2017年06月02日

●「人民元換物投機でビットコインへ」(EJ第4533号)

 5月12日にイタリアで開かれたG7財務相・中央銀行総裁会
議で麻生財務相は、次のように演説しています。
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 中国は人民元安に歯止めをかけるため、元の海外送金を規制し
ている。麻生氏は「外国資本が本国に送金する際に支障が出てい
る。国際社会としても注視する必要がある。経常取引に規制をか
けるのはIMFの協定違反である。資本規制が行き過ぎていると
すれば、日本として言わなければいけない。
                http://s.nikkei.com/2qF13GW
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 実は中国の資本規制は、企業だけでなく、個人にもかけられて
いるのです。なぜ、個人にまで資本規制をかけるのかというと、
2015年以降の資本の流出額が半端ではないからです。
 ちなみに、2015年の流出額は、実に1兆ドル(約121兆
円)であり、前年の7倍以上、過去最高の流出額です。2016
年も同様の流出額に達しています。その原因は、人民銀行が20
15年8月に人民元の大幅切り下げを行ったからです。
 この人民元の切り下げは予想外の措置であり、金融市場に衝撃
が走ったのです。これについて、ブラウン・ブラザーズ・ハリマ
ン通貨ストラジスト、CFAの村田雅氏は、自著で次のように述
べています。
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 中国当局が元をドルペッグ制に戻したという見方が金融市場に
広がってきた2015年8月11日の午前10時過ぎ、人民銀は
人民元の対ドルレートの基準値を前日(10日)の1ドル=6・
1162元から6・229元に設定すると発表した。人民元の対
ドルでの下落率は、1・8%と過去最大になった。予想外の切り
下げによって、金融市場には衝撃が走った。
              ──村田雅志著/東洋経済新報社
          『次のバブルが迫る/人民元の切り下げ』
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 これによって世界には、中国当局への不信感が高まると同時に
中国国内では人民元安の不安から、人民元をドルに両替しようと
する人が殺到したのです。そのため銀行窓口では「ドルがない」
として、数千ドル規模の両替が断られるようになり、国内の不安
感が、一層高まったのです。取り付け騒ぎです。
 中国が現在行っている、いわゆる「管理された変動相場制」と
は、毎日「基準値」というものを算出して決めています。基準値
とは、前日の市場での終値を参考に上下2%の変動を当局が決定
し、毎朝発表する方式です。
 2015年8月の人民元大幅切り下げは、中国当局が基準値の
算出方式を突然変更し、人民元相場を市場実勢に近づけようとし
たのです。つまり、当局の意思によって人民元の対ドルレートを
恣意的に決めることができるということです。さらに5月26日
も基準値の算出方式を変更しています。資本流出が止まらないか
らです。つまり、どんどん市場化に逆行しているわけです。
 そこで富裕層は、さまざまな手段で資金を海外に逃がそうとし
ています。とにかく中国人は、自国の通貨人民元を信用していな
いのです。そこでやるのは「換物投機」です。これがはじまるの
は、国家にとって危険な兆候です。
 中国の事情に詳しい宮崎正弘氏は、通貨ルーブルの価値がどん
どん下落する当時のソ連の崩壊時の状況について、次のように述
べています。
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 89年に東西冷戦が終わって、91年12月にソ連が崩壊する
までの2年間、ルーブル札は旧ループル札のままだったんです。
それが89年のときは、強制両替で旅行に行ったら、1日たとえ
ば公式レートでかならず両替しなきゃいけない。そうすると、1
ルーブルでが240円だった。東西冷戦が終わったら、60円に
なって突然1円を切った。91年に1円を切って、12銭になっ
た。たった2年間でドーンと2千分の1になったのです。
 そのとき、ロシア人がどういう投資行動を取ったかというと、
換物投機。簡単なんですよ。通貨が下がるんだから、いま持って
ているうちにドルに換える。闇ドルでもいい。2番目、住宅を買
う。自動車を買う。だから、いま中国でやってるのは、その前兆
じゃない?          ──宮崎正弘/石平著/WAC
         『いよいよトランプが習近平を退治する!』
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 実は、中国でも同じようなことが起きています。何がなんでも
人民元をモノに換えようとしているのです。換物投機で金を買い
時計(ロレックス)を買い、最近ではそれがビットコイン(仮想
通貨)に向っています。
 そのため、現在、ビットコインが急騰しています。ビットコイ
ンの価格は、2016年までは「1ビットコイン(BTC)=5
万円」程度で落ち着いていたのですが、2016年後半には10
万円を超えたのです。これが2017年に入ると20万円を超え
5月23日には30万円の高値をつけたのです。このビットコイ
ン高騰の背景には中国の存在があります。人民元の換物投機の対
象にビットコインが選ばれているからです。5月20日付、日本
経済新聞は、ビットコインについて次の記事を掲載しています。
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 インターネット上の仮想通貨ビットコインの価格が急上昇して
いる。ドル建て相場は5月19日、伝統的な「無国籍通貨」の金
の史上最高値を上回った。(中略)取引の大半を中国が占める。
人民元の先安観が背景にあり、参加者の8割〜9割は中国人との
説もある。資本規制で個人の投資先が限られるなか、規制の抜け
穴としてビットコインに資金を移す動きが強まった。
         ──2017年5月20日付、日本経済新聞
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             ──[米中戦争の可能性/103]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の「元」の下落とビットコインの高騰は表裏一体
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   「2016年という1年は、中国の人民元がゆっくりと下
  落していく現実に、世界の市場が適応していかなければなら
  ない年だった」
   このように米紙「ニューヨーク・タイムズ」が指摘すると
  おり、人民元は対ドルで年間約7%の下落となり、リーマン
  ショック前の水準にまで迫った。この人民元安の原因は、世
  界的なドル高傾向などが関連した複合的なものだという。
   フランス紙「ル・モンド」は、中国の経済成長が鈍化した
  ことから、当局も輸出を刺激するために人民元の価値が下が
  ることを容認した、と書く。
   また同紙は別の記事で、中国の債券市場が発展しすぎてバ
  ブル状態に近くなり、不良債権問題も生じつつあると指摘す
  る。国際決済銀行の「中国は3年以内に深刻な危機に見舞わ
  れる」という予測を引き、中国全体の債務がGDPの250
  %を超えた状態が、人民元への信頼も失わせているのだと説
  いている。米「ブルームバーグ」も同様に解説し、加えて、
  「2016年は中国政府当局が資本の国外流出を防ごうとし
  て規制の強化を繰り返したことが、かえって人民元の信頼を
  損ね、さらなる資本の流出を招く悪循環に陥った」と述べて
  いる。では流出した中国の資本はどこに向かっているのかと
  いえば、仮想通貨の「ビットコイン」だという。
                   http://bit.ly/2qHcyxF
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人民元下落/ビットコイン急騰.jpg
人民元下落/ビットコイン急騰 
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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