2017年05月26日

●「中国はなぜ民主国家になれないか」(EJ第4528号)

 ロシア・ゲート疑惑が広がり、トランプ政権が北朝鮮について
何を考えているかを探るために、安倍首相の外交担当補佐官であ
る河井克行氏は、安倍首相の命を受けて、ワシントンを訪問して
います。会った人は、共和党を中心に米議会の要人、シンクタン
クなどの複数の幹部です。
 24日の夕刊フジによると、実際に会ったのは、ジョン・マケ
イン上院軍事委員長、マイク・ロジャーズ下院軍事委員会戦略小
委員長、トム・コットン上院軍事委員会航空陸上小委員長、トム
・ダシェル元民主党上院院内総務、ウィリアム・ハガティ次期駐
日大使たちです。その結果わかったのは、次の5つです。
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 1.トランプ政権では、これまでは中東問題が最重要課題で
   あったが、現在では北朝鮮問題が最重要課題になってい
   る。空母を2隻配置するなど、全力を上げている。
 2.北朝鮮の金生恩朝鮮労働党委員長の方が、習近平中国国
   家首席よりも上位に立っている。北朝鮮はすべてを見透
   かしており、中国をナメ切っているようにみえる。
 3.中国の北朝鮮に対する圧力には、現時点では低い評価し
   かできない。圧力はきわめて不十分であり、十分効果を
   上げていない。北朝鮮に変化を起こさせていない。
 4.米国と北朝鮮との直接対話については、人によって意見
   が分かれるが、対話をしても意味がないと考える。米国
   は対北朝鮮政策について、ジレンマを抱えている。
 5.韓国で文在寅大統領が誕生したことには違和感をおぼえ
   ざるを得ない。「親北」の文在寅氏を大統領に選出する
   韓国世論には、きわめて強い不信感を持っている。
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 現在、北朝鮮問題は膠着状態に陥っています。その一方でトラ
ンプ政権は、ロシア・ゲートが深刻化しており、それどころでは
ない状況です。
 ここで話を中国に戻します。久しぶりにピーター・ナバロ氏の
本の問題を取り上げます。
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【問題】経済的関与がアジアの平和促進に果たす役割について正
しく述べている文を選べ
 「1」経済的関与によって、中国は独裁国家から、暴力や侵略
    に訴えることのないリベラルな民主主義国へと変わって
    いく。よって、経済的関与は平和の維持に役立つ。
 「2」経済的関与は、中国共産党の独裁的権力を強め、中国の
    軍事力増強に資金を提供したに過ぎない。

           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
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 この問題の正解は残念ながら「2」です。現在の中国をつくっ
てしまったのは米国であるといえます。日本にも応分の責任はあ
ります。中国を好戦的な独裁国家から、平和的でリベラルな民主
国家に変えるには経済支援を含む経済的関与によって、世界第1
位の米国と、2位の日本はこれまで大金を賭けてきたのです。
 実際にこの方法で、シンガポール、韓国、台湾などのアジア諸
国が独裁国家から民主主義国に移行しています。その移行を後押
しし、推進したのは、自由貿易とこれによってもたらされる外国
との経済的な関わりだったといえます。
 ラテンアメリカのアルゼンチンやチリやエクアドル、ヨーロッ
パのハンガリーや、ポーランドや、チェコ共和国などもかつては
独裁国家でしたが、今ではけっして豊かな国ばかりではないもの
の、完全な民主主義国になっています。こうした例にならえば、
中国も経済的関与を強めることによって民主主義国になれると、
これまで期待されてきたのです。
 しかし、中国だけは違ったのです。中国は、経済的に豊かにな
ればなるほど、その経済的エンジンが軍事力を強化することに結
び付き、その結果、中国共産党の独裁体制が、以前より強化され
るようになっています。
 今考えると、中国に対して一番間違った対応をしたのは、クリ
ントン大統領だったといえます。クリントン大統領は、任期満了
直前の2000年に、米国経済界の後押しを受けて、中国との経
済的な関わりを強めるために議会に中国のWTO加盟を支持する
よう求め、次のように演説したのです。
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 経済面から見れば、この(中国のWTO加盟)承認は一方通行
の道路のようなものだ。中国がWTOに加盟すれば、世界人口の
5分の1を擁する市場、つまり世界最大の潜在的市場が開かれる
ことになる。史上初めて、中国がわれわれと同じように、開かれ
た通商ルールに従うことに同意するのだ。史上初めて、アメリカ
の労働者によってアメリカで作られた製品を、アメリカ企業が中
国で販売することができるようになるのだ。
           ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
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 この結果、何が起きたのでしょうか。
 中国がWTOに加盟すると、雪崩を打つように米国企業は生産
拠点を中国に移したので、米国では7万を超える工場が閉鎖に追
い込まれ、失業者は2500万人以上になったのです。そして米
国の貿易赤字は年間3000億ドルに膨れ上がり、現在、米国の
対中貿易赤字は何兆ドルにも達しています。
 この点をとらえて、ピーター・ナヴァロ氏はクリントン大統領
を「壊滅的な経済的帰結を招いたという点でこれほど誤った判断
を下したアメリカ大統領は他にいない」とまでいっています。
 それでも中国が民主主義国家になったのであれば、無駄なこと
ではなかったのですが、経済成長は民主化にはつながらなかった
のです。         ──[米中戦争の可能性/098]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の民主化、困難な理由と実現の可能性を問う
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   中国は民主化する可能性があるのか。“中国屋”と呼ばれ
  る中国専門ジャーナリストや研究者の永遠のテーマだが、先
  日、米国最大手の中国の民主化運動を推進するNGO・公民
  力量の主宰者、楊建利が東京を訪れていたので、私もインタ
  ビューしたし、明治大学現代中国研究所が主催した講演会に
  も行ってきた。独裁体制をより強化しようとする習近平政権
  の登場で、中国の“党内民主”化は以前よりも遠のいたよう
  ではあるが、楊建利が“中国の民主化をあきらめない”とす
  る分析もなかなか興味深いので、ここで紹介したい。
   楊建利は高校を経ずに飛び級で山東省師範学院数学系に入
  学し、1989年の民主化運動に参加したのち米国に移住。
  ハーバード大学で政治経済学、カリフォルニア大学バークレ
  ー校(UCバークレー)で数学の博士の学位を取得し、米国
  に拠点を置きながら、中国民衆の権利と自由を推進する活動
  を続けてきた。当然、中国当局からは中国入国拒否のブラッ
  クリストに入る人物だが、2002年に中国東北部の失業者
  大規模デモの状況を視察するため、他人のパスポートで入国
  したところを逮捕され、不法入国などで5年間投獄された経
  験を持つ。2007年、当時のブッシュ大統領の働きかけで
  釈放され米国帰国後、中国のNGO・公民力量を創設し、中
  国の民主化を海外から働きかける。http://nkbp.jp/2qZaR2c
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河井克行外交担当補佐官.jpg
河井克行外交担当補佐官
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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