す。その2011年から2016年度までのGDP成長率を調べ
ると、次のようになります。
─────────────────────────────
GDP成長率
2011年 ・・・ 9・50%
2012年 ・・・ 7・75%
2013年 ・・・ 7・69%
2014年 ・・・ 7・30%
2015年 ・・・ 6・90%
2016年 ・・・ 6・70%
─────────────────────────────
2011年から毎年少しずつGDP成長率が下がっています。
その変化率は非常に少ないのです。もっとも、下がったとはいえ
高い成長率ですが、この数字だけを見ていても別におかしな点は
見当りません。しかし、他の国と比較してみると、その異常性が
見えてきます。
高橋洋一氏によると、GDP成長率で変化率の少ない国のラン
キングを見ると、上位に社会主義国が名前を連ねています。
─────────────────────────────
第1位:バングラディシュ
第2位:ラオス
第3位:ベトナム
第4位:中国
──高橋洋一著/『中国GDPの大嘘』/講談社刊
─────────────────────────────
中国は経済大国です。国土が大きく、人口も多く、世界中と貿
易をしている国です。それだけに世界経済の変化の影響を受けや
すいはずであり、米国や日本のように、変化率はもっと大きくな
るはずです。それが変化率の少ない国の順位で、世界第4位であ
るとは異常なことです。
中国には、全国GDPだけでなく、各地方政府が発表する地方
GDP統計があります。中央政府は、地方政府から報告される地
方GDPをすべて合計して全体のGDPを発表していると思われ
ますが、それなら各地方政府のGDPの合計額が全国GDPに一
致に一致するはずです。
ところが、地方政府全部のGDPを積算すると、全国GDPの
数値を大きく上回る数字になってしまうのです。しかも、その乖
離幅は年々増大しています。このようなことは、通常は起こり得
ないことです。
─────────────────────────────
全国GDP 地方GDP合計 乖離幅
2010年 40・9 43・7 2・8
2011年 48・4 52・1 3・7
2012年 53・4 57・7 4・2
2013年 58・8 63・4 4・6
2014年 63・6 68・4 4・8
2015年 67・7 72・5 4・8
単位:兆人民元
──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
現在の中国のGDPは、2016年度が6・7%ですが、GD
Pを生み出す要素を検証すると、大きく伸びる可能性はきわめて
低いといわざるを得ないのです。中国の消費は不動産投資が主力
であり、耐久消費財の筆頭である車は、販売台数が大きく伸び悩
んでいます。
そもそも中国の個人消費がGDPに占める割合は約30%しか
ないのです。これに対して米国は65%、日本は60%を占めて
います。不動産投資が中心ですから、もし不動産バブルが破裂し
てしまうと、経済は壊滅的な打撃を受けることになります。
中国では民間企業の設備投資はほとんどないのです。現在中国
で成長を牽引しているアリババなどのネット・通信企業は、巨額
の投資を必要としないのです。ただ、国有企業による過剰な設備
投資と外国企業による直接投資があります。
しかし、国有企業の設備投資は経済を改革する必要があるので
制限され、大幅に減少しています。外国企業──とくに中国への
2大投資国といわれるドイツと韓国は、自国内での経済がおもわ
しくなく、日本や米国の企業も中国から撤退傾向にあります。
それでは、輸出はどうでしょうか。まさに命綱ともいえる輸出
は、2016年が前年比7・7%マイナスと激減し、輸入につい
ても5・5%のマイナスです。これによって、貿易は赤字転落寸
前の状態です。
このように見ていくと、中国のGDPの伸びる余地はあまりな
いことがわかります。高橋洋一氏は、中国のGDPについて、き
わめて大胆な次の指摘をしています。
─────────────────────────────
私は、中国の実際のGDPは公式発表されている数値の3分の
1程度ではないかとさえ思っている。こんな計算の仕方もある。
ソ連の公式統計では、1928〜85年の国民所得の平均成長率
は年率8・2%とされていた。しかし実は3・3%でしかなかっ
たという事実を1987年、ジャーナリストのセリューニンと経
済学者のハーニンが、その論文「狡猾な数字」で指摘している。
この手法を中国国家統計局が踏襲し、仮に15年間続けていたと
したら・・・その実際のGDPは半分ということになる。
──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
中国では、毎年全人代で発表するGDPの目標には、政治的暗
闘がその裏に隠されています。そこには、習近平主席対李克強首
相のすさまじい暗闘が繰り広げられているのです。
──[米中戦争の可能性/079]
≪画像および関連情報≫
●中国の偽装GDPは世界のリスクだ!/田村秀男氏
───────────────────────────
中国の国内総生産(GDP)の7〜9月期の前年比の成長
率が6・9%と7%を割った。「世界の工場ほころび」(朝
日新聞20日付朝刊)、「中国リスク、出口見えず」(日経
新聞同)などと大騒ぎだが、何かヘンである。小学生でも知
っている経済の常識では7%近い成長は高成長であり、好景
気そのものである。なのに各紙は何の説明もしない。その点
20日の朝刊1面トップではっきりと「偽りのGDP、異様
に巨大化」と報じた産経新聞を読んで、ストンと胃の腑に落
ちた読者も多いだろう。親中国各紙は、北京のご機嫌を損な
わないよう問題の本質から目をそらし、読者を混乱させてい
る。中国GDP統計が嘘だと詳報したのは産経ばかりではな
い。米ウォールストリート・ジャーナル紙も20日付で、米
欧の有力エコノミストに取材して「中国GDPの信憑性、エ
コノミストは疑問視」との特集をした。同記事によれば、エ
コノミストの多くがGDP発表値は党中央の政治圧力の産物
であり、実際の7〜9月期成長率について4〜5%の間とみ
ている。筆者が重視する鉄道貨物輸送量や輸入額でみると、
グラフのように2ケタ台のマイナス成長とみてもおかしくな
いはずだが、北京の公表値はまさしく偽装データも同然との
見方を裏付ける。 ──「お金は知っている」(2015)
http://bit.ly/1k0RWgu
───────────────────────────
高橋 洋一氏