2017年04月03日

●「マレーシア政府はなぜ妥協したか」(EJ第4492号)

 トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が、4月6〜7日に
フロリダ州のトランプ氏の別荘「マール・ア・ラーゴ」で会談を
行います。この会談の最大のテーマは北朝鮮問題です。3月31
日付の朝日新聞はこれについて次のように報道しています。
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 会談で最重要の課題になるのが、北朝鮮の核・ミサイル開発で
緊迫する朝鮮半島情勢だ。軍事手段を含めた新たな対北朝鮮政策
を策定している米国が、北朝鮮の後盾となっている中国側に対し
徹底した制裁の履行などを求める見通し。
 経済面では、トランプ政権は貿易赤字削減を目指しており、米
国にとって最大の貿易赤字国の中国に対し、是正を強く求めるこ
とになりそうだ。 ──2017年3月31日付、「朝日新聞」
─────────────────────────────
 トランプ政権の出だしは必ずしも順調ではないが、対北朝鮮強
硬路線は、着実に手が打たれています。3月29日、下院外交委
員会は、北朝鮮をテロ支援国家に再指定するよう政府に促す法案
や、経済制裁の強化を求める法案を可決しています。
 米国が北朝鮮をテロ支援国家に指定したのは1988年1月の
ことです。87年11月に北朝鮮工作員が関与した大韓航空機爆
破事件が起きた2ヶ月後のことです。このときは、犯人の金賢姫
が逮捕されており、北朝鮮のテロへの関与は明白であったので、
テロ支援国家に指定できたのです。
 なお、この指定は、2008年10月に核問題を巡る6ヶ国協
議の合意に基づき、北朝鮮の核攻撃に向けた取り組みに応ずるか
たちで解除されています。
 今回の米国の再指定は、金正男氏が、マレーシアの空港でVX
によって殺害されたことを受けてのことですが、30日、マレー
シアと北朝鮮は、不可解な合意をしているのです。合意事項は次
の通りです。
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 ■両国が発表した主な合意事項
  【両国共通の発表内容】
   ・北朝鮮にいるマレーシア人と、マレーシアにいる北朝
    鮮人の出国を容認
   ・死亡した北朝鮮国籍者の遺体は北朝鮮に送る
  【北朝鮮のみ発表】
   ・両国はビザなし渡航の再導入を肯定的に討議し、関係
    発展へ努力する
  【マレーシアのみ発表】
   ・この深刻な犯罪に対する警察の捜査は継続する
         ──2017年3月31日付、「朝日新聞」
─────────────────────────────
 この合意で一番損をしたのはマレーシア政府です。国内で北朝
鮮による暗殺事件を起され、ベトナムとインドネシア国籍の実行
犯2人の女性は逮捕したものの、犯行を直接指揮した複数人の北
朝鮮人をやすやすと逃亡させたからです。さらに犯行に加担した
とみられる3人の北朝鮮人は、在マレーシア北朝鮮大使館に逃げ
込んだので、マレーシア警察は彼らの事情聴取を要求したのです
が、北朝鮮大使館は治外法権を盾ここれを拒んでいます。
 これに対して北朝鮮のやったことは、北朝鮮を出国しようとし
ていたマレーシア外交官を含む複数のマレーシア人の出国を禁止
し、いわば彼らを人質に取ったのです。
 マレーシア政府は、結局、事件解明のカギを握る大使館にいる
北朝鮮人3人と、北朝鮮の空港で足止めされているマレーシア人
の“人質”と交換するかたちで、事件の決着を図り、金正男氏の
遺体を「キム・チョルという名の北朝鮮国籍の男」して、出国を
認めたのです。
 これは、明らかにマレーシアの外交的な失敗です。もっともそ
のさい、マレーシアの捜査員が北朝鮮大使館に入り、大使館内に
いる3人と、かたちばかりの事情聴取をしてはいているものの、
重要な情報は得られなかったのです。その結果、マレーシア政府
としては、暗殺事件の関与者と思われる3人と、北朝鮮で人質と
なっているマレーシア人の交換に応ぜざるを得なかったのです。
 この“取引”を北朝鮮側からみると、次の3つの大きなメリッ
トがあります。
─────────────────────────────
 1.金正男氏とみられる遺体を身元を確認しないで北朝鮮政
   府が引き取ったことで、死因は単なる心疾患で、暗殺事
   件などは発生していないと主張できる。
 2.今回の暗殺に関わった複数の関与者を一人も他国に引き
   渡すことなく、すべて北朝鮮に戻すことができ、暗殺の
   あったことを他国は証明できなくなる。
 3.国交断絶が避けられたことで、両国にメリットのあるマ
   レーシアとのビザなし渡航の再導入について、マレーシ
   ア政府と交渉できる余地を残している。
─────────────────────────────
 疑問なのは、マレーシア政府が、なぜこの不利な取引に応じた
のかです。もし、北朝鮮だけが相手であれば、マレーシアは自国
民が人質にとられているとはいえ、このような誰が見てもわかる
裏取引には応じなかったと思われるからです。
 クアラルンプール空港での金正男暗殺事件によって、マレーシ
アが世界の注目を集めているので、外交官を含む何の罪もないマ
レーシア人が、不当にも北朝鮮を出られないでいることをもっと
鮮烈に国際社会に訴えることもできたはずです。
 ひとつ考えられることがあります。それは、北朝鮮とマレーシ
アの交渉にウラに中国がいるのではないかということです。中国
は北朝鮮側に立って、何らかの圧力をマレーシアにかけたのでは
ないかと思われます。マレーシアにとって中国は重要な国であり
中国からの要請には断れない事情があると考えられます。
             ──[米中戦争の可能性/062]

≪画像および関連情報≫
 ●金正男殺害を中国はどう受け止めたか――中国政府関係者
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   習近平政権誕生以来、中朝関係が冷え切っている中、中国
  はなぜ金正男氏を保護してきたのか、殺害は今後の中朝関係
  に影響するかなど、日本人が抱く疑問をぶつけた。回答から
  東北アジア情勢と課題が見えてくる。
   中国の中央テレビ局CCTV系列は、金正男氏が2月13
  日にマレーシアのクアラルンプール国際空港で毒殺されたこ
  とに関する報道で、2月16日昼のニュースの時点でもなお
  「金という姓の韓国籍男性」が殺害されたという形での報道
  しかしていなかった。
   これに関して、日本の多くのメディアが「中国が困惑して
  いる証拠」という主旨の報道をしていたので、先ずは中国政
  府関係者に「名前を完全な形で明示しない真意は何か」を聞
  いてみた(116日午後2時)。
   以下すべて、「あくまでも個人の意見だが」という前提で
  答えてくれた。「CCTVは最も権威あるテレビ局なので、
  責任ある報道しかすることができない。絶対に確実だと公式
  に確認されるまでは、"金正男"というフルネームを言うこと
  はできない。パスポートが偽造でないかなど、まだ確認され
  ていない」とのこと。特に北朝鮮の場合、偽造パスポートで
  海外渡航しているケースが多いのも事実。その後、マレーシ
  ア政府がパスポートやDNA鑑定により「まちがいなく金正
  男だ」と公表すると、CCTVもまた、「金正男が何者かに
  よって殺害された」と実名で伝えるようになった。というこ
  とは今も評論が全くないのは指示を出したのが北朝鮮か否か
  が判明していないからか。それにしても報道が静かすぎる。
                   http://bit.ly/2lyBecN
  ───────────────────────────

マレーシア/ナジブ首相.jpg
マレーシア/ナジブ首相
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2017年04月04日

●「マレーシアが中国に接近した理由」(EJ第4493号)

 北朝鮮は、マレーシアをどのように説得したのでしょうか。確
かに北朝鮮とマレーシアは友好国ですが、マレーシアとしては、
これだけの大事件を衆人環視の前で起され、世界的な話題になっ
ているのに、このような曖昧なかたちでの幕引きが、普通ならで
きるはずがないのです。
 マレーシアは3月上旬までは北朝鮮籍者に対する入国ビザ(査
証)の免除停止など、北朝鮮に対し、国交断絶も辞さない強い姿
勢だったはずです。それが急転直下の合意です。北朝鮮とマレー
シアとのこの曖昧な合意について、4月1日付の日本経済新聞は
次のように報道しています。
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 30日の両国の合意は、ビザ免除の再導入に向けた討議の実施
が含まれるなど「円満解決」をにおわせる内容だった。ナジブ首
相やアニファ外相も合意発表以降、遺体が「正男氏」だとの名言
を避け、「VXで殺害されたのは金正男氏」とのこれまでの主張
を封じた。     ──2017年4月1日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 これはマレーシアとしてはこれは大変な譲歩です。下手をする
と、マレーシアはテロを容認する国家との汚名を着せられ兼ねな
いからです。相当大きな力が働かないと、こうはならないと思い
ます。そこに中国の影を見るのです。
 ここで検証してみるべきは、マレーシアと中国の関係と、北朝
鮮と中国の関係です。今回は、マレーシアと中国の関係について
考えてみます。
 マレーシアは2018年に総選挙が予定されていますが、ナジ
ブ政権は、大きな政治的な問題を抱えていて、元首相マハティー
ル氏率いる野党の猛烈な攻勢を受けているのです。ナジブ首相自
らの不正資金疑惑と「マレーシアのイメルダ夫人」といわれるロ
スマ・マンソール首相夫人の無駄使いです。
 これについて、ジャーナリストの大塚智彦氏は、次のように書
いています。
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 国営投資会社ワン・マレーシア開発(1MDB)に関連した不
正資金流用問題や治安維持で首相に強大な特権を与える「国家安
全保障会議(NSC)法」制定、仇敵となったマハティール元首
相による「ナジブ打倒」を掲げる新党結成などで人気と支持に陰
りのでてきたナジブ首相に、追い打ちをかけるようにロスマ夫人
の疑惑やスキャンダルが次々と浮上しているのだ。
 夫人の立場でありながら政治に口出ししたり、不動産購入や宝
飾品収集といった贅沢三昧の私生活などが暴かれ、その「マイナ
スイメージ」には夫のナジブ首相も口をさしはさめない状態のよ
うで、内外から「マレーシアのイメルダ」と不名誉な異名を与え
られている。「イメルダ」は言わずと知れたフィリピンの独裁的
指導者だった故マルコス大統領の夫人で、贅沢三昧な生活ぶりが
暴露されたあのイメルダ・マルコス夫人である。
                   http://bit.ly/2nppOVT
─────────────────────────────
 ナジブ首相の疑惑とは、自らが代表を務めていた国営投資会社
「ワン・マレーシア/1MDB」から、ナジブ首相の個人口座に
約800億円の振り込みがあったとするものです。
 ナジブ首相のこの不正資金流用疑惑に関連して、米司法当局が
米国内のナジブ首相の資産を差し押さえる民事訴訟を起こしたこ
とから、ナジブ政権はかつての米国寄りの姿勢を改め、中国に接
近しようとします。
 そういう事情からナジブ首相は、2016年10月31日から
中国を訪問したのです。中国にとってマレーシアは、戦略上きわ
めて重要な国です。それは南シナ海問題です。この問題では20
16年7月12日にオランダ・ハーグの仲裁裁判所が下した「中
国の領有権主張に法的根拠はない」とする裁定があり、中国とし
てはこの裁定を無視し、関係国の2国間協議での解決策を模索し
ています。マレーシアとも互いに領有権が重複する環礁があるの
です。このように、中国とマレーシアは、政治的に解決しなけれ
ばならない問題を抱えているのです。
 2016年10月から11月にかけてナジブ首相は中国を訪問
し、まず、李克強首相と会談、大型の経済援助を引き出していま
す。マレー半島横断鉄道建設計画への中国の参加、カリマンタン
島サラワク州での鉄鋼プラント開発での協力など、14項目で合
意し、調印。その総額は3兆6千億円に上るのです。
 また、中国からマレーシア海域で哨戒任務に当たる高速哨戒艇
を4隻購入することでも合意しています。このようにマレーシア
が軍事分野で大型装備品を中国から購入することは初めてのケー
スであり、軍事面でも関係緊密化を図ろうとしています。
 ジャーナリストの大塚智彦氏は、このマレーシアの露骨な中国
寄りの姿勢は、どこかフィリピンのドゥテルテ大統領の外交姿勢
と共通するところがあるといっています。
─────────────────────────────
 ナジブ首相は哨戒艇購入合意に関連して中国メディアに対し、
「自分たちより小さい国を公平に扱うことは大国の義務である。
かつての(マレーシアの)宗主国を含む他の国に内政について説
教される筋合いはない」と述べ、マレーシアを植民地にしていた
英国などを念頭に厳しく批判した。こうした言いぶりも、どこか
ドゥテルテ大統領の米国に対する数々の暴言を彷彿とさせる。
                   http://bit.ly/2npqMBL
─────────────────────────────
 マレーシアと中国とはこのような関係です。それも高度な政治
決断などではなく、自らの政治資金疑惑や夫人の不祥事を覆い隠
して来年の選挙に勝利するためにやったことです。中国とこのよ
うな関係にあるマレーシアが、金正男殺害事件で協力を求められ
たら、絶対に断ることはできないと思います。それが急転直下の
解決になったのです。   ──[米中戦争の可能性/063]

≪画像および関連情報≫
 ●マハティールと仇敵が目指す政権打倒
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   2016年9月5日、マレーシアの首都クアラルンプール
  にある高等裁判所は異様な雰囲気に包まれていた。この日は
  ナジブ・ラザク政権下で8月1日から施行された「国家安全
  保障会議(NSC)法」に対して、アンワル・イブラヒム元
  副首相が違法性を訴えた裁判の口頭弁論が開かれる予定だっ
  た。その裁判所に予告なしに突然マハティール・モハマド元
  首相が現れたのだ。
   2003年までの22年間、マレーシアの首相を務めたマ
  ハティールは同国を代表する政治家。一方のアンワルはマハ
  ティール政権で副首相を務め、最有力の後継者と目されなが
  らも、1998年にマハティールから突然解任され、同性愛
  や職権乱用の容疑で追及を受けるなどマハティールによって
  政界の第一線から葬り去られた人物。言ってみればこの2人
  は「蜜月から仇敵」と極端に変質した関係を18年間続けて
  きた関係なのだ。その2人が裁判所の一室で約30分間、密
  談。関係者によると二人は笑顔で握手を交わし「18年に渡
  る怨念を消去させた」ように真剣に話し合ったという。
   アンワルはマハティールから切り捨てられて以降は野党連
  合・人民連合の指導者となりながら一定の政治力を維持。2
  015年2月に同性愛罪で最高裁の有罪が確定、禁固5年で
  服役中の身だが、獄中でも反政府運動の指導者として人気は
  高く、妻のワンアジザさんは野党「人民正義党(PKR)」
  の党首を務め、長女のヌルル・イザー・アンワルさんもPK
  R副党首で下院議員として活躍している。
                   http://bit.ly/2cXDHa8
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アンワルとマハティール.jpg
アンワルとマハティール

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2017年04月05日

●「2・28/中国は何を仕掛けたか」(EJ第4494号)

 中国研究家の遠藤誉氏が奇妙な一致を指摘しています。具体的
にいうと、2017年2月28日に中国を中心に起きた出来事に
ついてです。どのような出来事なのでしょうか。
 この日、韓国の政変によって配備が前倒しされたTHAADの
配備予定地の契約を韓国国防部とロッテ側が行ったのです。これ
によって、中国にあるロッテのスーパーに対して、政府主導の大
規模な不買運動が起きていることは既に述べた通りです。
 同じ2月28日、北朝鮮の李吉成外務次官を団長とする北朝鮮
の外務省代表団が北京に到着しています。王毅外相や劉振民外務
次官らと会談を行うためです。中国が招いたのです。
 金正男殺害事件があってからというもの、中国は表面上は北朝
鮮側にも、マレーシア側にも中立の立場を取り続けていたのです
が、どうしてこの時期に北朝鮮代表団を受け入れたのか、遠藤氏
は疑問があるといっています。
 さらにその同じ28日に、別の北朝鮮外交団がマレーシアにも
行っているのです。なぜ、同じ28日に行ったのかについて、遠
藤誉氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 北朝鮮は同じ日に中国とマレーシアを同時訪問することによっ
て、マレーシアに圧力を掛けているものと、解釈することができ
る。中国のTHAADに対する強烈な抗議という「弱みにつけ込
んだ」実に巧みな外交攻勢だ。
 マレーシア訪問の目的を、北朝鮮代表団は「遺体の引き渡し」
「朝鮮籍公民の身柄引き渡し」および「北朝鮮・マレーシア両国
の友好発展」と述べているが、マレーシアが北朝鮮と国交断絶を
するかもしれないという危機への警戒感が最優先しているものと
言っていいだろう。そのためにマレーシアよりは「大国」とみな
されるであろう「中国」を選び、同時訪問を果たしたものと解釈
する。         ──遠藤誉氏 http://bit.ly/2oK9pN8
─────────────────────────────
 不気味な一致はまだあります。同じ2月28日に、中国のヤン
・チェーチー国務委員が米国を訪問し、トランプ大統領と会談し
ています。トランプ大統領としては、初めての中国の要人との会
談です。一体何を話したのでしょうか。
 遠藤氏によると、「互いの核心的利益の尊重」を前提とし、米
中が国際問題で協力を拡大したいとして、習近平国家主席の訪米
の日程の調整をしたといいます。
 まだあります。同じ2月28日、6ヶ国協議のロシア主席代表
であるモルグロフ外務次官も北京入りしているのです。中国外交
部の孔鉉佑外務次官補と会談するためです。テーマは朝鮮半島情
勢についての意見交換であるとしていますが、THAAD配備問
題であることは明らかです。これも中国の招きです。
 遠藤氏によると、これによってTHAAD配備賛成国である米
国、韓国、日本の3ヶ国と、反対国である中国、北朝鮮、ロシア
の3ヶ国に分かれ、反対国が同じ日に中国に集まって協議したと
いうことになります。それほどTHAAD配備は、中北露にとっ
て深刻な脅威なのです。
 このように、2月28日にいくつもの協議が行われたのでしょ
うか。なぜ、2月28日だったのでしょうか。それは、次の2つ
の理由によるものです。
─────────────────────────────
 1.THAADの配備場所がロッテ所有星州ゴルフ場に決ま
   り、配備が大幅に前倒しされたこと
 2.翌日の3月1日から4月末日までの2ヶ月間にわたって
   米韓合同軍事演習が開始されること
─────────────────────────────
 これが2月28日に起きた出来事です。翌日から始まる米韓合
同軍事演習の期間中に何が起きても不思議ではないからです。中
北露の協議は、そのための打ち合わせであるとも考えられます。
 昨日のEJで、中国とマレーシアの関係について述べましたの
で、次に北朝鮮と中国の関係について考えます。韓国の中央日報
日本語版は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国は北朝鮮の戦略的価値を重視する。韓半島は大陸と海洋勢
力の交差地点だ。北朝鮮は米軍事力の大陸接近を遮断する。尖兵
と防御の緩衝の役割である。北朝鮮も自らの地政学的資産を活用
する。中国はその分を支払う。北朝鮮に石油と食糧を供給する。
相互扶助の特殊関係だ。中国は北朝鮮を放棄しない。
                   http://bit.ly/2oKvI53
─────────────────────────────
 金正恩政権になってから、中国は北朝鮮を上手にコントロール
できなくなっています。金正恩氏は伯父の張成沢をはじめ、多く
の中国系幹部を処刑しています。そういうこともあって、中朝は
首脳会談すら行っていないのです。しかし、それでも中国にとっ
て北朝鮮は戦略上重要な国なのです。
 中国では、「北朝鮮屏風論」とか「北朝鮮番犬論」という考え
方があります。つまり、中国にとって北朝鮮は、米軍を鴨緑江へ
の進出を食い止めるための「屏風」であり、中国に代わって米国
に吠えてくれて、絶対に裏切らない「番犬」という考え方です。
 北朝鮮は中国にとって便利な存在でもあります。中国には立場
上、絶対にできないことでも北朝鮮ならやることができます。そ
れによって米国を追い込むことも可能です。
 もちろんそのツケは中国に回ってきます。「北朝鮮の暴走は中
国にも責任がある。きちんと制裁せよ」と。実際に北朝鮮の無謀
な核やミサイル実験のたびに国連安保理は、北朝鮮に対して制裁
決議を行い、中国に厳しく制裁するよう迫っています。
 しかし、中国は絶対に北朝鮮を守っています。それは、北朝鮮
の存在は、中国にとってプラスだからです。しかし、トランプ政
権では、中国はこれまで通り北朝鮮を守れるかどうかはわからな
くなっています。     ──[米中戦争の可能性/064]

≪画像および関連情報≫
 ●朝鮮半島有事の危機はすぐそこに来ている!
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   米国のトランプ政権にとって北朝鮮の脅威は当面、安全保
  障上の最大の危機として迫ってきたようだ。北朝鮮が核兵器
  と各種ミサイルの開発へとひた走り、無法な実験を重ねてき
  た歴史は長い。この数ヶ月、その好戦的な言動はとくにエス
  カレートしてきた。
   ではトランプ政権はどう対応するのか。政権内外で「予防
  攻撃」という名の下での軍事手段が、頻繁に語られるように
  なった。ティラーソン国務長官は軍事行動を含む「あらゆる
  選択肢の考慮」を明言した。
   上院外交委員長のボブ・コーカー議員(共和党)が、「米
  国は北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を予防的に攻
  撃する準備をすべきだ」と述べた。
   上院軍事委員会の有力メンバー、リンゼイ・グラハム議員
  (共和党)は北朝鮮のICBM開発阻止のため大統領に予防
  的軍事攻撃の権限を与える法案を出すと言明。ウォルター・
  シャープ元在韓米軍司令官は、北朝鮮がICBMを発射台に
  載せる動きをみせれば攻撃をかけることを提唱した。199
  0年代から米側の対応策では軍事手段は断続して語られてき
  た。だがいまほど現実味を帯びたことはない。トランプ政権
  は歴代政権よりも確実に強固な姿勢を固めたようなのだ。
                   http://bit.ly/2nWcSLn
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遠藤 誉氏.jpg
遠藤 誉氏
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2017年04月06日

●「中国が戦争に踏み切る5つの条件」(EJ第4495号)

 2017年3月に開催された全人代(全国人民代表大会)で、
1時間40分に及ぶ大演説をした李克強首相は、演説の最後に今
年の重要任務の1つとして、次のように述べています。
─────────────────────────────
 国防・軍隊改革を不断に深化させ、領海・領空・国境防衛の管
理・コントロールを強化する。訓練や戦争の準備を強化し、国家
主権、安全、発展の利益を断固として守らなければならない。
                    ──李克強中国首相
─────────────────────────────
 「戦争の準備を強化する」──李克強首相はなぜこのような発
言をしたのでしょうか。それは、習近平国家主席の意を汲んで、
そのように発言したものと考えられます。
 習近平主席には、昨年秋の「6中全会」(中国共産党中央委員
会第6回全体会議)が「習近平同志を核心とする党中央」という
表現でその功績を讃えており、今年の秋の6中全会では、正式に
「核心」に位置づけられるのは確実です。
 この表現は、これまで、毛沢東、ケ小平、江沢民の3氏のみに
しか与えられておらず、習氏が「核心」になるということは、そ
れだけ権力が強化されることを意味します。
 しかし、この3人の指導者のなかでは、江沢民氏だけが、唯一
実戦を経験していないので、軍としては真のリーダーとして認め
なかったといわれます。その点、毛沢東、ケ小平は革命戦争で実
戦の経験があります。
 そういう意味では、江沢民と胡錦濤の両国家主席は共産党の強
いリーダーではなく、ケ小平の作った集団指導体制の枠組みで、
ケ小平の威光を借りて指導者としての仕事をしていたに過ぎない
──少なくとも軍はそのようにみなしています。
 これに対して習近平主席は大規模な軍制改革を成し遂げていま
す。だが、毛沢東は人民解放軍を創設しているし、ケ小平は文化
大革命後、総崩れになっていた解放軍の立て直しを行い、そのう
えで、1979年に中越戦争を起しています。ところが習近平主
席には実戦経験がないのです。
 中越戦争では、実戦で鍛えられていたベトナム軍に返り討ちに
されたもののその貴重な経験を生かし、軍を立て直し、1984
年の第2次中越国境戦争では勝利しています。ケ小平はこの2回
の戦争によって、軍の近代化を成し遂げているのです。
 それ以来、紛争は数多くあったものの、大きな戦争は起きてい
ないのです。しかもケ小平までは陸軍が中心の軍制改革ですが、
習近平主席のそれは陸軍を減らし、海軍を中心とする改革であり
まさに実戦は未体験ゾーンです。したがって、習主席としては何
としても戦争をしたいと思っているはずです。巨大な軍隊を持つ
と、戦争をしてみたくなるものです。
 中国、朝鮮半島を中心とする東アジア分析をライフワークとす
る講談社の近藤大介氏は、中国が戦争するとしたら、その相手は
次の5条件を満たす国であると分析しています。
─────────────────────────────
@周辺国であること。遠方まで軍隊を派遣して戦争を遂行する気
 は中国にはありません。
Aアメリカが敵にならないこと。たとえば、尖閣諸島を侵略する
 と、日米安保条約によってアメリカと交戦するリスクがあるの
 で、尖閣諸島をめぐる戦争には今のところ慎重です。
B中国が勝てる相手であること。もし負けると、習近平政権の権
 威が失墜してしまうので、強国との戦争には慎重です。
C中国国民が恨んでいる国であること。国民全体の士気を高める
 必要があるからです。
D戦争に大義名分があること。国際社会に向けた大義名分がない
 と参戦できません。
     ──近藤大介氏/月刊WiLL/5月号(2017)
─────────────────────────────
 この5つの条件に該当する国はどこでしょうか。
 それは北朝鮮しかないのです。中国の本音としては、台湾侵攻
ですが、もしこれをやると確実に米軍が参戦してくるので、手が
出せないでいます。
 しかし、北朝鮮に関しては中国が生殺与奪権を握っています。
中国が北朝鮮へ石油の供給を止めれば確実に崩壊します。6〜7
日の米中首脳会談では、トランプ大統領は、そのことを習近平主
席に要求するはずです。だが、下手にそれをやれば、北朝鮮のミ
サイルが確実に中国を襲います。それに、既に述べているように
北朝鮮は中国にとって重要な国であり、中国としては、現状を変
更したくないと思われます。
 その一方で中国はこれ以上北朝鮮が核・ミサイル開発能力を高
めることは容認できないとも考えています。米国と利害が一致す
る点もあるのです。とくに3月6日に、北西部の平安北道の東倉
里から日本海に向って打ち上げられた3発のミサイルは、米軍岩
国基地を狙ったものとの分析があり、中国が承知しなくても米軍
が限定攻撃に踏み切る可能性は高いのです。このミサイルの分析
については、改めて取り上げます。
 それに金正恩政権になってから、中国は北朝鮮を十分コントロ
ールできなくなっており、国境を接しているだけにそのリスクは
きわめて高くなりつつあります。
 もし米国に先に攻撃されると、中国も動かざるを得なくなりま
す。北朝鮮の核施設を占領することが優先されるからです。現在
北朝鮮の核施設の多くは中朝国境近くにあるので、それをめぐっ
て米軍と戦闘になる可能性があります。しかし、中国としては今
は米中戦争は避けたいと考えています。
 そういう状況から、いくつかの条件付きで、北朝鮮という国家
を残すことを前提に、中国は米国と共同で金正恩政権を倒す斬首
作戦に協力する可能性があります。そのさい中国は、THAAD
施設の撤去を条件にすると思われます。
             ──[米中戦争の可能性/065]

≪画像および関連情報≫
 ●金正男暗殺はなぜいまなのか?なぜマレーシアだったのか?
  ───────────────────────────
   金正男の暗殺がなぜこの時期に決行されたことについては
  いま様々な憶測がなされている。主なものとしては、韓国中
  央日報が流した「亡命政権を樹立しようとしていたからだ」
  との情報だ。だが、この情報や説が事実なら、金正男氏が金
  正恩政権に真っ向から対決を挑もうとしたことになる。しか
  し金正男氏が2012年4月、弟の正恩氏に「自分と家族を
  助けてほしい」などと訴える書簡を送っていたことを考える
  とこうした情報には違和感がある。
   また「金正男氏が亡命を計画していたからだ」との説もあ
  る。亡命説については、過去に金正男氏に対する暗殺未遂が
  あった2012年ごろ、金正男氏からではなく、韓国側から
  「韓国に来た方が安全なのではないか」と打診され。それに
  対して金正男氏はそのまま外(海外)に滞在することを望む
  と回答したという。韓国中央日報の報道では、金正男氏が打
  診したこととなっているが、これは全く逆であるようだ。
   こうした点を考慮するなら、今回の暗殺の根拠を、最近金
  正男氏が亡命、特には亡命政権樹立に向かっていたからだと
  するのは少々無理があると思われる。亡命政権を樹立するな
  ら自身の保護壁であった叔母の金慶喜氏やその夫の張成沢氏
  が健在であった時期に行動を起こしていただろう。彼には金
  正恩政権と対決する意思はなかったと思われる。
                   http://bit.ly/2ooKAtJ
  ───────────────────────────

斬首作戦のカギを握る米中首脳会談.jpg
斬首作戦のカギを握る米中首脳会談
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2017年04月07日

●「北朝鮮の標的は佐世保と岩国基地」(EJ第4496号)

 北朝鮮といえば恐怖政治のイメージが強いですが、技術エリー
トの教育には、金正日の時代から大変力を入れており、現在でも
それは続けられています。
 具体的には、2003年から毎年約1000人の若者を選抜し
米ニューヨーク州にあるシラキュース大学に留学させ、テクノク
ラートのための研修を受講させています。これは2011年から
の金正恩の時代になっても、人数を増やして、米国を中心とする
欧米の大学や研究機関で先端知識を学習させており、国家建設の
ためのテクノクラートを育成しています。
 もちろん米国はこのために正式にビザを発給して、それは米朝
関係が悪化した時も中断されることなく続いています。北朝鮮は
1988年にテロ支援国家に指定され、2008年に解除されて
いますが、北朝鮮のテクノクラート教育に関してはそういうこと
に関係なく米国はビザを発給しています。しかし、今回、北朝鮮
が再びテロ支援国家に指定されると、トランプ政権は北朝鮮人の
入国を禁止する可能性があります。
 現在北朝鮮の核・ミサイル技術を支えているのは、このテクノ
クラート集団です。その実力は決して見くびることはできないほ
どレベルは高度です。その技術がよく表れているのが、潜水艦発
射型弾道ミサイル(SLBM)です。北朝鮮は、このミサイルを
「北極星1」と「北極星2」と呼んでいます。
 ここには「コールド・ロンチ」という技術が使われているので
すが、ジャーナリストの山口敬之氏はこの「コールド・ロンチ」
について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 通常のミサイルは、ロケットエンジンに点火して地上から打ち
上げられる。しかし、この「北極星1/2」は、まず、空気圧な
どによって数メートル上空に打ち出され、その後でエンジンに点
火されていたのである。
 SLBMは潜水艦本体を傷つけないため、このコールド・ロン
チが不可欠となる。軌道などから射程1300キロ程度とみられ
るこのミサイルは、アメリカの東西海岸から射出すれば、アメリ
カ本土すべてを狙えることになる。
       ──山口敬之氏 WiLL/5月号(2017)
─────────────────────────────
 SLBMだけではないのです。3月6日朝、北朝鮮は、西部の
平安北道東倉里付近から東方向に向けて、ミサイル4発を同時に
発射しています。これら4発のミサイルは、約1000キロ飛行
し、3発が日本の排他的経済水域(EEZ)に落下していますが
そのうちの1発は、能登半島まであと200キロの水域に着弾し
たのです。もう1発はおそらく失敗とみられます。
 驚くべきは、それらのミサイルがほぼ80キロの間隔で着弾し
ていることです。これは北朝鮮がミサイルを狙った目標場所にほ
ぼ正確に着弾させることができることを意味します。韓国国防部
の発表によると、これらのミサイルは準中距離弾道ミサイル「ス
カッドER」であることがわかっています。
 静岡大学特任教授で軍事評論家の小川和久氏は、これら4発の
ミサイルの隠された狙いについて分析し、緊急レポートを書いて
いるので、以下に要約してお伝えします。
 ミサイル発射後に北朝鮮が発表した動画や写真を見ると、ミサ
イルは、一列に並んだ4基の移動式発射車両から発射されていま
す。これは世界、とくに日米韓の国民に見せつけるためのデモン
ストレーションであって、実戦ではこのような発射をすることは
ありえないことです。もし、そんなことをすれば、米韓両軍に発
見され、一撃で何発ものミサイルが破壊されてしまうからです。
実戦では距離をおいた場所から発射されることになります。
 このミサイル発射について、北朝鮮の「労働新聞」は、金正恩
委員長の言葉として、次のように報道しています。
─────────────────────────────
 有事の際に在日米軍基地の攻撃任務を担う北朝鮮の部隊が発射
訓練をし、成功した。金生恩委員長は米国と韓国が北朝鮮に対し
て、ただ一点の火花でも散らすなら、核弾頭を装填した火星砲で
侵略と挑発の本拠地を焦土化する決死の覚悟を固くした。
      小川和久氏/「金正恩ミサイル発射隠された狙い」
               ──Hanada/5月爽快号
─────────────────────────────
 小川和久氏は、金正恩委員長の語る3つのフレーズ──「有事
の際に」「ただ一点の火花でも散らすなら」「決死の覚悟を固く
した」に、金正恩氏の怯えと覚悟を読み取ることができるといっ
ています。つまり、このフレーズは、米韓両軍が北朝鮮に対して
軍事攻撃を仕掛けなければ、核弾頭搭載のミサイルを発射するこ
とはない。それでもやるなら、われわれは死ぬ覚悟で戦うつもり
である──このように訴えているのです。
 添付ファイルに、韓国の聯合通信が3月7日夜に配信した写真
(上)があります。この写真を反時計回りに135度回転させて
カメラに対する机の傾きを補正したのが下の図です。これについ
て小川和久氏は次の指摘をしています。
─────────────────────────────
 東倉里付近を中心とする半径1千キロの円が、日本海と西日本
に描かれ、ミサイル4発の軌跡が、約4・2度ずつの間隔で扇形
に分かれて引かれており、金正恩氏の指揮棒は、ミサイルの着弾
点よりも日本側の海上を指している。
 当初、着弾海域の延長線上にあることから目標だと考えられた
青森県三沢基地は地図上では1千キロの円の外にあり、円内、つ
まり射程圏内に入っているのは、長崎県の米海軍佐世保基地と山
口県の米海兵隊岩国基地である。──Hanada/5月爽快号
─────────────────────────────
 この分析によると、北朝鮮は、複数のミサイルを同時に佐世保
基地と岩国基地に正確に着弾できることを日米韓に示し、恫喝し
ているのです。      ──[米中戦争の可能性/066]

≪画像および関連情報≫
 ●北朝鮮弾道ミサイル発射の標的は佐世保・岩国基地
  ───────────────────────────
   3月6日に北朝鮮が発射し日本海に落下した4発のミサイ
  ル。それに対して軍事ジャーナリストの小川和久氏は「標的
  は、実は長崎県の米海軍佐世保基地、山口県の米海兵隊岩国
  基地だった」とショッキングなツイート。
   取材に対して小川氏は発射地点からちょうど1000キロ
  の円に、岩国、佐世保が収まっていることを指摘し「バッチ
  リと射程圏内に入っている。(北朝鮮は)核抑止力が備わっ
  た立場で、国内の軍事力を削って、負担を軽くして、経済建
  設にいきたい。弾道ミサイルはピンポイントは必要ないんで
  す。とくに核兵器だった場合は関係ない。地域全部を焦土に
  できる」と分析した。
   また、「日本の街を見ると、国民が生命を政治に丸投げし
  て、安全が確保されていない街。どこにシェルターがあるん
  だ。政治を動かして、国民が安心して暮らせるような日本国
  に変えていく。自ら政治をグリップすることが求められてい
  る」と危機感を募らせた。     http://bit.ly/2orkerf
  ───────────────────────────
 ●写真・図出典/Hanada/2017年5月爽快号より

北朝鮮ミサイルの着弾海域.jpg
北朝鮮ミサイルの着弾海域
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2017年04月10日

●「北朝鮮は張徳江氏が掌握している」(EJ第4497号)

 注目の米中首脳会談が行われ、北朝鮮問題についてもトランプ
大統領と習国家主席の間で話し合いが行われましたが、今回は日
米首脳会談のように共同記者会見が実施されず、米中双方がそれ
ぞれのメディアに都合のよいように報告が行われています。
 ティラーソン米国務長官によると、中国と間では、次の合意が
行われたと伝えられています。
─────────────────────────────
 1.     北朝鮮の核開発抑制に向けた協力強化で一致
 2. 貿易不均衡解決のための「100日計画」策定で合意
 3.米中間の課題を話し合う新たな対話枠組みの設置で合意
 4.   中国は米国によるシリアへのミサイル攻撃を理解
─────────────────────────────
 これらの合意で注目すべきは、習国家主席が北朝鮮対応で「協
力強化」を約束し、シリア攻撃を「理解」したことです。習国家
主席としては、まさか米中首脳会談中に米軍がシリアへのミサイ
ル攻撃をするとは思わないので、北朝鮮制裁への対応強化を約束
させられたことは、想定外であったと思われます。
 しかし、習主席には北朝鮮への制裁強化は事実上できないもの
と思われます。それは中国共産党最高指導部の暗闘が影響してい
るのです。金正恩委員長がこうも強気な理由は、最高指導部の一
部がバックについているからです。習近平氏は国家主席であって
も北朝鮮の金委員長とは一度も首脳会談すらしていないことがそ
れを物語っています。彼は北朝鮮には影響力が低いのです。
 以下は、中国事情に詳しいノンフィクション作家の河添恵子氏
の緊急リポートに基づいています。中国のトップ指導者にはチャ
イナセブン(中国共産党常務委員)と呼ばれる人たちがいます。
─────────────────────────────
  ◎チャイナセブン
  序列第1位/習近平国家主席 ・・・・・・ 太子党派
  序列第2位/李克強首相 ・・・・・・・・ 共青団派
  序列第3位/張徳江全人代常務委員 ・・・ 江沢民派
  序列第4位/兪正声人民政治協会議主席 ・・ 太子党
  序列第5位/瀏雲山政治局常務委員 ・・・ 江沢民派
  序列第6位/王岐山中央規律検査委員会書記  太子党
  序列第7位/張高麗副首相 ・・・・・・・ 江沢民派
─────────────────────────────
 このチャイナセブンの序列3位に張徳江という人物がいます。
張徳江氏は、江沢民派に属しており、太子党の習近平氏とは対立
関係にあります。チャイナセブンには、序列5位の瀏雲山政治局
常務委員と序列7位の張高麗副首相も江沢民派です。
 江沢民氏といえば、上海閥と呼ばれ、北朝鮮とは直接関係がな
いように見えます。しかし、中華人民共和国建国当時の1949
年の頃の江沢民氏のキャリアは中国東北部の吉林省(省都・長春
市)にあったのです。吉林省は北朝鮮と隣接しています。
 河添恵子氏は、江沢民氏と北朝鮮との関係について、次のよう
に書いています。
─────────────────────────────
 江氏は、50年代、長春第一汽車製造廠(自動車製造工場)に
勤務し、モスクワのスターリン自動車工場で研修を受けた。江氏
は昇格していく段階で、張徳江氏をドンとする「吉林幣」(ジー
リンパン)を形成する。吉林省の幹部を、次々と高級幹部に抜擢
していったのだ。張氏は中国・延辺大学朝鮮学部で学び、北朝鮮
・金日成総合大学経済学部に留学しており、朝鮮語が巧みだ。
 そして、江氏が国家主席就任翌年の1990年3月、初の外遊
先は「兄弟国」の北朝鮮だった。金正日総書記と会談した際に、
張氏が通訳を務めた。正日氏が2006年1月に中国・広東州大
学街を視察した際も、当時、広東省委員会書記だった張氏が随行
し、江氏が同伴している。          ──河添恵子氏
          ──2017年4月6日発行「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 このようにして金正日前総書記時代に張徳江氏は、「中国の代
理人」のポジションを固め、瀋陽軍区を中心に北朝鮮との関係を
一層緊密化し、序列3位の地位にまで昇りつめたのです。
 習近平氏は政権の座に就くと、人民解放軍の軍制改革を断行し
従来の7大軍区を5軍区に再編し、すべてを北京でコントロール
しようとしたのですが、旧瀋陽軍区を含む「北部軍区」は再編に
よってかえって勢力は拡大し、それはかなわなかったのです。
 中国国内外の専門家によると、事実上張徳江氏が率いる北部軍
区が金正恩体制の後盾になっており、食料もエネルギーも北部軍
区や遼寧省の国境町、丹東市周辺の軍産企業から北朝鮮に流れて
いるといわれています。おそらく核技術についても北朝鮮へ供与
されていると思われます。また、張徳江氏は、現在、韓国の大統
領選を有利に進めている文在寅候補とも面談しています。
 このように習主席に北朝鮮はどうすることもできないのです。
そこで習主席は北朝鮮との関係を半ば放棄し、韓国の朴政権に接
近することによって、韓国の属国化に動いたのです。そのため、
一時朴政権は中国に大きく傾斜し、2015年9月、北京の天安
門広場で行われた「抗日戦勝70年記念式典」に出席した朴氏は
ロシアのプーチン大統領の隣りのポジションという破格の厚遇を
受けたのです。
 しかし、朴大統領は北朝鮮問題を解決させるために習近平主席
に近づいたのに、習政権は何もしてくれなかったので見切りをつ
け、日米韓の連携に戻り、習主席への仕返しとしてTHAADの
配備を容認したのです。習主席は北朝鮮の問題に関しては、何も
しなかったのではなく、何もできなかったのです。
 したがって、トランプ大統領との会談で、北朝鮮の核開発抑制
に向けた協力強化で一致」としても、習主席にはそれを実行する
ことは期待できないのです。しかし、米軍の北朝鮮攻撃やいわゆ
る金正恩斬首作戦への協力をすることは可能であるといえます。
             ──[米中戦争の可能性/067]

≪画像および関連情報≫
 ●香港親中メディア、党内序列3位・張徳江を連日糾弾
  ───────────────────────────
   一貫して中国政府擁護の報道を繰り返してきた香港随一の
  親中メディア「成報」が2016年9月28日から今月4日
  までに、江沢民元総書記の側近、党内序列3位の張徳江全人
  代常務委員会委員長を痛烈に批判し、解任と責任追及を求め
  る記事4本を連日トップ紙面に掲載した。国内外がこの異例
  な動きに強い関心を寄せているなか大紀元コラムニストは江
  派と対立する習近平指導部の命令である可能性を指摘した。
   一連の報道はいずれも容赦のない内容で、香港を主管する
  中央港澳工作協調小組組長でもある張氏の「数々の問題点」
  を指摘した。▼強硬かつ一方的な政策決定が香港社会の対立
  を深化させ、2014年末に学生ら民主派による大規模な道
  路占拠運動を誘発した。▼2002〜03年、広東省のSA
  RS(重症急性呼吸器症候群)発症情報を隠ぺいしたことで
  香港および国内外に感染を拡大させて多くの死者を出した。
  ▼本土の腐敗の悪習を香港政界に持ち込んだ。▼香港政界に
  闇勢力を浸透させた。
   記事は張氏を「香港を乱す災いの元凶(災星)」「香港を
  乱す四人組の一人である」「糞をかき混ぜる棒である」と激
  しい言葉で批判し、「現最高指導部では江沢民派の代表であ
  る張は、絶えず政局を乱し、各種の改革を妨げている」「江
  沢民は張を庇う黒幕である」と元総書記まで名指して、「香
  港市民が強く望んでいる」として張氏の解任と責任追及を習
  近平指導部に「進言した」。    http://bit.ly/2oODXRS
  ───────────────────────────

張徳江全人代常務委員長.jpg
張徳江全人代常務委員長
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2017年04月11日

●「北朝鮮と中国の本当の関係を探る」(EJ第4498号)

 中国にとって北朝鮮は、きわめて利用価値の高い国であるとい
えます。そのポイントを上げると次の3つがあります。
─────────────────────────────
        1.地政学的利点のある隣国
        2.緩衝地帯・屏風・番犬論
        3.かつての血の友誼の同盟
─────────────────────────────
 第1は、「地政学的利点のある隣国」であることです。
 中国は北朝鮮と幅広く国境を接しています。どこの国でも隣国
との関係は難しいものですが、これまでのところ両国の関係は比
較的良好であるといえます。
 北朝鮮は、民主主義国の大韓民国と38度線を境に二分されて
いる分断国家です。中国から見ると、米軍の駐留する民主主義国
の韓国と直接接していない点でメリットがあります。
 第2は、「緩衝地帯・屏風・番犬論」という視点です。
 中国から見ると、北朝鮮との間に長い国境線を持っているとい
うことは、外部から中国に侵略があったときの屏風の役割をする
緩衝地帯になり得ます。また、中国に代わって米国に吠えてくれ
る番犬的存在でもあります。
 第3は、「かつての血の友誼の同盟」であることです。
 1950年の朝鮮戦争のとき、北朝鮮軍は奇襲作戦によって、
ソウルを占領し、敗走する韓国軍を釜山付近まで追い詰めたので
す。ところが、国連安保理決議により、米軍を中心とする国連軍
が編成され、韓国に派遣されると、形勢が逆転します。補給線が
延びきっていた北朝鮮軍が今度は敗走し、国連軍はソウルを奪還
し、平壌も占領、さらに中朝国境近くまで迫り、北朝鮮は存亡の
危機に立たされたのです。
 ところが、1950年10月、鴨緑江を越えて参戦したのが中
国の人民志願軍。「人海戦術」を駆使して国連軍を押し戻し、平
壌とソウルを奪い返したのです。その後戦況は一進一退になり、
1953年7月27日、板門店で休戦協定が締結され、現在にい
たっています。このとき、北朝鮮と中国の間に生まれたのが「血
の友誼の同盟」です。この同盟関係は簡単に壊れることなく、現
在も続いているといわれます。
 この血の友誼の関係を象徴しているのは、中国と北朝鮮の首脳
同士が会ったときの挨拶のハグの親密さです。それは、添付ファ
イルの3枚の写真によくあらわれています。
 写真Aは、1990年3月、江沢民氏が党総書記に就任した翌
年に北朝鮮を訪問し、金正日総書記に会ったときのハグです。両
手での握手はもちろん、弾けるような笑顔で強くハグしているこ
とがわかります。ノンフィクション作家の河添恵子氏によると、
このまるで恋人同士のようなこの関係は「中国共産党と北朝鮮の
指導者が面会する時の特殊な儀礼」とか、「中朝の“鮮血擬血”
の友情な証」といわれているそうです。
 写真にはありませんが、胡錦濤国家主席が2004年に北朝鮮
を訪れたときも金正日総書記と同様のハグをしているし、李源朝
国家副主席(共青団派)がはじめて金正恩委員長と面会したとき
も、写真Bのようにハグしています。
 しかし、2008年3月、習近平国家副主席が北朝鮮を訪問し
金正日総書記と面会したときはハグはなく、習副主席は微笑み歩
み寄ったものの、双方は一定の距離を保った普通の握手だけだっ
たのです。
 たかが挨拶のハグというかもしれませんが、習近平主席は北朝
鮮に対して冷たいのです。中国は韓国と1992年に国交を樹立
していますが、それ以来中国は、韓国と北朝鮮に対して等距離外
交を基本としてきたのです。
 それでも習政権以前のケ小平、江沢民、胡錦濤政権では、等距
離外交とはいいながら、北朝鮮重視を続けてきています。しかし
習政権になると、露骨に韓国を重視するようになったのです。こ
れについては、昨日のEJでも言及しています。
 習近平主席は、挨拶に訪中した崔竜海(チェリンヘ)朝鮮人民
軍総政治局長に会っていますが、そのときの模様について、河添
恵子氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 2013年5月、習主席は崔竜海朝鮮人民軍総政治局長と会見
した。彼は、金正恩が指導者となって初めて中国に送り込んだ特
使だった。中韓メディアは、「雀竜海が金正恩の親書を手渡すと
習主席は何も言わず無表情で受け取り、片手で秘書に手渡した」
と写真と共に報じた。
 その翌月、習主席は朴槿恵大統領を中国へ招いた。季克強首相
(序列2位)、張徳江(序列3位)とも会見や食事を共にするな
ど大歓待を受けた朴槿恵大統領は、習主席にハルビン駅に(伊藤
博文を暗殺したとされる)安重根義士記念館の建設を懇願する。
           ──月刊WiLL/5月号(2017)
─────────────────────────────
 ここまでの分析でわかったことは、中国が北朝鮮をめぐって必
ずしも一つではないことです。北朝鮮と距離を置こうとする主流
の習主席一派と、北朝鮮を擁護する江沢民派が、目下権力闘争の
真っただ中にあるのです。
 これでは、習近平主席が、いかにトランプ米大統領から北朝鮮
をコントロールせよと要請されてもできるはずがないのです。も
しやれることがあるとすれば、米軍の攻撃を黙認することだけで
あると思います。もしかすると、先の米中首脳会談において習主
席は「黙認」を示唆している可能性があります。
 現在、北朝鮮に最も密着しているのは、「北部戦区」であり、
序列3位の張徳江氏(江沢民派)が仕切っています。もし、この
戦区が北朝鮮と通じてクーデターを起こす可能性がないとはいえ
ないのです。そういう場合、北朝鮮の核は、北京へも向けられる
ことになります。そうであるとすると、習主席が米国と組むこと
は考えられます。     ──[米中戦争の可能性/068]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ中国は北朝鮮からの石炭輸入を停止したのか
  ───────────────────────────
   2017年18日、中国は、北朝鮮からの石炭輸入を今年
  いっぱい停止すると発表した。石炭は北朝鮮の輸出の3分の
  1を占めており、この禁輸措置で、GDPの5%に当たる約
  10億ドル(約1130億円)が吹き飛ぶだけに、北朝鮮に
  は非常に厳しい制裁となる。度重なるミサイル発射と核実験
  にもかかわらず、これまで一貫して北朝鮮擁護の立場をとり
  制裁にも消極的だった中国が、ついに中朝関係を見直すのだ
  ろうか?
   金正恩氏は政権の座について以来、中国が核開発に反対し
  ているにもかかわらず、核実験とミサイル発射をこれまでに
  ない頻度で行っている。金正男氏暗殺の前日で、安倍首相が
  訪米中の12日にも、日本海にミサイルを発射した。中国の
  外交政策アドバイザーで南京大学教授の朱鋒氏は、これまで
  中国は北朝鮮と兄弟関係にあったが、金正恩政権は中国の国
  益になることを全くしたことがなく、いまや中国の忍耐力は
  尽きつつあると述べる(ニューヨーカー誌)。ロイターは、
  核開発問題を平和的に解決しようとしない金正恩氏の態度に
  中国はすっかり嫌気がさしてしまっている、という中国の北
  朝鮮専門家の言葉を紹介した。フォーブス誌も、リスクやコ
  ストが高まる中、60年間続いた中朝の友好関係を中国が考
  え直すことが予測されると述べ、両国の関係は続くものの国
  際社会とうまく付き合うため、中国は距離を置くだろうとし
  ている。             http://bit.ly/2nZ5oEw
  ───────────────────────────

中国幹部と北朝鮮幹部の親密さの差.jpg
中国幹部と北朝鮮幹部の親密さの差
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2017年04月12日

●「米は北朝鮮を本当に攻撃できるか」(EJ第4499号)

 朝鮮半島の緊張が高まっています。4月10日の時点で、米空
母カールビンソンが予定を変更して朝鮮半島に引き返しつつあり
ます。命令の出たのは4月8日のことです。シリアの空軍基地を
米軍がミサイルで攻撃した2日後のことです。
 空母カールビンソンは、3月15日にも韓国南部釜山に入港し
ています。米韓合同軍事演習に参加するためです。その後、シン
ガポールに向い、オーストラリアに寄港する予定であったのです
が、急遽朝鮮半島に戻るよう命令が下されたのです。何のための
命令でしょうか。
 理由は2つあると思います。1つ目の理由は、北朝鮮に対する
「威嚇」です。だからこそ、予定変更を公表したのです。一般的
に空母の航行予定は極秘であり、攻撃されるリスクもあるので、
わざわざ明かすことはないのです。
 それに、東アジアには多くの米軍基地があり、本当に北朝鮮を
攻撃するつもりであれば、わざわざ空母を派遣する必要はないか
らです。しかも米海軍の横須賀基地には、空母ドナルド・レーガ
ンがいるのです。空母の2隻体制は非常に珍しいといえます。そ
れならば、なぜ、空母カールビンソンを、朝鮮半島に戻そうとし
ているのでしょうか。
 それは、朝鮮半島有事のさい、韓国にいる米軍関係者の家族を
避難させるためではないかと考えられるのです。これが2つ目の
理由です。空母であれば、大勢の人を乗せて避難させることがで
きるからです。
 実は朝鮮半島には、それほど危機が高まっているのです。コリ
ア・レポート編集長の辺真一氏は、これについて次のようにいっ
ています。
─────────────────────────────
    トランプ対金正恩の究極のチキンレースである
                   ──辺真一氏
─────────────────────────────
 米トランプ政権は、もし北朝鮮が、核実験かミサイルの発射な
どの行動を起こしたとき、米軍は直ちに北朝鮮に何らかの攻撃を
起こす構えです。これについては、先の米中首脳会談でトランプ
大統領は習近平国家主席にその旨を伝え、習主席から何らかの暗
黙の了承を得ていると思われます。
 北朝鮮がそういう行動を起こすと思われる日は、4月に関して
は次の2日があり、危機は切迫しています。
─────────────────────────────
    4月15日/太陽節・金日成105回誕生日
    4月25日/建軍節・朝鮮人民軍創設記念日
─────────────────────────────
 問題は、北朝鮮がこれらの記念日に核実験かミサイル発射を果
してやるかどうかです。もしやらなければ金正恩委員長は米国の
「威嚇」に屈したことになります。
 かつて金正恩委員長は、核実験の凍結と米韓合同軍事演習の中
止とのバーター取引を提案したことがあります。2015年の新
年の辞においてです。しかし、この提案がオバマ大統領によって
否定されてからは、核実験の凍結を外交カードに使うことはあき
らめています。そのことは、2016年1月と9月の4回目、5
回目の核実験を強行したことからも明らかです。
 したがって、金正恩委員長としては、カールビンソンがやって
こようと、シリアがミサイルで攻撃されようと、それによって、
第6回目の核実験をあきらめることは、限りなくゼロに近いとい
えます。金正恩委員長は「核を持っている限り、絶対に攻撃され
ることはない」と信じ切っているからです。だから、米国がいか
に「攻撃するぞ!」という姿勢を示しても動じないのです。
 そういうわけで、金委員長が上記の記念日に核実験を行う可能
性は高いと思われます。問題は、北朝鮮が実際に核実験を行った
とき、今度はトランプ政権が決断を迫られることになります。も
し攻撃を行わないと、オバマ政権と同じであるとみなされるし、
核兵器を持つ威力が米国にも通じると、かえって北朝鮮を増長さ
せることになってしまいます。
 かつてクリントン政権(1992年〜2000年)のとき、一
度北朝鮮への攻撃を真剣に検討したことがあります。そのときは
当時の金泳三韓国大統領の反対で思いとどまったのですが、これ
について、辺真一氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 クリントン大統領は全面戦争という最悪のシナリオに備え19
94年5月19日、シュリガシュビリ統合参謀本部議長らから戦
争シミュレーションのブリーフィングを受けた。シミュレーショ
ンの結果は「戦争が勃発すれば、開戦90日間で▲5万2千人の
米軍が被害を受ける▲韓国軍は49万人の死者を出す▲戦争費用
は610億ドルを超える。最終的に戦費は1千億ドルを越す」と
いう衝撃的なものだった。
 当時、極東に配備されていた在日米軍3万3千4百人と在韓米
軍2万8千5百人を合わせると、約6万2千人。なんとその約8
割が緒戦3か月で被害を受けることになる。駐韓米軍のラック司
令官にいたっては「南北間の隣接性と大都市戦争の特殊性からし
て米国人8万〜10万人を含め(民間人から)100万人の死者
が出る」と報告していた。       http://bit.ly/2nxsXbk
─────────────────────────────
 まして北朝鮮は1994年のときと違い、今や核とミサイルを
保有しているのです。今のところ米本土への攻撃は無理としても
日本における米軍基地は射程に入るのです。それでも米国は攻撃
に踏み切ることはできるでしょうか。
 しかし、トランプ大統領は予測不能なのです。何をするか予測
はつかないのです。これだけのブラフにもかかわらず、北朝鮮に
核実験をやられて、何もできないとしたら、米国は完全な敗北と
いうことになってしまいます。それはトランプ大統領の我慢のレ
ベルを超えています。   ──[米中戦争の可能性/069]

≪画像および関連情報≫
 ●北朝鮮の核実験が見送られる可能性はないのか?/辺真一氏
  ───────────────────────────
   北朝鮮の6回目の核実験が「カウントダウンに入った」と
  韓国のメディアの多くは伝えている。咸鏡北道吉州郡豊渓里
  にある核実験場を空撮した偵察衛星画像を分析した米ジョン
  ズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」の予測
  や「金正恩(委員長)が決心すればいつ実験されてもおかし
  くない」との韓国国防部の見解に起因しているようだ。本当
  に北朝鮮は6回目の核実験に踏み切るのか?見送る可能性は
  全くないのか?
   過去遡ってみると北朝鮮が核実験を予告、示唆しておきな
  がら実際にやらなかった例は何回かある。一度目は2010
  年10月から11月にかけてで、オバマ大統領の訪韓(11
  月10日)に合わせてであった。また、2012年にも4月
  から5月にかけて同様の動きを示したことがあった。ゲーツ
  国防長官(当時)が中止を求める一方で、国連安全保障理事
  会の常任理事国5カ国(米国、英国、フランス、ロシア、中
  国)が共同声明を出し北朝鮮に核実験の自制を求めていた。
  その結果、北朝鮮の核実験の動きは、いずれも単なるアドバ
  ルーン、デモンストレーションで終わっていた。実際に3回
  目の核実験が行われたのは、翌年の2013年2月12日で
  あった。             http://bit.ly/2pltTfi
  ───────────────────────────

コリア・レポート編集長/辺真一氏.jpg
コリア・レポート編集長/辺真一氏
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2017年04月13日

●「4つの選択肢で北朝鮮に対処する」(EJ第4500号)

 米軍は、空母カールビンソンだけでなく、空母ドナルド・レー
ガンにも朝鮮半島沖への出動を命令しています。空母2隻体制で
す。戦車を積んだ強襲上陸艦も周辺海域に展開しています。そう
でなくても、米韓合同軍事演習で米韓の軍隊が朝鮮半島周辺に集
結しているのです。米軍は本気で戦争を始める構えです。
 米軍による北朝鮮への先制攻撃──冷静に検討すると、もし本
当にこれが実施されると、米軍とその家族、韓国軍、韓国一般市
民、そして米軍基地を持つ日本にも、大きな被害が及ぶ恐れがあ
ります。
 そのため、米国の歴代政権、クリントン政権もブッシュ政権も
オバマ政権も、中国をからめて北朝鮮との話し合い路線をとって
きたのですが、結局、北朝鮮に多くの核兵器を作らせる時間を与
えてしまったといえます。北朝鮮にまんまと騙されてしまったこ
とになります。
 トランプ大統領率いるトランプ米政権は、これまでの北朝鮮政
策は間違っていたとはっきり認めています。そして、高度で危険
な核・ミサイル技術を持つ最もリスクの高い国として、北朝鮮に
対峙しようとしています。しかし、北朝鮮を核保有国としては絶
対に認めない方針です。あくまで非核化です。
 それでは、米軍はこれほどの規模の臨戦態勢をとって、北朝鮮
に対して、何をやろうとしているのでしょうか。それは、北朝鮮
の出方によって違ってきます。TBSの番組「ひるおび」の伝え
る最新の情報によると、次の4つの選択肢があるようです。
─────────────────────────────
   ◎北朝鮮           ◎米国
 1.何もしない
 2.ミサイルを発射する ・・・・ 金融制裁を中国に実施
 3.核実験をする ・・・・・・・ 金融制裁を中国に実施
 4.ICBMを発射する ・・・・ 金正恩斬首作戦を実施
─────────────────────────────
 トランプ政権は、北朝鮮問題についてはあくまで「中国が責任
を負うべき」と考えています。数次に及ぶ国連安保理決議を無視
して北朝鮮が核・ミサイルの開発を続けさせた責任は中国にある
と考えているのです。この前提に立って、上記の4つの選択肢を
設けたのです。
 もし、北朝鮮が「1」の「何もしない」のであれば、米軍の威
嚇が効いたということであり、引き続き、北朝鮮には圧力をかけ
続けることになります。
 しかし、「2」のミサイルの発射や「3」の核実験が行われた
場合、中国に厳しい金融制裁をかけるといいます。つまり、今後
北朝鮮に核実験やミサイル発射をさせたら、それは中国の責任で
あり、中国の金融機関に制裁を発動するというのです。この話は
先の米中首脳会談でトランプ大統領は、習近平主席に対し通告し
ているはずです。もちろん習主席は認めていないでしょう。
 何しろトランプ大統領VS習近平国家主席による米中首脳会談
は、終了後の共同声明も共同記者会見もないという異常さです。
終了後に両国が勝手に自国のメディアに発表するだけなのです。
したがって、米海軍によるシリアのミサイル攻撃も、米国と中国
では、次のように発表が異なるのです。
─────────────────────────────
     米国発表:米軍のシリア攻撃を理解する
     中国発表:対話による解決が必要である
─────────────────────────────
 選択肢「4」の「ICBMを発射する」が行われた場合、米軍
は直ちに軍事行動を実施するとしています。このことは、中国だ
けでなく、日本の安倍首相にも、韓国にも伝えられています。そ
のため、安倍首相は、長嶺駐韓国大使を急遽帰還させたのです。
目的は、本当に戦闘が起きたとき、在留邦人をどのようにして避
難させるかなどの対策をとるためです。
 それでは、北朝鮮はどの選択肢をとるでしょうか。
 「1」の選択肢「何もしない」はあり得ないと思われます。こ
の選択肢をとるということは、北朝鮮は米国の圧力に屈したこと
を意味するからです。
 しかし「2」と「3」の選択肢は必ず実施されると思います。
それも「3」の「核実験をする」は必ず実施されるでしょう。問
題はそれを中国が止められるかどうかです。つまり、今回米国は
力づくで、中国に北朝鮮の起こす国際社会への迷惑な行為の責任
をとらせようとしているのです。これに対して中国がどのように
出るかが注目されます。
 選択肢「4」の「ICBMを発射する」を北朝鮮がやったとき
は、その成否にかかわらず、「レッドラインを超えた」として、
米軍は軍事行動を起こすことになります。軍事作戦の最大の課題
は、いかに短期日で報復能力を壊滅できるかにかかっています。
しかし、これは非常に困難です。これについて書かれている次の
記事を読んでください。
─────────────────────────────
 トランプ政権下での米軍の目標は、開戟から短時日のうちに報
復能力まで壊滅させることだ。朝鮮半島周辺に可能な限り多数の
空軍力、海軍力を集結させ、核・ミサイル施設だけでなく、地上
軍基地や重火器集積地も間髪をいれずに攻撃する必要がある。
 仮に弾道ミサイルと核兵器をすベて破壊したとしても、北朝鮮
にはなお通常兵器と100数十万の兵員が残る。軍事境界線に近
い韓国の京畿道、江原道、ソウル特別市は合計2400万人の人
口密集地帯である。北朝鮮には牽引砲、自走砲、多連装ロケット
砲などがそれぞれ2000〜4000程度ある。射程は20キロ
程度。在米軍事筋は「どう隠しても、発射時点で兵器の場所が分
かり、すぐに破壊できる」と言うものの、米韓地上部隊や民間人
への被害は不可避である。  ──「選択」/2017年4月号
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/070]

≪画像および関連情報≫
 ●金正恩殺害を習近平は黙認するのか!?
  ───────────────────────────
   中国にとっても金正恩はもはや捨て置けぬ存在であるはず
  です。金正恩は就任してから中国の意向を無視し続け、パイ
  プ役だった張成沢も処刑してしまいました。またTHAAD
  配備で対立する韓国では5月9日に大統領選で親北(という
  より北朝鮮そのものの)の文在寅が当選確実な情勢です。こ
  のままでは朝鮮半島全体が北朝鮮の支配下になってしまいま
  す。したがって、習近平が米軍による斬首作戦を黙認するの
  と引き換えに、金政権打倒後の利権を確保するため急きょ渡
  米・会談しているという見方があります。
   一方で、別の見方もあります。現在、中国で朝鮮半島の利
  権を束ねているのは政治局常務委員の張徳江(序列3位)と
  劉雲山(序列5位)という、江沢民派の人物です。習近平は
  今年秋の党大会で2人が退任するのを機に江沢民派を一掃す
  るつもりですが、まだ確定していません。
   習近平としては党大会まではカードを残しておきたい思惑
  から今回は江沢民派の意見を聞き入れたのかもしれません。
  (5日に金正恩が日本海に向けミサイルを発射したのは、劉
  雲山から「習近平に殺害を黙認させない」という情報を掴ん
  だからではないかとも考えられます)。ただし、習近平が朝
  鮮半島に対する決定権を掌握しきれていないとなると、引き
  続き中国指導部内の勢力争いが影響することになります。
                   http://bit.ly/2p1TSZF
  ───────────────────────────

米中首脳会談(フロリダ).jpg
米中首脳会談(フロリダ)
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2017年04月14日

●「日本の核武装を阻むNPTの存在」(EJ第4501号)

 4月27日に米軍が北朝鮮を攻撃するという噂がまことしやか
に広まっています。なぜ、4月27日なのでしょうか。
 それは、25日の北朝鮮の建軍節に北朝鮮がミサイル発射か核
実験をやるとして、それに対抗するために米軍が動くのではない
かということで流された噂であると思われます。それに27日は
新月であり、夜が暗いからです。米軍の攻撃は夜が多いのです。
シリアの空軍基地への空爆も夜に実施されています。
 しかし、昨日のEJでも述べたように、金正恩委員長が仮に核
実験をやっても、ICBMを発射しない限り、米軍は直ちには動
かないと思われます。ただ、トランプ大統領は、核実験が行われ
れば、中国に対して、とくに通商問題を中心として、相当強いプ
レッシャーをかけることになると思われます。
 4月7日のことです。米国家安全保障会議(NSC)は、トラ
ンプ大統領に「在韓米軍への核兵器の再配備」を提案したといわ
れています。関連記事を次に示します。
─────────────────────────────
 【パームビーチ(米フロリダ州)=永沢毅】米NBCニュース
は4月7日、米国家安全保障会議(NSC)が対北朝鮮政策の見
直しの一環で、在韓米軍への核兵器の再配備をトランプ大統領に
提案したと報じた。複数の情報機関や軍高官の話として伝えた。
北朝鮮の核・ミサイル問題への対応策として検討している。
 NSCは北朝鮮の金正恩委員長の体制転換計画も選択肢として
トランプ氏に提案したという。米政府はこのほど対北朝鮮政策の
見直しを終え、核の再配備とあわせていずれのシナリオも新たな
計画に含まれているという。核兵器の再配備先としては、ソウル
南方にある烏山(オサン)空軍基地が候補に挙がっている。
                http://s.nikkei.com/2prLy5c
─────────────────────────────
 このように朝鮮半島が緊張感をはらんでくると、必ず出てくる
のが、韓国と日本の核武装論です。世界最貧国といわれる北朝鮮
が大国アメリカに対して一歩も引かない姿勢がとれるのはやはり
核・ミサイル兵器を所有しているからです。米国としては、シリ
アを攻撃できても、核を持つ北朝鮮への攻撃はどうしても慎重に
ならざるを得ないのです。
 韓国の核武装に関しては、2月15日に発表された韓国紙・中
央日報の世論調査では次のようになっています。
─────────────────────────────
    ・「とても賛成」 ・・・・・・ 32・8%
    ・「ある程度賛成」 ・・・・・ 34・9%
    ・「どちらかといえば反対」・・ 20・9%
    ・「とても反対」・・・・・・・  9・6%
              http://huff.to/2o3H4k6
─────────────────────────────
 これによると、核武装の賛成は67・7%、反対は30・5%
となり、賛成が反対を大きく上回っています。1月15日の韓国
ギャラップ調査でも、賛成54%、反対38%と、同様の傾向を
示しています。
 日本以上に北朝鮮の脅威を身近に感じている現在の韓国の国民
としては当然の世論であると思います。しかし、日本の場合は、
核武装は慎重に考える必要があります。
 実は、EJでは2009年に日本の核武装論として、国際政治
・米国金融アナリストで政治思想家の伊藤貫氏の主張を紹介して
います。伊藤貫氏は「核武装がなければ日本は滅ぶ」と主張して
いる人です。
─────────────────────────────
       2009年8月24日付、EJ第2640号〜
 「伊藤貫氏による日本核武装論」/ http://bit.ly/2o58cQi
─────────────────────────────
 2009年の時点と現在では、東アジア情勢は大きく変化して
おり、伊藤貫氏の主張はかなり的中しているのです。しかし、だ
からといって、日本の核武装実現のハードルはきわめて高いとい
えます。なぜなら、もし、日本が核武装をする場合、憲法の改正
が必要であることに加えて、NPT(核兵器拡散防止条約)から
脱退しなければならないことや、日米安全保障条約を維持するこ
とが困難になります。
 NPTは、国連常任理事国の米国、英国、フランス、ロシア、
中国の5ヶ国には核兵器の保有を認め、その他の国々の核兵器の
保有を禁止するという不公平極まりない条約です。それでも現在
そのNPTには、190ヶ国が加盟しており、世界秩序になって
いるのです。
 世界には、この5大国以外にも核兵器を保有している国があり
ます。インドとパキスタンです。これら2国は最初からNPTに
加盟せず、核兵器保有を実現しています。北朝鮮はNPTに加盟
していたのですが、1993年に脱退しています。
 もうひとつ、核兵器を保有も否定もしていない国があります。
それはイスラエルです。しかし、全世界はイスラエルは核保有国
であることを知っています。したがって、現在核兵器を保有して
いる国は、全部で9ヶ国ということになります。
 NPTについては、次のようなことがいわれています。
─────────────────────────────
 ・NPTは、日本とドイツの核武装を封じる目的で作られて
  いる。           ──村田良平外務事務次官
 ・米国と中国は「日本に核武装させない『密約』」を結んで
  いる。         ──伊藤貫国際政治アナリスト
─────────────────────────────
 上記の村田良平氏は、日本のNPT加盟時の外務省事務次官で
あり、伊藤貫氏指摘の「密約」は、1972年2月に、ニクソン
米大統領とキッシンジャー大統領補佐官が北京で、中国の周恩来
首相と交わしたものといわれています。
             ──[米中戦争の可能性/071]

≪画像および関連情報≫
 ●【寄稿】日韓の核武装論、米国がすべきことは
  ───────────────────────────
   北朝鮮の金正恩第1書記は2016年6日、最近の水素爆
  弾の実験と衛星の打ち上げについて、革命に最後の勝利をも
  たらす「前例のない」成果だと称賛した。こうした自画自賛
  は目新しいものではない。しかし、日本では、北朝鮮の核開
  発プログラムと、安全保障に関する米国との取り決めが十分
  ではないかもしれないという感覚を背景に、タブー視されて
  きた核兵器議論が出てきている。安倍晋三首相は4月1日、
  「憲法9条は一切の核兵器の保有および使用をおよそ禁止し
  ているわけではない」とする答弁書を閣議決定した。
   一方、韓国の与党は周辺諸国に対する軍事的な保険として
  「平和」利用目的のプルトニウムを貯蔵しておくよう朴槿恵
  大統領に求めた。韓国の保守系主要紙、朝鮮日報は2月19
  日付の記事で、既存の民間核施設を利用して1年半で核爆弾
  を製造する方法を詳細に報じることまでしている。
   日本と韓国は核不拡散条約の加盟国であり、日本の反核姿
  勢の原点は広島と長崎に原子爆弾が投下された1945年に
  遡る。だが仮に両国が、米国の「核の傘」が畳まれつつある
  と感じれば、そうしたスタンスはどちらの国にとっても核保
  有国という核クラブへの参加――もしくは少なくとも喫緊に
  それを目指すと表明すること――を必ずしも妨げるものでは
  ない。日本はすでに、原子力発電所の使用済み核燃料から抽
  出された11トンのプルトニウムを国内に保有している。
                 http://on.wsj.com/2pslAOO
  ───────────────────────────

朝鮮半島沖に向う米空母カール・ビンソン打撃群.jpg
朝鮮半島沖に向う米空母カール・ビンソン打撃群
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2017年04月17日

●「静かな先制攻撃/発射の残骸作戦」(EJ第4502号)

 4月11日、トランプ米大統領は、ツイッターで、次のように
ツィートしています。
─────────────────────────────
      North Korea is looking for trouble.
─────────────────────────────
 メディアによって訳し方は異なりますが、「北朝鮮は挑発的な
ことをしようとしている」という意味になります。「喧嘩を売ろ
うとしている」とも訳せます。
 これに続いてトランプ大統領は、次のように発言しています。
しかもこれを何回も繰り返しているのです。
─────────────────────────────
 中国が米国への支援を決断するのであれば、素晴らしい。そ
 うでないのなら、われわれは彼ら抜きで解決する。
                  ──トランプ米大統領
─────────────────────────────
 ここで「われわれ」というのは、「米国とその同盟国」という
意味です。具体的には韓国と日本です。トランプ大統領の口ぶり
では、中国にはあまり期待しておらず、単独でやることの方に力
点が置かれているように感じます。トランプ大統領は、何となく
自信を持って発言しているようにみえます。
 何しろ「戦争が勃発すれば、開戦90日間で5万2千人の米軍
が被害を受け、韓国軍は49万人の死者を出す」といわれている
のです。日本にも関係のあることであり、軽々しく「われわれで
やる」といわれても困ります。
 しかし、この試算はクリントン政権時のものであり、それから
15年以上が経過しているのです。その間に軍事技術は大きく発
展しています。トランプ政権は経験豊富な軍人出身者が閣僚や補
佐官として大統領をサポートしています。大統領は彼らから重要
な情報を聞いているのではないでしょうか。だから、大統領はあ
れほど自信満々なのではないか、と。そういう想定に立って考察
してみることにします。
 現在、米韓合同軍事演習を行っており、朝鮮半島周辺には米軍
と韓国軍の艦艇が集合しています。そこに空母カール・ビンソン
もやってくるのです。これは、必ずしも北朝鮮を攻撃するためで
はなく、次の2つの目的があるのです。攻撃のためであれば、東
アジアには多くの米軍基地があるので、空母を中心に艦艇を集結
させる必要はないのです。
─────────────────────────────
       1.北の弾道ミサイルを迎撃する
       2.韓国在住の米国民を救出する
─────────────────────────────
 ミサイルを迎撃するためには、迎撃能力を持つ艦艇を集結させ
ることによって、きめの細かいネットワークを築くことができ、
北朝鮮がミサイル発射に成功しても、ほぼ100%迎撃すること
が可能になります。これが「1」です。
 「2」は、万一の場合の韓国に在住する米軍家族や米国ビジネ
スパースンを救出するためです。とくに空母には大勢乗せられる
ので、万全です。この救出について、米軍は昨年末に脱出訓練を
実施しています。
 ところで、韓国に在住する日本人は少なくとも3万人以上いま
す。商社マンなどのビジネスパーソンです。日本政府は彼らをど
のようにして救出するのでしょうか。ちなみに自衛隊は韓国に入
国することはできないことになっています。
 それでは、米軍はどのような作戦で北朝鮮を攻撃しようとして
いるのでしょうか。
 それは、次の名前で呼ばれる作戦です。「静かな先制攻撃」と
いわれています。この作戦については、東京新聞・中日新聞論説
委員の長谷川幸洋氏がレポートを書いています。
─────────────────────────────
       「Left of Launch」(発射の残骸)
                   http://bit.ly/2p2wLSi
─────────────────────────────
 どういう作戦かというと、武力攻撃の直前に、有人無人の「電
子撹乱機」を飛ばして妨害電波を送るのです。これによって、北
朝鮮の有線、無線のほか、PC、スマホを含むほぼすべてのネッ
トワークを一時的に使えない状態にします。
 そうすると、北朝鮮軍の指揮命令系統は遮断され、総司令部か
らの一切の命令は届かなくなるだけでなく、ミサイルシステムも
制御不能になります。つまり、北朝鮮が反撃したくてもできない
状況にしてから一斉に攻撃をかけるのです。
 米軍は、1991年の湾岸戦争でも、2003年のイラク戦争
でもこの作戦を実施して一定の成果を上げています。当時に比べ
ると、技術は格段に向上しています。4月5日に北朝鮮の発射し
たミサイルが失敗したのは、この作戦が実行され、成功したもの
ということができます。
 元韓国国防省分析官で、拓殖大学国際開発研究所の高水研究員
は、これについて次のように述べています。
─────────────────────────────
 当然、北朝鮮も対策をとっていますが、IT技術に関しては、
米国の方が上です。米国は攻撃する以上、“麻酔”で同盟国に犠
牲が出ないよう、事前に反撃封じをするはずです。
          ──拓殖大学国際開発研究所の高水研究員
            4月14日発行「日刊ゲンダイ」より
─────────────────────────────
 米軍は、移動式のミサイル発射装置の場所や金正恩委員長の居
場所については把握していないものの、核施設など攻撃すべき場
所については詳細を把握しているといわれます。それは700ヶ
所に及ぶそうです。したがって、成功すれば、北朝鮮は2時間で
反撃できない状況に陥るはずであるといいます。トランプ氏の自
信の根拠はこれです。   ──[米中戦争の可能性/072]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプの自信の根拠/長谷川幸洋氏/2017.4.7
  ───────────────────────────
   米中首脳会談を前に、北朝鮮がまた弾道ミサイルを発射し
  た。トランプ大統領は「中国の協力がなくても、米国が単独
  で北朝鮮に対処する」と表明している。いったい米国には、
  どんな選択肢があるのか。
   今回の弾道ミサイルは、当初、新型の中距離弾道ミサイル
  「北極星2型」とみられたが、そうではなく「スカッド改良
  型」という見方もある。いずれにせよ、ミサイルはいったん
  高く上昇した後、約60キロ離れた日本海に落下した。この
  発射について、新しい技術を試した実験という見方がある一
  方、従来と比べるといかにも飛距離が短かったことなどから
  「失敗だった」という見方もある。菅義偉官房長官は「失敗
  の可能性もあるが、分析中」と慎重な姿勢だ。失敗だったと
  すれば、何が原因だったのか。そこに触れる前に、トランプ
  大統領の発言をみておこう。
   大統領は4月2日、フィナンシャル・タイムズ(FT)と
  のインタビューで「もしも中国が北朝鮮の問題を解決しよう
  としないなら、我々がやる。言いたいのは、それだけだ」、
  「中国なしでも米国は北朝鮮に完全に対処できる」「『完全
  に』だ。それ以上は何も言わない」などと語った。
                 http://on.ft.com/2n1JeoF
                   http://bit.ly/2p2wLSi
  ───────────────────────────

金正恩委員長/トランプ大統領.jpg
金正恩委員長/トランプ大統領
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2017年04月18日

●「日本は実験なしで核を開発できる」(EJ第4503号)

 シカゴ大学教授ジョン・ミアシャイマー氏の本に次の一節があ
ります。本テーマの2回目にご紹介した言葉です。
─────────────────────────────
 取り締まる者のいない世界体制の中で安全を保障する最良の方
法は、その地域の覇権国家になり優位に立つことで、どこからも
攻撃されないようにすることなのだ。
       ──ジョン・J・ミアシャイマー著/奥山真司訳
    『大国政治の悲劇/米中は必ず衝突する!』/五月書房
─────────────────────────────
 日本は専守防衛を目指しています。どこの国とも戦争はやらな
い。しかし、悪意を持つ国があり、その国から攻められたら国を
守らなければならないので、自衛隊という事実上の軍隊を保有し
ています。その実力は世界第4位といわれています。
 もし、米中戦争が起きれば、確実に日本は戦場になります。世
界第4位の軍隊を保有していても、覇権国にならない限り、攻め
られる恐れがあるのです。北朝鮮ではありませんが、「攻められ
ない」ことを目指すのなら、「核を持つ」のはひとつの選択肢で
あるといえます。専守防衛も果たせます。
 しかし、日本にとって核兵器を持つことは、非常にハードルが
高いといわざるを得ません。トランプ氏は選挙中に日本の核保有
を容認するかのような発言をしましたが、後でそれを取り消して
います。日米安保条約は「日本に核を持たせないための条約」と
さえいわれているのです。
 2015年8月8日のことです。中国の環境時報は「日本は核
実験なしで核兵器を作る技術力があり、短期間で中国以上の核兵
器大国になる能力がある」と報道したのです。環境時報は、中国
共産党中央委員会の機関紙「人民日報」の国際版です。その論説
を紹介します。具体的には、中国城市安全研究所副所長の楊承軍
教授による署名原稿です。
─────────────────────────────
 論説は、日本には世界最大のヘリカル型核融合実験装置がある
など、核融合技術で世界一流と紹介。核爆発実験をしなくても高
性能のスーパーコンピューターによるシミュレーションで核兵器
を作る能力があるなどと主張した。さらに、日本はミサイル搭載
用の核弾頭を開発する能力もあり、極めて短期間のうちに「世界
第3位の核兵器保有国」になれると主張した。
                   http://bit.ly/2oAv1hp
─────────────────────────────
 これは、多くの日本人にとっては驚きのニュースです。日本で
は、核兵器について議論をするのもはばかられるし、作れないと
は思わないが、短期間のうちに「世界第3位の核兵器保有国」に
なれるとは考えてもいないからです。
 2014年の時点での核兵器の保有数は、以下のようになって
います。
─────────────────────────────
     1位: ロシア ・・・・・ 8000発
     2位:アメリカ ・・・・・ 7315発
     3位:フランス ・・・・・  300発
     4位:  中国 ・・・・・  250発
     5位:イギリス ・・・・・  225発
─────────────────────────────
 日本が世界3位の核保有国になるためには、日本が300発以
上の核兵器を短期間で作れるということを意味します。楊承軍教
授はそのようにいっています。
 楊承軍教授は、もし日本が核兵器を持つと、次のようになるこ
とを指摘して論文をしめくくっています。
─────────────────────────────
 日本が核兵器を保有した場合、西太平洋地区、とくに、わが国
(中国)の安全に対する重大な脅威になる。したがって、強い関
心を持ち続けなければならないし、絶対に、警戒を緩めてはなら
ない。                   ──楊承軍教授
─────────────────────────────
 かつて「日本も核兵器を持つかどうか」について、北朝鮮の脅
威に関連して、議論ぐらいすべきじゃないかということをいった
政治家がいます。中川昭一元衆議院議員(故人)です。中川氏の
発言です。
─────────────────────────────
 「非核三原則」は国民との重い約束だ。しかし、最近の北朝
 鮮の核兵器実験の動向を受けて、この約束を見直すべきかど
 うか議論を尽くすべきだ。        ──中川昭一氏
─────────────────────────────
 楊承軍教授の論文は本当のことをいっているのでしょうか。
 これに関しては、iRONNAに木走正水氏の次のレポートが
あるので、それを基にして検証してみたいと思います。
─────────────────────────────
 「日本には実験なしで核兵器開発できる能力がある」中国メ
 ディアは本当か          http://bit.ly/2pBUR2j
─────────────────────────────
 まず、楊承軍教授のいう「日本には世界最大のヘリカル型核融
合実験装置がある」というのは事実です。重い原子であるウラン
やプルトニウムの原子核分裂反応を利用する核分裂炉に対して、
軽い原子である水素やヘリウムによる核融合反応を利用してエネ
ルギーを発生させる装置が核融合炉ですが、核融合に関する技術
において、今や日本は世界の先端を走っているのです。
 米国は、この研究は水爆の研究と同じであるとして、中止する
よう強い圧力をかけてきたのですが、米国には弱い日本政府とし
ては珍しく、「これは人類のための研究である」として、つっぱ
ねてきたのです。そのため、関連技術で多くのノーベル賞受賞者
が出ているのです。核融合は世界最先端の爆縮技術がないと実現
不可能です。       ──[米中戦争の可能性/073]

≪画像および関連情報≫
 ●「非核」でも核武装している?
  ───────────────────────────
   日本では「非核」であることは当然として受け止められて
  いるが、世界から見ると、日本ほどの技術力と経済力があっ
  て「非核」なのはドイツと日本、イタリア(ともに第二次世
  界大戦の敗戦国)だけだ。
   日本では国連を「国連」と翻訳しているが、そのまま英語
  を翻訳すれば「連合軍」だから、まだ世界は戦争が終わった
  ときの秩序を保持していることを示している。もし今後、世
  界的な戦争がなければ、第二次世界大戦の勝ち負けが長く国
  際政治に影響を与えることを示している。
   ところで、日本は非核大国だが、アメリカの核ミサイルを
  積んだ原子力潜水艦が西太平洋にいるので、日本はいわゆる
  「核の傘」の下にいる(集団的自衛)。そして日本は50基
  を超える原発と濃縮技術、再処理技術、ロケット技術、それ
  に制御はお手の物なので、核兵器とそれを運搬するミサイル
  はすぐ作ることができる。つまり日本はアメリカとの集団的
  自衛で核武装している状態にあり、かつプルトニウムも濃縮
  施設ももっているので、現実に核武装し、自国でも原発を持
  てる状態にあるという状態だ。諸外国は技術力が優れ、軍事
  も強い日本が独自の核ミサイルを持つことを極度に警戒して
  おり、むしろアメリカの原潜の方が日本の核ミサイルより安
  全と思っている。         http://bit.ly/2owzQHa
  ───────────────────────────

中川昭一氏/日本核武装論.jpg
中川昭一氏/日本核武装論
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2017年04月19日

●「世界3位の核保有国になれる日本」(EJ第4504号)

 日本はその気になったら、短期間で世界第3位の核兵器保有国
になれる──これは事実でしょうか。
 結論からいうと、それは事実です。核兵器は核分裂を主とする
原子爆弾と核融合を主とする水素爆弾の大きく二つに分類されま
すが、日本はその両方とも作る技術を保有しています。しかも、
核融合の技術は世界に冠たるものがあることは、昨日のEJで指
摘した通りです。
 そのため、中国は楊承軍教授に限らず、日本の核兵器保有を非
常に警戒しています。あるとき、国連総会で中国の大使が「日本
は核開発に乗り出す可能性がある」と発言し、日本の大使がそれ
に反論する応酬があったのです。
 そのとき中国大使は、日本が47トン以上のプルトニウムを保
有しており、ごく短時間で核兵器を保有できるといったのですが
日本大使は冷静に日本の専守防衛の基本方針と非核三原則の堅持
を説明したのです。興味深いことは、日本大使は「ごく短時間で
核兵器を保有できる」については否定しなかったことです。
 原子爆弾について考えてみます。国際原子力機関(IAEA)
によると、原子炉用のプルトニウムなら、8キログラムで1発の
核兵器が作れるそうです。そうすると、日本は47トンのプルト
ニウムを保有しているので、計算上6000発の原子爆弾を作れ
ることになります。これは、ロシア、アメリカに次ぐ世界第3位
になります。つまり、これは事実なのです。
 日本は核実験をしなくても核兵器が作れる──これは本当のこ
とでしょうか。
 いわゆる核実験(正しくは核爆発実験)には、次の2つの方式
があります。
─────────────────────────────
    1. ホット・ラボ ・・・   核爆発実験
    2.コールド・ラボ ・・・ 核起爆装置実験
─────────────────────────────
 「ホット・ラボ」というのは、核爆発実験、北朝鮮のやってい
る核実験のことです。地上であれ、地下であれ、これをやると、
他の国にわかってしまいます。
 これに対して「コールド・ラボ」というのは、核爆発を伴わな
い核起爆装置の実験です。爆縮型の原爆は核起爆装置の完成が核
兵器の完成を意味します。
 1993年7月のことですが、パキスタン陸軍のアスラム・べ
グ退役参謀長は、インタビューで次のように発表して、核兵器の
保有を宣言しています。
─────────────────────────────
 パキスタンは、1987年に一線を越えた。起爆装置を開発し
原爆実験に成功した。実験はコールド・ラボ状態で行われ、大成
功を収めている。       ──アスラム・べグ退役参謀長
─────────────────────────────
 少し専門的になりますが、コールド・ラボ実験は、核物質以外
は完成した核兵器を使用して、起爆装置を爆発させ、衝撃波の画
像処理を行う超高速測光機やハイテク・センサーなどで、その成
否を検証するものです。
 パキスタンのように公表はしていませんが、イスラエルもコー
ルド・ラボ実験を行っています。イスラエルについては次の情報
があります。
─────────────────────────────
 イスラエルの場合は諸説あるようでして、ネゲブ砂漠で地下核
実験を行ったとの説や、南アフリカの核開発計画に協力する見返
りとして核実験をさせて貰ったとの説、或いは米国から核爆発デ
ータを提供して貰い、それを元にスパコンでシミュレートしたと
の説などがあり、どれが真相なのか未だに定まっていない様子で
す。いずれにしてもイスラエルとは米国の庇護の元で成り立って
いるような国で中東に於ける米国の橋頭堡みたいな位置付けにあ
ると言っていいでしょう。       http://bit.ly/2ogYda3
─────────────────────────────
 これは未確認情報ですが、日本は昭和40年代(1965年)
に極秘裏に通産省工業技術院によってコールド・ラボが行われ、
成功していると噂されています。50年近く前の話で、現在の日
本の技術でそれができないはずはないといえます。
 イスラエルのケース「米国から核爆発データを提供して貰い、
それを元にスパコンでシミュレート」は、日本も技術的に可能で
す。しかし、スパコンでシミュレートするには、核実験を何度も
行っている米国からのデータ提供がないとできないのです。これ
については、米国はデータの提供はしないはずです。米国は日本
の核武装を何よりも恐れているからです。その片務性によって不
公平といわれている日米安保条約は、表向きはともかく、日本が
核保有国にならない見返りに行われているといわれています。
 最近日米安保条約によって提供されるという「核の傘」に日本
では、疑問や不安が出てきています。日本が核で攻撃されたとき
米国が核兵器で反撃してくれることになっていますが、本当に米
国は反撃してくれるのかについて疑問が出てきているからです。
自ら反撃するのではなく、他国に依存しているからです。
 確かに日本は米国の「核の傘」に守られて、約70年間どこと
も戦争せず、平和を謳歌してきています。これは日米安保条約の
お陰であるといえます。しかし、核保有国が増えている現在では
今後はそれが困難になりつつあります。
 「ニュークリアシェアリング」というものがあります。事実上
の核保有といわれます。核兵器を持たないベルギー、ドイツ、イ
タリア、オランダが米国と結んでいる条約です。これら4ヶ国は
有事のさい、米国の核を使って反撃できるのです。そのため、そ
れらの国々は、日常的に米国の核を使って訓練しています。これ
なら米国に頼らず、有事のさいはそれぞれの国の判断で反撃でき
ます。日本はもっと自国の安全保障について真剣に考えるべきと
きにきています。     ──[米中戦争の可能性/074]

≪画像および関連情報≫
 ●世界の孤児にならずに事実上の核保有を実現/北野幸伯氏
  ───────────────────────────
   日本で「核武装を主張する人たち」も、結局、最大の脅威
  は中国。次に同国の属国・北朝鮮。その次にロシアであるこ
  とを同意してくれるでしょう。
   「だから、日本も核を持て!」という論理ですが、それを
  やると、「中国どころか、アメリカ、欧州、ロシアも敵にま
  わしてしまう」という話をしました。では「核を持てない」
  日本はいったいどうすればいいのか?第一のステップは、日
  米安保を「片務」から「双務」にすること。そのために「集
  団的自衛権を認めよう」と。次のステップですが、「ニュー
  クリア・シェアリング」(核の共有)という仕組みがありま
  す。これは核兵器を持たないベルギー、イタリア、ドイツ、
  オランダがアメリカと結んでいる条約です。過去には、カナ
  ダ、ギリシャ、トルコも参加していました。
   「ニュークリア・シェアリング」とは何かというと、右の
  4国は、有事の際さい、アメリカの核を使って反撃できるの
  です。そのため、この四国は日常的にアメリカの核を使って
  訓練をしています。「集団的自衛権」を自らに認めることで
  アメリカと対等な同盟国になりうる日本。アメリカと数年間
  信頼関係を醸成したうえで「ニュークリア・シェアリング」
  を要求したらいい、と私は考えます。
                   http://bit.ly/2pleWdM
  ───────────────────────────

「ニュークリア・シェアリング」という方法がある.jpg
「ニュークリア・シェアリング」という方法がある
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2017年04月20日

●「イプシロンは弾道ミサイル化可能」(EJ第4505号)

 4月16日に北朝鮮はミサイルを発射しましたが、数秒後に落
下しています。米軍が朝鮮半島付近に艦艇を集結させるなかでの
まさかのミサイル発射であり、金正恩委員長の大胆なチキンゲー
ムの一環です。
 この北朝鮮の行動に対して、マクマスター大統領補佐官は次の
ようなメッセージを出しています。
─────────────────────────────
 今回の弾道ミサイル発射は、挑発的で脅迫的な北朝鮮の行動パ
ターンの一環である。アメリカは今こそ武力行使に至らないよう
あらゆる行動を取り、平和的解決に努める。
               ──マクマスター大統領補佐官
                   http://bit.ly/2oOITFA
─────────────────────────────
 あれほど強気なトランプ大統領の発言からすると、このマクマ
スター大統領補佐官の発言は、何となく米国は一歩引いた感じが
します。やはり、核兵器を保有していると、米国といえども慎重
にならざるを得ないのでしょうか。
 トランプ政権は、中国に圧力をかけて北朝鮮問題を解決しよう
としていますが、この方法では、北朝鮮問題は解決しないと考え
ます。なぜなら、中国にとって北朝鮮は地政学上必要な国である
からです。平和的解決などと称して、手ぬるい解決を図ろうとす
ると、今度こそ米国に確実に届くICBMが完成し、結局北朝鮮
を核保有国として認めることになってしまいます。もし、そうい
う方向に行くのであれば、日本も安全保障上核兵器の保有を検討
せざるを得なくなります。
 日本の核武装問題の検討を続けます。日本はその気になれば、
短時間で核兵器が作れることは既に説明しましたが、さらに一歩
進めて考えてみます。
 米国は、日本が核兵器を持つことを絶対に許さないでしょうし
ニュークリアシェアリングも認めないと思います。米国にとって
日本の核武装は最大の脅威であると考えているからです。それに
日本は、世界唯一の被爆国であり、国民に核アレルギーが強いの
で、たとえそれが専守防衛の安全保障のためであっても、核保有
が実現するハードルは高いのです。
 それでは、どうすればよいでしょうか。解決のヒントになるの
は、木走正水氏のレポートです。木走氏のレポートをまとめると
次のようになります。
─────────────────────────────
 1.日本の持てる技術を結集して、一朝ことがあったときは
   短時間で核兵器を持てるようにする。
 2.プルトニュウム抜きの核弾頭を300発以上製造してお
   き、必要なとき一挙に核兵器化する。
 3.日本独自の固体燃料ロケット「イプシロン」の技術を向
   上させ、弾道ミサイル化し量産する。
─────────────────────────────
 日本が「一朝ことがあったときは短時間で核兵器を持てる」の
であれば、それは一定の抑止力になります。中国の楊承軍教授の
論文はそのことを警戒して書いています。そうであるとしたら、
それを意識的にもっと対外的に強調し、PRすればよいのです。
そうであれば、核兵器を持っていなくても、持っていることとあ
まり変わらなくなります。これが「1」です。
 核兵器を持つには、核を小型化し、弾頭化することが必要にな
ることと、それを運ぶロケット技術が必要です。このうち核の小
型化に関しては日本は十分な技術を有しています。木走正水氏は
これについて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 いずれにしても日本の有する技術力をもってすれば、核爆弾を
持つという国民の総意・意思が固まれば、それは早期に実現可能
であろうと思われます。
 さてエントリーして思いついたのですが、安全保障上のカード
として、また現憲法に抵触しない範囲で何か可能なことはないの
かという意味でこんなのはいかがでしょうか。
 製造技術を確立してプルトニウム抜きの核爆弾を300発ほど
保有する。そしてイプシロンを改良して弾道ミサイルも同数量産
しておく。プルトニウムが入っていませんから、爆発もしないし
兵器ではないことになります。で、日本を怒らしたら、いつでも
瞬時にプルトニウムを挿入できるぞ、という脅しになります。
 「日本がその気になれば核ミサイルはすぐに保有できる」、こ
の事実だけでも安全保障上の有効なカードとなると思います。読
者の皆さんはどうお考えでしょうか。  http://bit.ly/2aXNY4y
─────────────────────────────
 「プルトニウム抜きの核爆弾」が技術的には可能でも、許され
るかどうかはわかりませんが、不可能ではないと思います。これ
が「2」です。
 「3」は「イプシロン」についてです。これは、国産の固体燃
料用のロケットで、世界に冠たる技術を持つロケットです。その
1号機は、2013年9月に打ち上げられましたが、あくまで試
験機で、ロケット自体よりも打ち上げシステムの改革に重点が置
かれたのです。そして、3年後の2016年12月に2号機の打
ち上げに成功します。日刊工業新聞の記事です。
─────────────────────────────
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月20日に小型固体
燃料ロケット「イプシロン」2号機を内之浦宇宙空間観測所(鹿
児島県肝付町)から打ち上げる。機体と運用、設備からなる打ち
上げシステム全体を1号機より効率化した。ただ、機能を強化し
ても打ち上げコストは同等に抑えることに成功した。効率的で低
コストなロケット技術の開発が進むことで国際競争力の向上が期
待される。(冨井哲雄)        http://bit.ly/2oOTyQi
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/075]

≪画像および関連情報≫
 ●イプシロン2号機の成功と「国防上のブラフ」効果
  ───────────────────────────
   宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、12月20日午後
  8時、ジオスペース探査衛星「ERG」を搭載したイプシロ
  ンロケット2号機を打ち上げた。打ち上げは成功し、打ち上
  げ後13分27秒でERGを予定の軌道に投入した。成功後
  ERGは「あらせ」と命名された。
   イプシロン2号機は「強化型イプシロン」という名称を持
  つ。2013年9月14日に打ち上げた初号機と比較すると
  第2段の強化により、地球を南北に回る太陽同期極軌道への
  打ち上げ能力が、450キログラムから590キログラムに
  増強されている。打ち上げ後の記者会見でプロジェクト・マ
  ネージャーを務める森田泰弘JAXA・宇宙科学研究所教授
  は「試験機であったイプシロン初号機の段階では、自分の抱
  く自信には精神論的な部分が大きかった。が、今回の強化型
  イプシロンを予定日に打ち上げできたことで、精神論ではな
  く、物理的に『確実に打ち上げることができる』という自信
  を持った」と述べた。
   2号機の後もイプシロンの開発は続く。3号機では衛星を
  より正確な軌道に投入する「ポスト・ブースト・ステージ」
  という液体エンジンの小推力の段と、分離時に衛星に与える
  衝撃が小さい衛星分離機構が搭載される。この3号機で強化
  型イプシロンの開発は終了し、当面は完成した強化型イプシ
  ロンの打ち上げが続く事になる。 http://nkbp.jp/2ohT2Yg
  ───────────────────────────

「イプシロン」2号機打ち上げ成功.jpg
「イプシロン」2号機打ち上げ成功
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2017年04月21日

●「イプシロンは世界に誇る国産技術」(EJ第4506号)

 日本が世界に誇る固体燃料ロケットである「イプシロン」につ
いてもう少し詳しく述べます。なぜなら、このロケットは日本の
安全保障に役に立つと思われるからです。
 「固体燃料」と「液体燃料」の違いについて知る必要がありま
す。一般に議論されているのは、液体燃料の場合は、発射直前に
注入しなければならないので、注入段階で衛星などによって発見
される可能性が高いが、固体燃料は予めセットしておくことがで
きるので、発射が発見されにくいというロケットを武器であるミ
サイルとして使う観点です。本当の違いは次の通りです。
─────────────────────────────
 固体燃料と対となるものに液体燃料があり、どちらにも長所と
短所がある。詳細は省くが、たとえば固体燃料は大きな推力(パ
ワー)が出せる反面、その推力の制御ができず、一旦火をつける
と燃料がなくなるまで燃え続ける。一方液体燃料は固体ほど大き
な推力は出せないが、燃費が良く、推力の量を変えたりや、エン
ジンを途中で止めたりといった制御も可能である。
                   http://bit.ly/2pTldwX
─────────────────────────────
 主力大型ロケットとして日本で用いられているH−UAロケッ
トなどは両方を搭載しており、パワーを必要とするときは固体燃
料、燃費が必要なときは液体燃料を使うのです。
 イプシロンが生まれるきっかけになったのは「M−V/ミュー
・ファイブ」(以下、MVロケット)というロケットです。これ
は固体燃料ロケットとしては最高の効率を発揮できたので、「究
極の固体ロケット」といわれたのです。
 MVロケットは、1997年の初号から合計7回打ち上げられ
廃止されています。実は、この廃止は中央官庁統合と関係があり
ます。結果としてこの組織統合がイプシロンを生み出す原動力に
なったといえます。MVロケットは、当時の文部省傘下の宇宙科
学研究所が作っていたのです。東京大学宇宙航空研究所がその前
身です。しかし、文部省と科学技術庁は非常に仲が悪かったとい
われます。2001年に文部省と科学技術庁が統合され、文部科
学省が誕生します。それでも文部省と科学技術庁の遺恨試合の因
縁は残っていたのです。
 しかし、結果として、これが国産のロケット開発に大きな影響
を与えることになったのです。科学技術ジャーナリストの松浦晋
也氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 文部省と科学技術庁は1960年代にロケットの管轄を巡って
大規模な権限争いを展開しており、1966年に「どっちの側か
らも有利に読める玉虫色」の国会報告という形で決着を図った。
 文科省発足により、旧科技庁系官僚は文部省系のM−Vロケッ
トの廃止へと動いた。1966年の国会報告は「Mロケットの改
良」を認めており、それが文部省ロケットの研究開発の根拠とな
っていた。そこで、まず「M−Vロケットは完成した」というこ
とにして、それ以上のロケット開発の道を封じた。次いでM−V
ロケットが高コストであることを理由に、廃止へと追い込んだ。
                  http://nkbp.jp/2oXvz1A
─────────────────────────────
 MVロケットは、とことんロケットそのものの性能の良さが追
及され、それを実現させてきたのですが、その半面コストは非常
に高く、ただでさえ予算の少ない日本の宇宙開発にとって、その
コストの高さが足かせになっていました。ちょうどそういうとき
に、中央官庁統合が行われたのです。
 この結果、宇宙科学に関連する組織整理が行われ、現在、宇宙
科学研究所は、JAXA・宇宙科学研究所になっています。そし
て、宇宙科学研究所は、MVロケットの低価格化を実現し、かつ
運用コストを簡素化し、「M−VA」という構想実現を目指して
取り組むようになります。
 しかし、JAXA組織は、航空宇宙技術研究所(NAL)、宇
宙科学研究所(ISAS)、国土交通省系の宇宙開発事業団(N
ASDA)の3機関を統合したもので、なかなか意見がまとまら
なかったのです。
 MVロケットの改良型であるイプシロンは、低コスト化と運用
簡素化をクリアする設計プランが早くから提案され、2010年
には打ち上げができる状態にあったのですが、意見がまとまらず
2013年3月に打ち上げられ、成功します。
 その後、3年間にわたって改良が加えられ、2016年12月
20日に2号機が打ち上げられ、約13分27秒後に搭載してい
た「ジオスペース探査衛星」(ERG)を予定した軌道に投入す
ることに成功します。この成功をもってERGには「あらせ」と
いう愛称が与えられました。そしてこれは「強化型イプシロン」
と呼ばれるようになります。
 小型化・軽量化が図られており、打ち上げ能力が約30%増加
したにもかかわらず、打ち上げコストは1号機と同じ約50億円
に収まっています。さらに2号機では、ロケットが正常に飛行し
ているかどうかを地上からの管制レーダーに頼ることなく、ロケ
ット自身が自律的に判断する装置が搭載され、地上レーダーは不
要になります。将来的にはノートPC2台での打ち上げ可能なほ
どコンパクトなモバイル管理を目指し、コストを30億円に抑え
ることを目指しています。
 この日本のイプシロンの技術は、海外では「日本が潜在的に大
陸間弾道ミサイル(ICBM)」を持つ能力を育てている」とい
う論調で報道されていますが、確かにいつでもICBMにつなが
る技術であり、「安全保障面でのブラフ」として使えると、既出
の科学技術ジャーナリストの松浦晋也氏はいっています。
 確かに「全段固体推進剤」「打ち上げ期間の短縮」「少人数の
運用者」という3つの特質が揃っており、この技術を持っている
だけで日本の安全保障面での抑止効果は十分あるといえます。
             ──[米中戦争の可能性/076]

≪画像および関連情報≫
 ●東京オリンピック開催決定とイプシロンの効力
  ───────────────────────────
   インターネット上には、台湾・タイ・インドネシア・トル
  コなどの国々の祝意が溢れています。これら親日諸国のこと
  を知っていても、何故、親日なのかを体系的に知っている方
  は、意外と少ないのが現状です。中韓を徹底的に封じ込める
  には、日本人が中韓を見捨てて、投資も観光客も親日国家の
  東南アジアと南アジアにシフトすることが必要なのです。
   最近のニュースで一番中韓にとってショックだったのは、
  イプシロンの打ち上げ成功です。マスメディアは、低コスト
  で宇宙ビジネスに本格的に参入できる画期的な技術を物にし
  たと報道しているが、実態は世界最高性能の弾道ミサイルを
  開発したことになったのであり、組み立てから発射まで人工
  知能によって一週間で発射可能のコンパクトな技術は、反日
  中韓にとっては安全保障上の脅威なのです。それがためか、
  韓国はイプシロン打ち上げ成功から二分後にニュースを流し
  ていました。我が国のロケット打ち上げ精度は、ホワイトハ
  ウスの円筒形の屋根を直撃できる精度があり、国民の生命と
  財産を守るためには、あらゆる手段を執ることができますの
  で、イプシロン効果で中国の尖閣での圧力は減速します。日
  本の安全保障のためには、あと数年間尖閣海域で威嚇行動を
  継続してもらえれば、様々な安全保障上の準備ができるので
  す。これらの状況で中国は、どのように行動するかは中国エ
  リートの友人によると、テーブルの下で握手を求めてくるの
  が中国人の特質だとのことなのです。また、その逆に友好的
  に話し合っていても、テーブルの下にナイフを隠しもってい
  るのも中国人なので、いっさい隙を与えてはいけない民族な
  のです。             http://bit.ly/2ou73kC
  ───────────────────────────

国産固体燃料ロケット「イプシロン」.jpg
 
国産固体燃料ロケット「イプシロン」
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2017年04月24日

●「朝鮮半島北半分は習主席に任せる」(EJ第4507号)

 北朝鮮が中国に「核実験を実施する」と通知したようです。こ
の情報は21日から流れています。実施日についての情報はあり
ませんが、建軍節──朝鮮人民軍創建85周年記念日の25日の
早朝であると思われます。つまり、明日の朝です。
 4月20日、韓国「聯合ニュース」はこれに関して次のように
伝えています。
─────────────────────────────
 ◎米軍の特殊観測機/韓国上空に緊急出動
 「北朝鮮が中国に核実験を行うと通知した」という未確認情報
が出回っている。国防部や外交部など、関連省庁で確認に追われ
ている。               ──「聯合ニュース」
              2017年4月21日/夕刊フジ
─────────────────────────────
 事実を確かめると、確かに20日に米空軍の特殊観測機「WC
135」が沖縄の嘉手納基地から、朝鮮半島に向けて緊急発進し
ています。「WC135」は、北朝鮮が核実験をしたかどうかを
探る飛行機であり、これが発進したことは、核実験を警戒し、観
測態勢に入ったことを意味します。
 現在、金正恩氏とトランプ氏は壮絶なチキンゲームを展開して
います。2人とも一歩も引かない構えです。しかし、このところ
米国がちょっと引いた感じに見えます。米国のスタンスは「北朝
鮮のことは中国に任せる」というものです。このことをトランプ
氏は選挙中からいっていたのです。
 しかし、4月10日のEJ第4497号で述べたように、習近
平主席は北朝鮮をコントロールできない事情にあります。習主席
は、北朝鮮に隣接し、中国北東部を管轄する旧瀋陽軍区を含む北
部戦区(北朝鮮と直結する江沢民派の牙城)を掌握しきれていな
いからです。実は、米国はこのことをよく知っています。
 先の米中首脳会談のメインテーマが北朝鮮マターだったことは
両首脳とも周知のことだったはずです。そうであるならば、実際
に北朝鮮に強い影響力を持っているチャイナセブン序列第3位の
張徳江全人代常務委員長を同行させるべきです。しかるに、習主
席の米国訪問に同行したのは、次の3人の腹心であり、いわゆる
江沢民派は誰も同行していないのです。
─────────────────────────────
      房峰輝・連合参謀部参謀長
      劉鶴・中央財経指導小組弁公室主任
      栗戦書・党中央弁公庁主任
─────────────────────────────
 これによって習政権は、習近平主席が国内で「核心」と位置づ
けられていようと、それを国内外にいかに喧伝しようと、その実
体は「張りぼて」であることを見抜いたと思われます。米国はそ
れでいて習政権に北朝鮮問題の解決に圧力をかけているのです。
 4月16日(日)のことですが、日経の「風見鶏」に大石格編
集委員による「北朝鮮は中国の手で」と題する興味ある記事が掲
載されたのです。その一部に次の記述があります。
─────────────────────────────
 トランプ政権は発足直後、中国に「朝鮮半島の北半分は中国の
自由にしてよい」と伝えた。これが聞き込んだ噂である。もちろ
ん、「米国の脅威がなくなるならば」との条件付きだ。例えば、
クーデターで金政権を倒す。米国にはハードルが高い金委員長の
殺害も、北朝鮮軍にパイプがある中国ならば手の打ちようがあろ
う。少々混乱しても米国が介入してこないとわかっていれば、踏
み切りやすい。(中略)
 半島統一は韓国にとっては悲願かもしれないが、米国には所詮
はひとごとだ。領地安堵で中国に汚れ役をさせることができれば
こんなに楽な話はない。
    ──4月16日付、日本経済新聞「風見鶏」(大石格)
─────────────────────────────
 トランプ氏が、このところ、北朝鮮への中国の役割を強調する
のは、ここに狙いがあるかも知れないのです。そのためには、ト
ランプ大統領は、習主席に対して、韓国へのTHAADの設置も
中止してもよいといっていますし、為替操作国の指定うんぬんも
やめてもいいという条件を出しています。きわめて大きな譲歩で
あるといえます。
 確かに最近になって米国は韓国で設置を急いでいたTHAAD
の工事を中断し、「次の大統領が決めること」という柔軟姿勢を
示しています。口だけでなく、行動で示してもみせたのです。こ
れは中国にとって大きなチャンスでもあります。
 習近平主席としては、これはピンチではあるものの、江沢民派
と北朝鮮とのパイプを断ち切ることによって、国内完全統一がで
きるかもしれないと考えはじめたのではないかと思われます。こ
れに関連して中国の事情に詳しいノンフィクション作家・河添恵
子氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 ここで習氏が最も恐れているのは、中国内部の敵(江沢民派)
から正恩氏に作戦情報などが密告されることだ。そうなれば、中
南海(=中国政府や中国共産党の本部のある北京の中心部)が先
に火の海になりかねない。
 ただ、いつの時代も中国の支配者は「ピンチをチャンスに変え
る」したたかさがある。しかも必ずや「漁夫の利」を狙う。ここ
で浮かぶのは2010年7月から施行した「国防動員法の発令」
である。国防動員法は、中国が有事の際、政府と人民解放軍が民
間のあらゆる人的・物的資源を動員・徴用する法律である。
   ──2017年4月21日「夕刊フジ」 河添恵子氏論文
─────────────────────────────
 そうであるとすると、もし25日に北朝鮮が核実験をやったと
しても米軍は動くことはないと考えられます。トランプ政権はあ
くまで「中国に北朝鮮を処分させる」考え方ではないかと思われ
るからです。       ──[米中戦争の可能性/077]

≪画像および関連情報≫
 ●中国・国防動員法の恐怖/産経ニュース/けいざい独談
  ───────────────────────────
   「中国政府がひとたび『有事だ』と判断すれば対中進出し
  ている日系企業も含めて、中国のあらゆる組織のヒト・カネ
  ・モノの徴用が合法化され、戦時統制下におかれる懸念があ
  ることにもっと関心を払うべきだ」マレーシアを拠点に日系
  企業向けコンサルティング業務を手がけるエリス・アジア事
  務所の立花聡代表は厳しい表情で“警告”を続けた。
   あまり知られていないが、2010年7月1日に中国が、
  「国家の主権、統一と領土の完全性および安全を守るため」
  として施行した「国防動員法」の規定をさしている。全14
  章72条からなる同法について、立花氏は「(適用の)可能
  性は低いだろうが法律として存在する以上、(日本にとって
  も)不確定要素となる」と指摘した。「有事」の定義はやや
  あいまいながら、仮に東シナ海や南シナ海などで偶発的な衝
  突が起きた場合、中国が有事と考えれば一方的に適用が可能
  だ。例えば第31条。「召集された予備役要員が所属する単
  位(役所や企業など)は兵役機関の予備役要員の召集業務の
  遂行に協力しなければならない」。予備役要員は中国国籍の
  男性18〜60歳、女性18〜55歳が対象。有事の際、戦
  地に送られるというよりは、兵站などの後方支援や中国の敵
  国に関する情報収集任務が与えられる可能性がある。
                   http://bit.ly/1Esf6Wz
  ───────────────────────────

米空軍特殊観測機/WC135.jpg
米空軍特殊観測機/WC135
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2017年04月25日

●「社会主義国統計データの嘘に迫る」(EJ第4508号)

 このテーマで今回は第78回になるので、そろそろ最終章に入
る必要があります。テーマは「米中戦争の可能性」ですが、最後
に中国の経済の先行きについて考えます。
 「中国の経済はいずれ破綻する」ということがこれまでいわれ
てきましたが、一向に破綻する気配はなく、軍事力は年々向上し
ています。同様に、北朝鮮も早くから破綻が囁かれてきましたが
中国と同様に破綻するどころか、強力な核兵器を保有するまでに
なっています。社会主義国の場合、民主主義国の常識は通用しな
いようです。しかし、それでも最後は間違いなく、崩壊してしま
うのです。ソ連の崩壊がそれを証明しています。
 「中国崩壊論」について、高橋洋一氏は自著で次のように述べ
ています。
─────────────────────────────
 巷に溢れる「中国崩壊論」のように中国経済がクラッシュする
かというと、そう簡単にコトは運ばない。中国経済が抱える問題
は、マグマのように溜まりに溜まり、これからも溜まっていくが
一気に爆発することは当面ない。なぜなら、共産党の一党独裁体
制下では、偽装会計などを駆使して、いかようにでも問題を糊塗
できるからだ。
 しかし、さまざまな局面で、少しずつ小噴火を起こしていく。
いつ大爆発を起こすか・・・2年や3年の間は起こらないが、そ
の先は不透明である。そのとき、リーマンショック、あるいはそ
れ以上の衝撃を世界に撒き散らすことは容易に想像がつく。しば
らくは中国の動向から目が離せないという理由もそこにある。
      ──高橋洋一著/『中国GDPの大嘘』/講談社刊
─────────────────────────────
 上記の高橋洋一著の『中国GDPの大嘘』(講談社刊)という
本は、中国の統計のウソを見事に暴いた労作です。以下この本を
ベースに中国の統計のからくりについて検証していきます。
 ところで、ソ連はどうして崩壊したのでしょうか。
 国家の運営は、しばしば船の航海に例えられます。安全な航海
に欠かせないのは、正確な「海図」と「航路」を綿密に調べ上げ
たデータ、そしてそれに基づく船の正確な状況認識が必要です。
 国の政治・経済の運営に不可欠な「海図」は、各種の統計デー
タということになりますが、ソ連は実に50年以上にわたってこ
れらの各種統計データを巧妙に改竄し、捏造していたのです。
 しかもその手法は精緻を極めており、プロの経済学者でも騙さ
れてしまうほど巧妙だったのです。高橋洋一氏はこれについて次
の話を明かしています。
─────────────────────────────
 問題は、そのデタラメな偽造会計を世界の大半が信じていたと
いうこと──。たとえば、アメリカのノーベル経済学賞受賞者の
ポール・サミュエルソン。彼はソ連が出すデタラメ数値を信じて
「ソ連は成長している」と言い切ってしまった。サミュエルソン
ほどの偉人ですら、騙されてしまう。それだけ、統計データの虚
偽を見抜くのは難しいことなのである。
                ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 このソ連の統計作成手法は、ソ連が崩壊してはじめて明るみに
出たのです。ゴルバチョフ書記長の「ペレストロイカ」(改革政
策)と「グラスノチ」(情報公開)の結果、明らかになったので
す。それによると、GDPは半分しかなかったといわれます。
 中国の統計システムは、このソ連の統計システムに学んでいる
のです。中華人民共和国の創設は1949年のことですが、その
さい、1万人から成るソ連の顧問団が北京にやってきて、中国の
産業育成について、ソ連は社会主義国の先輩として指導していま
す。そのとき、統計作成の手法も指導されたのでしょう。
 中国の2017年1月〜3月の実質経済成長率は、4月17日
に前年同期比6・9%と発表され、18日の日本経済新聞は次の
ように伝えています。
─────────────────────────────
 中国の2017年1〜3月の実質経済成長率は、前年同期比で
6・9%だった。地方を中心にインフラや不動産への投資が増え
成長をかさ上げした。習近平指導部は最高指導部が入れ替わる秋
の党大会をにらんで安定成長の演出に躍起だ。ただ、資産バブル
の拡大など先行きのリスクは膨らんでいる。
     ──2017年4月18日付、日本経済新聞(朝刊)
─────────────────────────────
 中国のGDP成長率の発表についていつも不思議に思うことが
あります。それは、他国に比べてダントツに早いことです。今年
の場合も、1〜3月の数値がたった17日で発表されています。
これに対して、日本や米国の発表はきわめて遅いのです。米国で
は速報値でさえ翌月の下旬になってしまいます。つまり、1〜3
月の速報値は4月の下旬になります。日本についてはもっと遅い
のです。日本では速報値は翌々月の中旬、つまり、5月の中旬に
ならないと出てこないのです。
 もっとも計算は早い方がよいに決まっています。普通に考える
と、中国のような巨大な国では集計に1ヶ月ぐらいかかっても不
思議はないのですが、なぜかたったの17日で出てきます。だか
ら、きちんと集計されていないのではないかという疑いも出てく
るのです。
 社会主義国の場合、統計の概念が民主主義国と違うのです。社
会主義国では、国が計画し、目標とした数値に統計を合わせるべ
きという考え方があります。国が立てた経済計画は神聖なもので
あり、どんなことがあっても達成しなければならないものであり
統計はそれに合わせるべきであるという国の意思が強く作用して
います。これは、企業の粉飾決算に似ています。2015年に発
覚し、2年かかって企業を存亡の危機に陥れている東芝の粉飾決
算の構図とまったく同じであるといえます。
             ──[米中戦争の可能性/078]

≪画像および関連情報≫
 ●中国のGDP操作疑惑/経済専門家「ヤラセではないか」
  ───────────────────────────
   米国では、2008年の金融危機以来、国内総生産(GD
  P)の伸びが年率2%台あたりをさまよい、米連邦準備制度
  理事会(FRB)が自信をもって金融正常化と利上げ加速に
  踏み切れない最大の理由となっている。だが、そんな米国を
  尻目に、中国では年率8%代後半の成長が安定的に継続し、
  世界を驚かせている。それでも、以前の二桁台よりは経済拡
  大スピードが落ちているというのだから、なおさら驚異であ
  る。世界中が経済の長期停滞にあえぐ中、そんな順調なGD
  Pの成長は、本当に可能なのだろうか。何か裏があるのでは
  ないか。事実、米国ではここ数年、中国の経済統計数値の集
  計・分析・発表などで人為的な操作が加えられているとの疑
  惑が繰り返し論じられている。
   具体的に何が問題なのか。米国の論調から探ってみよう。
  中国国家統計局が2016年10月18日に発表した、今年
  7〜9月の第3四半期のGDPによると、中国経済は前年比
  6・7%成長し、1〜3月の第1四半期、4〜6月の第2四
  半期に続き、政府の成長目標6・7%をドンピシャと達成し
  た。これにかみついたのが、調査会社キャピタル・エコノミ
  クス中国担当エコノミストのジュリアン・エバンス=プリチ
  ャード氏だ。同氏は、「3つの四半期にわたって数字が同じ
  であるのは、データが『ならし作業』で粉飾されていること
  を示唆している」と述べた。    http://bit.ly/2ozmb0e
  ───────────────────────────

ポール・サミュエルソン氏.jpg
ポール・サミュエルソン氏
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2017年04月26日

●「中国のGDPは本当に正当なのか」(EJ第4509号)

 中国のGDP成長率が10%を切ったのは2011年度からで
す。その2011年から2016年度までのGDP成長率を調べ
ると、次のようになります。
─────────────────────────────
                GDP成長率
       2011年 ・・・ 9・50%
       2012年 ・・・ 7・75%
       2013年 ・・・ 7・69%
       2014年 ・・・ 7・30%
       2015年 ・・・ 6・90%
       2016年 ・・・ 6・70%
─────────────────────────────
 2011年から毎年少しずつGDP成長率が下がっています。
その変化率は非常に少ないのです。もっとも、下がったとはいえ
高い成長率ですが、この数字だけを見ていても別におかしな点は
見当りません。しかし、他の国と比較してみると、その異常性が
見えてきます。
 高橋洋一氏によると、GDP成長率で変化率の少ない国のラン
キングを見ると、上位に社会主義国が名前を連ねています。
─────────────────────────────
        第1位:バングラディシュ
        第2位:ラオス
        第3位:ベトナム
        第4位:中国
      ──高橋洋一著/『中国GDPの大嘘』/講談社刊
─────────────────────────────
 中国は経済大国です。国土が大きく、人口も多く、世界中と貿
易をしている国です。それだけに世界経済の変化の影響を受けや
すいはずであり、米国や日本のように、変化率はもっと大きくな
るはずです。それが変化率の少ない国の順位で、世界第4位であ
るとは異常なことです。
 中国には、全国GDPだけでなく、各地方政府が発表する地方
GDP統計があります。中央政府は、地方政府から報告される地
方GDPをすべて合計して全体のGDPを発表していると思われ
ますが、それなら各地方政府のGDPの合計額が全国GDPに一
致に一致するはずです。
 ところが、地方政府全部のGDPを積算すると、全国GDPの
数値を大きく上回る数字になってしまうのです。しかも、その乖
離幅は年々増大しています。このようなことは、通常は起こり得
ないことです。
─────────────────────────────
       全国GDP   地方GDP合計   乖離幅
 2010年  40・9      43・7   2・8
 2011年  48・4      52・1   3・7
 2012年  53・4      57・7   4・2
 2013年  58・8      63・4   4・6
 2014年  63・6      68・4   4・8
 2015年  67・7      72・5   4・8
                     単位:兆人民元
                ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 現在の中国のGDPは、2016年度が6・7%ですが、GD
Pを生み出す要素を検証すると、大きく伸びる可能性はきわめて
低いといわざるを得ないのです。中国の消費は不動産投資が主力
であり、耐久消費財の筆頭である車は、販売台数が大きく伸び悩
んでいます。
 そもそも中国の個人消費がGDPに占める割合は約30%しか
ないのです。これに対して米国は65%、日本は60%を占めて
います。不動産投資が中心ですから、もし不動産バブルが破裂し
てしまうと、経済は壊滅的な打撃を受けることになります。
 中国では民間企業の設備投資はほとんどないのです。現在中国
で成長を牽引しているアリババなどのネット・通信企業は、巨額
の投資を必要としないのです。ただ、国有企業による過剰な設備
投資と外国企業による直接投資があります。
 しかし、国有企業の設備投資は経済を改革する必要があるので
制限され、大幅に減少しています。外国企業──とくに中国への
2大投資国といわれるドイツと韓国は、自国内での経済がおもわ
しくなく、日本や米国の企業も中国から撤退傾向にあります。
 それでは、輸出はどうでしょうか。まさに命綱ともいえる輸出
は、2016年が前年比7・7%マイナスと激減し、輸入につい
ても5・5%のマイナスです。これによって、貿易は赤字転落寸
前の状態です。
 このように見ていくと、中国のGDPの伸びる余地はあまりな
いことがわかります。高橋洋一氏は、中国のGDPについて、き
わめて大胆な次の指摘をしています。
─────────────────────────────
 私は、中国の実際のGDPは公式発表されている数値の3分の
1程度ではないかとさえ思っている。こんな計算の仕方もある。
ソ連の公式統計では、1928〜85年の国民所得の平均成長率
は年率8・2%とされていた。しかし実は3・3%でしかなかっ
たという事実を1987年、ジャーナリストのセリューニンと経
済学者のハーニンが、その論文「狡猾な数字」で指摘している。
この手法を中国国家統計局が踏襲し、仮に15年間続けていたと
したら・・・その実際のGDPは半分ということになる。
                ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 中国では、毎年全人代で発表するGDPの目標には、政治的暗
闘がその裏に隠されています。そこには、習近平主席対李克強首
相のすさまじい暗闘が繰り広げられているのです。
             ──[米中戦争の可能性/079]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の偽装GDPは世界のリスクだ!/田村秀男氏
  ───────────────────────────
   中国の国内総生産(GDP)の7〜9月期の前年比の成長
  率が6・9%と7%を割った。「世界の工場ほころび」(朝
  日新聞20日付朝刊)、「中国リスク、出口見えず」(日経
  新聞同)などと大騒ぎだが、何かヘンである。小学生でも知
  っている経済の常識では7%近い成長は高成長であり、好景
  気そのものである。なのに各紙は何の説明もしない。その点
  20日の朝刊1面トップではっきりと「偽りのGDP、異様
  に巨大化」と報じた産経新聞を読んで、ストンと胃の腑に落
  ちた読者も多いだろう。親中国各紙は、北京のご機嫌を損な
  わないよう問題の本質から目をそらし、読者を混乱させてい
  る。中国GDP統計が嘘だと詳報したのは産経ばかりではな
  い。米ウォールストリート・ジャーナル紙も20日付で、米
  欧の有力エコノミストに取材して「中国GDPの信憑性、エ
  コノミストは疑問視」との特集をした。同記事によれば、エ
  コノミストの多くがGDP発表値は党中央の政治圧力の産物
  であり、実際の7〜9月期成長率について4〜5%の間とみ
  ている。筆者が重視する鉄道貨物輸送量や輸入額でみると、
  グラフのように2ケタ台のマイナス成長とみてもおかしくな
  いはずだが、北京の公表値はまさしく偽装データも同然との
  見方を裏付ける。 ──「お金は知っている」(2015)
                   http://bit.ly/1k0RWgu
  ───────────────────────────

高橋洋一氏.jpg
高橋 洋一氏
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2017年04月27日

●「経済司令塔を変えようとする中国」(EJ第4510号)

 2016年3月の全人代(全国人民代表大会)開幕式での出来
事です。開幕式では首相が政府活動報告をするのが習わしです。
国内外のメディアがカメラを回し、全国民が注視する華やかな政
治イベントにおいて、習近平主席と李克強首相は、お互いに目を
合わさず、終始憮然とした表情だったのです。
 習主席は、政府活動報告をする李首相の演説をいかにもつまら
なそうな表情を浮かべ、拍手を送らず、恒例になっている演説を
終えてひな檀に戻ってきた李首相と握手をしてねぎらうこともし
なかったといいます。中国ジャーナリストの福島香織氏は、この
ときの状況について次のように述べています。
─────────────────────────────
 これは異常事態であった。全人代の政府活動報告における拍手
と握手は、いわゆる台本に載っている約束事である。それをあえ
てしないどころか、全人代開催中、二人は目を合わせることもな
かった。また、政府活動報告を読み上げる李克強の様子も異様で
あった。目の下にクマをつくり疲労困悠といった様子で、読み間
違いが30回以上あり、声もときおりかすれた。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 中国では首相職が経済政策の責任者としての指揮を執ることに
なっています。ケ小平が決めた集団指導制のルールです。しかし
習近平主席にとってはこれが不満なのです。
 実は、2016年の全人代で李克強首相が憔悴しきっていたの
は、政府活動報告の起草をめぐって、習近平主席との間で激しい
やり取りがあったからです。全人代での政府活動報告は2015
年12月に行われた中央経済工作会議における決定に基づいて行
われることになっていたのですが、GDP目標の数値については
大もめにもめたのです。それは、2012年秋の第18回中国共
産党大会において、習主席がビジョン「偉大な中国の夢」と共に
掲げた次の具体的な目標に原因があるのです。
─────────────────────────────
 2020年までにGDPと国民の平均収入レベルをそれぞれ
 2倍にする。              ──習近平主席
─────────────────────────────
 ここでいう2倍とは、2010年対比です。これを達成するに
は、年平均7%以上の成長が必要なのです。これによって習政権
は、年7%以上という高い経済成長の維持が至上命令になったの
です。ちなみに、中国の公式統計によると、2012年の固定資
産投資総額はおよそ36兆人民元(約612兆円)、前年比20
%という高い伸びです。この投資によってこの年の成長率はかな
り押し上げられています。
 しかし、経済刺激、政府の直接投資に頼る経済成長には当然限
界があり、2013年には景気が息切れしてきたのです。中国当
局は、無理に無理を重ねて、死にもの狂いで7%を支えてきたの
です。その結果、この過剰な投資は各地に鬼城(グイチェン)を
林立させるなど、多くの負の遺産を遺しています。
 2014年以降、GDP成長率目標を決める中央経済工作会議
では紛糾し、習近平主席と李克強首相の仲はどんどん険しいもの
になっていったのです。そして、2015年の中央経済工作会議
では、主席と首相の対立は頂点に達したのです。これについて、
福島香織氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 この政府活動報告は2015年12月に行われた中央経済工作
会議[中国共産党と政府が毎年12月頃、合同で開催する経済関
連で最高レベルの会議を指す]での決定に沿って書かれるのだが
この中央経済工作会議ではGDP目標は盛り込まれなかった。前
年と同じ7%とするか、前年よりも0・5ポイント下げた6・5
%という数字にするか議論が分かれ、結局、最低ラインを6・5
%、目標は7%と幅を持たせることでいちおう一致したが、数字
の盛り込みは見送られた。だが、全人代に提出する政府活動報告
では具体的数字は必要だ。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 このとき、習近平主席はあくまで7%を主張したのですが、李
克強首相は最低ラインの6・5%を主張して譲らず、決着がつか
なかったといわれます。そして、「7%〜6・5%」というレン
ジで数字を盛り込むことで決着したのです。
 習近平主席は、残りの任期の5年間を自分の思い通りに国家を
運営するため、要職に自分の腹心を配置してきています。実は習
主席が一番交代させたいのは、序列第2位の李克強首相です。そ
のため、あえて李首相に高いGDP目標を立てさせ、その数字を
達成できなかったときに責任を取らせるかたちで交代させたいと
考えており、実際にそうなる可能性は高いと思われます。
 2016年5月9日付、人民日報に「権威人士」なる人物によ
る記事が掲載され、李克強首相の経済政策を批判しています。そ
のなかでマクロ経済に関して次のように述べています。これを書
いたのは、習主席の経済ブレーンである劉鶴中央財経指導小組弁
公室主任であると思われます。
─────────────────────────────
 供給サイドの主要矛盾解消、供給サイドの構造改革が必須。投
資の拡大をやり過ぎず、適度にし、まな板から包丁が飛び出るよ
うなことであってはならない。天まで届くほど伸びる枝はない。
高レバレッジは必ずハイリスクを伴う。システマティックな金融
危機をうまくコントロールできなければ、数字の上で経済成長を
導くことができても、国民の貯蓄を台無しにしてしまう。
                ──福島香織著の前掲書より
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             ──[米中戦争の可能性/080]

≪画像および関連情報≫
 ●中国で強まる習氏独裁/ナンバー2の李克強首相もクビか
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   中国の全国人民代表大会(全人代=国会)で、習近平国家
  主席の独裁ぶりが極まっている。共産党で序列第2位の李克
  強首相も平身低頭で恭順の意を示したが、年後半に開かれる
  党大会でクビになるのではとの観測が強まった。
   「習同志を核心とする中国共産党中央の力強い指導の下、
  経済、社会の発展を推し進めた」。李首相は政府活動報告で
  「核心」を繰り返して習氏の功績をたたえた。忠誠を誓う李
  氏に対し、椅子に深く腰掛けた習氏は報告書を開くこともな
  く退屈そうな仏頂面。報告書を読み上げる前に習氏に向かっ
  てお辞儀をした李氏と「格の違い」を際立たせた。会議終了
  後も、習氏は李氏と言葉こそ交わしたが、握手もせずに足早
  に退場した。
   政府が1月に公表した2016年の国内総生産(GDP)
  発表資料でも、李首相がトップを務める国務院の表記が削除
  されるなど、首相の主管分野である経済政策からの排除はあ
  からさまだった。存在感を失った李氏。習氏の信頼が厚い王
  岐山・党中央規律検査委員会書記または汪洋副首相と交代す
  るとの見方も指摘されている。   http://bit.ly/2oFvcoD
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李首相と習主席の冷たい関係.jpg
李首相と習主席の冷たい関係
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月28日

●「中国で現在大規模リストラが発生」(EJ第4511号)

 中国経済の統計は数字が操作されていると多くの人が指摘して
いますが、メディアは中国当局の発表する数値をそのまま報道し
ています。EJでは、今までに何回も中国をテーマに取り上げて
いますが、多くの中国の専門家もそのことを指摘しています。た
だ、一部にはその事実を否定する専門家もいます。
 とくに経済学者の高橋洋一氏は、中国はソ連の偽装統計を引き
継いでおり、経済統計の数字は正確ではないことを『中国GDP
の大嘘』(講談社刊)という自著で明らかにしています。そのこ
とをテーマに単行本を上梓されているのです。
 これについては、中国ウォッチャーの宮崎正弘氏も最近刊著に
おいて、高橋洋一氏と同じことをもっとストレートな表現で、そ
のデタラメぶりを指摘しています。
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 旧ソ連の経済統計が、革命から70年間、まったくのデタラメ
だったことは広く知られる。ノルマ達成だけが目的の数字をその
まま経済統計に用い、あとは作文と辻複合わせだった。
 たとえばある製鉄所では、原材料の鉄鉱石の割り当てが100
トンなのに、生産が200トンと報告される。アルミが原材料か
ら50トン精製されるとすれば100トンと平気で報告される。
在庫を確認しにくる係官は賄賂をもらって口をつぐむ。
 そもそも炭鉱事故があると現場に飛ぶ新聞記者が、会社幹部に
「書かない原稿料」を請求するのが中国のジャーナリストの特徴
であるように。          ──宮崎正弘著/徳間書店
     『米国混乱の隙に覇権を狙う中国は必ず滅ぼされる』
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 このように「中国経済失速論」が盛んなのですが、最近は「一
向に崩壊しないではないか」という声も聞こえてきます。中国は
社会主義国であり、確信犯として正しくない統計数字を使い続け
ても、それが実態をあらわしていなくても、相当長期間にわたっ
て通用してしまうのです。
 ソ連は、1922年から1991年までの70年間続いていま
す。しかし、うそをつき続けていると、うそがひとり歩きを始め
収拾がつかなくなり、誰も本当のことを把握できなくなって、突
然死してしまうのです。ソ連はそのように終末を迎えています。
 中国、すなわち、中華人民共和国の建国は1949年、今年で
69年になります。ソ連が崩壊した70年目が近付いています。
 中国の2016年度のGDP成長率は6・7%、年々下がって
はいるものの、高い成長率です。しかし、2016年の上海株式
は13%下落したのです。ニューヨーク株は2016年を通して
13・4%上昇し、ドルは対円で17%も上昇しています。日経
平均も年初から上昇しているのです。しかも、中国はIMFのS
DR(特別引出権)入りを果たし、本来なら上がるはずの人民元
が対ドルで6・6%も下落したのです。
 2016年度の中国では、金融機関を中心に大幅なリストラが
行われています。大不況です。これについて宮崎正弘氏は、次の
ように述べています。
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 中国の国有銀行トップの座にある中国工商銀行が約7600人
のリストラを発表したほか、中国銀行が約6900人、中国建設
銀行が約6800人を削減、中国農業銀行もおよそ4000人を
リストラし、この傾向は招商銀行、交通銀行、上海浦東発展銀行
などにおよび、十大銀行のリストラ規模は合計3万6000人に
達する。すでに国有企業も、余剰人員削減、産業再編へ向けての
合併が進んでいるが、社債デフォルトも頻発している。
 鉄鋼、アルミ、石炭などの企業城下町には失業者が溢れかえり
暴動前夜の様相を呈している。しかし銀行の3万人余のレイオフ
とは、2008年のリーマンショックの際にウォール街が断行し
た大量レイオフの規模に迫る「大不況」突入前夜の状況に酷似し
ている。大乱必至となるだろう。 ──宮崎正弘著の前掲書より
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 これでいて2016年のGDP成長率は6・7%なのです。明
らかに何かがおかしいのです。しかし、中国ウオッチャーのなか
には、中国の数字は正しいと主張する人もいます。キャノングロ
ーバル戦略研究所研究主幹の瀬口清之氏は、「文藝春秋」5月号
で、次のように「中国経済失速論」を批判しています。
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 中国の経済統計を語るとき、必ず指摘されるのが「数字の信憑
性」の問題です。今年2月にも、地方政府が公表したGDPを合
算すると、全国のGDPを大きく超過したというニュースが流れ
ました。
 しかし私の現地での実体験から判断するに、中国の国家機関や
人民銀行などの経済政策担当者は、正確な統計データを得ること
に非常にこだわりを持っています。中央政府が国の経済をコント
ロールするには、地方政府から上がってくる統計データに頼るし
か術がなく、そのためには正確なデータが不可欠だからです。デ
ータに疑わしいものを見つけたときには国家統計局に対して「こ
の数字はおかしくないか?」と厳しく追及する役人もいます。
 私が27年間見てきたかぎり、彼らが国家統計局発表の数字と
異なるデータを参考にして、政策運営をしていたことはありませ
ん。GDPの数字にしても、工業生産、設備投資、輸出入の数値
にしても、常に公表データと同じ指標を見ている。裏帳簿がある
わけではないのです。            ──瀬口清之著
     「中国経済失速論にだまされるな」/文藝春秋5月号
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 かなり前ですが、田原総一朗氏の番組「激論クロスファイア」
で、瀬口清之氏と遠藤誉氏の対談を見たことがあります。しかし
二人の中国に関する意見はまるで食い違っていたのです。どう考
えても、私には遠藤氏の話の方が正しいように感じたものです。
中国の統計数字がおかしいことは、首相になる前の李克強氏です
ら認めていることです。  ──[米中戦争の可能性/081]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の国有銀行が過去最大リストラ/3万6000人削減
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   【上海=河崎真澄】中国の国有商業銀行が大幅な人員削減
  策を進めている。地元紙によると、過去1年で最大手の中国
  工商銀行が約7600人の行員を削減するなど、大手10行
  で少なくとも3万6千人以上が退職に追い込まれ、過去最大
  規模のリストラになっているという。経済成長の鈍化に加え
  預金金利と貸し出し金利の固定化で安定していた収入源が、
  ここ数年の段階的な金利自由化で崩壊。さらに、ネット金融
  決済が約5億人にまで普及し、個人顧客への窓口対応が必要
  な行員数が大幅に減るなど、銀行を取り巻く環境が激変した
  ことが経営を一気に悪化させた。
   4大国有商銀の人員削減は公表されているだけで工商銀行
  のほか中国銀行の約6900人、中国建設銀行の約6800
  人、中国農業銀行が約4千人など。ほかにも交通銀行や招商
  銀行など中堅行で軒並み数百人〜数千人が削減されている。
  大手は人員削減により、円換算で年間に数十億円から数百億
  円の人件費の負担を軽減したという。
   一部の人材はネット系の金融機関などに吸収されたが、高
  騰している不動産市況が下落に転じれば不良債権問題が顕在
  化し「今後も銀行業界では1年で数万人のリストラが続く」
  (金融業界筋)とみられる。
   銀行のみならず、過剰生産問題に揺れる鉄鋼や石炭などの
  国有企業も、工場の統廃合などで数十万人の規模のリストラ
  に踏み切りつつあり、全土で広がる失業者の急増が社会不安
  に結びつかないかが懸念されている。
                   http://bit.ly/2iOJ11w
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宮崎正弘氏/瀬口清之氏.jpg
宮崎正弘氏/瀬口清之氏
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