2017年05月02日

●「中国金融機関の保有する不良債権」(EJ第4513号)

 中国の経済統計にはウソがある──このことはよくいわれてい
ますが、実際にどこがウソであるかを指摘することは、それほど
簡単ではないのです。
 ひとつのチェック方法があります。複数の統計を比較すること
です。たとえば、GDPと失業率の関係をチェックする方法があ
ります。これは「オークンの法則」として知られています。
 オークンの法則とは、米国の経済学者、アーサー・オークンが
発表した実質GDPの変化率と失業率の間に見られる負の相関関
係のことです。これは、1960年代初頭の米国経済に関する実
証研究によって解明された法則です。失業率が1%低下すると、
実質GDPは3・2%上昇するというものです。
 生産活動が活発化すると、雇用者が増加し、失業率が低下、実
質GDPが上昇します。逆に、生産活動が停滞すると、雇用者が
減少し、失業率が上昇、実質GDPが低下するという関係のこと
を「オークンの法則」というのです。
 そこで、中国当局が発表する公式の失業率を見ると、きわめて
不可解なことがわかります。添付ファイルに2002年から20
14年までの失業率を付けているのでご覧ください。
 これは、国家統計局と人力資源社会保障部が発表した「登記失
業率」ですが、過去10年間にわたって、4・0%〜4・3%の
間でしか動いていないのです。これは、上のグラフ──完全失業
率は4・5%〜4・7%以内と掲げる国家目標の範囲内に収まっ
ています。この数字にはリーマンショックによる景気後退や20
14年の景気後退が反映されておらず、とても実態をあらわして
いるとは思えないのです。この国は、まず目標が先にあって、そ
れに基づいて結果が決まるようです。高橋洋一氏は、これについ
て、次のようにコメントしています。
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 そもそも中国の公式失業率は、調査の対象を、失業率が低い都
市部の戸籍を持ち、なおかつ職業安定所に登録した労働者だけを
対象にしている。もともと無意味な失業率調査であり、統計数値
なのだ。実情としては、中国の失業率は10%以上、悪いときは
20%にも上ると見られている。だから正確な失業率統計などな
いに等しいのだ。
      ──高橋洋一著/『中国GDPの大嘘』/講談社刊
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 かつてのソ連にしても、中国にしても社会主義国は、どうして
国の公式数値を改竄するのでしょうか。ソ連の場合は、アメリカ
を代表とする資本主義国家陣営と張り合っていたのです。そこで
アメリカに負けない目標を立て、実際の数値を目標に合わせて改
竄していたものと考えられます。
 中国の場合も同様です。彼らは経済大国世界第2位の日本に焦
点を合わせ、日本を抜くことに全力を傾けたのです。何がなんで
もGDPを増加させるために膨大な投資を行ったのです。その結
果、実際に中国はその目標を達成し、今度はアメリカを追ってい
ますが、中国の経済数値をていねいにチェックしていくと、数値
に実態が追いついていないことがわかります。
 株価についても同様です。株価が暴落すると、なり振り構わな
い株価維持策を行い、金融機関を含む国有企業に株式を購入させ
その売却まで制限して株価を買い支えることを平気でやってきて
います。その結果、中国の4大銀行は膨大な不良債権を抱える事
態に陥っています。
 ここに中国の国有4大銀行の2014年12月期決算の数字が
あります。この数字を見ると、4大銀行の減速が鮮明になってい
ることがわかります。
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 ◎中国4大銀行/2014年12月期決算    単位億元
         純利益  不良債権残高  不良債権比率
 中国工商銀行 2758    1244     1.13
     比率   5.0     32.9     0.94
 中国建設銀行 2278    1131     1.19
     比率   6.1     32.7     0.99
 中国農業銀行 1794    1249     1.51
     比率   7.9     42.4     1.22
   中国銀行 1695    1004     1.18
     比率   8.1     37.2     0.96
               ・純利益比率:前期比伸び率
     ・不良債権残高比率:2013年12月末比伸び率
        ・不良債権比率:2013年12月末の数字
    ──2015年3月31日付/日本経済新聞/電子版
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 4大銀行の純利益の合計が8526億元(約16兆2千億円)
と前の期に比べ6・5%増にとどまり、これまでの2ケタ成長に
ブレーキがかかっています。一方において、国内景気の減速によ
る企業の業況の悪化を反映し、不良債権は昨年1年間に36%も
増えています。
 収益を圧迫しているのはこの不良債権です。昨年末時点の不良
債権残高は合計4631億元と、1年前に比べて、36・2%膨
らんでいます。各行で見ても、不良債権の残高は、前年比で32
%〜42%と大きく膨らんでいます。
 また、マッキンゼー国際研究所による中国の抱える債務総額は
対GDP比でみると、次のように急増しています。
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        2000年  2007年  2014年
   政府     23%    42%    55%
   非金融業   83%    72%   125%
   家計      8%    20%    36%
                  http://amba.to/2piFChF
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             ──[米中戦争の可能性/083]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の不良債権は190兆円/日本総研が試算/2016年
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   中国の金融機関が抱える潜在的な不良債権の残高が昨年末
  時点で、12兆5千億元(約190兆円)に達したとの試算
  を大手シンクタンクの日本総合研究所が24日までにまとめ
  た。中国の公式統計の約10倍に当たる。経済成長の減速で
  隠れた不良債権が増えているとみられる。うまく処理できな
  ければ、中国で金融危機が発生する恐れもある。
   試算は中国の上場企業2300社余りの2015年度決算
  を分析し、借入金の8・6%分が、不良債権になり得ると推
  定。この比率を非上場企業向けの融資や、正規の融資以外の
  「シャドーバンキング(影の銀行)」を通じた貸し出しも含
  む中国全体の融資額に当てはめ、不良債権残高を推計した。
   中国政府は昨年末時点の不良債権残高を1兆2744億元
  としている。だが日本総研の関辰一副主任研究員は、当局の
  不良債権の認定基準が甘いと指摘。「金融機関も経営状況を
  正確に公開していない。政府が適切なタイミングで公的資金
  を投入できるか疑わしい」とみている。
                   http://bit.ly/2oUqvYa
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中国の失業率の推移.jpg
中国の失業率の推移
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする