2017年05月17日

●「北朝鮮ミサイル発射の意味は何か」(EJ第4521号)

 5月14日早朝の北朝鮮の弾道ミサイルの発射で再び朝鮮半島
が緊張に包まれています。今回のテーマは「米中戦争の可能性」
ですが、米朝紛争が米中戦争のきっかけになる可能性は十分ある
ので、この問題をしばらく取り上げます。
 この北朝鮮の弾道ミサイル発射は公開発射なのです。12日夜
から平安北動亀城市付近の飛行場に発射台を展開し、13日未明
にミサイルを起立させ、実際に発射したのは、その24時間後な
のです。堂々たる公開発射であるといえます。
 当然のことながら、その発射の兆候は日米韓の専門当局は把握
していたものと思われます。もっとも今回発射のミサイルは液体
燃料使用の新型「火星12型」なので、発射の兆候は衛星をよく
観察すればわかるはずですし、北朝鮮も最初から隠すつもりはな
かったものと思われます。
 それでは、なぜ発射は5月14日だったのでしょうか。それは
「3つ国に対するサイン」であると思われるのです。
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      1.米国へ対話の条件を示すサイン
      2.中国に対する怒りを示すサイン
      3.韓国文政権に祝意を示すサイン
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 「1」は「米国へ対話の条件を示すサイン」です。
 米国は、空母カール・ビンソンを朝鮮半島に派遣するなど、北
朝鮮に強い威嚇を行う一方で、中国に北朝鮮への経済制裁を強め
るよう要請し、中国も一定程度それに応えています。
 また、トランプ大統領は、ブルームバーグとのインタビューで
次のように語っています。
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   金生恩委員長とは「適切な状況下」であれば会談する
                 ──トランプ米大統領
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 問題は「適切な状況下」とは具体的に何かです。トランプ大統
領はそれを明確にしていませんが、「北朝鮮が核・ミサイルを放
棄する」ことであることは明らかです。
 北朝鮮の今回のミサイル発射は金委員長からのトランプ大統領
への返信であると思われます。北朝鮮の対話の条件は「核・ミサ
イルの保有を前提とする」というメッセージです。
 「2」は「中国に対する怒りを示すサイン」です。
 北朝鮮が弾道ミサイルを発射した5月14日は、中国が今年一
番重要なイベントと位置付ける「シルクロード経済圏構想(一帯
一路)」という初の国際会議の開催日なのです。中国にとっては
最も重要な日にミサイルを発射されたのです。習近平主席として
は北朝鮮によって顔に泥を塗られた思いでしょう。一帯一路国際
会議で習近平主席は演説において7回も間違えるなど、内心の苛
立ちを示しています。
 実は北朝鮮は中国に「4月20日に核実験を実施する」と伝え
ているのです。ところが、習主席は「もし、核実験を強行すれば
中朝国境を封鎖し、厳しい制裁をかける」と返し、北朝鮮は核実
験を中止しています。したがって、今回の弾道ミサイル発射は、
その意趣返しであると考えられます。
 「3」は「韓国文政権の祝意を示すサイン」です。
 韓国に文在寅政権ができたことは、北朝鮮にとってはきわめて
プラスです。北朝鮮は多数の工作員を送り込んで、朴政権の打倒
のための大規模デモを指揮し、大統領選挙においても、何かと文
在寅陣営を助けているのです。したがって、今回の弾道ミサイル
発射は文在寅政権誕生に祝意を送っていると考えられます。
 14日の弾道ミサイル発射に関して気になったのは米国の対応
です。今回のミサイル発射は北朝鮮も隠していないし、当然米国
はわかっていたはずです。もちろん中国もです。ところが事前に
両国は何のメッセージも出していないのです。
 もうひとつ米国はミサイルが発射された後、「これはICBM
ではない」というコメントを出しています。米国は弾道ミサイル
に関して妙な線引きをしています。つまり、わざわざICBMの
次の定義を持ち出しているのです。
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  ICBM(intercontinental ballistic missile1)とは
  55OOキロメートル飛翔するミサイルである
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 これに関しては、金正恩委員長が年頭談話で「ICBMの開発
は最終段階に入っている」と述べたことに関して、トランプ大統
領は「そうはならない!」というツイートを発信して、反対を表
明しています。しかし、北朝鮮は飛翔距離で弾道ミサイルを分類
していないのです。今回の弾道ミサイルにしてもICBMの第1
弾ロケットの実験ではないかともいわれています。もしそうであ
れば、通常軌道では4500キロメートル飛翔しており、実質的
にICBMであるといっても過言ではないのです。
 それは米国が「ICBMができればレッドゾーンである」との
ニュアンスの発言をしているので、ミサイル発射直後に「ICB
Mではない」と発言したのではないかと思われます。なんとなく
米国はハードルを下げているように感じます。
 しかし、シルクロード会議に北朝鮮の金英才・対外経済相らが
参加したことについて、北京の米国大使館は次のように抗議の書
面を中国外務省に送っています。米国としては、非常に控えめな
抗議ですが、形ばかりの懸念を伝えたのです。しかし、中国外務
省はこれを無視しています。
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 北朝鮮を招くことは、世界が北朝鮮に圧力をかけている時に
 誤ったメッセージを送ることにならないか。
                   ──北京米国大使館
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             ──[米中戦争の可能性/091]

≪画像および関連情報≫
 ●北朝鮮 新型中距離弾道ミサイルの発射実験に成功
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   14日、日本海に向けて弾道ミサイル1発を発射した北朝
  鮮は、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長の立ち
  会いの下、新型の中距離弾道ミサイルの発射実験に成功した
  と、写真とともに発表し、ミサイル技術の向上を図るため、
  今後も発射を繰り返す姿勢を強調しました。
   北朝鮮は14日、北西部・ピョンアン(平安)北道のクソ
  ン(亀城)付近から弾道ミサイル1発を日本海に向けて発射
  し、ミサイルはおよそ800キロ飛行し、高度は初めて20
  00キロを超えたと推定されています。
   これについて北朝鮮は15日朝、国営メディアを通じて、
  キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長の立ち会いの下、新型の
  中距離弾道ミサイル「火星12型」の発射実験に成功したと
  発表しました。
   15日付けの朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、1面から
  3面にわたって写真を掲載し、移動式の発射台に搭載された
  弾道ミサイルが真上に向かって上昇する様子や、屋内の施設
  で組み立てられたミサイルの姿などが写っています。
   今回の発射は、通常より角度をつけて高く打ち上げる「ロ
  フテッド軌道」を用いて「周辺諸国の安全に考慮した」とし
  たうえで、「高度は2111キロまで上昇し、787キロ離
  れた公海上の目標水域に正確に着弾した」としています。
   発射実験のあと、キム委員長は「アメリカ本土と太平洋作
  戦地帯は、われわれの攻撃圏内に入っている」とアメリカを
  強くけん制し、ミサイル技術の向上を図るため、今後も発射
  を繰り返す姿勢を強調しました。  http://bit.ly/2qJjajo
  ───────────────────────────

「火星12型」成功に喜ぶ金委員長.jpg
「火星12型」成功に喜ぶ金委員長
  
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする