2017年05月24日

●「北朝鮮軍の『最後の切り札』とは」(EJ第4526号)

 米国が北朝鮮への軍事オプションをとるとしても、中国との関
係で、地上兵力を北朝鮮へ送り込むことはできないのです。した
がって、やれることは空爆だけです。これに加えて、特殊部隊に
よる、いわゆる「斬首作戦」を組み合わせるのが「限定攻撃」と
いうことになります。
 しかし、これで北朝鮮の反撃を抑えることは、ほとんど困難で
あるといえます。したがって、昨日のEJ第4525号でご紹介
した北朝鮮軍事オプションは、あくまでひとつの攻撃シミュレー
ションのひとつに過ぎないのです。
 北朝鮮は、朝鮮戦争の教訓にならって、北朝鮮全土を細かく区
分し、それぞれに通信、食料、医療、戦闘など最低限の機能を持
たせるようにし、たとえ国土が分断されても独自に抗戦できるよ
うにしているのです。これらの拠点を数次の攻撃ですべて破壊す
るのはほぼ困難です。それに加えて、北朝鮮には次の3つの「最
後の切り札」があるのです。
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      1.ソウルを火の海にできる長距離砲
      2.核や生物兵器による大量破壊兵器
      3.20万人以上の強力特殊作戦部隊
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 第1は「ソウルを火の海にできる長距離砲」です。
 これらの長距離砲は通常兵器ですが、何しろ数が多いので、防
戦が困難です。射程20キロ程度の小口径砲、ソウルを射程に収
める240ミリ、南方のキョンキド、ピョンテクにある米軍基地
にまで届く300ミリなど多彩な長距離砲が少なくとも1000
門以上あることは確かです。
 問題は、これらの長距離砲群を各種ミサイルや航空攻撃ですべ
て制圧できるかどうかです。設置場所についてはほとんど把握で
きているといわれますが、北朝鮮軍はこれらの長距離砲を山脈沿
いにくり抜いた坑道に隠しており、複数の出口を使って攻撃する
ようにしているので、すべてを破壊することは困難です。
 韓国・慶南大学の金東葉博士は、これらの長距離砲について次
のように述べています。
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 航空機による攻撃で、50%の砲門を破壊した場合でも、1時
間で3000発以上の砲弾がソウルに降り注ぐ計算になる。その
場合、ソウルの5〜7%程度が破壊される。
           ──高山右近大夫長房の情報配信ブログ
                   http://bit.ly/2pVcBKD
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 第2は「核や生物兵器による大量破壊兵器」です。
 北朝鮮は、年間約80キロの高濃縮ウランを製造する能力があ
るといわれます。このことから北朝鮮は2020年までに計50
個の核爆弾を保有する可能性があります。
 それらの核爆弾を運ぶミサイルとしては、1000発以上の弾
道ミサイルを保有しています。そのほとんどは短距離の「スカッ
ド」ですが、射程1300キロの「ノドン」は約200発保有し
ており、これで日本と在日米軍基地を攻撃することができます。
 さらに、射程3000キロ以上の「ムスダン」は約40発保有
しており、これでグアムの米軍基地を射程に収めています。それ
に14日に発射に成功した新型ミサイル「火星15型」がありま
す。射程は4500キロを超えており、事実上のICBMです。
これは米本土まで届きます。
 これらの核兵器よりもやっかいなのは、生物化学兵器です。そ
れは25種類に及び、2500〜5000トンも保有しているの
です。これを弾頭に入れてロフテッド軌道で落とされると防御す
ることはきわめて困難です。
 第3は「20万人以上の強力特殊作戦部隊」です。
 どこの国にも特殊作戦部隊はありますが、北朝鮮のそれはとく
に強力です。「高山右近大夫長房の情報配信ブログ」に次の記述
があります。
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 軍事関係筋によれば、北朝鮮軍特殊部隊は、米海軍精鋭特殊部
隊シールズと同じように、7〜8人の少人数で、1戦闘単位を構
成。有事となれば、AN2軽飛行機やホーバークラフト、潜水艦
特殊工作船などで韓国や日本に侵入する。
 それぞれの戦闘小隊は平時には、日韓の特定の施設、たとえば
「官庁」「放送局」「駅」など、市民生活を混乱に陥れる重要な
ソフトターゲットを一つずつ割り当てられ、全く同じ模型を相手
に連日、襲撃・制圧する訓練を続けているという。同筋は「狭く
て暗い場所での戦闘能力などに優れ、1人で一般の兵士5〜6人
に相当する力がある」と語る。     http://bit.ly/2pVcBKD
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 辺真一氏によると、北朝鮮の特殊作戦部隊の強さは、体力など
の訓練に加えて、思想教育が徹底していることにあるといってい
ます。それはかつての日本軍に似ているところがあると辺真一氏
はいい、次のように述べています。
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 北朝鮮の特殊部隊隊員の思想教育は特に徹底しており「将軍様
の命令とあれば、爆弾を抱えて敵陣に飛び込むことも辞さない」
との「特攻精神」で武装されている。実際に2009年4月に衛
星と称する長距離弾道ミサイルを発射した際には日米のイージス
艦による迎撃に備え、14人の空軍パイロットから成る特攻隊を
編成し、爆弾を搭載して、そのままイージス艦に突撃する訓練を
行っていた。潜水艦による北朝鮮武装兵士浸透事件で韓国軍に唯
一拘束された李光洙人民軍偵察局上尉は「死を覚悟している者に
は怖いものはなにもない。そのような教育を受けてきた」と筆者
に語っていた。            http://bit.ly/2rBrkYl
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             ──[米中戦争の可能性/096]

≪画像および関連情報≫
 ●北朝鮮特殊部隊1万人が日本上陸で日本が戦場化
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   北朝鮮が近く6回目の核実験を実施するとの観測が高まる
  なか、トランプ米大統領は対北軍事作戦の発動を辞さないと
  の構えを強めており、朝鮮半島有事が現実化しつつある。第
  2次朝鮮戦争が勃発すれば、韓国の釜山から日本の対馬まで
  わずか115キロメートルしか離れておらず、そこから九州
  は目と鼻の先だけに、日本も戦火に巻き込まれ、甚大な被害
  が出ることが予想される。
   日本政府がまず実施しなければならないのは、韓国に滞在
  する約6万人の邦人救出・避難作戦。さらに、朝鮮半島での
  戦火に逃げまどう韓国・北朝鮮人計30万人(初期段階)の
  難民の保護だ。戦闘が拡大すれば、北朝鮮から在日米軍基地
  に向けて打ち込まれるスカッドやノドンミサイルの迎撃態勢
  の整備が急務であり、その一部が都市部に到達し、一般国民
  も犠牲になることも否定できない。さらに、陸海空軍に所属
  する13万人の北朝鮮軍特殊部隊のうち、日本への攻撃に割
  かれる1個旅団、約1万の特殊部隊による日本本土でのテロ
  や奇襲攻撃にどう対処するのか。もはや朝鮮半島有事は対岸
  の火事ではなく、日本も戦場と化す「北東アジア戦争」とな
  る可能性が高い。         http://bit.ly/2qHbrQc
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北朝鮮の特殊作戦部隊.jpg
北朝鮮の特殊作戦部隊
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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