2017年02月13日

●「ニカラグア運河実現を阻む3問題」(EJ第4458号)

 ニカラグア運河は2014年に着工していますが、3つの問題
点に突き当たっています。次の3つです。
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      1.途中で資金が不足する恐れがある
      2.水源確保などの計画の甘さがある
      3.採算がとれるかどうかわからない
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 「1」は、運河の建設資金の問題です。
 2014年に着工したはずのニカラグア運河ですが、2015
年11月に英国のメディアは「ニカラグア運河の本格的工事開始
が1年間延期された」と伝えています。その翌日に、中国メディ
アが同じ内容を伝えているので、運河工事の1年延期は間違いな
いと思われます。
 「本格的工事開始が1年延期」という表現は、実際の工事には
入っていないことを意味します。それにしても、工事を請け負う
HKNDは中国の大富豪の企業であり、バックには中国政府がつ
いているのにどうして資金不足になったのでしょうか。
 HKNDの王靖会長のバックには中国政府がいるのは確かです
が、あくまで隠れた存在です。したがって、当面は王会長の個人
資産頼みになります。そのうえで世界の投資家からの資金を募る
計画もあるのですが、うまくいっていないようです。
 しかし、その肝心の王会長の個人資産が、中国株の暴落や経済
発展の減速によって、最高時の3分の1程度にまで目減りしてし
まい、深刻な資金不足を引き起こしているのです。
 実際に2014年からの1年間では工事はほとんど行われてい
ないのです。それは、米ブルームバークのある記事によって明ら
かにされています。2015年8月時点の話ですが、米ブルーム
バークのマクドナルド記者は、ニカラグア湖の岸辺のエルトゥー
ルという町を取材しています。このエルトゥールという町は、ニ
カラグア運河の工事がはじまると消滅する予定になっています。
この取材の結果、マクドナルド記者の書いた記事は、次の通りで
す。かなり長い記事なので、冒頭の一部のみ以下に示します。
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 町の人間はもう何ヶ月も運河建設関係者を目撃しておらず、工
事もわずかしか行われていないという。たしかに何人かの中国人
のエンジニアたちが、湖の東側に標識を立てていたのを去年の暮
れに見かけたし、今年のはじめには港が出来る予定の、西岸の工
事用の道が拡大され、照明が新しいものに変えられた。しかし現
地の若い実業家であるメンドーサ氏(32歳)は建設計画が進ま
ないことを確信しているために、エルトゥールの町の郊外にコン
ビニと隣接した2階建ての宿を建設中だ。彼は運河なんかできる
わけないと大胆に述べている。    http://exci.to/2luxzJD
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 「2」は、建設計画の中身の問題です。
 ニカラグア運河計画は、カリブ海と、太平洋と大西洋を結ぶ約
260キロメートル(パナマ運河の3・5倍)の運河を建設する
という壮大な計画です。
 この運河計画が普通の運河計画と違うのは、途中にニカラグア
湖を通過することです。運河の水位調節は、他の運河と同様に段
階的に水門を閉じて行う方式ですが、ニカラグア運河の計画には
水源としての人工湖計画がないのです。水路を引いて中央のニカ
ラグア湖の水源を使う計画になっています。
 しかし、これをやると湖の水源不足につながってしまいます。
それに生態系の変化も起こることになります。こうした建設計画
の甘さやニカラグア湖の生態系の問題では、環境団体による大規
模な反対運動も起きています。
 「3」は、この運河の採算性問題です。
 世界3大運河といわれますが、3つともいえるでしょうか。2
つはいえても3つ目をいえる人は少ないと思います。
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            全長   利用船舶数   開通年
 1.スエズ運河 167キロ 2万1000隻 1869年
 2.パナマ運河  80キロ 1万4000隻 1914年
 3.キール運河  98キロ 4万2000隻 1895年
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 これら3つの運河は、それぞれ別の場所にあるのですが、3つ
には関係があります。スエズ運河はエジブトにあり、地中海と紅
海を結ぶアジア/ヨーロッパ間ルートです。パナマ運河は、パナ
マにあり、太平洋と大西洋(カリブ海)を結ぶ南北アメリカの境の
ルートです。キール運河は、ドイツ北部にあり、北海とバルト海
を結ぶルートであり、デンマーク・ユトランド半島の根元に位置
しています。
 アジア/ヨーロッパ間ルートで考えると、スエズ運河とパナマ
運河は競争関係にあります。しかもこの2つの運河は最近相次い
で拡張工事を終了しています。スエズ運河は2015年、パナマ
運河は2016年です。その結果、パナマ運河は、スエズ運河に
比較して通航料金は3〜4割高くなっています。
 もし、ニカラグア運河ができると、その通航料金は相当高くし
ないと採算に合わなくなります。まして、ニカラグア運河はパナ
マ運河と非常に近い距離にあります。つまり、どちらを通航する
かは料金比較になるのです。スペイン在住の貿易コンサルタント
の白石和幸氏は自身のサイトで次のように述べています。
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 ニカラグア運河については完成するか否かが先ず疑問視されて
いる。また、パナマ運河とニカラグア運河が商業的に同時に採算
ベースに乗ることは不可能である。米国は中国の影響下にあるニ
カラグア運河は使用しないはずで、ニカラグア運河は中国の米国
を睨んだ戦略的な意味合いが強い。   http://bit.ly/2kdhxYI
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             ──[米中戦争の可能性/028]

≪画像および関連情報≫
 ●前途絶望のニカラグア運河/宮崎正弘氏
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   中国がパナマ運河に対抗してニカラグアに運河を建設する
  大プロジェクトは、日本円にして6兆円規模だ。全長278
  キロ、パナマ運河の三倍。気が遠くなる稀有壮大な夢の実現
  と騒がれた。
   ニカラグアのサンディニスタ左翼政権は派手に米国に敵対
  してきたが、複数政党制になっていまは連立政権である。政
  権が変わると、スリランカが、あるいはミャンマーがそうで
  あるように、中国主導のプロジェクトはときに中止されたり
  する。しかもニカラグアは、なぜか中国とは国交がない。台
  湾と外交関係がある不思議な左翼的国家、というより反米的
  な国家である。隣のコスタリカは白人国家。しかもコスタリ
  カのほうが、中国が出資してくれるので、あっさりと台湾と
  の外交関係を断った。
   米国から見れば、パナマ運河のすぐ北に競争相手ともいう
  べき大運河が建設されると聞けば、安全保障上からも、脅威
  であり、裏で妨害工作をするだろうと予測してきたが、妨害
  もなく、地元の環境保全の運動にも、表立った支援をなして
  いる様相はない。不思議だなといぶかしんできたのだが、最
  近の事情が伝わって、ようやく得心が出来た。つまり米国は
  この計画は最初から無理で、途中で放り投げてしまうだろう
  と楽観視してきたからだ。     http://bit.ly/2lySvzg
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ニカラグア運河とパナマ運河の位置関係.jpg
ニカラグア運河とパナマ運河の位置関係
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする