2017年06月12日

●「シャンボー教授による中国崩壊論」(EJ第4539号)

 「中国はなぜ崩壊しないのか」についてさらに考えます。仮に
中国の不動産バブルが崩壊したとします。しかし、社会主義国で
あれば、国家が大量の資金を投入してバブルを鎮めることは、程
度にもよりますが、十分可能です。そして、社会主義国であれば
そのようにしたことを外部に隠蔽することも可能です。経済統計
数字を改ざんすることができるのです。
 この考え方に立つと、中国の不動産バブルはとっくに崩壊して
いる可能性もあります。既に国家として密かに処理されており、
それが外部には、そのようには見えないだけではないかとも考え
られます。中国崩壊論はかなり昔から何回も出てきているのです
が、それと同等の中国繁栄論も出ており、国際社会では崩壊論を
まともに信用する識者は少なかったのです。
 ところが、2015年に入ると、中国に対する国際社会の見方
が繁栄論から崩壊論に一変するのです。それは、ジョージ・ワシ
ントン大学の国際政治学者であるデイビッド・シャンボー教授が
執筆した次の論評が公開されたからです。
─────────────────────────────
          デイビッド・シャンボー著
      『終焉に向かい始めた中国共産党』
     ウォール・ストリート・ジャーナル紙
─────────────────────────────
 この論評は大変な反響を呼んだのです。なぜなら、デイビッド
・シャンボー教授は、ワシントンでも有名な親中派の学者であり
その見解は信用されていたからです。「あのシャンボー教授がい
うのであれば、中国はきっとそうなのだろう」と考える人が多く
ショックが拡大したのです。それは2001年のゴードン・チャ
ン氏の本のときとは比較にならなかったのです。
 「ゴードン・チャン氏のとき」とは何でしょうか。
 ゴードン・チャン氏は、米国の作家で、2001年に次の著書
を上梓したのです。
─────────────────────────────
    ゴードン・チャン著/栗原百代・渡会圭子訳
     『やがて中国の崩壊がはじまる』/草思社
─────────────────────────────
 この本は話題になりましたが、多くの人にはにわかに中国が崩
壊するとはとても考えられなかったのです。2001年といえば
中国がWTOに加盟したばかりであり、中国の経済が急成長をは
じめたときであったからです。本文中には「中国経済は10年以
内に崩壊する」と予言していますが、2010年には中国はGD
Pで日本を抜いて世界第2位の経済大国になっており、ゴードン
・チャン氏の予言は、大外れだったといえます。
 しかし、2015年は、誰の目にも中国の衰えが明らかになっ
た年であり、その年に出されたデイビッド・シャンボー教授の論
評が国際社会に強いインパクトを与えたのです。
 デイビッド・シャンボー教授は、現在の中国には、体制の脆弱
性を示す次の5つの亀裂があることを指摘しています。
─────────────────────────────
 1.中国の経済エリートたちは、既に片足をドアの外に出し
   ており、もし少しでも体制が揺らぎ始めれば、大挙して
   逃亡する用意だけはできている。
 2.習近平は、政治的な抑圧を大幅に強化している。これは
   党の指導者たちの不安と自信のなさの表れである。今後
   この傾向はますます強化される。
 3.政権に忠誠を誓っているように見える者たちも、実際に
   はそう装っているだけである。そうしないとこの社会で
   は生きていけないと思っている。
 4.党及び軍にはびこる腐敗は、社会全体に蔓延している。
   根本原因は一党支配体制にあり、反腐敗キャンペーンで
   は問題解決は困難と思っている。
 5.中国経済は制度的な落とし穴にはまっており、簡単には
   脱出できない。党の大胆な経済改革パッケージも既得権
   益層がその実施を妨害している。
─────────────────────────────
 シャンボー教授によると、中国の政治体制は見かけ以上に壊れ
ており、現在、習近平主席は、反対派と腐敗を厳しく取り締まる
ことによって、党の支配を強化しようとしていると指摘していま
す。しかし、その独裁政治は、中国の社会と体制に強いストレス
を与えており、限界点は近づいているといいます。それは、上記
の5つの亀裂によく表れています。
 共産党による一党独裁体制は、その最終段階に既に入っており
思った以上に進んでいるといえます。そして、共産党支配は静か
に終わる可能性は少なく、意外に長引き、混沌とし、暴力を伴う
ものになると、習近平体制がクーデターによって失脚する可能性
についても指摘しています。
 これら5つの亀裂は、現在の政治システム(中国共産党の一党
支配)が原因で顕在化したものです。したがって、この亀裂は、
中国の政治改革によってのみ解決できる──とシャンボー教授は
いいます。しかし、それは非常に困難なことです。
 このシャンボー教授の論評は、あまりにも大きな反響を呼んだ
ので、シャンボー教授はその後の講演会で、次のように若干の修
正を行っています。
─────────────────────────────
 「中国が崩壊する」と予測したのではなく、「中国共産党の延
長式の没落」を予測した。崩壊とは別の問題。ゴードン・チャン
氏と一緒にしないでほしい。      ──とシャンボー教授
                  http://exci.to/2rP8bTm
─────────────────────────────
 中国の将来を予測することは非常に困難です。しかし、崩壊は
しないまでも「衰退」に向うことは避けられないと教授は予測し
ているのです。      ──[米中戦争の可能性/109]

≪画像および関連情報≫
 ●「中国経済崩壊論」の拡散でAIIBつぶしに乗り出すか
  ───────────────────────────
   「中国経済崩壊論」の拡散も、米国が今後、取るであろう
  戦略だ。これは「経済戦」の一環である。米国は現在、日本
  と欧州を巻き込み、「対ロシア経済制裁」をしている。しか
  し、ロシアと違い、世界第2の経済大国・中国に経済制裁を
  課すことは、困難だろう。そもそも、「AIIBをつくった
  から制裁する」とはいえない。他の理由で中国を経済制裁し
  ようにも、欧州が「制裁はイヤだ!」といえば、またもや米
  国の権威は失墜する。
   では、どうするのか?「中国経済の崩壊は近いですよ」と
  いう噂を広めるのだ。実をいうと、これは完全な「噂」でも
  ない。実際、中国のGDP成長率は、年々下がっている。賃
  金水準が上がり、外国企業がどんどん東南アジアなどに逃げ
  出している。だから、米国が「中国経済の崩壊は近い」とプ
  ロパガンダしても、必ずしもウソとはいえない。
   事実、最近「中国崩壊説」をよく見かけるようになった。
  たとえば、ゴールドマン・サックスの元共同経営者ロイ・ス
  ミス氏は2015年3月2日、「中国経済の現状は1980
  年代の日本と似ている点が多い」「日本と同様、バブル崩壊
  に見舞われるだろう」と述べた。さらに、かつては、親中派
  だったデヴィッド・シャンボー(ジョージ・ワシントン大学
  教授)は3月6日、「ウォール・ストリート・ジャーナル」
  に、「終焉に向かいはじめた中国共産党」を寄稿して、中国
  政府を激怒させた。        http://bit.ly/2s7eN2s
  ───────────────────────────

ディビッド・シャンボー教授.jpg
ディビッド・シャンボー教授
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
RDF Site Summary