2017年05月22日

●「北朝鮮の情報を把握している米軍」(EJ第4524号)

 米国が北朝鮮を軍事攻撃する可能性はあるのでしようか。現時
点では「あり得ない」という声が圧倒的です。「あまりにも犠牲
が大き過ぎる」というのがその理由です。
 しかし、これと同じ質問をドイツ国際政治安全保障研究所のハ
ンス・ギュンター・ヒルペルト氏にすると、次のように答えてい
ます。このインタビューは、2017年5月18日付の日本経済
新聞に掲載されていたものです。
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 可能性はある。北朝鮮への攻撃は朝鮮半島や日本に大損害をも
たらす悪夢のシナリオだ。だから米国はこれまで慎重だった。だ
が緊張が高まり、米朝両国は実体的なパイプを持っていないよう
にみえる。どちらかが相手の出方を読み違え、偶発的に危機が拡
大する恐れがある。
 北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)で米国を攻撃できる
ようになることを大統領は許さない。米国はいま何か動かさなけ
ればならない。交渉や制裁が失敗すれば戦争もあり得なくない。
         ──2017年5月18日付、日本経済新聞
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 はっきりしていることがあります。それは、このハンス・ギュ
ンター・ヒルペルト氏もいうように、米国は北朝鮮が直接米国本
土を狙える核・ミサイル(ICBM)を開発したときは、絶対に
北朝鮮を許さないということです。つまり、そのさいは、実力行
使は十分あり得るというわけです。
 北朝鮮が14日に打ち上げた「火星12型」について、米国は
その飛翔距離から「ICBMではない」としているものの、技術
的にはICBMの完成であると考えています。そうであるとする
と、そのICBMが実戦配備される前に米国としては手を打つ必
要があります。今の段階でそれを排除しておかないと、大変なこ
とになるからです。つまり、米国は北朝鮮を限定攻撃をする可能
性は十分あるわけです。
 まして現在、朝鮮半島周辺海域には米空母カール・ビンソンを
中心とする複数の艦艇と原子力潜水艦ミシガンと、それと同級の
潜水艦が配備されており、もう一隻の米空母ロナルド・レーガン
も朝鮮半島に向かっています。つまり、米国はいつでも北朝鮮に
対して限定攻撃ができる態勢にあります。
 しかし、米国は全面戦争だけは避けたいと考えています。その
ための課題は、いかにして初期の攻撃で、北朝鮮の報復攻撃能力
を殲滅するかにあります。実はミサイルの発射よりも怖いのは、
DMZ(非武装地帯)にある1万5千ものロケット砲です。これ
が発射されると、まさにソウルは火の海になります。
 実は米韓両軍は、北朝鮮の核施設や軍事基地、空軍基地、部隊
の正確な位置、ロケット砲の配置、高性能レーダー基地、地下基
地、その出入り口と換気施設など、あらゆる精密な情報を入手し
ているといます。しかも、リアルタイムで更新を続けているので
す。まして、北朝鮮の内部を探る偵察機などは、カール・ビンソ
ンに搭載され、朝鮮半島周辺にいるのですから、日々時々刻々情
報を入手しているはずです。
 韓国国防省で、情報参謀などを務めた高永拓殖大学客員研究員
は、これについて次のように述べています。
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 米国は、偵察衛星やU−2偵察機、無人偵察機グローバルホー
ク、さらに高性能カメラを備えたドローンなどを駆使して、24
時間、移動などの情報を監視。「ターゲットリスト」をリアルタ
イムで更新しているのです。北のあらゆる拠点が対象になってい
ます。           ──『週刊文春』/5月18日号
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 これに加えて、韓国国家情報院は、脱北者から詳しい情報の聞
き取りをしています。韓国国家情報院のある幹部は、その徹底し
た諜報活動について、次のように述べています。
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 韓国に約3万1千人いる脱北者からは国情院が丹念に聞き取り
を行ない、北の主要な施設や生産拠点の情報はほぼ抑えている。
彼らの中にはかなり重要度の高い施設で働いていた人間が数多く
います。金正日時代でも、平壌で行なわれた軍事パレードの映像
を、北朝鮮の領空内に偵察機を一切入れずに撮っています。ハイ
ビジョンカメラで捉えたような映像でした。
 また、米国は、北朝鮮の核実験を評価するため、協力者を現地
に送り込み、実際に該当地域の土壌や水を調査用に持ち帰らせて
いるのです。        ──『週刊文春』/5月18日号
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 実は、朝鮮半島周辺海域に展開する米海軍は、トランプ大統領
の命令が出れば、直ちに攻撃を実行できる態勢にあります。この
場合、米軍による単独攻撃になると思います。問題は、この場合
中国はどのように対応するでしょうか。
 この中国の軍事介入について、2017年4月22日付の「環
境時報」は次のように書いています。
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 戦争が起こることには反対するが、しかし万一戦争が始まった
時には、中国はどのような立場を取るかに関して、米朝に通報す
る。もし北朝鮮が核・ミサイルの活動を展開し続け、米国がそれ
らの施設に外科手術的(=武力的)攻撃をしたならば、中国は、
(戦争行為をしたことに対して)外交的抗議を表明するだろうが
軍事的介入はしない。ワシントンは北朝鮮がソウル地区に報復的
攻撃をするであろうリスクを十分に考えなければならない。これ
らのリスクは米韓にとって耐え難いほど重いものとなるだろう。
                   http://bit.ly/2pNHJf6
─────────────────────────────
 つまり、中国は米国による北朝鮮への限定攻撃には軍事介入し
ないといっているのです。これは中国の大きな譲歩であるといえ
ます。          ──[米中戦争の可能性/094]

≪画像および関連情報≫
 ●日米の有事態勢/米軍空母増派が「サイン」
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   緊迫化する北朝鮮情勢をめぐり、トランプ米政権は軍事力
  行使を選択肢に含む牽制の動きを続けている。現在でこそ米
  海軍の原子力空母カール・ビンソンが日本海に展開するなど
  米軍の威力を誇示する段階にとどまっているが、4月27日
  にはトランプ大統領が「北朝鮮との非常に大規模な紛争に行
  き着く可能性は当然ある」と発言した。トランプ政権の軍事
  オプションを実行する米軍は、いかなる態勢で北朝鮮と向き
  合っているのか。そして自衛隊はどのような役割を果たすの
  か。(千葉倫之、杉本康士)
   カール・ビンソンは米軍が10隻保有する原子力空母の1
  つ。同艦を中核とする第1空母打撃群は駆逐艦2隻、巡洋艦
  1隻などで構成される。FA18戦闘攻撃機約50機のほか
  早期警戒機や電子戦機など、約70機の艦載機を搭載してい
  る。ただ、カール・ビンソンが展開しただけで対北朝鮮攻撃
  を実行する態勢が整ったとは言い難い。湾岸戦争やイラク戦
  争など米国が過去に遂行した戦争では、いずれも複数の空母
  が同時展開して作戦に従事した。航空自衛隊関係者は「現段
  階では北朝鮮を威圧する政治的な行動にとどまっている」と
  語る。5月上旬に定期整備を終える米海軍第7艦隊の空母ロ
  ナルド・レーガンに加え、米本土から空母が周辺海域に展開
  すれば、米国が本気で準備に入ったサインだと捉えることが
  できる。             http://bit.ly/2pWBeTp
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朝鮮半島周辺海域に展開するカール・ビンソン.jpg
朝鮮半島周辺海域に展開するカール・ビンソン
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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