2017年05月12日

●「作るために作る中国の不動産投資」(EJ第4518号)

 中国では、どうして人が住まない「鬼城」が続々とできている
のでしょうか。今回もこのテーマを追求していきます。
 その理由は、ズバリGDPを増やし、高度成長をアピールし、
まず、日本のGDPを抜き、やがて米国のGDPを抜いて、世界
一になる──こういう野望です。
 日本がGDPで中国に抜かれたのは2010年のことです。日
本は1968年に当時の西ドイツのGDPを抜いて世界第2位の
経済大国になり、以来42年間、世界第2位の座を守って来たの
ですが、2010年に中国に抜かれています。中国の野望のひと
つは果されたのです。
 それでは、どのようにして中国はGDPを増やしたのでしょう
か。GDPを増やすには、いろいろな方法がありますが、手っ取
り早いのは国内投資、不動産に手をつけることです。
 昨日のEJで述べたように、中国の土地は個人所有は認められ
ておらず、すべて国有です。ここで、中国の中央政府と地方政府
の関係について知る必要があります。それは、中央予算と地方予
算の関係を知ることによって理解できます。既出の邱海濤氏の本
から引用します。
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 「地方予算」と「中央予算」の関係。
 本来、地方予算の財源は主に税収からくるとされるが、中国の
場合、地方政府による土地の譲渡で得られる収入が地方財源の半
分以上までを占めるといわれている。
 中央予算は地方からの納税で賄われる。地方予算は主に各級の
地方政府部門や地方国有企業、学校、病院、そして公的年金など
に使われるが、中央予算は主に外交、国防、対外援助、各級の中
央政府部門および中央国有企業、学校、病院などに使われる。
 また、中国における土地所有権についてだが、中国のすべての
土地は憲法で「全民所有制」と定められており、全国民の財産と
なっているため、理屈としては土地は中央政府、地方政府のいず
れのものでもない。
 しかし、現実には、土地は国民の財産であるにもかかわらず、
国民には発言権がなく、地方長官1人だけでも土地の用途や処置
などを決断できるようになっている。言い換えれば、土地所有権
は主に地方政府が握っている。ただし、地方政府の土地使用計画
は事前に中央政府に報告し、許可をもらわなければならない。
       ──邱海濤著/『中国大動乱の結末』/徳間書店
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 GDPを増加させるため、中央政府は地方政府に対して命令を
出します。そこで地方政府は、住んでいる住民や、土地を農地に
して使っている農民を追い出して、勝手に売り出しをはじめたの
です。農地買収については、若干の立ち退き補償金は出るものの
ほとんどは雀の涙に過ぎないのです。立ち退きは強引に行われ、
抵抗が大きい場合は、治安部隊が出動することもあります。
 ここで不動産を扱うデベロッパーは地方政府と組んでいて、共
産党幹部が出資をしていたり、共産党幹部の親族が経営していた
りします。おいしい話には必ず共産党幹部や親族が絡んでいるの
です。これがこの国のどうしようもない体質です。
 デベロッパーは、農民から取り上げた土地を担保に銀行やシャ
ドウバンクから融資を受け、団地や都市を作り、それを売り出し
ます。共産党幹部がそれをいったん買って、リベートを付けて人
民に売るケースもあります。
 しかし、そもそも中央政府によるきちんとした都市づくりの計
画に基づいて作られていないので、一向に売れなかったり、高価
で買えなかったりで、誰も住まない都市ができるのです。砂漠の
なかに突如できた100万人都市もありますが、作ることが目的
で、それを売り切ることを考えていないのです。しかし、それだ
けの投資を行っているので、GDPは確実に増加し、成長率を押
し上げることになります。
 しかし、莫大な資金を投入し、建設した高層マンションがまっ
たく売れなければ、投入資金を回収できないので、デベロッパー
は倒産し、不動産市場は崩壊するはずです。そうならないために
デベロッパーは、地方政府から土地の提供を受け、銀行から融資
を受け、都市づくりを継続します。次のケースもあります。
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 投機者と銀行、デベロッパーが共謀して、実際の不動産価値に
見合わない高値を付けて、投機者は実際の価格に見合わない不動
産を担保に融資を受けて、その融資された金のうちからデベロッ
パーからキックバックをもらう。融資は最初から返済するつもり
がなく、銀行側は、それをわかったうえで、融資し、担保となっ
た不動産を差し押さえる、ということになる。こういったからく
りから、二束三文の不動産まで法外な価格で取引される状況が起
きている一面もある。この結果起きるのは、銀行の不良債権の増
大である。   ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
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 実は鬼城の多くは高速鉄道の沿線に作られていますが、人が住
んでいない鬼城のためにも高速鉄道が作られています。高速鉄道
路線は2万キロメートル以上ですが、黒字路線は「北京─上海」
のみの1300キロメートルだけです。
 そもそも中国の鉄道総距離は11万キロ超メートルですが、そ
の大半が赤字であり、累積債務が68兆円に達しています。しか
も国営の中国鉄路総公司は鉄道を運営しているだけであり、鉄道
建設費は赤字に含まれていないのです。こんな状況で、毎年60
00キロメートルの鉄道建設を進め、そのうち2000キロメー
トル程度が高速鉄道です。
 こういうことをしているので、「高速道路は空気を運び、マン
ションには誰も住まず、道路には車も人も見かけない」というよ
うにネットで批判されるのです。しかし、それは事実であり、中
国の現実なのです。    ──[米中戦争の可能性/088]

≪画像および関連情報≫
 ●「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」/宮崎正弘氏
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   全人代の席上で、次のような驚くべき発言が飛び出してい
  る。「一部の地方政府に倒産の可能性があるので、気をつけ
  て欲しい」(15年12月の全人代常務委員会で陳笠・常務
  副委員長)。
   すでに明らかになった地方政府の債務は邦貨換算推定で、
  320兆円から340兆円。公式発表でも290兆円。この
  金額は地方政府の歳入の2年分、殆どが不動産の無謀な開発
  と担当党員のポケットに消えた。そして、「発狂的投機」は
  「風と共に去りぬ」。借金を棒にする性癖がある中国人の経
  済活動から容易に想定できたリスクだが、それにしても想像
  を絶する巨額、返せる筈がないだろう。つまり、これらの開
  発費は銀行の不良債権と化ける。
   フィナンシャルタイムズが「中国の債務はGDPの290
  %だ」と報じたが、もし、そうであるとすれば、中国全体の
  債務は2900兆円となる。リーマンショックより、規模は
  壮大にして未曾有の数字である。
   無謀かつ無計画。そして借金に無関心と無心。貸し込んだ
  のは国有銀行とシャドーバンキング、そして理財商品などか
  らの迂回融資、あげくにヤミ金融。皮肉なことに後者のヤミ
  金融は胴元が殆ど公務員だ。
   「ここに巨大都市を造ろう」と呼びかけて、人口過疎の農
  村や湿地帯、いやはや海まで埋立てて人口島をつくり、セメ
  ントを流し込み、いい加減な地盤改良工事の果てに鉄筋、セ
  メント量を誤魔化す手抜き工事を繰り返した。
                   http://bit.ly/2pYDR9V
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浙江省の「鬼城」.jpg
浙江省の「鬼城」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする