がはじまっています。
 この地下水モニタリング調査は、全部で9回が行われています
が、その8回目が終了し、9回目の調査結果が出る前の2016
年11月7日に舛添知事は、豊洲新市場開場を決めています。し
かし舛添知事の突然の辞任で2016年8月に小池百合子氏が都
知事に当選し、小池都政がスタートしています。そして、小池知
事により、築地市場移転の延期が決断されます。これら9回にわ
たる地下水モニタリング調査は次の企業に発注されています。
─────────────────────────────
  ◎第1回〜第3回
   環境計量:株式会社日立プラントサービス
   試料採取:株式会社日水コン
  ◎第4回〜第8回
   環境計量:ユーロフィン日本環境株式会社
   計量証明:IASジャパン株式会社産業分析センター
  ◎第9回
   環境計量:湘南分析センター
─────────────────────────────
 地下水モニタリング調査結果は、第1回〜第8回までの調査で
は、汚染濃度はすべて環境基準以下に収まっています。だからこ
そ、当時の舛添知事は、東京五輪用の道路のこともあるので、ど
うせ第9回目の調査結果も環境基準以下に収まると判断し、その
結果の出る2017年1月まで待たず、豊洲移転の時期を11月
7日に決めたと考えられます。
 しかし第9回の調査結果は衝撃なものでした。調査地点201
ヶ所のうち、72ヶ所という広範囲で。環境基準値を超えるベン
ゼンやシアンが検出されたからです。とくにベンゼンにいたって
は、基準値の79倍とこれまでにない濃度を検出したのです。
 事態を重く見た小池知事は、平田健正氏を座長とする専門家会
議を再招集し、原因究明を命じたのです。
 専門家会議は、急に数値の跳ね上がった第9回の調査結果は暫
定値として、メンバーが立ち会いの下で、地下水の採取、環境計
量などの調査を行い、2017年3月19日に第10回目の地下
水モニタリング調査の結果を発表しています。3月19日付の日
本経済新聞は、次のように報道しています。
─────────────────────────────
 東京都の豊洲市場(江東区)の土壌汚染対策に関する専門家会
議が、19日開かれ、地下水モニタリングの再調査結果を公表し
た。再調査の対象となった29地点のうち、ベンゼンは最大で飲
み水の環境基準の100倍を、ヒ素は同3・6倍を検出した。シ
アンは18地点で検出した。(中略)
 再調査は2回に分けて実施。数値の精度を確保するため、4つ
の検査機関で分析した。再調査結果を9回目結果と比べると、検
出濃度が高まった地点と低くなった地点がまざっており、同会議
の平田健正座長(放送大学和歌山学習センター所長)は「(地下
水の汚染状況は)上がったり下がったりなので、どちらの傾向と
も言えない」との見方を示した。 http://s.nikkei.com/2vuZqPs
    ──2017年3月19日付、日本経済新聞(電子版)
─────────────────────────────
 9回目の暫定値とその再調査の数値が跳ね上がった原因として
は、次の2つが考えられます。
─────────────────────────────
 1.1〜8回までの調査と9回、10回の調査に調査手法の
   違いが考えられること
 2.9回以降の調査は地下水管理システムが作動し、地下水
   の流れが変わったこと
─────────────────────────────
 結論からいうと、「1」は原因としては考えられないといわれ
ます。地下水の採取や環境計量の方法については、改正土対法に
定められており、調査会社による多少の違いがあったとしても、
そういう人為的な誤差は、出てもせいぜい数倍程度であり、環境
基準値79倍もの汚染が誤差として出るはずがないからです。
 そこで考えらせれるのは「2」です。地下水管理システムは、
2016年10月14日にはじめて稼働しています。9回目の地
下水の採取は、その後の11月24日と30日に実施されている
からです。汚染処理の専門家は次のように述べています。
─────────────────────────────
 観測用の井戸は筒状で、スクリーン(網)を通して土壌中の水
が浸み込んでくる構造になっている。地下水管理システムは水を
汲み上げると、地中の水が井戸に向って移動する。水に溶けた状
態で残っていた汚染物質が井戸に吸い寄せられ、あちこちの井戸
で観測された可能性が高い。基準値79倍のベンゼンは、土壌汚
染対策で取り切れていなかった汚染と見られる。
                  http://nkbp.jp/2wV4bW8
─────────────────────────────
              ──[中央卸売市場論/042]

≪画像および関連情報≫
 ●豊洲市場の9回目の地下水モニタリング調査
  ───────────────────────────
   豊洲市場の「地下水モニタリング調査」をめぐり、環境基
  準の79倍となるベンゼンなどが検出された、9回目の調査
  を担当した業者が都の指示により、過去8回とは違う手順で
  調査していたことを4日の都議会の委員会で明らかにしまし
  た。都は業者に対し、過去とは違う手順で行うよう伝えたこ
  とを認めました。豊洲市場の問題を審議する都議会の特別委
  員会は、平成26年から2年間にわたって、合わせて9回行
  われた「地下水モニタリング調査」を担当した業者を参考人
  として呼んで、質疑を行いました。
   この調査では、検出された有害物質が7回目までは環境基
  準を下回ったのに対して、8回目はわずかに上回り、さらに
  9回目では環境基準の79倍となるベンゼンなどが検出され
  ました。このため、4日の参考人の質疑は、一連の調査が適
  正だったかを焦点に進められ、9回目の調査については、担
  当した業者の統括部長が出席しました。
   モニタリング調査では、まず井戸に溜まっていた地下水を
  取り除く、「パージ」と呼ばれる作業を行ったあと、新たに
  井戸に溜まった地下水を採って分析することになっています
  が、統括部長は都の指示により、パージで取り除いた地下水
  そのものを分析に回していたことを明らかにしました。
                   http://bit.ly/2wbcagZ
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地下水モニタリング調査の結果を説明する平田座長.jpg
地下水モニタリング調査の結果を説明する平田座長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中央卸売市場論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする