2017年07月31日

●「東京ガスのシナリオに屈した東京都」(EJ第4573号)

 築地市場を東京ガス豊洲工場跡地に移転する──この重要な決
定は、2001年にすべてが決まっています。2001年の年表
の一部を再現します。
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 2001年 7月 6日:「築地市場の豊洲移転に関する東
             京都と東京ガスの基本合意」締結
 2001年 7月18日:「基本合意に当たっての確認書」
             /知事本部/野村實、東京ガス活
             財推進室木照男の署名
 2001年10月 1日:環境確保条例施行
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 ここで重要なポイントは、7月6日の「築地市場の豊洲移転に
関する東京都と東京ガスの基本合意書」は公表されているものの
7月18日に交わされたという「基本合意に当たっての確認書」
は、あくまで水面下の合意であり、署名当事者以外誰もその存在
を否定していることです。
 実は、東京都はその後何回も東京ガスと土壌汚染対策について
合意を積み重ねています。2002年7月31日に、「豊洲地区
開発整備に係る合意」が東京都と東京ガスとの間に締結されてい
ます。これによって汚染土壌対策は、東京ガスが都の環境確保条
例に基づき、調査および必要な土壌汚染対策を実施し、措置完了
の届出を行うことになります。この合意書の押印者は前川耀男知
事本部長(現・練馬区長)、高橋信行港湾局長碇山市場長以下5
人の局長です。これにより、東京ガスとの交渉は、前川知事本部
長がトップを務める知事本局が行っていたことがわかります。
 2003年2月に「土壌汚染対策法(土対法)」が施行されま
す。その間、石原知事は引き続き知事に在職していますが、豊洲
問題を担当する東京都の担当者は何人も代わっています。確認書
の存在を知らない担当者からすれば、土対法が施行されているの
で、それと比較すると、東京ガスの土壌汚染に対する取り組みは
あまりにも甘いと考えるのは当然のことです。
 しかし、その後の東京都と東京ガスの土壌汚染に関する交渉の
経過をみると、署名者以外誰も知らないと主張するこの2001
年7月18日の「基本合意に当たっての確認書」がカベになって
豊洲市場の土壌汚染問題は東京都に不利に展開します。その交渉
について永尾俊彦氏は自著で次のように記述しています。
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 この日(2003年4月3日)、都側からは環境局の部長らも
参加し、都は「(東ガスの)2001年2月の(豊洲の土壌汚染
対策の)工事計画書に、『環境負荷の高い箇所から対策を実施』
と書いてあるのは、当面負荷の高い所から実施し、最終的に全部
処理するということなのか」と質問した。
 東ガスは、「そうではなく、汚染の中心部である負荷の高い箇
所のみ実施する」と答えた。その根拠として東ガスは「平成13
(2001)年7月に市場移転に関する基本合意が締結され、現
処理計画で対策を実施すると確認している」と先に紹介した確認
書の内容をタテにとる。都は重ねて「(東ガスのガス工場の)操
業由来の部分は全部(東ガスが)処理する」のではないのかと問
うが、東ガスは「売却時には汚染土壌は残る」と明言している。
 なおも東ガスの汚染処理範囲を広げようとする都に対して、東
ガスは「そもそも、市場の移転は(浜渦)副知事を含めた話であ
り、そのために土地を売却するのであるから、今の処理計画が不
満なら話が白紙に戻る」と開き直る。
 同年5月29日にも都は、東ガスの汚染処理範囲を広げようと
するが、東ガスは「2001年7月の二者間合意で土壌汚染対策
は今の計画で良い旨確認している」とここでも「二者間合意」、
つまり確認書をタテに譲らない。
         ──永尾俊彦著/岩波ブックレット/968
「ルポどうなる?どうする?築地市場/みんなの市場をつくる」
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 このような丁々発止としたやり取りの結果、東京都と東京ガス
は、2005年5月31日付で、「豊洲地区用地の土壌処理に関
する確認書」を交わしています。その確認書には次のことが決め
られていたのです。
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 環境基準を超える操業由来の汚染土壌はAP(荒川河口の基準
水面)2メートルより下にあるものを除き、除去するか、または
原位置での浄化などにより、処理基準以下となる対策を行う。
       ──「豊洲地区用地の土壌処理に関する確認書」
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 しかも、この確認書では、AP2メートル以下の汚染は残った
ままになります。実は、2011年3月11日の東日本大震災で
豊洲地区は液状化していたことを共産党都議団が現地調査で確認
しており、ひどい汚染状態に戻っているのです。しかし、この事
実については、共産党都議団以外は口を閉ざして積極的に語ろう
としていないのです。
 東京ガスは、この確認書に基づき、102億円をかけて、工事
を行い、2007年4月27日に都環境局に「汚染防止措置完了
届」を提出しています。東京ガスとしては、これによって豊洲の
土壌汚染処理は終りと考えていたと思います。
 おりしも、浜渦副知事は、2005年7月、当時の100条委
員会における証言が偽証と認定され、辞任しています。偶然です
が、まるで東京ガスとの一連の土壌汚染問題の処理が終わるタイ
ミングで都庁から去っていることになります。
 なぜ、浜渦副知事が都庁を去ることになったのかについては、
築地市場の豊洲移転問題と無関係ではないので、改めて検証する
ことにします。
 皮肉なことに、東京ガスによる土壌の汚染防止措置完了以後に
豊洲の地下水から、環境基準を大幅に超える汚染の発見が相次ぐ
ことになるのです。     ──[中央卸売市場論/020]

≪画像および関連情報≫
 ●豊洲用地、渋る東京ガスを説得/都側「無茶な話だが」
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   東京都の豊洲市場(江東区)の用地購入や土壌汚染対策工
  事をめぐり、所有者だった東京ガスと都との交渉記録が情報
  公開請求に対して開示されたことが分かった。これまで大部
  分が黒塗りだったが、情報公開を進める小池百合子知事の方
  針で、一部の固有名詞を除いて明らかにされた。都が築地市
  場(中央区)の豊洲移転にこだわった経緯が具体的に見えて
  きた。開示されたのは、1998〜2005年と11年の交
  渉記録など。約140枚の文書で、同社と都の計31回の交
  渉内容が記録されている。土地売却や追加の土壌汚染対策工
  事に消極的だった東京ガス側に対し、都が説得を続ける様子
  が分かる。共産党都議団の請求に都が応じた。
   豊洲市場用地をめぐる交渉記録文書は、これまで都議会な
  どで資料要求や情報公開請求がされてきたが、大部分が黒塗
  りだった。しかし、「移転を決めた石原慎太郎知事時代の責
  任を調べる」とする小池氏の方針を受けて、都が東京ガス側
  と協議し、同社側の固有名詞を除いてほぼ開示された。まだ
  非開示の文書もあり、交渉の全容が判明したとは言えない。
  豊洲への移転決定の経緯について、当時の知事だった石原氏
  は小池氏の質問に「(当時の資料を)全て公開し、何が行わ
  れたかご覧いただくしかない」などと回答。小池氏は資料の
  調査を続ける方針を示している。  http://bit.ly/2eXLD0g
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これまで浮上した移転候補地.jpg
これまで浮上した移転候補地
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 中央卸売市場論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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