2017年06月15日

●「中国は衰退するが、崩壊はしない」(EJ第4542号)

 昨日のEJで、社会主義国の政治的転換と経済的転換について
述べましたが、政治と経済のどちらが先に転換されるかによって
結果が違ってきます。
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   1.政治的転換が先に起きる ・・ 中 欧モデル
   2.政治・経済の転換が同時 ・・ ロシアモデル
   3.経済的転換が先に起きる ・・ 中 国モデル
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 中国の場合は、専制的な共産党一党支配の政治体制はそのまま
で、経済的転換が先に行われた「3」のケースです。これは、最
悪のパターンです。「3」のケースでは共産党のエリート(紅い
エリート)たちは資本家になり、自分たちの利益のために、民主
化を妨害し阻止します。なぜなら、民主化とは、紅いエリートた
ちの政治的特権を剥奪することを意味するからです。したがって
彼らがそんなことをするはずがありません。
 中国の急速な経済発展と一時的な繁栄は、社会主義国特有の政
府によるすべての資源(リソース)を集中させた結果によるもの
です。その場合、民主主義国と違って、生態環境の汚染や国民の
健康的配慮などは一切なく、いわば略奪的な方法で経済を高度に
発展させ、異例のスピートでGDPを向上させたのです。このよ
うなことは、政府が専制的権限を持っている社会主義国でないと
できないことです。
 その結果、中国に何が起きたでしょうか。
 何清蓮/程暁農両氏は、社会主義国であれ、民主主義国であれ
どんな社会であれ、人がその生存を支えるための条件として次の
4つの要素を上げ、現在の中国の実情を説明しています。
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  1.水や土地や大気の安全などの生存基盤が確立している
  2.社会の構成員間の関係を調節する倫理・道徳システム
  3.社会の構成員の最低ラインの生存が確保される就業率
  4.社会の正常な運営を維持する政治的統合力が存在する
 何清蓮×程暁農著/中川友訳/ワニブックス「PLUS新書」
 「中国──とっくにクライシスなのに崩壊しない“紅い帝国”
のカラクリ/在米中国人経済学者の精緻な分析で浮かび上がる」
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 何清蓮/程暁農両氏によると、現在の中国で残っている要素は
「4」だけであるといいます。他の条件は、既に崩壊していると
いうのです。
 中国では、人が生きて行くために不可欠な水や大気は、極限ま
で汚染され、「1」は既に崩壊しています。工場から垂れ流され
る真黒な煙、何が浮いているのかわからない川、汚染された土地
枯れ果てた湖沼など。北京などの大都市の表通りはきれいである
ものの、一歩裏に回れば、生活ゴミの山。政府は本気で環境対策
に取り組んでいるとはとうてい思えないのです。
 社会では収賄や収奪が当たり前になり、そこに倫理・道徳シス
テムは働いておらず、上層から下層まで、腐敗は広く社会に蔓延
し、「2」も崩壊しています。それに加えて物価は高騰し、最低
限の収入を確保するための職の確保も、難しい状況になっていま
す。貧富の格差は拡大するばかりで、ワールドクラスの大富豪が
多数おり、豊かな中間層が海外で爆買いしている一方で、数億人
に及ぶ生活困窮者がその日暮らしの生活を送っています。そのた
め「3」も破綻しているといえます。
 それでいて、中国は崩壊しないというのです。このような中国
の現況を踏まえて、何清蓮/程暁農両氏は「中国は衰退はするが
崩壊しない」として、次のように述べています。
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 中国政府はすべての資源を集中させて「安定の維持」に努めて
いる。かたや中国の民衆は、自己組織化の能力に欠け、「ばらば
らな砂」に等しいため、中国共産党という巨岩には抗うすべもな
い。したがって共産党政権は今後20年から30年、崩壊するこ
とはあり得ず、中国社会は長期にわたって「衰退するが、崩壊し
ない」状態のままに置かれるだろう。このプロセスは共産党政権
が中国の未来を犠牲にして自身の存続を図るプロセスであり、中
国が日々衰えてゆくプロセスにほかならない。もちろん、それは
中国が外に向けて負の影響をまき散らすプロセスでもある。例え
ば、海外への中国人の大量移住、環境汚染の外国への流出、国内
の矛盾から目を逸らさせるために対外的な衝突を仕掛ける等々で
ある。          ──何清蓮×程暁農著の前掲書より
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 現在中国では、習近平国家主席が中心になって「腐敗一掃キャ
ンペーン」を実施しています。しかし、中国の腐敗は、上層から
中層、下層まで行われており、日常茶飯事化しています。習近平
首席がやっているのは、腐敗キャンペーンを利用して政敵を排除
する権力抗争そのものに過ぎないのです。
 2016年4月3日に、ICIJ(国際調査報道ジャーナリス
ト連合)はパナマ文書を公表し、オフショア・カンパニーを開設
して資産を移転した権力者のリストを公開しています。パナマ文
書は、1150万件ありますが、その30%は中国人なのです。
約3万3000人の中国関係者と4188社のオフショア・カン
パニーの存在が明らかになっています。
 データベースを検索すると、中国の現職高級官僚とローマ字表
記が一致する多くの名前が発見されたのです。習近平の義兄・ケ
家貴、李鵬の娘・李小琳、温家宝の息子・温雲松、前全国政治協
商会議主席の買慶林、現政治局常務委員の劉運山などの親族・子
女の名前が続々と出てきています。
 中国共産党は国内への波及を恐れ、言論統制を行い、インター
ネットでも厳重な規制を行い、関連ワードで検索しても絶対に出
てこないようにしています。このことを踏まえて、何清蓮/程暁
農両氏は、現在の中国の政権を名付けて「盗賊型政権」と呼んで
います。         ──[米中戦争の可能性/112]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平政権に痛恨の一撃 パナマ文書は中国経済の時限爆弾
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   世界中に波紋を広げている「パナマ文書」で名前が挙がっ
  た中国の習近平国家主席は、情報統制に必死だ。「中国内で
  ネット検索すると、『パナマ文書』という言葉はヒットしま
  すが、中国人の名前は一切出てきません。メディアも右へな
  らえです」(在中マスコミ関係者)
   そりゃそうだ。政権発足から一貫して「反腐敗」を掲げ、
  民衆の支持を得てきた習国家主席の姉の夫や、党幹部の親族
  がタックスヘイブン(租税回避地)を利用していたなんて知
  れ渡ったらシャレでは済まされない。中国事情に詳しいジャ
  ーナリストの柏木理佳氏が言う。「ただ、情報統制にも限界
  があります。ネット上で噂が出回りそうになれば、当局が削
  除するといういたちごっこが続いていますが、それこそ中国
  人は世界中にいる。今はSNSがありますし、個人間のやり
  とりをすべて取り締まることは難しい。都市部だけでなく地
  方まで情報が広がるのも時間の問題でしょう」
   習政権にとってパナマ文書は、まさに“時限爆弾”。中国
  経済も減速どころか、急ブレーキがかかりかねない。「そも
  そも今の中国経済は、インターネットなどのサービス業だけ
  が支えている。そこに厳しい規制をかけること自体、自分で
  自分の首を絞めるようなもので、加えて『物価だけ上がって
  給料が上がらない』というエリート層の不満も充満してきて
  いる。パナマ文書をきっかけに、たまりにたまった民衆のス
  トレスが爆発し、大規模な反政府デモにつながる恐れはあり
  ます」(柏木理佳氏)       http://bit.ly/2sgn8Ro
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パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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