2017年02月17日

●「日米首脳会談にケチをつけた中国」(EJ第4462号)

 昨日のEJの続きです。なぜ、対中強硬派が揃っているトラン
プ政権の幹部が、日米首脳会談の直前に中国と電話会談を急遽行
い、トランプ大統領が「一つの中国」を認めたのでしょうか。
 それは、ティラーソン国務長官やマティス国防長官、フリン大
統領補佐官らが、現在アジアでコトを構えるのは得策ではないと
主張したからであるといわれます。米国は中東でも火種を抱えて
おり、こちらの方が優先順位が高いと判断したからです。
 しかし、米国は中国がいうところの「一つの中国」のポリシー
をそのまま認めたのではなく、ひとつの細工を施しています。そ
れは、ホワイトハウスの公式ホームページの「一つの中国」原則
の尊重について次のように記されていることでわかります。
─────────────────────────────
       to honor our “one China”policy.
─────────────────────────────
 ミソは「our」 にあります。「われわれの一つの中国の原則」
という意味になります。これは中国の原則ではなく、われわれ米
国の一つの中国の原則を尊重すると主張しているのです。すなわ
ち、「一つの中国」は認めるが、米国は台湾関係法で台湾を守る
というわけです。これは、もし中国が台湾を侵攻するようなこと
があれば、米国は軍事的に台湾を守るということを意味している
のです。台湾関係法は米国と台湾の事実上の軍事同盟です。
─────────────────────────────
 台湾関係法とは中華民国(台湾)に関するアメリカ合衆国と
 しての政策の基本が定められている法律である。事実上のア
 メリカ合衆国と中華民国(台湾)との間の軍事同盟である。
                  http://bit.ly/2kqfrzG
─────────────────────────────
 それにしても、中国はしたたかです。「一つの中国」を認めよ
うとしないトランプ政権に対し、さまざまな工作を行っているの
です。表面的には米国に対して威嚇を行い、同時に幅広い米国に
おける中国人脈を使って、内部から、「一つの中国」を認めさせ
る働きかけを行っています。硬軟を使い分けているのです。
 まず、中国は「核心的利益」(一つの中国)が冒されれば、世
界一の軍事力を持つ米国に対しても、戦争すら辞さないという姿
勢を示すものとして、昨日のEJで述べたように、トランプ氏の
大統領就任前の1月に「東風(DF)5C」を発射し、大統領就
任後には北米全体を射程に収める弾道ミサイル「DF41」を浙
江省に配備し、ミサイル発射の映像をユーチューブに公開して、
米国に見せつけています。これは米国への威嚇といえます。
 これに平行して、共和党内部の中国人脈を使って、「一つの中
国」を受け入れさせる工作を行っています。このなかにはキッシ
ンジャー博士もいたと思われます。フリン大統領補佐官は中国の
国務委員とのパイプがあり、そのルートを通じての工作もあった
と思われます。結局、その内部工作が功を奏し、ティラーソン
国務長官が中心となって、トランプ大統領を説得し、習近平国家
主席との電話会談が行われたものと考えられます。中国の工作が
実を結んだのです。
 それにしても、日米首脳会談の最後の日に、北朝鮮はなぜミサ
イルを発射したのでしょうか。明らかに意図的です。
 おそらく中国と北朝鮮は連携しているはずです。それは日米首
脳会談──とりわけ日本を牽制しようとしたものと思われます。
それには、米国も一枚噛んでいます。米国にも二面性があるので
す。そういう意味において、日本はトランプ政権に全面的には心
を許してはならないのです。
 安倍首相の外交は、力で現状を変更しようとする中国に対して
日米関係を強固なものにして、価値観を共有する各国と連携を図
りながら、中国包囲網を築くというものです。当然中国としては
日本に対して厳しい姿勢をとらざるを得ないことになります。
 そこで日米首脳会談の冒頭と最後に、日本を牽制するために行
われたのが、2つのサプライズです。会談の冒頭では、突然の習
近平対トランプの電話会見をぶつけ、会談の最後に北朝鮮のミサ
イル発射させることによって、日本が日米関係の成功をもろ手を
上げて喜べないようにしたのです。中国にとっては大成功です。
完全に日本はもてあそばれているように感じます。
 警戒すべきは、北朝鮮の「北極星2」の打ち上げ成功です。金
生恩最高指導者は次のように発言し、トランプ氏からツイッター
で反論を浴びています。
─────────────────────────────
 米本土を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)が完
 成する過程にある。        ──金正恩最高指導者
─────────────────────────────
 しかし、「北極星2」の成功によって、ICBMの完成に一歩
近づいたことは確かです。「北極星2」は、直前に燃料注入作業
をする必要がない固体燃料型で機動性が高く、液体型よりも軍事
的な脅威が大きいのです。「北極星2」には次の2つの特色があ
ります。
─────────────────────────────
    1.潜水艦型SLBMを陸上型に改良している
    2.移動型車両にキャタピラーを使用している
─────────────────────────────
 北朝鮮は潜水艦の保有数では世界有数の数を誇りますが、高度
な潜水艦を作る技術はないのです。しかし、水中からミサイルを
発射するSLBMの技術を有しているので、それを陸上型として
改良したのが「北極星2」です。
 「北極星2」の最大の特色は、ミサイルを運び、発射させる移
動車両がキャタピラーを使用していることです。北朝鮮はゴムが
とれないので、輸入に頼ることになるため、キャタピラーにした
のだと思いますが、これは世界に例がないのです。これならどこ
にも移動でき、ますます発射位置を特定できなくなるメリットが
あります。        ──[米中戦争の可能性/032]

≪画像および関連情報≫
 ●北発射のミサイル「ICBMに向かう中間段階」=専門家
  ───────────────────────────
  【ソウル聯合ニュース】北朝鮮メディアが2月13日、新型
  の中長距離弾道ミサイル「北極星2型」の試験発射を12日
  に行い、成功したと報じたことで、このミサイルの性能や発
  射方式などに関心が集まっている。
   朝鮮中央通信など、北朝鮮メディアの報道を要約すると、
  12日のミサイルは固体燃料を使用する新型の戦略兵器であ
  り、昨年8月に発射実験に成功したとされる潜水艦発射弾道
  ミサイル(SLBM)の体系を土台に射程を延長した新たな
  形態の中長距離ミサイルということになる。
   北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」が公開した北極星
  2型の発射の写真を見ると、昨年8月に水中発射した全長約
  9メートルのSLBM「北極星」とほぼ同じだった。専門家
  らはこのミサイルについて、固体燃料を使用する大陸間弾道
  ミサイル(ICBM)の開発に向けた中間段階の兵器体系で
  ある「新型IRBM(中長距離弾道ミサイル)」だと分析し
  ている。IRBMは射程2400〜5500キロの弾道ミサ
  イルを指す。北朝鮮が公表した写真を見ると、SLBMと同
  様に円筒の発射管から飛び出したミサイルは10メートルほ
  ど上がった空中で点火され、正しい姿勢を取って浮上した。
  SLBMと発射方式や全長(12メートル)は同じだが、エ
  ンジン体系が、全く異なる新たな地対地IRBMと分析され
  る。北極星2型を1段目として2段目の推進体を組み合わせ
  れば、ICBMとしての性能を発揮できるとみられている。
                   http://bit.ly/2lKma9x
  ───────────────────────────

「北極星2」発射光景.jpg
「北極星2」発射光景
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする