2017年07月27日

●「東京都と東京ガスとの『確認書』」(EJ第4571号)

 話が複雑になってきたので、少し整理して先に進めます。そも
そも東京都は、なぜ多くの業者が望んでいる築地市場再整備を断
念し、中央卸売市場を誰も望んでいない豊洲に移転させようとし
たのでしょうか。
 それは、鈴木俊一都政の臨海副都心開発計画に基づく箱モノ行
政失敗の尻拭いに、市場会計の築地市場整備費を使い切ってしま
い、価値の高い築地市場の土地を売却して、帳尻を合わせるしか
なくなったからです。つまり、築地を売るのが目的であって、そ
のために中央卸売市場をどこかに移転せざるを得なくなったので
す。その移転先が東京ガス豊洲工場の跡地だったのです。
 東京ガス豊洲工場は、1956年から1988年まで約30年
以上にわたって都市ガスを製造していたのです。当然のことなが
ら、その製造過程ではヒ素が使われ、ベンゼン、シアン化合物が
副産物として生成されていたのです。また、タールも生み出され
ドラム缶に入れて仮置きされていたものの、長い年月が経過して
ドラム缶が腐食し、タールが地中に深く沁み込んでしまっている
のです。東京ガスによると、あまりにもタールの量が多いので、
その残滓を木屑と混ぜて、都内の銭湯に燃料として出荷していた
といいます。それほどの量だったのです。
 そのような場所に、こともあろうに生鮮物を扱う中央卸売市場
を移転させようと画策してきた当時の市場長や港湾局長、石原都
政以降の知事、副知事、市場長らの東京都の幹部は、何の良心の
呵責もないのでしょうか。少なくとも、私が調べてきた限りでは
豊洲移転を推進しようとしてきた関係者は、食の安全・安心をま
るで考えていないといわざるを得ないのです。
 それどころか、彼らは、土壌汚染を誤魔化し、その結果として
東京ガスに不当な利益供与を行ったとしか思えないのです。その
証拠はいくつもあります。そのひとつが2001年7月6日の基
本合意の12日後に当たる7月18日付の「確認書」です。情報
開示請求でその確認書を入手した既出の永尾俊彦氏は、この確認
書について自著で次のように述べています。
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 開示請求でわたしは、「基本合意」の「確認書」を入手した。
「マル秘」と押印されたその確認書の日付は2001年7月18
日。「基本合意」を交わしたわずか12日後だ。この確認書には
汚染処理について「現処理計画」によるとされている。「現処理
計画」とは、東ガスが2001年2月にまとめた汚染土壌の工事
計画書のことで、操業由来の汚染のひどい所のみ掘削除去するが
主として盛土によって汚染の拡散を防ぐ計画だ。全面掘削よりは
るかに安上がりになる。
 また、土地の譲渡価格は「売買契約締結時の時価相当額を基本
とし、協議する」とある。汚染が残る土地を「時価相当額」つま
り、汚染を考慮しない売買時の価格で買いますよという意味だ。
公表されなかった文書ではこんなことを決めていた。これは正真
正銘の「密約」だ。
 都側は、知事本部「野村實」、東ガス側は、活財推進室「高木
照男」と直筆で署名されているが、役職名も公印もない。100
条委員会では、石原元知事や浜渦元副知事ら喚問された都側の関
係者は野村氏以外全員この確認書を「知らない」と否定した。
         ──永尾俊彦著/岩波ブックレット/968
「ルポどうなる?どうする?築地市場/みんなの市場をつくる」
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 この確認書について注目すべき点がいくつもあります。
 注目すべき点の第1は、この確認書においてはじめて土壌汚染
処理について触れていることです。「土壌汚染処理については、
『現処理計画』による」と書いてあります。
 この「現処理計画」は汚染のとくにひどいところだけ掘削除去
し、盛り土によって汚染を防ぐ処理のことです。この計画のバッ
クボーンとなる法的根拠は2000年12月に東京都が公布し、
2001年10月施行の「環境確保条例」です。
 この条例は、2002年5月公布、2003年2月施行の「土
壌汚染対策法」をにらんで東京都があえて制定したのではないか
と思われます。まるで豊洲の土地を購入するために東京都が制定
したと思われても仕方がないのです。土対法の方が環境確保条例
よりもはるかに厳しいからです。
 注目すべき点の第2は、土地の譲渡価格についてふれているこ
とです。土地の譲渡価格は「売買契約締結時の時価相当額を基本
とし、協議する」とあります。要するに、土地に汚染が残ってい
ても、時価相当額で購入するといっているのです。これはとんで
もないことです。通常、土壌汚染対策費が用地費の20〜40%
になると、「ブラウンフィールド」といって、売買が成立しない
のです。そのために、土壌汚染があるのにないことにして、譲渡
価格を決めたのでしょうか。
 注目すべき点の第3は、この確認書の存在を石原元知事も浜渦
元副知事も「知らない」といっていることです。認めたのは、確
認書に署名のある野村實氏だけです。浜渦氏に至っては100条
委員会において、怒りをにじませて次のようにいっています。
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 基本合意については、確かに自分がまとめたものである。しか
し、わたしが東京ガスとの交渉を担当していたのは基本合意まで
で、その先はさわっていない。役人が勝手なことをしてくれた。
                      ──浜渦武生氏
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 このように浜渦氏は「確認書は知らない」といっていますが、
確認書のタイトルは、「基本合意にあたっての確認書」となって
おり、別文書になっているものの、基本合意とセットであること
は明らかです。それを浜渦氏は「そんなものは知らない」という
のですが、きわめて不自然です。
 この確認書については、引き続き疑問点を追及していくことに
します。          ──[中央卸売市場論/018]

≪画像および関連情報≫
 ●「ブラウンフィールド」とは何か
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   「ブラウンフィールド」、直訳すると“茶色い大地”とな
  ります。このように呼ばれる土地にどのようなイメージを持
  つでしょうか?
   大部分の人は、植物が生育していない、土がむき出しの土
  地や広大な原野を想像すると思われますが、実は、「ブラウ
  ンフィールド」とは、“産業活動等に起因した汚染土壌の存
  在、もしくは存在する可能性により遊休化した土地”のこと
  を指します。つまり、土壌汚染が原因となって、売却や再利
  用ができずに放置されている土地のことです。
   想像していただきましょう。新宿駅から電車で30分の私
  鉄沿線、駅徒歩5分の場所にある廃業した工場、再開発をし
  てマンションにするには絶好の土地です。しかしながら、5
  年以上、土地が再開発される様子もありません。不思議な話
  だとは思いませんか?
   実はこの土地、かつて操業していた工場で使用していた有
  害物質の漏洩や廃棄物の埋め立て等により、土壌汚染が発生
  しているのです。しかも、敷地全域、地面から地下10メー
  トル近くまで汚染が広がっています。これらの土壌汚染浄化
  費用は、土地の価格の2倍以上と算定されました。つまり、
  土地所有者がこの土地を売却すると、土地価格の2倍以上の
  土壌汚染対策費用が必要となることになります。
                   http://bit.ly/2upd48s
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東京ガス豊洲工場.jpg
東京ガス豊洲工場
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 中央卸売市場論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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