2017年04月25日

●「社会主義国統計データの嘘に迫る」(EJ第4508号)

 このテーマで今回は第78回になるので、そろそろ最終章に入
る必要があります。テーマは「米中戦争の可能性」ですが、最後
に中国の経済の先行きについて考えます。
 「中国の経済はいずれ破綻する」ということがこれまでいわれ
てきましたが、一向に破綻する気配はなく、軍事力は年々向上し
ています。同様に、北朝鮮も早くから破綻が囁かれてきましたが
中国と同様に破綻するどころか、強力な核兵器を保有するまでに
なっています。社会主義国の場合、民主主義国の常識は通用しな
いようです。しかし、それでも最後は間違いなく、崩壊してしま
うのです。ソ連の崩壊がそれを証明しています。
 「中国崩壊論」について、高橋洋一氏は自著で次のように述べ
ています。
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 巷に溢れる「中国崩壊論」のように中国経済がクラッシュする
かというと、そう簡単にコトは運ばない。中国経済が抱える問題
は、マグマのように溜まりに溜まり、これからも溜まっていくが
一気に爆発することは当面ない。なぜなら、共産党の一党独裁体
制下では、偽装会計などを駆使して、いかようにでも問題を糊塗
できるからだ。
 しかし、さまざまな局面で、少しずつ小噴火を起こしていく。
いつ大爆発を起こすか・・・2年や3年の間は起こらないが、そ
の先は不透明である。そのとき、リーマンショック、あるいはそ
れ以上の衝撃を世界に撒き散らすことは容易に想像がつく。しば
らくは中国の動向から目が離せないという理由もそこにある。
      ──高橋洋一著/『中国GDPの大嘘』/講談社刊
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 上記の高橋洋一著の『中国GDPの大嘘』(講談社刊)という
本は、中国の統計のウソを見事に暴いた労作です。以下この本を
ベースに中国の統計のからくりについて検証していきます。
 ところで、ソ連はどうして崩壊したのでしょうか。
 国家の運営は、しばしば船の航海に例えられます。安全な航海
に欠かせないのは、正確な「海図」と「航路」を綿密に調べ上げ
たデータ、そしてそれに基づく船の正確な状況認識が必要です。
 国の政治・経済の運営に不可欠な「海図」は、各種の統計デー
タということになりますが、ソ連は実に50年以上にわたってこ
れらの各種統計データを巧妙に改竄し、捏造していたのです。
 しかもその手法は精緻を極めており、プロの経済学者でも騙さ
れてしまうほど巧妙だったのです。高橋洋一氏はこれについて次
の話を明かしています。
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 問題は、そのデタラメな偽造会計を世界の大半が信じていたと
いうこと──。たとえば、アメリカのノーベル経済学賞受賞者の
ポール・サミュエルソン。彼はソ連が出すデタラメ数値を信じて
「ソ連は成長している」と言い切ってしまった。サミュエルソン
ほどの偉人ですら、騙されてしまう。それだけ、統計データの虚
偽を見抜くのは難しいことなのである。
                ──高橋洋一著の前掲書より
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 このソ連の統計作成手法は、ソ連が崩壊してはじめて明るみに
出たのです。ゴルバチョフ書記長の「ペレストロイカ」(改革政
策)と「グラスノチ」(情報公開)の結果、明らかになったので
す。それによると、GDPは半分しかなかったといわれます。
 中国の統計システムは、このソ連の統計システムに学んでいる
のです。中華人民共和国の創設は1949年のことですが、その
さい、1万人から成るソ連の顧問団が北京にやってきて、中国の
産業育成について、ソ連は社会主義国の先輩として指導していま
す。そのとき、統計作成の手法も指導されたのでしょう。
 中国の2017年1月〜3月の実質経済成長率は、4月17日
に前年同期比6・9%と発表され、18日の日本経済新聞は次の
ように伝えています。
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 中国の2017年1〜3月の実質経済成長率は、前年同期比で
6・9%だった。地方を中心にインフラや不動産への投資が増え
成長をかさ上げした。習近平指導部は最高指導部が入れ替わる秋
の党大会をにらんで安定成長の演出に躍起だ。ただ、資産バブル
の拡大など先行きのリスクは膨らんでいる。
     ──2017年4月18日付、日本経済新聞(朝刊)
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 中国のGDP成長率の発表についていつも不思議に思うことが
あります。それは、他国に比べてダントツに早いことです。今年
の場合も、1〜3月の数値がたった17日で発表されています。
これに対して、日本や米国の発表はきわめて遅いのです。米国で
は速報値でさえ翌月の下旬になってしまいます。つまり、1〜3
月の速報値は4月の下旬になります。日本についてはもっと遅い
のです。日本では速報値は翌々月の中旬、つまり、5月の中旬に
ならないと出てこないのです。
 もっとも計算は早い方がよいに決まっています。普通に考える
と、中国のような巨大な国では集計に1ヶ月ぐらいかかっても不
思議はないのですが、なぜかたったの17日で出てきます。だか
ら、きちんと集計されていないのではないかという疑いも出てく
るのです。
 社会主義国の場合、統計の概念が民主主義国と違うのです。社
会主義国では、国が計画し、目標とした数値に統計を合わせるべ
きという考え方があります。国が立てた経済計画は神聖なもので
あり、どんなことがあっても達成しなければならないものであり
統計はそれに合わせるべきであるという国の意思が強く作用して
います。これは、企業の粉飾決算に似ています。2015年に発
覚し、2年かかって企業を存亡の危機に陥れている東芝の粉飾決
算の構図とまったく同じであるといえます。
             ──[米中戦争の可能性/078]

≪画像および関連情報≫
 ●中国のGDP操作疑惑/経済専門家「ヤラセではないか」
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   米国では、2008年の金融危機以来、国内総生産(GD
  P)の伸びが年率2%台あたりをさまよい、米連邦準備制度
  理事会(FRB)が自信をもって金融正常化と利上げ加速に
  踏み切れない最大の理由となっている。だが、そんな米国を
  尻目に、中国では年率8%代後半の成長が安定的に継続し、
  世界を驚かせている。それでも、以前の二桁台よりは経済拡
  大スピードが落ちているというのだから、なおさら驚異であ
  る。世界中が経済の長期停滞にあえぐ中、そんな順調なGD
  Pの成長は、本当に可能なのだろうか。何か裏があるのでは
  ないか。事実、米国ではここ数年、中国の経済統計数値の集
  計・分析・発表などで人為的な操作が加えられているとの疑
  惑が繰り返し論じられている。
   具体的に何が問題なのか。米国の論調から探ってみよう。
  中国国家統計局が2016年10月18日に発表した、今年
  7〜9月の第3四半期のGDPによると、中国経済は前年比
  6・7%成長し、1〜3月の第1四半期、4〜6月の第2四
  半期に続き、政府の成長目標6・7%をドンピシャと達成し
  た。これにかみついたのが、調査会社キャピタル・エコノミ
  クス中国担当エコノミストのジュリアン・エバンス=プリチ
  ャード氏だ。同氏は、「3つの四半期にわたって数字が同じ
  であるのは、データが『ならし作業』で粉飾されていること
  を示唆している」と述べた。    http://bit.ly/2ozmb0e
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ポール・サミュエルソン氏.jpg
ポール・サミュエルソン氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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