2017年06月19日

●「中国ジニ係数は危険レベルにある」(EJ第4544号)

 「中国崩壊論」というのは、2015年を契機に急に表に出て
くるようになっています。2015年に中国経済が危機的兆候を
見せはじめたからです。それが一番現実味を帯びたのは、ジョー
ジ・ワシントン大学のシャンボー教授の『終焉に向かい始めた中
国共産党』の論文です。これについては、6月12日付、EJ第
4539号で述べています。
 しかし何清蓮/程暁農両氏(以下、何清蓮氏)によると、シャ
ンボー教授をはじめとする外部のウォッチャーたちは、民主主義
国家の経験から中国に危機が発生すると判断しており、それは必
ずしも正しくないとして、次のように反論しています。
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 中国政府が他国の政府と違う最大の点は、それが専制政府であ
り、資源を集中させる能力が民主的な政府とはけた違いに強いと
いうことである。執政者が危機はどこにあるかを察知さえすれば
その防衛能力は民主的な政府より、とりわけ無力で弱々しい民主
的な政府よりはるかに高い。
 2016年に中国はGDP成長率の緩やかな減速という状況の
なかにあって、全国の税収は11・59兆元に達した。これは前
年比42%の増加である。さらに今後数年以内に、地方政府の税
収増加の重点は不動産税の徴収に向けられるだろう。
 何清蓮×程暁農著/中川友訳/ワニブックス「PLUS新書」
 「中国──とっくにクライシスなのに崩壊しない“紅い帝国”
のカラクリ/在米中国人経済学者の精緻な分析で浮かび上がる」
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 ここで何清蓮氏はきわめて重要なことを述べています。中国で
は現在でも不動産税(日本の固定資産税)を徴収していないとい
う事実です。どうしてかというと、中国では所得に比べてあまり
にも不動産価格が高いからです。もし、課税を強行すると、大半
の中国人には耐えがたい重税になります。そのため暴動を恐れて
中国政府は課税に踏み切れなかったのです。何清蓮氏の本から、
2015年のデータを示すと、次のようになります。
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    不動産平均価格 ・・・ 年収の22・95倍
    中国人平均年収 ・・・ 年収/7820ドル
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 しかし、国家に危機が訪れれば、不動産税課税に踏み切るはず
であり、それは巨額の税収増を生むことになります。したがって
中国は簡単には破綻しないのです。
 それに、現在中国おける住宅の保有率は、米国や日本などの先
進国よりも信じられないほど高いのです。したがって、不動産税
の課税対象は非常に広いのです。
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   ≪都市部≫
   ・住宅保有率 ・・・・・・・・・ 88・12%
   ・一世帯当たり住宅保有数 ・・・  1・22戸
   ≪農村部≫
   ・住宅保有率 ・・・・・・・・・ 94・72%
   ・一世帯当たり住宅保有数 ・・・  1・15%
       ──「中国家庭金融調査報告」/2014
             ──何清蓮×程暁農著の前掲書より
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 ここで都市部において、一世帯当たりの住宅保有数1・22戸
をもっと具体的に述べると、1戸を保有する世帯は69・05%
であり、2戸を保有する世帯は15・55%、3戸以上を持つ世
帯は3・63%です。彼らは、住むというよりも、投資物件とし
て不動産を保有しているのです。こういう経済構造は、経済成長
が続いているうちはいいのですが、ひとたび成長が止まると、ひ
どい貧富の格差を生み出すことになります。
 このように何軒も住宅を保有する層がいる一方で、中国の都市
部には住宅を保有していない11・88%の世帯があります。彼
らは、購買能力をまったく欠いた貧困層であり、住宅を購入する
どころか、その日その日を生き永らえるのに精一杯なのです。住
宅を購入するなど、夢のまた夢です。
 そのため、中国のジニ係数は、ジリジリと上昇し、現在異常な
高さに達しています。
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      1995年 ・・・・・・ 0・45
      2002年 ・・・・・・ 0・55
      2012年 ・・・・・・ 0・73
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 ジニ係数は、1936年にイタリアの統計学者コンラッド・ジ
ニが考案し、その名をとって「ジニ係数」と呼ばれています。完
全平等社会であれば「0」、完全不平等社会であれば「1」とな
るのです。
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  0・1〜0・2 ほとんど格差のない社会
  0・2〜0・3 格差少なく安定した社会
  0・3〜0・4 格差のある社会
  0・4〜0・5 厳しい格差、社会が不安定になる要素
  0・5〜0・6 格差が限度を超え、社会的不満が激増
  0・6〜0・7 社会的動乱が発生してもおかしくない
  0・7〜    革命が起こるか、動乱状態に突入する
                http://nkbp.jp/2tfzN4a
─────────────────────────────
 日本のジニ係数は2012年は「0・320」です。格差社会
です。これに対して中国は「0・73」です。革命が起きても不
思議はないレベルに達しています。社会の頂点にいる1%の世帯
が全国の3分の1以上の資産を占有しているのです。しかも底辺
層の25%の世帯の資産の総額は、全体の1%ぐらいしかないの
です。          ──[米中戦争の可能性/114]

≪画像および関連情報≫
 ●中国最新報告書/「貧富格差が危険ラインに」
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   中国の名門大学、北京大学の最新調査報告・家庭追跡調査
  報告書シリーズ「中国人生活発展報告2015」により、同
  国の貧富の差がいっそう拡大していることが改めて確認され
  た。同報告書によると、全体の1%の世帯が国民総資産の約
  3分の1を保有する一方で、全世帯数の25%を占める最下
  層世帯が所有する資産はわずか1%前後にとどまり、貧富の
  格差を示すジニ係数は危険ラインに迫っている。
   報告書が発表した中国の種類別ジニ係数で、所得のジニ係
  数は80年代初頭の0・3前後から現在は0・45以上に、
  資産のジニ係数は95年の0・45から12年の0・73に
  上昇している。
   ジニ係数とは、国民全体の所得や資産分配の不平等さ、あ
  るいは格差を測るための指標の一つである。値の範囲は0か
  ら1で、値が大きいほど格差が大きく、それにより社会の不
  満も高まることから、一般に社会騒乱多発の警戒ラインは、
  0・4、危険ラインは0・6とされている。12年9月に中
  国当局が発表した初の「社会管理に関する政府報告書・中国
  社会管理革新レポート」には、中国における社会格差が既に
  同警戒ラインに迫っていると記されている。
                   http://bit.ly/2sCQ4Cw
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ジニ係数対比(OECD).jpg
ジニ係数対比(OECD)
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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