2017年05月31日

●「SDR構成通貨に値しない人民元」(EJ第4531号)

 2017年4月26日、中国共産党中央委員会の機関紙である
人民日報は、次の趣旨の報道を行っています。
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 過去20年にわたって「中国経済崩壊論」が幾度となく言われ
ハードランディングするなどと主張する西洋の専門家もいたが、
これらの予言は一度も当たったことがない。中国経済の長期的な
発展の傾向は基本的に変わっておらず、この先の中国経済はさら
に健全で持続的に発展する。
 世界経済の成長にも大きく貢献し、経済構造からみても中国経
済の質はますます良くなっており、ここ数年は国民総生産(GD
P)成長率6・5%前後を維持していて、中国が目標とする「小
康社会」が実現していると論じ、中国経済崩壊論などは全く成り
立つ訳がない。    ──2017年4月26日付、人民日報
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 人民日報のこの報道に対し、皮肉な話ですが、中国のネットユ
ーザーは「そんなに深刻とは思っていなかったが、人民日報がこ
う言うということは・・・」とか、「人民日報がこういう記事を
出すとは、本当に経済はダメなんだな」などのコメントが寄せら
れ、人民日報の記事から逆のことを読み取っているのです。要す
るに、政府系メディアの報道を全く信用していないのです。
 どうしてこのような評価になったのかというと、習近平政権の
経済運営がかなりひどいからです。中国では、ケ小平ルールとい
うものがあって、本来、経済問題は国務院総理(首相)、すなわ
ち、李克強首相の仕事なのです。しかも李首相は北京大学で経済
学博士号を持つ経済の専門家であり、適任です。
 しかし、習主席は経済問題も習近平グループでやるという野望
を持っており、李首相の政策にことごとくクレームをつけたので
す。そのため、李首相は自分の思うように経済を動かすことがで
きず、経済は混乱しています。これについて、近藤大介氏は習政
権の経済運営について、次のようにコメントしています。
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 習近平政権の約4年間を評価すると、政治分野と軍事分野に関
しては、習近平が強い指導力を発揮している。(中略)ところが
経済分野に関してだけは、この4年間というもの落第点である。
たとえてみれば、今日大雨が降ったから慌てて傘を用意し、今度
は台風が吹き荒れだしたから戸や窓を補強するといった具合だ。
万事後手後手で、かつ出たとこ勝負のため、長期的な見通しや整
合性に乏しい。           ──近藤大介著/講談社
     『活中論/巨大化&混迷化の中国と日本のチャンス』
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 中国という国は、どのようなことでも世界一になろうとする国
なのです。実際にGDPにおいては、2010年8月に日本を抜
き、世界第2の経済大国になっています。そのときの中国の喜び
というか、高揚した気持ちを2010年8月17日付の「環境時
報」は次のように伝えています。
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 わが国はこの5年間、イタリア、フランス、イギリス、ドイツ
を、GDPで追い抜いてきたが、今回ついに、日本を追い抜いて
世界第二の経済大国となった。日本では、内閣府がこの事実を発
表した10分後に、日経平均株価が今年最大の下げ幅となる91
00ポイントまで下落してしまった。実際、中国の今年の予測経
済成長率は10%なのに日本は3%にすぎない。日本は1968
年に西ドイツを追い抜いて以来、40数年間にわたって守り抜い
てきた「世界第二の経済大国」の地位から陥落したのだ。
       ──2010年8月17日付、「環境時報」より
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 もちろん国家が「世界一になる」というような目標を持つこと
自体はわるいことではありません。しかし、そのために長年にわ
たって異常なほど巨額な不動産投資を積み上げて、GDPを増加
させ、日本を抜いたのです。その結果、中国国内に100ヶ所以
上の巨大な「鬼城」ができてしまったのです。既に述べているよ
うに、鬼城は一向に解決されておらず、そのままです。
 それに加えて中国は、通貨でもドルに代わって人民元を基軸通
貨にしようという野望をいだいています。そのためにIMF(国
際通貨基金)が認定するSDR(特別引出権)に入ることに執念
を燃やし、さまざまな政治工作を繰り広げて、2015年11月
30日の理事会で、中国人民元をSDRの構成通貨のひとつにす
ることが認定されています。その構成比率は次の通りです。
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            構成通貨比率  決済通貨シェア
  ドル(アメリカ)  41・73%   40・87%
  ユーロ(EU)   30・93%   30・82%
  人民元(中国)   10・92%    1・72%
  円(日本)      8・33%    3・46%
  ポンド(イギリス)  8・09%    8・73%
        註:済通貨シェア(2016年6月統計)
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 SDRの構成通貨になるには2つの条件──「貿易規模と代金
決済で使われる通貨比率の高さ」と「金融市場で自由に交換でき
る」という2つの基本条件を満たしていることが求められるので
すが、人民元にはその基本的条件を満たしていないのです。それ
でもIMFのラガルド専務理事は、中国に異常に肩入れし、人民
元のSDR入りを認めさせたのです。
 実際に2016年6月統計による決済通貨のシェアでは、人民
元は構成比率の10・92%に対して、わずかに1・72%を占
めたに過ぎないのです。実際に中国は、海外との経常決済に占め
る人民元建ての決済金額のシェアは、2015年の26%から、
2016年末には16%に縮小しています。人民元をSDRに加
えたIMFのラガルド専務理事の責任は大きいといえます。
             ──[米中戦争の可能性/101]

≪画像および関連情報≫
 ●悲願のSDR入りを果たした中国/読売オンライン
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   IMFが2015年11月30日に人民元をSDR構成通
  貨として採用することを正式に決定すると、中国国営新華社
  は即座に速報を打ち、「歴史的な一歩」と歓迎した。李克強
  首相も中国の改革・開放の成果を国際社会が認めたものとし
  て高く評価した。
   SDRとはIMFが加盟国に対し、出資比率に応じて配る
  国際通貨の一種。通貨危機などで外貨不足に陥った加盟国は
  SDRを他国に渡せば、米ドルなどと交換できる。SDRの
  構成通貨見直しは5年ごとに実施される。前回2010年の
  見直しの際には、中国の期待に反する形でIMFは人民元の
  SDR採用を見送っている。中国としては捲土重来を期す形
  で、人民元の国際化に向けて着実に規制の緩和、自由化を進
  めてきた。
   経済面では米国発の金融危機、欧州発の財政危機後の激動
  の世界経済をけん引してきたとの自負もあるだろう。今や中
  国は名目GDPでは世界第2位の経済大国であり、実質的な
  購買力をベースとした為替換算では14年に米国を追い越し
  て世界第1位の経済大国となった。SDR入りは中国にとっ
  て外交的勝利であり、また、自らの経済力に見合った当然の
  帰結との思いもあろう。      http://bit.ly/2rcbqnw
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IMFラガルド専務理事.jpg
IMFラガルド専務理事
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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