2017年06月14日

●「中国は世界一をなぜ目指さないか」(EJ第4541号)

 何清蓮と程暁農両氏による中国論は、われわれにまったく新し
い視点から中国を見せてくれるような気がします。それは、他の
中国関連本から得られる中国観とは大きく異なるものです。
 2001年以降、急成長を始めた中国経済という急行列車に多
くの国が競って乗ろうとし、中国の経済成長はますます加速しま
す。そして、2008年のリーマンショックでは、「4兆元の投
資」といわれる巨大な財政出動と併せて空前の金融緩和を行い、
危機を短期間で終息させるに及んで、中国の存在感は、一挙に高
まったといえます。そして、2010年にはGDPで日本を抜い
て世界第2位の経済大国になったのです。あとは、いつ米国に追
いつき、米国を抜くかという段階に達したのです。少なくとも世
界はそう見ていたのです。これからは、中国の時代である、と。
 しかし、当の中国は、この時点からそれまでの「中国モデル」
とか「北京コンセンサス」というようなハイトーンの対外宣伝戦
略をやめています。そして、2009年2月、外遊中のメキシコ
で、当時副主席であった習近平氏による次の有名な発言が行われ
たのです。
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 腹がいっぱいになって暇になった外国人が、われわれの欠点を
あれこれあげつらっている。中国は革命を輸出せず、飢餓や貧困
も輸出せず、外国に悪さもしない。これ以上いいことがあるか。
               ──習近平国家副主席(当時)
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 この発言は、仲間うちの記者たちと話したときのものですが、
次期国家指導者としての発言としてふさわしくないと批判を浴び
たのです。1970年代末から始まった改革開放以降、欧米に対
し、一貫して協調路線を取ってきた中国の指導者がこのような強
硬な発言をしたことがなかったからです。
 ところで中国は、もっとも胸を張ってよいこの時期になぜ突出
するのを控えるような対応をしたのでしょうか。何清蓮と程暁農
両氏によると、政府の指導者がこの時点で、いずれ中国に訪れる
であろう経済的困難を感じており、その要因が克服することが難
しいものであっことがわかっていたからであるというのです。
 中国経済に問題があることは、次のようなことからも窺い知る
ことができます。2008年から2016年まで、経済系メディ
アの年頭ニュースには、決まって次のフレーズが掲げられていた
といいます。こういうニュースは、経済が担当の首相であったり
一流のエコノミストの発言が基になるのですが、年が明けるたび
に、中国政府は何らかの不安を感じていたことになります。
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    今年は中国経済にとって最も困難な1年になる
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 このことは非常に民主主義国の陣営にとって、理解しがたいこ
とです。中国経済が発展をはじめたとき、国際社会は「中国の民
主化が進む」と歓迎したのです。中国の民主化が進めば、対外的
な軍事拡張によって人口過剰の危機を転嫁するのではないかとい
う国際社会が密かに恐れていた不安が解消されるからです。
 しかし、そうはならなかったし、当の中国は、最初から民主化
させるつもりなど全然なく、あくまで共産党による独裁体制を維
持する方針だったからです。それは、毛沢東の秘書を務めたこと
がある次の共産党の長老の言葉によってわかります。
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 人類を進歩させるものは民主主義、人治、科学、改革の4つ。
逆に人類の進歩を邪魔し、後退させるものは、独裁、人治、愚昧
革命の4つだ。毛沢東は後の4つのことで、文革など国家を大混
乱に陥れた。ケ小平は、愚昧をやめ、科学を進め、革命をやめ、
改革に力を入れた。しかし独裁と人治は継承した。
 そして、江沢民、胡錦濤、習近平は「3人ともケ小平の描いた
欠陥のある設計図の実行者でしかない。しかも、残念なことに、
政治家としての魅力も実力も能力も小粒になっている」と。
      ──矢板明夫著/『習近平/共産中国最弱の帝王』
                         文藝春秋
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 歴史的にはっきりしていることがあります。私有を公有にする
共産党政権は、最終的には存続することができないということで
す。存続させるためには、何らかのかたちで資本主義経済を取り
入れる必要があります。
 社会主義国の経済と政治の転換には、歴史的にみて、次の3つ
のモデルがあります。
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          1.中 欧モデル
          2.ロシアモデル
          3.中 国モデル
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 「1」は「中 欧モデル」です。
 中欧諸国の転換は、旧体制に異議を唱える知識人層によって共
産主義が一掃され、体制変換が行われています。このモデルでは
共産党エリートの居場所はないのです。ポーランド、ハンガリー
チェコ、スロヴァキアがこのモデルです。
 「2」は「ロシアモデル」です。
 このモデルでは、共産党エリートが民主派エリートに変身した
ので、転換でもたらされた多くの恩恵にあずかっていますが、庶
民も私有化プロセスのなかで、一部の所有権を確保しています。
旧来の権力者が新社会を率いた典型的なモデルといえます。
 「3」は「中 国モデル」です。
 このモデルでは、全面的な公有制と計画経済は放棄したものの
共産党資本主義によって全体主義制度を強固なものにし、共産党
指導者が私有化のプロセスで数々の犯罪行為を行っています。そ
のため、国家全体に深刻な腐敗をもたらしているのです。
             ──[米中戦争の可能性/111]

≪画像および関連情報≫
 ●資本主義と共存する中国共産党の謎
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   今日、中国共産党はこの国の唯一の政党でありつづけてい
  る。過去30数年間に多くの観測筋や解説者が、中国はいず
  れ西洋型の資本主義へ向かうだろうと期待を寄せた。その過
  程で中国共産党は、市場改革が進展するにつれ重要性を失う
  か、共産主義とともに廃れるか、民主化を受け入れて台湾や
  韓国と同じ道を歩むだろうと見られた。
   しかし今日、中国共産党に、その一党支配体制を改める用
  意があるとの兆しは見当たらない。その割合を高めている私
  企業家や大学卒業者も含めて、あらゆる職業の8000万人
  以上の党員(2011年末現在)をかかえる党は、かつてな
  いほど強大に見える。共産党が存続して、中国型の資本主義
  はますます異質で好戦的な勢力、西洋の資本主義を打倒しな
  いまでも、これと対立する勢力に見える。
   経済の自由化と共産党支配の継続とのややこしい協調関係
  中国における共産党の存続は、経済改革の最も顕著な特徴に
  違いないが、それは多くの人に改革の始めから終わりまで中
  国の党国家としての一見誤りのない役割に目を向けさせた。
  旧ソ連圏のように、これまでの与党・共産党が次々に崩壊し
  市場主導の改革への道が拓かれた移行経済(トランジション
  ・エコノミー)とは違って、中国は共産党と市場経済がとも
  に繁栄できるように見える唯一の例として際立っている。
                  http://nkbp.jp/2r59FYr
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全権力を掌握しつつある習近平国家主席.jpg
全権力を掌握しつつある習近平国家主席
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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