2017年07月18日

●「最初からなかった築地再整備計画」(EJ第4564号)

 問題を整理します。築地再整備のために用意していた2400
億円の予算を、臨海副都心計画破綻の穴埋めに使ってしまった東
京都の市場当局は、何とかしてこの危機を乗り切る必要があった
のです。当時の市場長は宮城哲夫氏です。
 危機の打開策は、築地の再整備ではなく、中央卸売市場を別の
場所に移転させ、価値の高い築地を売って欠損している会計を修
復させるしかないと考えたのです。そこで、既にスタートしてい
た築地再整備工事を世間にはわからないよう事実上中断させ、築
地市場問題に関心の薄い青島幸男知事の4年間に、築地市移転の
候補地を探し、東京ガスの跡地しかないと判断したのです。
 そして、1999年5月11日に、宮城市場長は、就任間もな
い石原知事に対し、予算状況を説明し、そして、次のことを訴え
たのです。
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・豊洲の開発は、地権者との最終合意が平成13(2001)に
 予定されており、それから逆算すると、平成11(1999)
 年10月頃には結論を出さないといけない。
・豊洲周辺は道路の整備が進んでいるが、幹線道路の整備が平成
 27(2015)年には終了するので、その時点で移れば、現
 在地で20年、30年かけて整備するより、短時間で再整備を
 することができる。            ──水谷和子著
         「築地移転20年目の真実」/日刊ゲンダイ
                   http://bit.ly/2ulNulS
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 ひどい話です。この時点では工事中であるはずの築地の再整備
は断念し、「豊洲ありき」でコトは進んでいたのです。そのため
東京都は、築地再整備は困難、実現はさらに20年、30年かか
るという世論を形成しようとしていたのです。
 この刷り込みは、小池都政になった現在も根強く残っており、
築地市場の豊洲新市場への移転を「やむなし」とする移転推進派
のバックボーンになっているのです。確かに、築地再整備に着手
した1991年は築地市場は活況を呈していて、種地はなく、営
業を継続しながらでの再整備が困難だったのです。しかし、現在
では取扱高も半分に減少し、種地はいくらでもあるのです。それ
でもまだ再整備は多くの費用と時間がかかるので困難という人が
多いのは、この刷り込みの成果なのです。
 1999年5月11日の会議に話を戻します。宮地市場長が説
く築地市場移転について、その会議の出席者の一人である青山や
すし副知事は、次のように反対しています。
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 移転で腹を決めても、中央区は反対しているし、関係の議員も
反対している。また、移転跡地の売却を考えているが難しい面が
あるし、公園整備など一般会計の持ち出しが必要になることも考
えられ、慎重な判断が必要である。
               ──水谷和子著の前掲資料より
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 青山やすし氏は、小池知事登場後「築地か豊洲か」の問題で、
よくテレビに出演する機会がありますが、当時の責任者の一人で
あるにもかかわらず、テレビでは、まるで関係のない部外者のよ
うな発言をしています。しかし、当の石原知事はそのときの会議
では、次のような質問をしただけだったといいます。
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        ・遠洋漁船は築地に接岸できるのか
    ・大田市場の移転はどのくらいかかったのか
               ──石原慎太郎知事
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 石原知事にしてみれば、都知事に就任早々、鈴木都政以降の臨
海副都心計画破綻処理の難問を突きつけられ、築地市場どころで
はなかったといえます。1979年に初当選した鈴木俊一知事と
いえば、自民党をバックにして大企業が歓迎するハコもの行政を
展開した知事として知られています。
 新宿に巨大庁舎を建設して都庁を移転させ、江戸東京博物館や
東京芸術劇場を作り、臨海副都心開発を計画し、1989年に着
手しています。1980年代といえば、日本は株式市場に続いて
不動産価格も投機資金で沸騰していたのです。いわゆるバブル現
象ですが、その頂点が1989年だったのです。それから10年
後に石原都政が開始されることになります。
 このようにして築地再整備のための積立金はバブル処理のため
に使われてしまったのですが、石原都政の間を通じて、市場会計
だけではなく、さまざまな隠蔽工作が行われています。これらの
穴埋め隠蔽工作について、「櫻井ジャーナル」というタイトルの
ブログでは、次のように書かれていいます。ちなみにこのブログ
の記事の日付は、2013年12月になっています。
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 こうした中、進められた臨海副都心開発は破綻、2001年に
は「臨海副都心事業会計」を、黒字の「埋立事業会計」「羽田沖
埋立事業会計」と統合して帳簿上、赤字と借金の一部を帳消しに
するという詐欺的な行為に出る。が、地方債と金利負担がなくな
ったわけではなく、2013年から20年度までに約2465億
円を返済しなければならないという。この破綻プロジェクトを誤
魔化そうとすればするほど事態は悪化、このまま進めば東京はデ
トロイト化しかねない。
 鈴木から猪瀬まで東京都は大変な無駄遣いを続けてきたわけだ
が、その一方で福祉政策を切り捨て、学校や図書館などの予算は
削り、職員の給与を引き下げてきた。庶民が恩恵を受ける政策を
「バラマキ」と批判してきたマスコミは、巨大資本や富裕層を儲
けさせる政策には寛容な姿勢を示している。
                   http://bit.ly/2tsX01V
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              ──[中央卸売市場論/011]

≪画像および関連情報≫
 ●「豊洲移転&築地再開発」案はまやかし/平将明氏
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   大田青果市場の元仲卸業者として、豊洲市場移転問題の行
  方を懸念していました。結論を先延ばしにしていた小池百合
  子都知事は都議選の前に決断、「豊洲移転&築地再開発」案
  をぶち上げ、7月2日の都議選に大勝しました。しかし、こ
  れは小池都知事が繰り出した”まやかし”で、このまま進め
  ることには警鐘を鳴らす必要があります。私はその正体を暴
  き、合理的解決策を導きたいと思います。
   豊洲市場移転問題については、私が前回のコラムで「決め
  ないわけにはいかない」と指摘した通り、小池都知事は都議
  選前に決断を下しましたね。豊洲への移転は歓迎したいと思
  いますが、まったく余分なのは築地の再開発。豊洲に移転し
  た後、築地に戻ってくるのは絶対にありえない。税金のムダ
  遣いになるので止めなければいけません。
   小池都知事の何が一番の罪かというと、築地の人たちを分
  断したことです。30年近く時間をかけてようやく豊洲に行
  くと心を一つにしたのに、それを昨年11月に止め、分断し
  てしまいました。また、築地の再整備ができるというような
  ことを打ち出し、さらに分裂を深めました。小池都知事は、
  「決断できない」という批判もあり、それが都議選に不利だ
  という考えから決断を演出したわけです。
                   http://bit.ly/2tWLQpP
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青山やすし元東京都副知事.jpg
青山やすし元東京都副知事
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 中央卸売市場論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする