2017年03月31日

●「果してレッドラインを超えたのか」(EJ第4491号)

 2月23日のことです。トランプ大統領は、ロイター通信のイ
ンタビューで次のように話しています。
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 北朝鮮の金正恩に会ってもいいと思っていたが、時すでに遅
 しである。            ──トランプ米大統領
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 それは、北朝鮮のやっていることが、トランプ大統領の「レッ
ドライン」を超えたからです。レッドラインとは、超えてはなら
ない一線のことです。
 トランプ政権は、これまでの米国の北朝鮮に対する政策は誤り
であったといっています。それは、ティラーソン米国務長官の次
の言葉によくあらわれています。
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 北朝鮮に対して米国は、20年にわたって、アプローチを誤
 り続けた。米国にとって新しいアプローチが必要である。
               ──ティラーソン米国務長官
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 その新しいアプローチに対して、トランプ政権のレッドライン
とは、次の3つです。
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  ◎レッドラインに達したか
   1.弾道ミサイルに搭載できるレベルの核弾頭小型化
   2.米国本土に到達できる弾道ミサイルの開発に成功
   3.ミサイルが実戦に耐えられる戦略性を持っている
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 第1のラインは、「弾道ミサイルに搭載できるレベルの核弾頭
小型化」が達成されているかどうかです。
 これに関しては既にクリアしていると考えられます。2016
年12月時点の米軍高官は、次のようにコメントしています。
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 【ワシントン=共同】米軍高官は8日、北朝鮮が核弾頭の小型
化に成功し、弾道ミサイルに搭載する能力を既に備えているとの
分析を記者団に明らかにした。宇宙空間から大気圏にミサイルを
再突入させる際の技術獲得については懐疑的な見方を示した。
                http://s.nikkei.com/2mHsrqR
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 北朝鮮は、2006年を第1回目として、これまでに5回の核
実験をやっています。その実績から既に北朝鮮の核弾頭は1・0
〜1・2トン程度まで小型化に成功していると考えられますが、
ミサイルが一度宇宙空間に出て、大気圏に再突入するさいの高熱
に耐えられるレベルに達しているかどうかは、現時点では懐疑的
であると、いっているのです。
 第2のラインは、「米国本土に到達できる弾道ミサイルの開発
に成功」しているかどうかです。
 北朝鮮の本土からミサイルを撃って、米国本土に到達するには
1万3000キロ程度の射程を持つミサイル(ICBM)が必要
になります。北朝鮮は「開発の最終段階に入った」とはいってい
るものの、現時点ではまだ完成しているとはいえません。しかし
金正恩委員長時代になってからだけでも北朝鮮は70回もミサイ
ルを発射しているのです。そのため十分な経験を積んでいると思
われるので、米国本土に届くICBMの完成にはそれほど時間は
かからないものと思われます。
 それに、北朝鮮は潜水艦発射型弾道ミサイルの実験には成功し
ています。したがって、潜水艦で、できるだけ米国に近づいて、
SLBMを発射すれば、米国本土に届くので、このラインは既に
クリアしていると考えてよいと思います。
 第3のラインは、「ミサイルが実戦に耐えられる戦略性を持っ
ている」かどうかです。
 北朝鮮は、これもクリアしているのです。既に北朝鮮のミサイ
ルは固体燃料を使い、すべて移動体車両から発射可能のミサイル
です。それに発射までに5分程度しかかからず、しかも複数のミ
サイルを同時に発射できる技術レベルに達しています。
 このように考えると、北朝鮮のミサイル技術は、すべてトラン
プ政権のレッドラインを超えているのです。そうであるとすれば
米国は直ちに対応する必要があります。だからこそ、トランプ政
権は斬首作戦を実施に移そうとしているのです。
 しかし、北朝鮮という国を直ちに崩壊させるわけにはいかない
のです。もし、崩壊させようとすると、3月21日のEJ第44
83号で検討したように、米中が衝突しかねないからです。その
ため、斬首作戦になったのです。
 しかし、要人暗殺は非常に難しいのです。その死亡を確認しな
ければならないからです。添付ファイルを見てください。特殊部
隊によるビン・ラディン攻撃の一部始終を、ホワイトハウスのシ
チュエーションルームで米国政府の幹部が見ているシーンです。
オバマ大統領もクリントン国務長官の姿もあります。これと同じ
ことを金正恩斬首作戦についてもやろうとしているのです。ジャ
ーナリストの山口敬之氏は次のように述べています。
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 殺害だけが目的なのであれば、居場所に強力なミサイルを打ち
込めば済む。しかし、そうするとターゲットの死亡確認が難しく
なる。このため、敵性組織の強力なリーダーを殺害する際には、
リスクが高くても特殊部隊をターゲットの居場所に投入し、目の
前で殺害する。
 「戦略的忍耐」を掲げ、決断できない大統領のレッテルを貼ら
れていたオバマにとっては、多数のアメリカ人を殺害したとされ
るビン・ラディンを無残に殺害してみせることで、アメリカ国民
の処罰感情に応えて見せる必要があったのである。
     ──山口敬之氏/月刊WiLL/5月号(2017)
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             ──[米中戦争の可能性/061]

≪画像および関連情報≫
 ●ビンラディン射殺作戦の全貌
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   9・11米同時多発テロの首謀者として、米国が10年も
  の長きにわたって追い続けた国際テロ組織「アルカイダ」の
  指導者オサマ・ビンラディン容疑者が、ついに発見され、殺
  害された。この希代の凶悪テロリストの正体は、いったい何
  だったのか。これでテロとの戦いに終止符は打たれるのか。
   作戦終了後、ホワイトハウス地下の危機管理室で、戦闘の
  様子をリアルタイムで見ていたオバマ大統領は「ようやく捕
  まえた」と叫んだという。
   2001年9月11日の米同時多発テロの首謀者とされ、
  米連邦捜査局(FBI)が「10大重要指名手配犯」の一人
  として、血眼になって追い続けてきたオサマ・ビンラディン
  はわずか38分の銃撃戦の末、射殺された。
   白人の侵入に抵抗した米先住民族の戦士の名から、「ジェ
  ロニモ」と名付けられたこのビンラディン殺害作戦は、軍事
  ジャーナリストの神浦元彰氏によると、「教科書に載るよう
  な完璧さ」だったという。それもそのはずだろう。作戦は昨
  年2月から、米国の威信をかけて周到に準備されていた。米
  中央情報局(CIA)関係者が明かす。「最終的に居場所を
  突き止めたのは2ヶ月前のことでした。作戦を指揮したのは
  CIA。機密漏洩を防ぐため、直前まで軍にも知らせないほ
  ど慎重に進められました。オバマ大統領は、決行直前にアフ
  ガニスタン駐留米軍司令官を新CIA長官に、リオン・パネ
  ッタCIA長官を新国防長官に指名するなど、人事面でも万
  全を期したのです」。       http://bit.ly/2op4IYT
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ビン・ラディンが殺害される一部始終を見る米政府幹部.jpg
ビン・ラディンが殺害される一部始終を見る米政府幹部
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする