2017年05月19日

●「米国は北朝鮮に限定攻撃できるか」(EJ第4523号)

 米国が北朝鮮に対してとれる「あらゆる選択肢」には5つあり
ますが、それを再現します。既に昨日のEJで1〜4については
検証が終わっています。
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      1.中国を通じて経済制裁を強める
      2.北朝鮮と米国が直接対話をする
      3.北朝鮮を核保有国として認める
      4.金正恩の斬首作戦を成功させる
    ⇒ 5.米国は北朝鮮を限定攻撃をする
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 第5の選択肢として考えられるのは「米国は北朝鮮を限定攻撃
をする」ことです。
 この原稿を書いている5月17日現在、米軍が北朝鮮への武装
を解いていないにもかかわらず、この第5の選択肢はあり得ない
という雰囲気になっています。なぜなら、この選択肢は、あまり
にもリスクが大きいと思われているからです。
 1994年に北朝鮮がNPTを脱退すると宣言したとき、クリ
ントン大統領自身は北朝鮮への攻撃を決断したのですが、当時の
ペリー国防長官が次の見通しを報告したことと、金泳三韓国大統
領が猛反対したことによって断念しています。
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 朝鮮半島で戦争が勃発すると、最初の90日間で米軍兵士の
 死傷者は5万2000人に上る。   ──ペリー国防長官
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 これについて、平和外交研究所代表の美根慶樹氏は、米軍の北
朝鮮への攻撃は非常に困難であるとして、その根拠を6つ上げて
説明しています。少し長いですが、以下に引用します。
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 第1に、北朝鮮の軍事能力は核とミサイルの開発などによって
1990年代とは比較にならないくらい強大になっている。クリ
ントン元大統領時代と同様のシミュレーションをすれば、米国兵
の犠牲は何倍、あるいは何十倍にもなるだろう。
 第2に、朝鮮半島で米国と北朝鮮の軍事衝突が起これば、必ず
韓国が巻き込まれ、壊滅的な打撃をこうむる。北朝鮮・平壌と韓
国・ソウルの距離は約200キロメートルにすぎず、攻撃するの
にミサイルは必要ではない。北朝鮮は直接ソウルに砲弾を撃ち込
める性能の兵器を保有している。
 第3に、日本にも被害が及ぶであろうし、そうなると、日本と
しても単純に米国の決定を支持するとは言えなくなる。少なくと
も、軍事作戦の開始以前には、反対せざるをえなくなることもあ
ろう。また、実際に軍事衝突が起こった場合、安保法制によると
自衛隊を朝鮮半島に派遣せざるをえなくなる可能性も出てくる。
 第4に、中国も間違いなく反対するだろう。
 第5に、米国内でも反対意見が強いと思われる。反対論の根拠
として挙げられそうなこととして、米国は現実に被害を被ってい
ないこと、中東に比べて北朝鮮問題の優先度は低いこと、全面戦
争に発展して米国も核攻撃される危険が生じてくること、などが
挙げられる。手段をまだ尽くしていないのに軍事行動に出ること
には、特に強い疑問が呈されるだろう。
 第6に、先に攻撃すれば、米国が64年前に結ばれた朝鮮戦争
の休戦協定に違反することとなる。国際連合においても、安全保
障理事会のお墨付きを得るのは、中国やロシアが反対するので、
まず不可能と見るべきだ。       http://bit.ly/2reFHoh
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 この米軍による北朝鮮限定攻撃の選択肢はあり得ないという雰
囲気を察知してか、北朝鮮は5月14日に新型ミサイル「火星2
型」を打ち上げ、成功させています。米国とのチキンレースを展
開するなかで、北朝鮮はかなり強気の一手を打ってきたのです。
 米国は、明言はしていないものの、核実験をやるか、ICBM
を成功させればレッドラインしていますが、「火星2型」はそれ
に大きく近づいています。しかし、米国は「ICBMではない」
と即座に否定しています。それは、レッドラインではないといい
たかったものと思われます。
 確かに「火星12型」は、その飛翔距離は約4000キロメー
トルとされ、「5500キロ以上がICBM」とする米国の定義
には該当しませんが、本物のICBMが開発されるのは時間の問
題であることは間違いないことです。
 「火星12型」には新型のエンジンが搭載されており、1段目
の飛翔と指定の海域に落下させる実験ではないかといわれている
のです。実際には30分間飛翔し、正確ではないかもしれないが
弾頭を日本海に落としているので成功です。そうであるとすると
ロケットを2弾方式にすれば、5500キロメートルは確実に飛
翔するので、事実上のICBMです。
 現在米国は、中国の制裁に期待しているようですが、それには
明らかに限界があります。制裁に関して北朝鮮は激しく中国に反
発しており、かなり強気です。それには、どうやらロシアが絡ん
でいると思われますが、これについては改めて述べます。
 しかし、その一方で、5月16日、米原子力空母「ロナルド・
レーガン」が米海軍横須賀基地を出港しています。行き先は発表
されていませんが、朝鮮半島に向うものと思われます。朝鮮半島
周辺の海域には、既に米空母「カール・ビンソン」がいるので、
もし、ロナルド・レーガンが朝鮮半島に向うと、空母2隻体制に
なります。実際に戦闘をはじめるのに近い体制です。
 この状態でもし北朝鮮が核実験をやったら、米国はどう対応す
るのでしょうか。レッドゾーンを明らかに越えています。それで
もトランプ政権が中国に頼り、対話路線を探ろうとするのでしょ
うか。それでは、朝鮮半島周辺への空母打撃群の派遣は何だった
のでしょうか。それとも一転して米国は北朝鮮への限定攻撃を行
うのでしょうか。これについては来週のEJで詳しく述べます。
             ──[米中戦争の可能性/093]

≪画像および関連情報≫
 ●米国は北朝鮮を攻撃できるか?/辺真一氏
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   トランプ政権のシリア空爆は、米国にとって越えてはなら
  ない一線を越えたら、軍事力を行使する決意を実際に行動で
  示したことになる。
   特に、米中首脳会談最中にシリアへの軍事行動に踏み切っ
  たことは「中国が北朝鮮の核開発阻止に協力しなければ、米
  国が独自に行動する」とのトランプ大統領の警告が、決して
  ハッタリではないことを見せつける結果となった。
   これに対して北朝鮮外務省は8日の談話で「一部にはシリ
  アに対する米国の軍事攻撃が我々に対する警告的行動である
  と騒いでいるが、そんなことに驚く我々ではない」と米国の
  威嚇を一蹴した。逆に「シリアの事態は、我々に帝国主義者
  らへの幻想は絶対禁物である」と述べたうえで「今日の現実
  は力には力で対抗し、核武力を常時強化してきた我々の選択
  が千万回正しかったことを立証した」と、核兵器を軸とした
  自衛的国防力を引き続き強化することを強調した。
   仮に金正恩政権が米国のシリア空襲に恐れおののいている
  なら、容易には6度目の核実験に踏み切れないだろう。換言
  すれば、史上最大規模の米韓合同軍事演習の最中にそれも3
  月中旬に演習に参加し、引きあげたばかりの原子力空母「カ
  ール・ヴィンソン」が再び朝鮮半島に派遣されている状況下
  で、それもシリア空爆の後に核のボタンを押すのはよほどの
  覚悟ができなければできない。   http://bit.ly/2nxsXbk
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米戦略爆撃機「B─52」.jpg
米戦略爆撃機「B─52」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする