2017年05月30日

●「中国経済実態は既に崩壊している」(EJ第4530号)

 中国経済はどうなっているのでしょうか。2016年は中国経
済悪化のニュースが頻繁に飛び込んできたものですが、2017
年に入ると、そういうニュースは影を潜めています。
 しかし、それは中国の景気が回復したということではなく、中
国当局が経済のマイナス報道の規制を行っているからです。それ
では、その実態はどうなのでしょうか。
 中国経済の現況を正しく把握するために、歴史的に中国経済の
重要な動きについて、以下に簡単にメモしておきます。
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     1980年 ・・・・ 改革開放路線開始
     1990年 ・・・・ 証券取引所を開設
     1994年 ・・・・ 管理変動相場制へ
     2001年 ・・・・ WTOに正式加盟
     2016年 ・・・・ 人民元SDR入り
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 中国の改革開放路線は、ケ小平政権時代の1980年代から始
まっています。社会主義国が特区方式で、実質的な資本主義化を
実現するという「社会主義市場経済」がスタートしたのです。世
界ではじめてのことです。
 それは、1990年代の江沢民政権のときに加速し、上海に証
券取引所を開設し、株式会社方式を導入します。その頃から消費
者物価指数が上昇し、1994年までに2ケタのインフレを記録
しています。1994年に二重相場制から「管理された変動相場
制」に移行し、人民元を大幅に切り下げています。
 アジア通貨危機を経て、中国経済は安価な労働力と資源を背景
に急速に工業力を付けて輸出を大幅に伸ばしたのです。その結果
2000年には米国の対中貿易赤字が対日赤字を上回ってしまっ
たのです。
 このような工業化を遂げて世界の経済大国になった中国に対し
米国のクリントン政権の強い後押しによって、2001年12月
に中国はWTO(世界貿易機関)加盟を果たすのです。このよう
にして、13億人の巨大市場である中国貿易は自由化され、20
04年に中国は遂に日本を抜いて世界3位の経済大国になったの
です。そして、2016年10月に人民元はIMFでSDR(特
別引出権)を獲得し、国際通貨になったのです。ちなみに中国で
はこのSDR入りのことを「入籠(ルーラン)」といいます。
 このように書くと、中国経済は前途洋々のようにみえますが、
本当のところは四苦八苦の状態です。社会主義市場経済というも
のがうまく機能しなくなっているのです。
 2016年12月は中国がWTOに加盟して15周年だったの
ですが、そのためのイベントは開かれていないのです。とにかく
習政権になってから、経済の面ではきわめて不振なのです。もと
もと社会主義国において市場経済を行うのは、資本主義への傾斜
を強めなければならないのですが、習近平政権では逆に社会主義
への傾斜を強めているので、いろいろなところに矛盾が噴き出し
てきています。
 既出の近藤大介氏の本に、ある中国経済関係者の声が出ていた
のでご紹介します。
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 WTOの議定書には、中国の加盟から15年経ったら、加盟国
は中国を『市場経済国』と認定し、中国の輸出品に対する反ダン
ピングの関税算定の代替国から外すと記されている。だが、現実
はどうだ?アメリカが拒否し、EUが拒否し、日本も拒否してい
る。先進国が揃って、WTO違反を犯しているのだ。
                  ──近藤大介著/講談社
     『活中論/巨大化&混迷化の中国と日本のチャンス』
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 この発言を聞くと、いかに中国がわかっていないかがよくわか
ります。中国のWTO加盟のいきさつから考えて、15年も経て
ば、中国は社会主義国が市場経済を行うことによって表面化する
数々の矛盾を解決して、独裁国家から脱却するだろうと西側先進
国は期待していたのです。なぜなら、経済面の矛盾を修正しよう
とすると、資本主義化せざるを得ないからです。しかし、習政権
になってからは、資本主義化ではなく、社会主義化を強めている
のです。これでは「市場経済圏」と認定することは困難です。
 中国経済の矛盾の兆候がさまざまな面に出てきています。その
実態について、中国に詳しい福島香織氏は「すでにクラッシュし
ている」といっています。それを社会主義国の特有のからくりと
嘘でもって大丈夫なように見せているというのです。統計数字の
水増しをはじめ、地方政府、国有企業、銀行の巨額債務をいかに
して隠すかについて研究しているのです。
 それでは、一体そのシナリオはどうなるのかについて、福島氏
は次のように述べています。
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 中国の経済崩壊とは、じつはすでに崩壊している経済の実態を
受け入れることなのだ。中国では実質破綻状態にありながら、中
央政府からの補助金で倒産せずにいる国有企業を「ゾンビ企業」
と呼んでいるが、中国経済がすでに「ゾンビ経済」なのだ。すで
に死んでいる経済をきちんと死なせる。そのとき、何が起きるの
か。最悪のシナリオは、国有企業と銀行の倒産ラッシュ、大量の
失業者の出現、ようやく形成されてきたそこそこ豊かな中間層の
消失、人民元の大暴落と消費者物価のハイパーインフレ・・・。
当然日本を含む世界経済も無傷ではいられない。だが本当に恐ろ
しいのは、突如、人民元が紙くずとなり財産を失った人民の怒り
が社会不安を引き起こし、それを政権が力ずくで抑え込もうとす
るときに発生する流血と混乱の可能性だ。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
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             ──[米中戦争の可能性/100]

≪画像および関連情報≫
 ●中国はいつ崩壊するの?/梶井彩子氏
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   「中国崩壊」が指摘されるようになって、一体、何年経つ
  だろうか。体制どころか経済さえも、まだまだ崩壊している
  ようには見えない。それどころか、緩やかに衰退するアメリ
  カを凌駕せんとする勢いは、今なお継続されているように見
  える。「中国崩壊論」を注意深く読めば@条件付き崩壊(○
  ×になった時、崩壊する)A崩壊が「始まった」(完全崩壊
  までに何年もかかる)B実質はすでに崩壊している(にもか
  かわらず表向きそうは見えない)――というものに分けられ
  る。確かに説得力があると思われるデータを提示しているも
  のもある。常に自虐的で「日本もうダメ」「中国に従うしか
  ない」とするような一部の人々もいることを考えれば、「中
  国にもこれだけの弱点がある」「日本の方がずっと安定して
  いる。中国は崩壊しそうなほど不安定」とする論調に意味は
  ある。実際、不安定であることに間違いはないし、崩壊後の
  リスクも考えておかねばならない。「中国脅威論」を煽りす
  ぎるのが問題であるのも確かだ。
   だがそこは諸刃の剣。これは読む側が気を付けるべきこと
  だと思うが、「中国崩壊論」を読んで事実を把握する、ある
  いは溜飲を下げるだけでなく、読んだことで中国に対して、
  「油断」してしまうフシはないだろうか。
                   http://bit.ly/2qtYh7l
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近藤大介氏.jpg
近藤 大介氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(7) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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