2017年05月25日

●「本当に軍事オプションは不可能か」(EJ第4527号)

 5月22日の新聞報道で、中国は米国に対して、米国が北朝鮮
に具体的な行動をとるまでの猶予期間として「100日間」を要
求していたことがわかったのです。両国の貿易不均衡是正のため
の100日計画とは別の約束です。
 米国は、中国が協力しない場合、北朝鮮と取引がある大手金融
機関を含む複数の中国企業に対して米国独自の制裁を加えると通
告しています。もし、これが行われると、米国の金融機関や企業
との取引が出来なくなるので、中国としては大きなダメージを被
ることになります。
 米中首脳会談は4月はじめに行われているので、100日とい
うと7月中旬になります。基本的に米国は、それまでは中国の対
応を見守るはずです。その間、北朝鮮がミサイルを発射するなど
の挑発行為をしても動かないと考えられます。これについて辺真
一氏は次のようにコメントしています。
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 コリア・レポート編集長の辺真一氏は「北朝鮮問題はしばらく
中国に任せておこう」ということではないか、との持論を展開し
た。しかし、その中国に対して北朝鮮が対抗姿勢を取っていると
いう懸念もある。3日付の朝鮮中央通信は「中朝関係の根本を否
定し、親善の伝統を抹殺する妄動だ。友好がいくら大切だとして
も命同然の核と引き換えにしてまで懇願しない」との記事を掲載
した。中国と北朝鮮の比較的友好だった関係が悪化し、中国が北
朝鮮に対する締め付けを強化すれば、トランプ大統領としては狙
い通りということになるのだろうか。  http://bit.ly/2rrKBym
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 米国と北朝鮮との対話は、たとえそれが行われたとしても平行
線をたどることは必至の情勢です。北朝鮮は核を手放すことは絶
対にないし、米国はいま北朝鮮の核・ミサイルを容認すれば、子
孫の代まで北朝鮮に脅迫され続ける恐れがあり、それは絶対に容
認できないと考えているからです。このように米朝双方が譲らな
ければ緊張感が増すだけで、事態は硬直状態になります。つまり
この勝負は将棋でいえば、既に詰んでいます。
 マティス米国防長官は、19日の記者会見で、「もし軍事オプ
ションを取れば信じられない規模での悲劇が起きる」と発言し、
いまの段階での軍事オプションはないことを示唆しています。北
朝鮮は、この発言に「軍事オプションはない」と判断し、またし
ても弾道ミサイルを発射し、成功させています。米国と対話を行
う場合、有利なポジションを確保しておこうとしているのです。
 北朝鮮はさらにエスカレートして核実験を実施する可能性もあ
ります。これは北朝鮮にとっては大きな賭けですが、米国はそれ
でも何もできないと考えられます。おそらく米国は核実験を抑え
ることができなかった中国を責めると思います。中国は断油を含
む経済制裁をすると思いますが、北朝鮮はロシアに頼って危機を
脱すると思います。
 しかし、米国がそれでも何もしなければ、このチキンレースは
米国の負けであると世界が認めることになります。将棋でいえば
米国の投了です。プライドの高い米国がその屈辱を甘んじて受け
るとはとても思えないのです。
 そう意味において、米国が北朝鮮に対して軍事オプションをと
る可能性も十分あると考えます。その根拠になると思われるもの
は次の4つです。
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 1.カール・ビンソンとロナルド・レーガンという2隻の空
   母打撃群が既に朝鮮半島周辺海域におり、いつでも米軍
   は戦闘に入れる態勢にある。
 2.もし、トランプ政権が北朝鮮と対話し、仮に「核凍結」
   を勝ち取ったとしても、それではオバマ政権の「戦略的
   忍耐」と同じと批判される。
 3.今なら相当の被害が出るにしても、軍事オプションで米
   国は北朝鮮の脅威を取り除けると判断している。最終的
   に北攻撃の可能性はある。
 4.トランプ政権はロシアンゲートなどで支持率が低迷して
   いる。歴代政権では、こういう状況を打開するために軍
   事行動をとってきている。
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 北朝鮮が核・ミサイルを廃棄しない場合、軍事オプション以外
の手段では、経済制裁が現実的です。北朝鮮が核実験をした場合
中国は、中朝国境を閉鎖し、石油の供給を絞ることは米国との約
束もあるので、実施すると思います。
 北朝鮮と国境を接する中国の北部戦区は中央の習近平政権とは
距離があります。江沢民一派が仕切っており、北朝鮮といわゆる
辺境貿易を行っているのです。食糧などはこの辺境貿易を通じて
北朝鮮に入っています。したがって、中朝国境が軍隊で閉鎖され
ると、食料も止まってしまう可能性があります。
 このことを察知した金生恩委員長は、ロシアとの経済協力強化
に向け、ロシア極東ウラジオストクとの間の定期航路を開設した
のです。ニューズウィーク誌は、次のように報道しています。
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 朝鮮中央通信社(KCNA)によると、定期航路に就航する貨
客船「万景峰」号はこの日、北朝鮮の羅津港を出発した。「万景
峰は羅津ーウラジオストック間の国際的な観光船として、両国の
海上輸送や経済協力観光に前向きな貢献をするだろう」とした。
北朝鮮東部の清津のロシア総領事が貨物船を見送ったという。
                   http://bit.ly/2r7yczO
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 北朝鮮が中国を見限り、ロシアに接近すると、事態はさらに複
雑化します。世界を騒がせている北朝鮮とロシアが連携すると、
米国は一層手を出しにくくなるからです。ウクライナのときのよ
うに人道支援で食料品を届けるという名目で、ロシア軍が北朝鮮
に入る可能性もあります。 ──[米中戦争の可能性/097]

≪画像および関連情報≫
 ●プーチン大統領が北朝鮮に接近〜米中露の危険な駆け引き
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   ソ連時代には北朝鮮とは密接な軍事協力をしてきた。そも
  そも朝鮮民主主義人民共和国、つまり北朝鮮の建国はソ連が
  主導したものだ。第二次世界大戦の後に、ソ連は朝鮮半島の
  北半分を占領し、ソ連軍抗日パルチザンの金日成氏を送り込
  んで、北朝鮮を作り上げた。朝鮮戦争では朝鮮半島の覇権を
  めぐってアメリカと戦った。冷戦時代には、ソ連は北朝鮮と
  軍事同盟を結び、北朝鮮の兵器の多くはソ連時代の中古品で
  あった。それをベースに、北朝鮮の軍事兵器が出来ていると
  言っていい状態であった。しかし冷戦の終わりは状況を一変
  させた。ソ連の後のロシア連邦と大韓民国、つまり、韓国は
  1990年に国交を結び、それからはロシアは北朝鮮からほ
  ぼ手を引き、韓国との関係を重視するようになった。
   ソ連崩壊後、軍事協力は事実上停止していた。2001年
  にロシアと北朝鮮は「防衛産業及び軍備分野における協力協
  定」と「2001年軍事協力協定」の二つの協定を結んだ。
  それもほぼ実質的なものにはならず、やっと最近になってこ
  の軍事協力が具体化しつつある。プーチン大統領と金正恩氏
  との関係は良いとは思えないが、プーチン大統領にとって北
  朝鮮は対アメリカ関係、対中国関係から重要性を増しつつあ
  る。北朝鮮の核実験やミサイル発射で国連が経済制裁を加え
  る決議をしても、抜け道を作り、北朝鮮を支えてきたのは中
  国だけでなく、ロシアもだ。国境を超えてロシア領に北朝鮮
  の労働者が送り込まれ、外貨を稼いできたと言われる。
                   http://bit.ly/2rGEXWo
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北朝鮮の貨客船「万景峰」号.jpg
北朝鮮の貨客船「万景峰」号
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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