2017年06月16日

●「中国はなぜ『盗賊型政権』なのか」(EJ第4543号)

 何清蓮/程暁農両氏の本には「盗賊型政権」という言葉が出て
きます。著者によると、現在の中国には、盗賊型政権に見られる
盗賊型統治の特徴がすべて備わっているといいます。
 それでは「盗賊型政権」とは何でしょうか。
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 盗賊型政権とは、統治者が厚顔無恥にも公共財と民間財を略奪
して、はばからぬ政権である。
 何清蓮×程暁農著/中川友訳/ワニブックス「PLUS新書」
 「中国──とっくにクライシスなのに崩壊しない“紅い帝国”
のカラクリ/在米中国人経済学者の精緻な分析で浮かび上がる」
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 公共財と民間財を略奪する──といっても、ピンとこないので
著者が実例として上げてくる2つの政権について簡単にご紹介す
ることにします。
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  1.アルフレッド・ストロエスネル政権/パラグアイ
  2.            モブツ政権/ザイール
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 「1」は、パラグアイのストロエスネル政権です。
 ストロエスネル政権は、1954年から89年までパラグアイ
を統治した政権です。1954年7月、ストロエスネルは、対立
候補なしで大統領に選出されると、共産党非合法化に続き、すべ
ての革新団体の禁止と新聞の自由の制限を実施して、独裁体制を
確立し、予算の6割を軍事費に充てています。
 その独裁ぶりに反発し、左翼勢力による権力奪取の試みがあっ
たものの失敗し、反対勢力がほとんど海外へ亡命したので、19
58年から88年まで、5年の任期ごとに8選を果たし、独裁体
制を築いてやりたい放題の政権運営をしています。
 当時は東西冷戦下であり、反共の砦として米国、ドイツ、日本
とくに日本からの手厚い借款を受けて、国内の近代化を推し進め
各種のインフラを整備し、世界最大級の水力発電所を建設して電
力を隣国に売却することで利益を得るなど、経済の安定化に寄与
する貢献もしているのです。
 「2」は、ザイールのモブツ政権です。
 モブツ政権は、1965年から97年までザイール(現コンゴ
民主共和国)を統治した政権です。モブツは軍人上がりで、19
65年にクーデターで政権を掌握し、大統領に就任すると、やは
り東西冷戦を利用して、アフリカにおける反共の砦を任じ、その
見返りに西側先進国からの支援金を一手に引き受けて、そのほと
んどを着服したのです。
 モブツの不正蓄財は総額およそ50億ドルといわれ、西欧諸国
や西アフリカ、モロッコ、ブラジルなどに、豪華別荘や古城・豪
邸を保有し、隠し銀行口座を設けています。モブツに私物化され
た政権を揶揄する言葉として、「モブツの個人資産は、ザイール
共和国の対外債務に等しい」といわれたのです。
 パラグアイのストロエスネル政権も、ザイールのモブツ政権も
反対勢力を追放し、政権を批判するメディアを封じ、自分のやり
たい放題をやっています。両政権とも反共の砦として西側諸国か
らの支援を私物化しています。ストロエスネル政権は政権末期に
おいて、幹部の腐敗が横行し、民心を失い、クーデターで倒れて
います。ともに公共財と民間財を略奪して私物化するという不祥
事を起こしているのです。
 何清蓮/程暁農両氏は、中国が典型的な盗賊型政権であるとし
て、次のように述べています。
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 中国の現政権は今述べた「盗賊型政権」の特徴をすべて兼ね備
えている。収賄者は政府の上層から中層・下層に至るまで広く分
布し、どんな小役人であれ、手中にある権力を利用してレント・
シーキング〔権力を利用した不法な超過利潤の追求、すなわち汚
職・腐敗を指す〕にいそしまない者はいない。世界の数ある「盗
賊型政権」が用いた略奪手段は、ひとつ残らず中国で実践されて
いる。          ──何清蓮×程暁農著k前掲書より
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 ここで「レント・シーキング」という言葉が使われています。
これは、民間企業などが政府や官僚組織へ働きかけを行い、法制
度や政治政策の変更を行なわせることをいうのです。規制のため
実現できないことを上層機関に賄賂などを使う働きかけによって
可能にする手口です。これは下から上へのレント・シーキングで
す。レントというのは「超過利潤」を意味します。
 現在、日本の国会で連日行われている加計学園の獣医学部新設
をめぐり、官邸サイドの働きかけがあったかどうかが討論されて
いますが、中国ではこういうとき、賄賂を使うことが常態化して
いるのです。儲けが出そうな業種における許可証──例えば、炭
坑や金坑などの各種鉱山業の採掘許可証などは役人が私腹をこや
す格好の手段になっています。
 中国は国家によって土地が独占されています。地方政府は権力
を駆使して土地を利用している農民を立ち退かせ、その土地を高
値で不動産デベロッパーに売却して暴利をむさぼるのです。そし
て、その不動産デベロッパーが共産党幹部の家族であったりする
のです。そういう意味で中国の役人は、土地転売でボロ儲けする
不動産ブローカーそのものといえます。
 このように、中国では上層・中層・下層に腐敗が蔓延しており
それが常態化しています。まさに盗賊的政権そのものです。しか
し、中国では、現在克服困難な経済的、社会的な難題が山積して
いるのです。これは、腐敗一掃キャンペーンぐらいで解決できる
ものではないのです。
 中国にとって今や繁栄は過去のものになっています。中国人が
目にしているものは、空を覆うスモッグ、汚染された土地、真っ
黒な河川、そして仕事の機会を得られない数億人にも及ぶ失業者
なのです。        ──[米中戦争の可能性/113]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の衰退と日本の出番/朝倉慶氏
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   先日朝倉慶の「中国ゴーストタウンセミナー」ということ
  で、中国の現状を視察してきましたが、ツアー参加者一同予
  想以上の衝撃を受けました。内陸部オルドスでは人のいない
  マンション群が山のように連なっています。そして回りに作
  られた広大に続く工場群はただの一つも動いていません。そ
  して最も驚くべきことはそれらの工場群やマンション群を取
  り巻くインフラや道路が非常に綺麗で整備つくされ続けてい
  るということです。
   人のいないマンション群や稼働しない工場を想像してみて
  ください。それが延々と続く姿を想像してみてください。当
  然廃墟のようにすたれて人が全くいない、まさにゴーストタ
  ウンが出現してそれは薄気味の悪いところに思えませんか?
   ところが現実は全く違うのです。廃墟でありながら今も整
  備され続けていて、道路はちり一つなく綺麗に整備、掃除さ
  れているのです。何処に行っても人影もまばら、特に子供の
  姿はほとんど見かけることはありませんでした。ところがマ
  ンション群にはその広大な建物の一つ二つに電気がともると
  ころ、全くともらないところ、とにかく人の気配は全くあり
  ません。そしてそれらが何故綺麗になっているかというと実
  は、連日清掃しているからなのです。たまに会う人々はまさ
  に清掃の仕事をしている人のようで、この人のいない街を何
  故かしっかりと清掃し続けて清潔さを保とうとしているよう
  です。              http://bit.ly/2ssLK9d
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ストロエスネル大統領/モブツ大統領.jpg
ストロエスネル大統領/モブツ大統領
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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