2017年01月04日

●「トゥキュディデスの罠の意味探る」(EJ第4431号)

2017年最初のEJです。今年もよろしくお願いします。
 中国の習近平国家主席は、国営中央テレビを通じて、国民への
新年のメッセージとして、強い口調で次のように述べています。
─────────────────────────────
 我々は、領土主権と海洋権益を断固として守り抜く。この問題
で言いがかりをつけることを、中国人民は決して認めない。
          ──2017年1月1日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 習国家主席のこの発言は、明らかにトランプ次期米大統領の発
言を意識しています。トランプ氏は、大統領選挙中、選挙後を通
じて、台湾や南シナ海をめぐる問題で中国を揺さぶる発言を繰り
返しているからです。習国家主席はこれを「言いがかり」と表現
しているのです。
 そういうこともあって、今年のキーワードのひとつは「中国」
の動向です。中国の動きによって、世界に大変化をもたらす可能
性があるからです。最悪のシナリオとしては、戦争だって起きか
ねないのです。
 最近の日本における中国の報道については、かなりネガティブ
なものが多くなっているように感じます。経済の深刻な落ち込み
と南シナ海をめぐるオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所の裁定、
国内の権力抗争の激化などです。
 しかし、まさか中国が戦争を起こすとは考えにくいとする人は
多いと思います。これに関して、カルフォルニア大学教授のピー
ター・ナヴァロ氏が上梓した『米中もし戦わば』(文藝春秋)と
いう新刊書があります。いまこの本が売れているのです。
 このピーター・ナヴァロ氏は、大統領選挙中に政策顧問として
トランプ氏のアドバイザーを務めており、トランプ氏の通商政策
に影響を与えています。ナヴァロ氏は、他にも中国の政策を強く
批判する著書『中国は世界に復讐する』、『中国による死』も書
いている中国批判派の論客です。トランプ氏は、ホワイトハウス
内に「国家通商会議」を新設し、ナヴァロ氏を議長に指名すると
発表しています。
 ナヴァロ氏の著書『米中もし戦わば』(文藝春秋)の冒頭に次
の問題が出ています。
─────────────────────────────
【問題】歴史上の事例に鑑みて、新興勢力=中国と既成の超大国
=アメリカとの間に戦争が起きる可能性を選べ。
  「1」 非常に高い
  「2」ほとんどない
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 この問題はどちらが正しいと思いますか。
 結論から先にいうなら、実は「1」の「非常に高い」が正解な
のです。これには歴史的な根拠があります。それは、2015年
9月の習国家主席の米国訪問のとき、オバマ大統領が引用したと
いわれる次の有名な言葉です。これは、紀元前五世紀のペロポネ
ソス戦争に由来する言葉です。
─────────────────────────────
         トゥキュディデスの罠
─────────────────────────────
 トゥキュディデスというのは、古代アテネの歴史家で、『ペロ
ポネソス戦争史』を著した歴史家です。ペロポネソス戦争とは、
紀元前431年〜紀元前404年の約30年の間、アテネを中心
とするデロス同盟とスパルタを中心するペロポネソス同盟との間
に発生した古代ギリシア世界全域を巻き込んだ戦争です。
 紀元前5世紀には、スパルタが現在の米国と同じように強大な
覇権国家だったのです。それに挑むように当時の文明をリードす
る存在になりつつあったのがアテネです。これについてハーバー
ド大学の政治学者であるグラハム・アリソン氏は、次のように述
べています。
─────────────────────────────
 この劇的な(アテネの)勃興にスパルタはショックを受け、為
政者たちは恐怖心から対抗策を取ろうとした。威嚇が威嚇を呼び
競争から対立が生まれ、それがついに衝突へと発展した。30年
に及ぶペロポネソス戦争の末、両国はともに荒廃した。
           ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
 ナヴァロ氏は、1500年以降、中国のような新興勢力が既存
の大国に対峙した15例のうち11例が戦争に発展したことを指
摘しています。つまり、70%以上の確率で実際に戦争がおきて
いるのです。まして現在中国のリーダーである習近平主席は、日
頃から「私は中国のゴルバチョフにはならない」と言明し、現在
の共産党政権による独裁の目的も、中国の発展や人民の幸福にあ
るのではなく、あくまで自分を核とする共産党体制を守ることに
置かれているようです。それだけに、武力による現状変更を強引
に行い、戦争に突き進む恐れは十分にあります。
 もうひとつ中国にとってリスクが大きいのは、経済の低迷であ
り、その解決のメドが立たないことです。もし、ハードランディ
ング必至ということになると、国民の不満が一挙に共産党に向う
恐れがあり、その国民の不満を外に反らすため、戦争に突入する
可能性はゼロではないといえます。
 そこで、今年の第1のテーマは、テーマとしてはきわめて難し
く、大きなテーマですが、次のようにします。明日から、書いて
いきます。
─────────────────────────────
     『米中戦争の可能性は本当にあるのか』     
      ─ そのとき日本はどうするか ─
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/001]

≪画像および関連情報≫
 ●ペロポネソス戦争/「世界史の窓」
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   前431年〜404年の27年間にわたって続いた、ギリ
  シアの代表的ポリスであるアテネとスパルタの対立を主軸と
  する戦争。ペロポネソスはその戦場となったギリシアの本土
  であるが、戦闘はエーゲ海上から遠くシチリア島まで及んで
  いる。アテネはデロス同盟の盟主として全ギリシアから東地
  中海一帯の海上までその支配を拡大したが、それに反発した
  スパルタはペロポネソス同盟を結成してそれに抵抗しようと
  した。この二つのポリスは、アテネが典型的な民主政を発展
  させたポリスであったのに対し、それに対してスパルタは貴
  族政(寡頭政)のもとで、貴族の中から王を選び、少数の貴
  族階級が多くの半自由民(ペリオイコイ)と奴隷(ヘイロー
  タイ)を抑えるために軍国主義を採っているというように、
  国家体制に大きな違いがあった。
   ペロポネソス戦争の歴史については、アテネの市民トゥキ
  ディデスの『戦史』に詳細に記録されている。トゥキディデ
  スは富裕なアテネの市民であり、また一時は将軍として出征
  したが、作戦に失敗して追放され、所有するトラキアに鉱山
  に隠棲して戦争の推移を見守り、叙述を続けた。その特徴は
  後半に史料を集めながら、厳しい史料批判を行い、客観的な
  事実を究明しながら、この未曾有の戦争の原因と経過を論述
  しようとしている点である。    http://bit.ly/2ir9yCW
  ───────────────────────────

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ピーター・ナヴァロ教授
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2017年01月05日

●「ミアシャイマー教授の3つの仮定」(EJ第4432号)

 なぜ、既存の覇権国家と新興国家の間では、なぜ戦争が起きる
のでしょうか。
 これについて、シカゴ大学のミアシャイマー教授は、有名な次
の自著のなかで、説得力のある理論を展開しています。
─────────────────────────────
       ジョン・J・ミアシャイマー著/奥山真司訳
  『大国政治の悲劇/米中は必ず衝突する!』/五月書房
─────────────────────────────
 ミアシャイマー教授は、覇権国家と新興国家の間で戦争が起き
る理由について、次の3つの仮定を立てています。
─────────────────────────────
   1.世界には国家を取り締まる組織は存在しない
   2.すべての国家は戦争のための兵器を増強する
   3.他国の真意を知るのはほとんど不可能である
─────────────────────────────
 「1」の仮定について考えます。
 国内で不当に誰かから攻撃を受ければ、国家権力の組織である
警察が出動します。そうであるからこそ、多くの場合は、その抑
止力で攻撃を受けないで済んでいるともいえます。
 しかし、国家がどこか別の国家から不当に攻撃された場合には
基本的にはその持っていきどころがないのです。国連があるじゃ
ないかという人もいますが、5つの常任理事国がその理念にもか
かわらず、それぞれ国益で動くので、国家を取り締まる「世界の
警察」として機能していないのです。つまり、無政府状態である
といえます。米国は世界の警察であるといいますが、米国も自ら
の国益で動くので、世界の警察であるはずがなく、当然のことな
がら、米国はそのような義務も負っていないのです。
 「2」の仮定について考えます。
 「1」で述べたように、世界体制は無政府状態なので、すべて
の国家は、武装──戦争のための兵器を増強します。基本的には
自衛のためです。しかし、ときとして、危険な拡大スパイラルが
起きるのです。いわゆる軍拡競争です。ミアシャイマー教授は、
これを「安全保障のジレンマ」と呼んでいます。それは、次のよ
うな意味です。
─────────────────────────────
 安全保障のジレンマとは、他国に対する脅威を感じた結果とし
て行われる軍拡ないし同盟強化の対応が、その当該他国の自国へ
の脅威認識を高め、結果としてさらに当該他国の軍拡ないし同盟
の強化をもたらす。防衛のための軍拡ないし同盟強化は他国への
脅威になることから、負の連鎖として軍拡競争や同盟強化競争が
続くこと。              http://bit.ly/2i1jRwB
─────────────────────────────
 「3」の仮定について考えます。
 現在、中国は驚くべきペースで軍備を拡張しています。かつて
の驚異的経済成長で得た富を軍事費に注ぎ込んでいるのです。ま
るでどこかの国との戦争を急いでいるようです。その意図は世界
の誰にもわからないのです。これについて、ミアシャイマー教授
は次のように述べています。
─────────────────────────────
 米中の今後の行動を正しく予測するためには、「取り締まる者
のいない世界には、できる限り強大な国になりたいという強い動
機が存在するのだ」と理解することが必要だ。その理由は、台頭
する他国が自国に悪意を持っていないかどうか、どの国も決して
確信が持てないからだ。だから、近隣に非常に強大で敵意を持っ
た国があれば(ドイツ帝国やナチス・ドイツや大日本帝国などを
想像してみるといい)、各国はそれよりも遥かに強大なカを貯え
て安心したいと思うようになる。相手が荒っばい振る舞いに出て
も、国家以上の権威を持った存在が助けに来てくれるわけではな
いのだから。したがって、取り締まる者のいない世界体制の中で
安全を保障する最良の方法は、その地域の覇権国家になり優位に
立つことで、どこからも攻撃されないようにすることなのだ。
       ──ジョン・J・ミアシャイマー著/奥山真司訳
    『大国政治の悲劇/米中は必ず衝突する!』/五月書房
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 中国はアジアの覇権国家になることを目指し、軍事大国になろ
うとしています。なぜ、そうするのかといえば、アジアで軍事大
国になれば、どこからも攻撃を加えられることはないからです。
また、その軍事大国になる仮定において、少々荒っぽいことをし
ても、その軍事力を恐れて、正面切って中国を非難できないと考
えているようです。それは、南シナ海の人工島の建設や、わが国
の固有の領土である尖閣諸島への度重なる傍若無人な領海侵犯に
よくあらわれています。
 しかし、戦争というものは、為政者の判断ミスや偶発的な事件
によって起こされるのです。中国の軍事力拡大や他国への領海侵
犯、仲裁裁判所の裁定に反する人工島の建設などによって関係国
間に緊張が高まるなかにおいて、ちょっとした偶発事件によって
戦争に発展するのです。ちょうど、オーストリア皇太子フランツ
・フェルディナントの暗殺事件がきっかけになって、第1次世界
大戦が起きたようにです。したがって、戦争はいつ起きても不思
議ではないのです。
 中国の意図を知るには、現在の中国のことをわれわれはもっと
知る必要があります。習近平国家主席という人物はどのような政
治家なのか、中国共産党内部の権力闘争はどうなっているのか、
中国の経済の状況は本当のところ、どのような状態なのか、知る
べきことはたくさんあります。
 これらについては、連載を進めながら、専門家の情報も参考に
しながら、丁寧に探っていきたいと考えています。
             ──[米中戦争の可能性/002]

≪画像および関連情報≫
 ●e─論壇/百花斉放
  ───────────────────────────
   ジョン・ミアシャイマー・シカゴ大学教授は12月11日
  来日し、日本国際フォーラム、明治大学、西シドニー大学お
  よび、グローバル・フォーラム共催の日・アジア太平洋対話
  「パワー・トランジションの中のアジア太平洋:何極の時代
  なのか」を皮切りに、同志社大学、NSC、外務省、防衛省
  東京財団フォーラムでの討論後、日本国際フォーラムの「外
  交円卓懇談会」で活発な意見交換後、12月20日に離日し
  た。その強烈な個性と「攻撃的現実主義」と呼ばれるリアリ
  ズムで日本を揺さぶったが、国際摩擦を強める中国に対し、
  理論面から日米同盟の強化を主張する点で、極めて有意義だ
  った。伊藤剛明治大学教授と共に、教授の招聘を主導した小
  生としては、大きな満足であった。
   ミアシャイマー教授の理論は、国際システムの基本につい
  て(1)国際政治システムは、国家を構成要素とするアナキ
  ーである、(2)全ての国家は攻撃的軍事力を持つ、(3)
  国家は他国の意図(特に将来の意図)を知ることができない
  (4)国家は生存のため覇権を目指すの4点を指摘する。だ
  が、国家にとって直ちに世界覇権を獲得することは無理なの
  で、とりあえずは地域覇権の獲得を目指す。地域覇権を獲得
  すると、国家は、その地域での行動の自由を確保し、他の地
  域にも干渉し、そこでの覇権国の出現を防ぐものとされる。
                   http://bit.ly/2iYSGqa
  ───────────────────────────

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ミアシャイマー/シカゴ大学教授
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2017年01月06日

●「習近平国家主席とはどんな人物か」(EJ第4433号)

 2017年1月3日付、朝日新聞のトップ記事として、中国に
関する次の記事が掲載されています。
─────────────────────────────
 ◎中国、腐敗摘発へ新機関/政府と同格 全公務員を対象
  中国の習近平指導部が、すべての公務員の腐敗行為を取り
 締まる新たな国家機関「国家監察委員会」を2018年3月
 に創設する方針であることがわかった。内情を知る共産党関
 係者が明らかにした。国務院(政府)などと同格で、各省庁
 や地方政府を厳しく監視する。習氏が進める反腐敗政策の集
 大成ともいえる組織で、習氏への権力集中が一層強まる可能
 性がある。     ──2017年1月3日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 この国家監察委員会は、これまで共産党員の規律違反や腐敗行
為を摘発してきた党中央規律検査委員会の書記で、習国家主席の
盟友といわれる王岐山氏の去就と関係があります。
 王岐山氏は、今年69歳であり、「68歳定年」の慣例により
本来なら引退することになります。そこでより強力な監察機能を
持つ国家監察委員会を来春新設し、そのトップに王岐山氏を就任
させることによって、盟友の温存を図る画策ではないかといわれ
ているのです。いずれにせよ、習政権に逆らう者は、ことごとく
排除する体制の構築といえます。
 ところで、この習近平国家主席とはどのような人物なのでしょ
うか。その人物像は、中国専門のジャーナリストによっても、そ
れぞれ大きく異なるのです。
─────────────────────────────
 1.習近平は非常に優れた為政者で大衆に人気があり、力強い
   リーダーシップの持ち主である。
 2.習近平はロシアのプーチンタイプの実力者であり、ケ小平
   に次ぐ共産党の中興の祖になる。
 3.習近平は歴代指導者の中で最弱の“皇帝”で、党内の信頼
   も低く、党中央で孤立している。
 4.習近平は独裁者であり、第2の毛沢東を目指しプチ文革を
   起こそうとする危険人物である。
─────────────────────────────
 このように、習国家主席の印象は、中国をよく知る人によって
もこのように大きく異なるのです。つまり、人によって評価は大
きく分かれるのです。
 中国に詳しいジャーナリストの一人に福島香織氏がいます。テ
レビにもよく登場するので、知っている人は多いと思いますが、
福島氏は産経新聞社に入社し、1998年に上海・復旦大学に語
学入学し、2001年には香港支局長になり、2002年春から
2008年秋まで、中国総局特派員として北京に駐在するという
ベテランの中国通のジャーナリストです。
 福島氏は、2009年11月に産経新聞社を退社し、フリー記
者として中国を取材し、中国に関する多くの著書を上梓しており
私はその何冊かは読んでいます。福島氏は、最新刊書で、習近平
主席のイメージを次のように表現しています。
─────────────────────────────
 私個人の印象としては、今までの習近平の内政、外交における
言動、その生い立ちや周辺からの人物評を総合すると、小心の用
心深く周囲の人間に対する信頼感が薄く、自分の地位を安定させ
るための強い権力を求めつづけて満足しない独裁志向の極めて強
い人物というふうに映る。その独裁の目的は、中国の発展や人民
の幸福というところにはなく、自分を核心とする共産党体制を守
る、自分の権力地位を守る、という一点にある。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 「チャイナ・リスク」というと、経済崩壊、軍事的脅威、社会
動乱などが頭に浮かびますが、福島氏は「習近平政権自身がチャ
イナ・リスクそのもの」であるといっています。それは、この政
権が、かつての胡錦濤政権や江沢民政権とは、明らかに質の違う
危うさをはらんでいるからである──このように、福島香織氏は
いっているのです。
 少なくとも、現在の習近平政権は、前の胡錦濤政権とは大きく
異なるのです。胡錦濤前主席は共産党一党支配の限界というもの
をよく認識していたのです。北京五輪の終わった後の2008年
12月18日、第11期党中央委員会第3回全体会議30周年記
念日に胡錦濤前主席は次のように指摘しています。
─────────────────────────────
 私は次のような深い認識に至った。党の先進性も党の執政地位
も一度苦労して手に入れたあとは永遠に続く、というものではな
い。永遠に変化しないというものでもない。過去の先進性と現在
の先進性の意味は同じではない。現在の先進性は永遠の先進性で
はない。・・・党は人民と歴史が付与した重大な使命を受け止め
新しい状況の問題に対処するため自らを建設するためにまじめに
研究せねばならない、改革発展を指導する中でつねに自己を認識
し、自己を強化し、自己を高めねばならないのである。
                ──福島香織著の前掲書より
─────────────────────────────
 胡錦濤前主席は、共産党体制が危機的状況にあることを深刻に
認識し、政治改革に取り組まなければならないと訴えています。
中国共産党指導者が対外的にこのようなことを発言したのは、初
めてのことであり、それだけ現実認識力が高かったのですが、中
国国内ではそれは「弱さ」に映ったのです。しかも、その肝心の
政治改革をやり遂げる力は、胡錦濤前主席にはなかったのです。
 本当は、2008年の北京五輪は、中国が責任ある大国として
民主・法治国家として生まれ変わるチャンスだったのですが、そ
れを胡錦濤政権は、実現することはできなかったのです。
             ──[米中戦争の可能性/003]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平とは何者なのか/ニューズ・ウィーク
  ───────────────────────────
   本誌2011年1月19日号にも書いたが、ウィキリーク
  スが年末に公表したアメリカ国務省の外交公電に、中国次期
  トップ習近平の知られざる素顔を暴く証言が含まれていた。
  「無骨な田舎者」「ビジネス感覚に長けたリーダー」「外国
  を敵視する危ない人物」――人となりを示す情報やエピソー
  ドが少なすぎるせいで、これまで習の素顔をめぐってはチャ
  イナウォッチャーの間でさまざまな憶測が飛び交っていたが
  この証言は論争に終止符を打つかもしれない。それぐらい重
  要な中身が含まれている。
   公電は駐北京アメリカ大使館から09年11月に発信され
  た。情報源は、アメリカ在住の中国人学者だ。在米中国人の
  情報が北京を経由し、地球を半周して国務省に戻った理由は
  定かでないが、そういった不可解さを差し引いても、この学
  者が語る内容は具体的で生き生きとした習近平のエピソード
  にあふれている。公電によれば、学者は習と同じ1953年
  に生まれた。習近平と同じく、父親は新中国の建国に貢献し
  た革命第1世代で、毛沢東の出身地である湖南省の別の村で
  生まれ、初期から中国革命に参加した。学者の説明によれば
  父親は「同時に日本と香港でも生活。労働運動のリーダーと
  して次第に頭角を現し、49年に中国に戻ったあと、初代労
  働部長(大臣)に就任した」のだという。
                   http://bit.ly/2j3NOjN
  ───────────────────────────

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習近平国家主席
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2017年01月10日

●「中国の『屈辱の100年間』とは」(EJ第4434号)

 ピーター・ナヴァロ氏の『米中もし戦わば』(文藝春秋)に出
ている2つ目の問題を引用します。
─────────────────────────────
【問題】過去200年間に中国を侵略した国を選べ。
  「1」フランス
  「2」ドイツ
  「3」イギリス
  「4」日本
  「5」ロシア
  「6」アメリカ
  「7」1〜6のすべて
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 この正解は「7」の「1〜6のすべて」です。つまり、当時の
先進6ヶ国のすべてが、中国を侵略しているのです。その中国侵
略は、次の100年に及んでいます。
─────────────────────────────
     イギリスによるアヘン戦争/1839年
           日中戦争終結/1945年
─────────────────────────────
 アヘン戦争の1839年以前は、清(現在の中国)は、アジア
に君臨する大国だったのです。東南アジアのビルマ(現在のヤン
マー)やベトナム、西アジアのネパール、東アジアの朝鮮は、中
国に定期的に貢物を持って行く従属国だったのです。
 清は1683年までに台湾を征服し、太平洋に出る重要な通路
を確保しています。しかし、1839年にアヘンの密輸が原因で
アヘン戦争が起こり、イギリスの強力な海軍によって、香港と九
竜半島に加えて、すべての主要な港の支配権を割譲させられてい
ます。中国が味わったこの「屈辱の100年間」は、ここからス
タートしているのです。
 その後、大英帝国は、中国の支配下にあったネパールを奪い、
ビルマを植民地化しています。また、帝政ロシアは、中国東北部
の領土と、戦略上重要な日本海への通路を武力で脅し取っていま
す。さらにフランスは、台湾の海上封鎖によって、中国にベトナ
ム北部の支配を委譲させています。まさにやりたい放題です。
 1894年には朝鮮半島をめぐる問題で日清戦争が起こり、日
本はこの戦争に勝利して朝鮮半島の事実上の支配権を握り、この
とき台湾を戦利品として奪っています。さらに30年以上先の話
ですが、日本は満州を占領し、1932年に満州国を樹立してい
ます。1940年までに日本の占領は、東部の大半と中国の主要
な港すべてに及んだのです。
 1900年になる直前に「義和団事件」が起こります。これは
占領した外国人──とくに外国人の宣教師の横暴残虐な振る舞い
に反発した中国人が蜂起した事件です。これに関し、列強8ヶ国
は2万人規模の連合軍を組み、徹底的に弾圧したのです。義和団
事件について、「世界史講義録」から引用します。
─────────────────────────────
 1860年の北京条約で、キリスト教の布教が自由になって外
国人宣教師が奥地に入るようになると、治外法権を利用した横暴
なふるまいによって中国民衆との紛争が頻発するようになりまし
た。山東省では、1890年代末から、大刀会や義和拳という武
術を習う人々を中心として宣教師や教会を襲撃する仇教(反キリ
スト教)運動が活発化しました。
 彼らは義和団と呼ばれ、1899年頃から参加者と規模を拡大
し、「扶清滅洋(清を助けて西洋を滅ぼす)」を唱える大規模な
武装排外運動に発展しました。1900年には鉄道、電信の破壊
闘争を行ない、天津と北京を占拠。北京では公使館地区を包囲し
ました。清朝政府は当初列強の要請を受け、義和団鎮圧に当たっ
ていましたが、1900年6月、運動の盛り上がりを見て、義和
団とともに外国勢力を排除することに方向転換し、列国に宣戦布
告をしました。これに対し、日・露・英・米・仏・独・伊・墺の
8ヶ国は共同出兵し、2万の兵を送り込みました。連合軍は7月
に天津、8月には北京を占領し、清朝は降伏、徒手空拳で果敢に
戦った義和団も鎮圧されました。清朝は、翌1901年の北京議
定書で北京への外国軍の駐屯、賠償金4億5千万両などを受け入
れ、半植民地化は一層進行しました。  http://bit.ly/2iGKTwH
─────────────────────────────
 中国にとって、この屈辱の100年間は、まさに悪夢だったと
思います。こんなに長い間、苦しめられたのだから、中国が軍事
力を増強し、かつての列強に思い知らせるという思いになるのは
わかるような気がします。しかし、現代は「力には力を」という
考え方で、軍拡競争を行うのは間違っています。
 中国は経済が急成長したので、ここにきて多くの問題点が噴出
しています。共産党の一党支配には限界があるのです。胡錦濤政
権がやり残した経済改革と政治改革にこそ手をつけるべきです。
しかし、習近平政権は真っ先に軍制改革に手をつけ、どちらかと
いうと、毛沢東路線に回帰しようとしています。これに対して、
福島香織氏は次のように疑問を投げかけています。
─────────────────────────────
 しかし、毛沢東やケ小平時代の軍権に頼った強人政治の復活に
は、かなりの実力がいる。毛沢東もケ小平も革命戦争で実戦を積
み、激しい権力闘争を勝ち抜き、人心を掌握し、権謀術数を駆使
してどん底の中国をまがりなりにも導いてきた。その人間性の是
非はともかく、天才戦略家であり天才政治家である。習近平に、
そういった強人政治家としての戦略性、実力、人望があるのだろ
うか。     ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/004]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平率いる中華帝国の野望を読み解く/近藤大介氏
  ───────────────────────────
   中国の「新皇帝」となった習近平は、21世紀の東アジア
  に「パックス・チャイナ」を創ろうとしている――。27年
  にわたって中国問題をウォッチし続けてきたジャーナリスト
  の近藤大介氏が、中国の要人、日本政府の中枢にいる人物た
  ちを取材した記録をまとめた『パックス・チャイナ中華帝国
  の野望』が発売された。
   習近平が国家主席に就任して以降、東アジアでは尖閣紛争
  や南シナ海衝突、さらに北朝鮮の暴走など様々な外交イベン
  トが発生したが、その舞台裏でなにが起こっていたのか、日
  米中の要人たちの生々しい言葉とともに、詳細が記されてい
  る。これからの世界情勢を読み解く上で必読の一冊。本書の
  なかから、その一部を特別公開する。
   「習近平外交」は、「目の上のたんこぶ」である日本にど
  う対抗していくかということから始動した。2012年9月
  11日に野田佳彦政権が尖閣諸島を国有化したことから、中
  国が一斉反発し、中国各地で反日デモが吹き荒れた。暴徒と
  化した中国人が日系のデパートや工場などを破壊し、抗議デ
  モや狼藉は、全国約110ヶ所に及んだ。9月27日には、
  北京の人民大会堂で、胡錦濤主席も列席して盛大な国交正常
  化40周年記念式典が予定されていたが、中国国内の異様な
  「殺気」を受けて、立ち消えになった。日中関係はまさに、
  国交正常化40年で、最悪の時を迎えた。
                   http://bit.ly/2iGLG0M
  ───────────────────────────

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ジャーナリスト/福島香織氏
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2017年01月11日

●「中国を変貌させ兼ねない二冊の本」(EJ第4435号)

 中国でよく読まれている2冊の本があります。いずれも軍人学
者が書いた本です。重要なことは、これら2つの本が、現在の習
近平政権の思想の中枢になっていると思われることです。
─────────────────────────────
       1. 劉明福著  『中国夢』
       2. 戴 旭著 『C形包囲』
─────────────────────────────
 「1」の『中国夢』について述べます。
 この本は、国防大学の劉明福教授が著したもので、2010年
に出版されていますが、内容が米国を刺激しかねないという理由
で、一時出版禁止処分になっていたのです。
 ところが、有力者の提言によって出版禁止処分が解かれ、世に
出てきたのです。内容は、中国は経済的にも軍事的にも、世界一
になる必要があり、戦争で米国と戦っても、負けてはならないと
いう強迫観念で貫かれている、視野狭窄の軍事主義パラノイアに
陥った軍人が好む内容です。
 注目すべきは、この本ではケ小平が主唱した「韜光養晦(とう
こうようかい)」を否定していることです。「韜光養晦」という
のは、国力が整わないうちは国際社会で目立つことをせず、じっ
くりと力を蓄えておくという戦略のことです。
 これについて、元読売新聞北京支局長の濱本良一教授は、中国
は、胡錦濤後期の2007年頃から、少しずつ「韜光養晦路線」
の修正を行っているとして、次のように述べています。
─────────────────────────────
 1991年末にソ連が崩壊し、世界が次は中国の番だと考えて
いた時、最高実力者のケ小平は、『韜光養晦、有所作為』との大
方針を示した。その意味は『才能を隠して機会を待ち、少しだけ
行動にでる』というものだ。
 意図するところは、世界の脱社会主義の流れの中で、身を低く
かがめて力を蓄え、嵐が過ぎ去るのを待て。(中略)建国以来の
危機存亡に瀕した天安門事件を乗り切ったケ小平は老体に鞭打っ
て広東省など南方視察を敢行した。後継指導者として据えた江沢
民に対して、『改革・開放の御旗を絶対に降ろすな』と諭す意味
があった。そして濱本教授は、次の重要なポイントを指摘する。
「転換点は、2009年7月の海外駐在外交使節会議での胡錦濤
演説だった」と。
 なぜなら「韜光養晦、有所作為」の後節に「積極」が挿入され
「積極有所作為」とする主張に変化したことだと捉え、以後「自
己主張を強めた中国の姿勢が随所で見られるようになった。『微
少外交』から『強面外交』への大転換である」と指摘される。
 かくて軍事強硬路線を露骨に表現してアジア各国とぶつかり、
傲然としはじめた中国の姿勢に日本もASEAN諸国の過半も反
発し、団結し始めるのだ。ルトワックが指摘したように、『中国
の戦略には整合性がない』のである。     ──濱本良一著
『経済大国中国はなぜ強硬路線に転じたか』(ミネルヴァ書房)
                   http://bit.ly/2hU6Ysn
─────────────────────────────
 2012年に中国の最高指導者に就任した習近平国家主席は、
「中国の夢」と題して、中国の統治理念について語っていますが
そのネタ本は、劉明福著の『中国の夢』からとられています。
 しかし、次のように、劉明福氏が書いているドギツイ表現を抑
えてはいるものの、その本音は本に書かれている通りなのです。
その一部を以下にご紹介します。
─────────────────────────────
 誰しも理想や追い求めるもの、そして自らの夢がある。現在み
なが中国の夢について語っている。私は中華民族の偉大な復興の
実現が、近代以降の中華民族の最も偉大な夢だと思う。この夢に
は数世代の中国人の宿願が凝集され、中華民族と中国人民全体の
利益が具体的に現れており、中華民族1人1人が共通して待ち望
んでいる。
 歴史が伝えているように、各個人の前途命運は国家と民族の前
途命運と緊密に相連なっている。国家が良く、民族が良くて初め
て、みなが良くなることができる。中華民族の偉大な復興は光栄
かつ極めて困難な事業であり、一代、また一代の中国人が共に努
力する必要がある」と。         ──習近平国家主席
                   http://bit.ly/2iSWSof
─────────────────────────────
 この演説で習国家主席が述べている「中華民族の偉大な復興の
実現が中華民族の最も偉大な夢である」という表現は、その本音
が劉明福著の『中国の夢』にあるとすると、かつて中国の領土で
あった国や島嶼をすべて取り返すことこそ中国人の夢であるとい
うようにとれるのです。実際に習政権のやっていることはこの考
え方に沿っていると思います。そして、その実現のためには、軍
事力の増強が必要であると説いているのです。
 そして、現代について中国は「G2の時代」と呼び、米国と強
大化する中国が世界を二分、すなわち、太平洋を米国と中国とい
う2つの大国で二分し、仕切るといっています。しかし、やがて
中国が米国を上回るようになり、「G1の時代」──米国の一極
体制から、強大化する中国一極体制にとって代わる時代が来ると
いっているのです。
 胡錦濤政権では、確かに「韜光養晦路線」の修正ははじめたも
のの、『中国の夢』が説く軍人の夢というか、壮大な妄想に踊ら
されない国際社会に対する現実認識を持っていたといえます。さ
らに共産党一党支配の限界を認識し、構造的な経済や政治改革が
必要であると悟っていたといえます。
 しかし、習近平国家主席は、政治改革にも経済改革にも手をつ
けず、「軍制改革」に着手したのです。強軍化を推し進めるため
に、国家主席自身が軍権の完全掌握を図ったのです。「2」につ
いては、明日のEJで述べることにします。
             ──[米中戦争の可能性/005]

≪画像および関連情報≫
 ●「中国夢」に見え隠れする習近平のジレンマ
  ───────────────────────────
  加藤嘉一:長く中国を中心としたアジア太平洋外交に従事さ
  れていた小原さんは、在シドニー総領事、在上海総領事を経
  て、現在は東京大学で教鞭を採られています。外交官から研
  究者への転身ですね。ご著書『日本走向何方(日本はどこに
  向かうのか)』の中国語訳を担当させていただいた頃から、
  小原さんがアカデミズムを重視され、それに対するこだわり
  も肌で感じていたので、私自身にはそこまで大きなサプライ
  ズはありませんでした。どのような経緯で現在に至り、就任
  されたときはどんな心境だったのでしょうか?
  小原雅博:東大法学部からお話をいただいたときは、青天の
  霹靂でした。退職後に学問の道に入れればいいな、との漠然
  とした希望は頭の片隅にありましたが、外務省を辞めてまで
  の転身は考えていませんでしたから。ずいぶん迷いましたが
  東大の熱意と、ある方から頂いた福沢諭吉の「一身二生」と
  いう言葉に押されて、昨年秋に東大に移って来ました。国際
  問題には誰もが納得する答えはありません。「reasonable」
  で「workable」な解を求めて、歴史や文化や言葉を学び、社
  会の奥深く分け入って体験し、専門家の先行研究に目を通し
  て、思索を深めていく。そんな努力の先に出口が見えてくる
  のだと思っています。東大での最初の学期は、30人のゼミ
  生を持ち、さまざまな国際問題を取り上げて議論しましたが
  学生たちの問題意識は高く、私自身が多くのことを学びまし
  た。実務と理論の統合という目標はまだ遠くの彼方にありま
  すが、毎日勉強できる喜びが私を支えてくれています。
                   http://bit.ly/2iEI92K
  ───────────────────────────

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中国で話題になっている2冊の本
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2017年01月12日

●「C形包囲とは何か/空母の必要性」(EJ第4436号)

 昨日のEJでご紹介した中国でよく読まれている2つの本を再
現します。「1」については、既に昨日述べています。
─────────────────────────────
       1. 劉明福著  『中国夢』
     ⇒ 2. 戴 旭著 『C形包囲』
─────────────────────────────
 「2」の『C形包囲』について述べます。
 この本は、中国の現役空軍大佐であり、著名な軍事学者でもあ
る戴旭(ダイシェイ)氏によって2010年1月に発刊され、中
国本土で30万部のベストセラーになっている本です。
 ところで、「C形包囲」とは何でしょうか。
 「C形包囲」というのは、中国が包囲しているのではなく、中
国が包囲されているという意味です。それは海上だけでなく、陸
上でも包囲網が敷かれているといっています。書籍自体が入手で
きないので、この本を取り上げている沖縄対策本部公式サイトか
ら引用します。記述が分かりやすいからです。
─────────────────────────────
 ≪海上包囲網≫
 中国海軍は、次のような海上包囲網で閉じ込められています。
 ・東シナ海で合同軍事演習を行う日米同盟
 ・台湾の中にいる独立派
 ・海洋基本法案を可決し、中国の領土を自国の領土に編入し、
  6隻の潜水艦を発注しているフィリピン
 ・米軍と軍事連携を固めることを決めたベトナム
 ・14隻の潜水艦の建造と購入を決めたインドネシア
 ・27隻のヘリコプター搭載の巡視艇建造を決めたマレーシア
 ・総計780億ドルをかけて軍拡をすすめるオーストラリア
 ・2隻の航空母艦の建造を始めたインド
 ≪陸上包囲網≫
 ・アメリカのアフガニスタンを狙う本当の理由は、中央アジア
  からのエネルギー資源の道を裁ち切り、中国の国力を弱らせ
  るためである。
 そして、モンゴルも日米政府寄りなので、中国は東北のロシア
との国境をのぞいては、全てアメリカに包囲されていると述べて
います。自国の軍拡を棚にあげて、中国が攻撃をしているわけで
はなく、アメリカが緊張を高めているのだと言い放っています。
 つまり、「中国の周りは米国の手先となった国に包囲され、危
機的な状態にある。だから中国は戦争を避けられない」との理論
を細かく展開している書籍です。
 これから、中国が戦争を始める正当性を論じた書籍といえると
思います。人民解放軍は国民にも戦争を始める準備を訴え始めた
ということではないかと思います。そして、最後は「中国人民よ
平和を望むなら戦争に備えよ!」という言葉で結んでいます。
                   http://bit.ly/2j9Q6d5
─────────────────────────────
 『C形包囲』を沖縄対策本部公式サイトがなぜ取り上げたのか
については、あくまで推測ですが、この本に、沖縄(琉球)は中
国の領土であると記述されているからです。これについては巻末
の「画像と関連情報」を参照してください。
 気になることは、著者は10〜20年以内に、C型包囲を敷く
国々との間で戦争が起きると予言していることです。そのために
複数隻の空母が必要になるとも書いています。実際に中国は、不
完全空母とはいえ「遼寧」を既に有していますし、現在2隻の空
母を建設中といわれます。
 昨年12月25日、中国は初めて空母「遼寧」を、第一列島線
(九州─沖縄─台湾─フィリピン)の宮古海峡を越えて西太平洋
に進出させ、バシー海峡を通過して海南島の海軍基地を経て、南
シナ海に入っています。中国の空母船団はここを守るためのもの
であり、初めてそれを実現させたのです。
 確かにこの本も『中国の夢』と同様に「米国主導の複数の国々
によって中国は包囲されている」という被害妄想による強迫観念
に貫かれていますが、一方において、現在中国が置かれている立
場についても、次のように意外に謙虚に分析しています。
─────────────────────────────
 中国は世界の覇権を狙ってはいない。アジアの覇権も狙ってい
ない」と言い、同時に「自国の領域が平穏なことを望むだけであ
る。中国は他人の土地や海など寸歩たりともいらない。だが主権
は決して譲らない」と書いている。
 さらに中国は超大国などではないと言い、「現在、中国が経済
成長をしていると言っても、貿易黒字の85%以上は外国企業が
中国を拠点にして生産した製品を逆輸出しているに過ぎない。中
国が生産している製品の大半は特許費を払っており、加えて、中
国が汗水垂らして稼いだ金はアメリカの有毒な債券の購入に当て
られ、しかも債券価格はまたもや大幅に下落する。
 アメリカは、スペース・シャトル、ボーイングの旅客機と航空
母艦を持ち、日本は自動車、電気機器、コンピューター産業を持
ち、ロシアは巨大なエネルギー産業を持っている。では、中国に
は何があるのだろうか。
 中国の支柱産業は不動産、紡績、酒・タバコである。8億本の
ズボンを生産して、ようやく1機の旅客機に交換している現状で
ある。西側の諸国は何を根拠に中国が急速に“世界の超大国にな
る”などと決めつけるのか。私には皆目見当がつかない」と、中
国の現状を正しくつかんでいる。さらに、「現在の中国は巨大に
見えるが、ただの肥満体で力はない」と言い切っている。
                   http://bit.ly/2hYJkcE
─────────────────────────────
 これら2冊の本は中国で幅広く読まれており、習近平国家主席
の思想もこれらの本によって影響を受けています。慎重に米国と
の戦争は避けながらも、南シナ海や東シナ海での領土主張は断固
貫く構えといえます。   ──[米中戦争の可能性/006]

≪画像および関連情報≫
 ●『C形包囲』について/小島一郎氏のページ
  ───────────────────────────
   日本は、百数十年前に中国の領土であった琉球(沖縄)を
  併合したが、中国は第二次世界大戦の勝利にかこつけて失地
  回復を図ろうとせず、世界の利益を尊重した。しかし日本の
  態度はさらにひどくなり、琉球から始まり、中国の大陸棚を
  山分けしようとしたのである。つけあがるにもほどがある。
   双方は現状を維持したままで、両国関係と世界平和という
  大局から出発し、東シナ海を「友好の海、協力の海、和平の
  海」にするとの立場に基づいて、東アジアの近代史を振り返
  り、東シナ海問題だけを見るのではなく、それと密接な関係
  にある釣魚島問題、琉球問題も見てみようではないか。中国
  は長さ1・8万キロの海岸線、1万以上の島々、300万平
  方キロにもわたる海洋国土を有している。このようなこの上
  なく恵まれた地理条件を持つ大国は、世界海洋制覇に挑む使
  命があるにもかかわらず、中国歴代の支配者とくに明と清の
  政府は、統治が崩壊するまでそれに気が付いていなかった。
  今の中国海洋国土の2分の1は、領有権をめぐって周辺諸国
  と紛争中であり、多くの島は隣国の支配下に置かれているよ
  うな状況である。
   大国の中で空母を持っていないのは中国だけである。中国
  は永遠に空母を持たないわけにはいかない。いまから向こう
  50年の間は、中国海軍の発展目標は南シナ海以外の海域に
  定めてはいけない。私たちはこの50年の間、まず国力を総
  動員し、台湾問題を解決し、不法占拠された島々を取り戻さ
  ねばならない。          http://bit.ly/2hZ1rPn
  ───────────────────────────

中国海軍空母「遼寧」.jpg
中国海軍空母「遼寧」
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2017年01月13日

●「『五輪9年ジンクス』の謎を探る」(EJ第4437号)

 2016年11月19日、ペルーのリマで開催されたAPEC
で、米国のオバマ大統領と中国の習近平国家主席の間で米中首脳
会談が行われたのです。そのとき、習国家主席は終始悠然と勝者
としての笑みを浮かべていたのに対し、オバマ大統領の表情は極
めて厳しかったといいます。
 本来APECは、米国がアジア太平洋の盟主として振る舞う外
交舞台であったはずです。これまでオバマ大統領は、経済のTP
Pと軍事の米軍アジア・リバランスという、二重の中国包囲網を
敷いて、中国をおさえてきたのですが、次の大統領の座を反TT
Pを唱えるトランプ氏に奪われ、意気消沈していたようにみえた
というのです。
 おそらく習国家主席は、意気消沈しているように見えるオバマ
大統領を見て、中国の偉大な復興を果たす以前に国家主席が交代
するようなことがあるとその目的を果たすことは困難になる──
そのためには、終身でも国家主席を続けられる制度の改正が必要
であるという確信を抱いたものと思われます。
 中国では、国家主席ポストに「3選禁止」の規定があります。
それからもうひとつ「69歳定年」の規定もあるのです。つまり
中国の国家主席ポストは5年ごとの2期10年までしかできない
ことになっているのです。
 習近平氏は、2017年の党大会で2期目に入り、2022年
にその任務は終了します。そのとき習近平氏は、69歳になるの
で、定年に達することになります。習主席は、この「3選禁止」
と「69歳定年」の両方の規定を改正し、終身国家主席のボスト
にい続けるという野望を抱いているのです。
 そのため、習近平氏は、2016年1月から自らを「核心」と
する運動を起こし、10月の党第18期中央委員会第6回全体会
議(六中全会)のコミュニケのなかで「核心」の呼称が確認され
ています。この「核心」とは、任期のない「党の最高指導者」の
ことを意味しています。
 しかし、習近平氏の野望の実現は極めて困難です。なぜなら、
中国には、数々のチャイナ・リスクがあるからです。本来中国共
産党は、農民や労働者の党であったはずなのに、いつの間にか資
本家・プチブル層の利権組合になってしまっています。これには
政治改革を断行するしかないのです。
 それに、いつクラッシュしても不思議ではない深刻な経済リス
クもあります。経済崩壊を避けるために、習政権も2014年に
は「新常態/ニューノーマル/低成長経済の容認」を打ち出し、
「痛みに耐えて改革を進める」ことを宣言したはずなのに、結局
は7%成長路線にこだわり、無謀きわまる大型公共投資と財政出
を現在も続けている始末です。
 もうひとつ習政権には巷で噂されている懸念もあるのです。そ
れは「五輪9年ジンクス」です。専制国家(軍事政権を含む)が
オリンピックを開催すると、その9年前後に体制崩壊が起きると
いう、いわゆる一種の都市伝説です。例を3つ上げます。
─────────────────────────────
       1.1936年/ベルリン五輪
       2.1980年/モスクワ五輪
       3.1988年/ ソウル五輪
─────────────────────────────
 「1」は1936年の「ベルリン五輪」です。
 これは、いわゆるヒットラーのドイツが開催したオリンピック
です。当初ヒットラーはオリンピックはユダヤの祭典であるとし
反対していたのですが、プロパガンダとして使えると判断し、ド
イツが国の総力を挙げて取り組んだオリンピックです。
 しかし、その9年後の1945年、ヒットラー率いるナチス・
ドイツは崩壊しています。
 「2」は1980年の「モスクワ五輪」です。
 これは、冷戦下において、ソ連の首都モスクワで行われたオリ
ンピックです。しかし、1979年12月に起きたソ連によるア
フガニスタン侵攻の影響を受けて、集団ボイコットが起きたオリ
ンピックでもあったのです。
 しかし、その9年後の1989年に東西冷戦構造が崩壊し、そ
の2年後の1991年に旧ソ連が解体されています。
 「3」は1988年の「ソウル五輪」です。
 これは、韓国最後の軍人出身大統領の盧泰愚政権下で、韓国の
首都ソウル特別市で開催されたオリンピックです。前回のロサン
ゼルス五輪では東側陣営が、前々回のモスクワ五輪では西側陣営
がボイコットしたので、ソウル五輪は、12年ぶりにアメリカと
ソ連の二大大国の揃ったオリンピックになったのです。
 しかし、その9年後の1997年に元民主化運動家の金大中政
権という純然たる民主主義政権が誕生しています。さらに同年、
タイを中心にアジア通貨危機が起こり、韓国はそれに巻き込まれ
て、国家存亡の危機を経験しています。
 どうして、オリンピック後に体制崩壊が起きるのかについて、
福島香織氏は、自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 五輪という平和と自由、民主を象徴するような国際的スポーツ
大イベントが開催されると、多くの海外観光客が専制国家を訪れ
ることになり、その民間交流の結果、大衆が民主主義的な普遍的
価値観に目覚めはじめる。その一方で、五輪運営にかかった莫大
な費用のツケによって財政が悪化し、政権の弱体化が起きてしま
い、体制の転換が起こりやすい、という理屈らしい。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 今年は、奇しくも北京オリンピックからちょうど9年目に当た
ります。多くの制度的矛盾を抱える中国には、何が起きても不思
議ではないのです。果たして習近平政権は無事に2期目に入るこ
とができるでしょうか。  ──[米中戦争の可能性/007]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平氏は「中国共産党の核心」/THE HUFFINGTON POST
  ───────────────────────────
   中国共産党の重要会議「第18期中央委員会第6回全体会
  議(6中全会)」が4日間の日程を終えて、2016年10
  月27日に閉幕した。会議で採択されたコミュニケでは、習
  近平国家主席を「党中央の核心」と位置付けた。コミュニケ
  は、人民日報系のニュースサイトである「人民網」などで発
  表された。
   コミュニケでは、習氏が「率先して党の管理強化を全面的
  に推し進め、党内政治を浄化し、民心を獲得した」として、
  厳しい汚職摘発が「民心を勝ち取った」と評価。習氏の指導
  力をアピールするものとなった。これまで中国共産党におい
  て、最高指導者を「核心」と呼ぶ表現は毛沢東、ケ小平、江
  沢民の3氏にしか用いられていない。前国家主席の胡錦濤氏
  の時代は集団指導体制を重んじていたこともあり、「核心」
  という表現は使われなかった。
   党中央機関の決定を経て「核心」となったことで、習氏へ
  の権力集中がさらに進んだことになる。2017年秋には指
  導部メンバーの大幅な交代が予想される党大会を控えており
  人事でも強い主導権を握ることになるとみられる。
                  http://huff.to/2j1WDXZ
  ───────────────────────────

APEC(リマ)/米中首脳会談.jpg
 
APEC(リマ)/米中首脳会談
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2017年01月16日

●「習近平の暗殺は何回も起きている」(EJ第4438号)

 中国、正確には中華人民共和国は、中国共産党が一党支配をし
ています。したがって、中国共産党のトップである中央委員会総
書記が中華人民共和国の国家主席(元首)になります。順番から
いうと、まず、中国共産党大会で中央委員会総書記になって、そ
のうえで、全国人民代表大会(全人代)において、中華人民共和
国の国家主席になるのです。その任期は、いずれも5年で、2期
10年と決められています。現在の習国家主席の場合は、次のよ
うになっています。
─────────────────────────────
        ◎2012年11月15日
         中国共産党第6代中央委員会総書記
        ◎2013年 3月14日
         中華人民共和国第7代国家主席
─────────────────────────────
 中国共産党は、今年の秋に北京で「第19回党大会」を開催し
ます。この大会で習近平国家主席は2期目の中央委員会総書記に
指名され、2018年の全人代で2期目の国家主席に就任するこ
とになります。なお、中国共産党大会は、5年ごとに開催される
ことになっています。
 これまでの中国の国家主席がそうであったように、現在の習近
平国家主席の権勢ぶりを考えると、何の問題もなく2期目に移行
できると思われますが、このところ習国家主席の身辺は危険に満
ちており、その危険度は日々増加しています。福島香織氏は、習
近平氏の現況について次のように述べています。
─────────────────────────────
 『誰が習近平を謀殺するのか』(黄子佑著)という電子版書籍
が2015年春ごろ話題になった。(中略)習近平が突如失脚す
るとしたら、一番大きな可能性は普通の権力闘争の結果ではなく
暗殺か政変、クーデターである、という主張を書いた本だが、こ
れがまんざら、放言というわけでもないところが、チャイナリス
クなのである。
 なにせ習近平が暗殺未遂に遭ったのは、噂になっただけでも6
件はある。本人も暗殺計画に非常におびえ、今や習近平の護衛に
ついているSPは、テレビのニュース映像などから確認できるだ
けでも16人以上に膨らんだ。過去、ここまでどこへ行くにも、
SPに囲まれていた指導者はいない。暗殺もクーデターもいつ起
きても不思議はない、習近平自身がそう感じているのである。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 どうして、習近平国家主席がそんなに狙われるのかというと、
それは、就任の2012年から展開している「反腐敗キャンペー
ン」を建前にして、自らの政敵を次々に失脚させていることに原
因があります。
 そもそも中国の国家主席はリスクの多いポストなのです。それ
は、党が軍部を完全に掌握できていないことによって起こるケー
スが多いのです。つまり、シビリアン・コントロールが不安定に
なっているのです。
 初代の国家主席である毛沢東や、国家主席には就任していない
ものの、事実上の国家主席であったケ小平の世代は、革命戦争を
指導しており、その命令に軍部は素直に従っていたのですが、江
沢民政権以降は、最高指導者に軍歴がないことから、党と軍の統
制はうまくとれていないのです。
 習近平政権にとって最大の危機は、2015年にあったといえ
ます。そのキーワードは次の3つです。
─────────────────────────────
  1.       北載河会議 2015年8月 3日〜
  2.       天津大爆発 2015年8月12日
  3.抗日戦争勝利70年観兵式 2015年9月 3日
─────────────────────────────
 実は、この3つの出来事はつながっているという説があるので
す。北載河会議というのは、毎年夏になると、中国の最高指導者
たちは、渤海を望むリゾート地・北戴河に集まり、約3週間の夏
休みを過ごすことになっています。そこでは非公式に人事などの
案件が話し合われますが、基本的には夏期休暇です。
 未確認情報ではありますが、この会議の終了後に北載河会議に
中国共産党の高級幹部が集まるのを利用して、暗殺計画が企てら
れたというのです。2015年の計画では、この会議の終了後、
16日には列車に乗って天津市を訪れ、会議での決定事項を報告
することになっていたのです。暗殺計画は、その列車を爆破しよ
うとしたのです。ところが、この計画は突如中止されます。計画
が漏れたからです。もちろん、これらの高級幹部のなかに習近平
国家主席がおり、習政権高級幹部を狙った暗殺計画です。
 そして、計画漏洩後の8月12日、天津港地区・国際物流セン
ター内の危険物専用倉庫が大爆発を起こしたのです。それは、習
国家主席を乗せた列車を爆破しようとして用意した爆薬を犯人グ
ループが証拠隠滅のために爆破したものだというのです。
 これは、尋常な爆発ではなく、被害を受けた面積が約20平方
キロ(東京ドーム1500個以上)に及び、その後の中国経済に
深刻な影響を与えることになります。
 しかも、爆破された倉庫を保有する企業の実質的な責任者は、
習近平国家主席の政敵といわれる先々代の国家主席である江沢民
氏の腹心の親族であり、その関与が取り沙汰されています。その
ためか、政府は情報を隠蔽し、報道規制を強めたのです。
 中国国家インターネット情報弁公室は、関連サイトの閉鎖や中
国版のツイッターである微信のツイートを多数削減し、その発信
自体も禁じたのです。そのせいか、天津大爆発の情報は現在でも
不足しています。そして、9月3日には抗日戦争勝利70年観兵
式が行われたのです。そこで何が起きたのでしょうか。
             ──[米中戦争の可能性/008]

≪画像および関連情報≫
 ●天津大爆発は氷山の一角 同様事故20か月で30件以上
  ───────────────────────────
   2015年8月12日に中国・天津の化学工場で発生した
  大爆発事故は、被害を受けた面積が約20平方キロ(東京ド
  ーム1500個以上)に及び、中国経済に深刻な影響を与え
  ている。政府が情報統制の姿勢を強めるなか、事故の“爆心
  地”への潜入に成功したジャーナリストの相馬勝氏が、爆発
  事故の処理に追われる中国政府の対応について解説する。
   事故後1か月以上経ったいまも爆発原因は解明されず、事
  故現場の後片付けも終わっていないというのに、天津市当局
  は9月上旬、この爆発跡地に「生態公園」(エコパーク)を
  建設する計画を明らかにした。
   計画では、公園内に犠牲になった消防士らを悼む英雄記念
  碑のほか、幼稚園や小学校を建設するとしており、11月に
  も着工し来年7月に完成する予定。だが、ネット上では「責
  任追及が先だ。そうでないと、亡くなった消防士の無念さは
  いかばかりだろうか。彼らの霊が浮かばれない」「まだ残留
  化学物質があるのに、幼稚園や小学校を建設するのは非常識
  過ぎる」などとの批判の声が上がっている。
   公園案は民衆の不満を抑えるための習近平指導部の浅慮と
  もいうべきものだろう。住民はおろか、中国の国民も事故原
  因の究明を望んでいる。なぜならば、北京でも上海でも、全
  国各地で天津市のような不法な危険物の大量貯蔵が進んでい
  るとされるからだ。        http://bit.ly/2jkeA3v
  ───────────────────────────

天津大爆発の惨状.jpg
天津大爆発の惨状
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2017年01月17日

●「閲兵で怯えの表情を見せる習主席」(EJ第4439号)

 2015年は、習近平国家主席が最も多く命を狙われた年とい
えます。まず、8月3日から始まった北載河会議の後、習主席は
幹部と一緒に列車で天津市へ移動したのです。この移動自体には
何も問題はなかったのですが、実はその列車に強力な爆弾を仕掛
けて、習主席と幹部を殺害する計画があったのです。
 実は、2012年の北載河会議でも、その会議室に時限爆弾が
仕掛けられていたのです。その後は厳重なチェックが行われ、こ
の列車爆破計画も事前に情報が漏れて、暗殺計画は失敗に終わっ
ています。
 しかし、犯人グループはその大量の爆弾の処理に困り、天津港
湾地区の国際物流センターでそれを爆発させたのです。8月12
日のことです。したがって、この列車爆破計画と天津大火災はつ
ながっていると考えられます。
 そして、9月3日に抗日戦争勝利70周年の軍事パレードが行
われています。人工的に作ったといわれる「パレードブルー」と
呼ばれる快晴の下、北京市中心部を東西に走る長安街の大通りを
約1万2千人の人民解放軍の兵士たちが軍靴を響かせて行進した
のです。200機を超える戦闘機の飛行や、初公開の兵器など、
500点強の軍装備を披露し、中国の軍事大国ぶりをイヤという
ほど内外に見せつけたのです。習主席にとってこの軍事パレード
は得意絶頂の瞬間だったはずです。
 しかし意外だったのは、このときの習主席の表情が冴えなかっ
たことです。どうしてなのでしょうか。この軍事パレードのこと
を書いた『月刊正論』/2015年11月号は、習主席について
次のように記述しています。
─────────────────────────────
 この日の主役である習近平国家主席は始終さえない表情をして
いた。車に乗って解放軍の隊列を検閲したときも、高揚感はまっ
たくなく、ひどく疲れた様子だった。国内のメディアを総動員し
て宣伝し、長い時間をかけて準備した大きなイベントにも関わら
ず、内外から多くの批判が寄せられ、欧米などの主要国に参加を
ボイコットされたことは習氏にとって想定外だったに違いない。
習氏の表情には、その悔しさが出ていたのかもしれない。
 一方、習氏と比べて、一緒に天安門楼上に並んだロシアのプー
チン大統領や、久々に表舞台に登場した江沢民元国家主席ら党長
老たちは、最後まで、リラックスした表情で手を振り、元気な姿
をみせ続けた。脇役であるはずの彼らは、今回の軍事パレードを
通じて習氏よりも多くのものを手に入れたからかもしれない。
           ──『月刊正論』/2015年11月号
                   http://bit.ly/2jljzUR
─────────────────────────────
 実は習主席は怯えていたのです。国家主席に就任以来、何回も
暗殺を仕掛けられていることや、北載河会議の後の列車爆破計画
や天津大爆発が起きた直後だったので、軍事パレードの間に何が
起きても不思議ではない状況だったからです。とくに、国のトッ
プによるこうした観兵式や軍事演習の視察は、相手が兵器を持っ
ているだけに、武器に実弾が入っていないか、厳重な点検が必要
だったのです。
 抗日戦争勝利70周年の軍事パレードで、習主席の眠そうな何
かに怯えた表情について、産経新聞のジャーナリスト野口裕之氏
は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 複数の安全保障関係筋によると、観兵式前、将兵が携行する小
火器や動員する武装車輌/武装航空機に実弾が装填されていない
か、徹底的な「身体検査」を実施したもよう。展示飛行する航空
機の自爆テロを恐れ、地対空ミサイルまで配備したとの情報も在
る。いずれも、習氏暗殺を警戒しての防護措置。眠そうな習氏の
表情は、不安で前日一睡もできなかった結果だとの見方は、こう
した背景から浮上した。     ──「野口裕之の軍事情勢」
                   http://bit.ly/1PIgXXZ
─────────────────────────────
 また、軍事パレードで閲兵した習主席が左手で敬礼したことに
ついて、中国のメディアは奇妙な解釈をはじめたのです。中国の
古典を引用して、「吉事は左、凶事は右に属する。君子は左を貴
ぶ、用兵は右を貴ぶ」と紹介し、習主席が左手で敬礼をしたのは
「軍事パレードは戦争ではなく、武力を使用しない吉事である」
と説明しています。国家主席のやったことはどんなことであって
もミスであるとは認めないのです。
 本当のところどうであったのかは不明ですが、ある共産党関係
者によると、敬礼をする直前、陳情者と思われる男性が習主席に
駆け寄ろうとし、警戒に当たっていた警官に取り押さえられると
いう出来事があったのです。暗殺者に怯えていた習主席は、一瞬
動揺し、うっかり左手で敬礼をしてしまったというのです。
 習主席が暗殺に怯えているのは確かなことです。それは何度も
危ない目に遭っているからです。あるとき、健康診断のために共
産党の高官専用病院である北京の301病院に行ったとき、用意
されていた注射針のなかに毒を仕込んだものが発見されたことも
あったのです。
 301病院には“南楼”と呼ばれる病棟があり、そこには厳重
な警備が敷かれ、出入りには証明書の提示が必要です。ここが共
産党高官専用病院なのです。そういう場所でも毒入りの注射針が
仕掛けられるのですから、習主席が神経質になるのは十分理解で
きます。かつて何でもない風邪で301病院を訪れ、その後、亡
くなるケースは少なくないのです。つまり、政敵暗殺の目的で、
301病院が利用されることがあるのです。
 習近平国家主席がもし突然失脚するとしたら、一番大きな可能
性としては、権力抗争の結果などではなく、暗殺か、政変、クー
デターであると思われます。既にクーデターも起きていますが、
そのすべてが鎮圧されています。
             ──[米中戦争の可能性/009]

≪画像および関連情報≫
 ●少なくとも6回の暗殺未遂を受けている習近平主席
  ───────────────────────────
   香港メディアなどによれば、習近平はこれまで少なくとも
  6回、命が狙われたことがあったという。時間や場所、手口
  などの詳細が分かっているのは3回だ。
   共産党総書記に就任する直前の2012年夏、会議室に爆
  弾を仕掛けられたのが最初で、その直後に、健康診断のため
  に訪れた軍直属の病院で検査用の注射器に毒を入れられてい
  た。3回目は2013年夏、地方視察の際に乗る自動車が交
  通事故を起こすようにタイヤが細工された。いずれも事前検
  査で判明し、未然に防ぐことができたという。
   2014年4月30日にウルムチ南駅で起きた爆発事件も
  習近平暗殺が目的の可能性が高いといわれる。同月27日か
  ら新疆ウイグル自治区の視察に出かけていた習近平はこの日
  にウルムチから北京に戻る予定だった。夕方、ウルムチのタ
  ーミナル駅で突然、爆弾が炸裂し、3人が即死したほか70
  人以上が負傷した。
   中国当局はイスラム過激派のウイグル人による無差別テロ
  と発表したが、しかし、外国メディアが撮影した現場写真に
  は銃撃戦を思わせる銃弾跡が多くあり、手口はこれまでのウ
  イグル人が起こした暴力事件と大きく違っていた。
   治安当局の厳しい管理下にあるウイグル人たちは、それま
  で中国当局に抗議するために、ガソリンを積んだ自動車を建
  物に突っ込んだり、ナイフで通行人を切りつけたりするなど
  の事件を多く起こしたが、威力の高い爆弾や銃器を使った事
  はまずなかった。         http://bit.ly/2ipOSOT
  ───────────────────────────

左手で敬礼する習近平国家主席.jpg
左手で敬礼する習近平国家主席
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2017年01月18日

●「3回も白昼襲われた胡錦濤前主席」(EJ第4440号)

 胡錦濤国家主席時代の2006年5月のことです。胡錦濤主席
が、黄海で北海艦隊の視察を行ったのです。胡主席は、最新型の
弾道弾駆逐ミサイル艦に乗船し、巡視していたところ、いきなり
2隻の軍艦が、同時に挟み撃ちするように、胡主席が乗っている
駆逐艦に発砲してきたのです。この砲撃によって、駆逐艦上にい
た5人の海軍兵士が死亡しています。
 胡主席が乗っていた駆逐艦は、まさか白日の下で最高指導者の
暗殺事件が発生するとは夢にも考えておらず、慌てふためくなか
で、直ちに舳先を変えて全速力で演習海域を離れ、安全な海域に
向かったのです。そして、再度の暗殺を避けるため、胡主席は艦
上ヘリコプターで脱出し、北京ではなく、チベットに避難し、一
時身を隠しています。クーデターを恐れたからです。そして約1
週間後、北京に姿を現したといいます。
 実は、この暗殺計画の黒幕は江沢民元国家主席であるといわれ
ていますが、犯人として海軍司令、張定発が逮捕され、その後病
死したとされています。もちろん公式には発表されず、新華社、
解放軍報は何も報道せず、人民海軍報で自殺として張定発の死亡
が伝えられたのみです。
 このとき、胡錦濤氏は国家主席でしたが、軍部に対しては、江
沢民元主席が強い影響力を持っており、たとえ黒幕が江沢民氏で
あるとわかっていても何もできなかったのです。犯人の張定発は
江沢民元主席が中央軍事委員会主席を引退するとき、海軍司令に
任命しており、上海人であり、コテコテの上海閥です。
 続いて2007年10月2日、上海世界夏季特殊五輪の開幕式
でのことです。世界特殊五輪というのは、知的発達障害のある人
の自立や社会参加を目的として、日常的なスポーツプログラムや
成果の発表の場としての競技会を提供する国際的なスポーツ組織
のことで、スペシャルオリンピックといわれています。パラリン
ピックとは違うのです。
 胡錦濤主席は開幕宣言を行うために出席し、その後上海西部迎
賓館の宴会にも参加しています。このとき、迎賓館の地下の車庫
に駐車していた食品運搬車の運転席の下から、2・5キログラム
の爆薬のついた自動爆破装置が発見されたのです。警備スタッフ
が間一髪で発見し、胡主席は暗殺を免れています。
 まだあるのです。またしても海上閲兵式での出来事です。20
09年4月23日、青島で解放軍海軍有史以来最大規模の海上閲
兵式が行われたのです。その開始直前に江沢民氏の命を受けた艦
艇が胡主席を襲撃する暗殺計画が発覚したのです。胡主席は予定
を変更し、その日のために参加した外国の海軍代表との会見を先
に行うことで時間を作り、胡主席を襲う予定の艦艇を特定し、逮
捕したのです。その後、胡主席は閲兵式に出席しましたが、明ら
かに顔がひきつっていたといわれます。
 歴代の中国の国家主席が激しい権力抗争の結果、このようなテ
ロに見舞われることはそれほど珍しいことではないのです。まし
て、現在の習近平主席は、腐敗防止政策を徹底的に実施し、事実
上、習主席の政敵を排除しているので、それに反発するテロが頻
発しても不思議はないのです。事実習主席の暗殺事件は何回も起
きていることはこれまで述べた通りです。
 習主席の腐敗摘発は、習主席の盟友の王岐山中央規律検査委員
会書記が行っています。そのため、王岐山氏も何回も暗殺未遂事
件に遭っているのです。王岐山氏への暗殺未遂事件のひとつにつ
いて、福島香織氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 2015年3月27日から28日にかけて、王岐山が河南省の
調査に出かけたときのこと。28日早朝、ある党の招待所で停電
があり、予備電源に切り替わった。だが50分後に再度停電。そ
の瞬間、駐車場に停車してあった省の党委員会保衛部専用車3両
が爆発した。
 じつは、この招待所は、王岐山一行が27日夜に宿泊する予定
だったが、直前に予定を変えて鄭州市の警備区招待所に泊まった
のだ。もし予定どおりであれば、王岐山はその朝、爆発した3両
の車のどれかに乗り込んだかもしれない。
 こういった暗殺計画については、中南海[故宮に隣接する共産
党中央委員会の所在地]内に本当の黒幕がいるのではないか、と
いう噂が立った。──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 2016年7月15日、トルコでクーデター未遂事件が起きて
います。このとき、エルドアン大統領は、避暑地マルマリスのホ
テルにいたのですが、即座にホテルから専用機で脱出し、イスタ
ンブールに向っています。そのホテルは反乱軍兵士が襲撃してい
ますが、エルドアン大統領は20分前に脱出しているのです。
 もっともイスタンブールに向う途中の空域で、2機の反政府軍
のF16戦闘機にロックオンされたのですが、あくまで民間航空
機であると主張して命びろいをしています。
 イスタンブールに到着したエルドアン大統領は、民放テレビに
スマホのフェースタイムを通じて登場し、国民に対して「反乱軍
に抵抗せよ」と呼び掛けたのです。国民は大統領の呼びかけに呼
応し、立ち上がったので、クーデターは鎮圧されています。
 16日の未明にこの事件を知った習近平国家主席は、側近の栗
戦書に、党と政府と軍の高官を中南海にすぐ来るよう命令したの
です。クーデターに対する対策会議のためです。習主席は、エル
ドアン大統領のクーデターへの対処に強い関心を持って、クーデ
ターの対策会議を開いたのです。現在の中国の状況では、いつ、
クーデターが起きても不思議ではないからです。
 トランプ政権発足まであと2日、歴代米政権としては異例の対
中国強硬政権が誕生することは確実の情勢です。習近平政権は、
国内外の難事に対してどのように対処するのでしょうか。とくに
米国との関係悪化は、中国としては避けたいところです。
             ──[米中戦争の可能性/010]

≪画像および関連情報≫
 ●脆弱な社会構造の上に君臨する習近平主席/澁谷司氏
  ───────────────────────────
   2016年7月15日夜(日本時間16日未明)、トルコ
  で、軍の一部によるエルドアン政権転覆のクーデターが起き
  た。一時、軍がテレビ局等を占領し、クーデターは成功した
  かに見えた。しかし、暗殺を逃れたエルドアン大統領がSN
  Sを駆使し、直接、市民に訴えかけた。これが奏功し、結局
  軍のクーデターは失敗に終わっている(ただし、このクーデ
  ターは、大統領による反対派粛清のための「自作自演」説が
  ある)。
   さて、トルコ軍によるクーデター未遂事件で、習近平主席
  が肝を冷やした事はあまり知られていない。トルコでクーデ
  ターが発生するやいなや、習主席は、腹心の栗戦書(中央弁
  公庁主任)に緊急会議の開催を命じた。いかに習近平主席が
  クーデターを恐れているか、その証左だろう。
   習主席はすでに何度も暗殺されかけているが、2016年
  の旧正月明け(2月14日以降)、ファースト・レディの彭
  麗媛への暗殺未遂事件も発生している。栗戦書が主催した党
  政軍の会議では、今後、どのように国内でのクーデターを未
  然に防ぐかが討議された。このように、習近平政権が海外の
  事件に対しても神経を尖らせている。
                   http://bit.ly/2jmwExw
  ───────────────────────────

王岐山書記.jpg
王岐山書記
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2017年01月19日

●「国防費よりも治安維持費の多い国」(EJ第4441号)

 国のトップが何回も暗殺を仕掛けられるというのは、国が一枚
岩ではないということです。そのため、権力抗争が激しくなり、
権力者に対して数々の暗殺が仕掛けられるのです。
 それに、中国のような大きな国を共産党の一党支配でコントロ
ールしようとするとどうしても無理があり、相当強力な独裁体制
を築かざるを得なくなります。しかも、同じ独裁でも、習近平主
席の場合、スターリンがやったような個人独裁体制をとろうとし
ている点が気になるところです。
 スターリンの個人独裁について、評論家の長谷川慶太郎氏は、
自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 スターリンは、1930年代以降、完全に個人独裁体制を確立
していた。絶大な政治権力を掌握していたが、よく知られている
ように、それは冷酷無比な大粛清を伴って達成されたものだ。第
2次大戦の前後にわたっての長い統治期間に、スターリンが粛清
した人間は数十万とも数百万ともいわれているが、それはスター
リンの政敵は言うに及ばず、一見なんら関係もなさそうな党員、
官僚、軍人、さらには一般人にまで及んでいる。(中略)
 現状では習近平は、「反腐敗」というスローガンのもと、汚職
退治で民衆の支持を受けているかのようである。しかし、これも
スターリンの粛清の時と同じである。中国の現在の摘発での、汚
職・収賄、外国資本と結びついている等の「規律違反」というよ
うな罪名は、ソ連の粛清時も同じようであった。共産党が摘発を
行う場合の常套手段と言ってもよい。   ──長谷川慶太郎著
           『中国大減速の末路』/東洋経済新報社
─────────────────────────────
 中国の軍事費は他国を圧倒していますが、中国社会では、その
巨額の軍事費よりも国内の治安維持費(公共安全費)の方が多い
といわれます。各地で住民の抗議行動やデモが頻発し、少数民族
による分離・独立運動などの社会矛盾の激増に備えるためでしょ
うが、それにしても国内の治安維持を主たる目的とする公共安全
費が、軍事を目的とする国防費を上回るのは、どう考えても正常
な姿ではないといえます。真の敵は国外にあるのではなく、国内
にあるかのようです。
 果してこれが本当であるかどうかを調べてみたのですが、ほぼ
事実であることがわかったのです。治安維持費は中国では「公共
安全費」といわれますが、2008年〜2012年の5年間で予
算額を比較してみると、次のようになります。
─────────────────────────────
                   単位:億元
          公共安全費      防衛費
    2008年  4097     4178
    2009年 ◎4870     4807
    2010年  5140     5321
    2011年 ◎6244     6012
    2012年 ◎7018     6703
       ──「日経ビジネス」 http://nkbp.jp/2jngT9K
─────────────────────────────
 これは予算額での比較ですが、2008年からの5年間で3年
間は公共安全費が防衛費を上回っているのです。とくに2012
年は、公共安全費の7017億6300万元(約9兆1230億
円)が国防費の6702億7400万元(約8兆7140億円)
を上回っています。明らかに異常です。
 このレポート(2012年3月/胡錦濤政権当時)をまとめた
住友商事総合研究所の中国専任シニアアナリストの北村豊氏は、
中国について、次のコメントを書いています。
─────────────────────────────
 中国が世界第2位の経済大国としての矜持を保って世界をリー
ドしていくつもりならば、国内の安定が最優先であるべきで、そ
のためには国内に蔓延する社会矛盾を解消することが不可欠であ
る。胡錦濤総書記が提唱する“和諧社会(調和のとれた社会)”
を実現して、その先にある「全面的な“小康社会(ややゆとりの
ある社会)”の建設」を達成するには、“群体性事件”を公権力
で抑制するのではなく、その原因を根本から取り除く地道な努力
が必要なはずである。             ──北村豊氏
       ──「日経ビジネス」 http://nkbp.jp/2iZCxgT
─────────────────────────────
 中国で習近平主席や政権幹部に対して、暗殺やテロが起きてい
る原因は、習政権の情け容赦のない「反腐敗キャンペーン」にあ
ります。確かに「腐敗」をなくすことは大切なことですが、その
キャンペーンが習主席の政敵排除の手段になってしまっているの
です。権力維持拡大のためなら何でもするという姿勢です。
 中国人民大学教授の周孝正氏という学者がいます。社会学や人
口学を専攻しながら中国の政治・社会問題について発言している
人です。その周孝正氏は、「現代の中国はナチス化している」と
いっています。
─────────────────────────────
 ケ小平の教えを破っているのが問題です。ケ小平は中国は経済
建設に専念して、100年変わってはいけないという方針を打ち
出しました。しかし、ケ小平の死後19年が経過し、習近平が指
揮を執っている現在、中国はたしかに「経済大国」といわれるよ
うにはなった。しかし、問題は習近平が打ち出している「中国の
夢」が果してどこに向っているかということです。私に言わせれ
ば、現在中国は30、40年代のドイツか日本のような国家主義
に向っている。ナチスは国家社会主義です。中国の現在の社会主
義は国家社会主義以上でも以下でもない。軍事費がとめどなく拡
大しているし、領土問題、歴史問題で周辺各国ともめている。
              ──月刊「WiLL」2月号より
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/011]

≪画像および関連情報≫
 ●「転換期中国のジレンマ」/周孝正氏
  ───────────────────────────
   中国人民大学名誉教授で、人口社会学者の周孝正氏の講演
  (テーマ「転換期中国のディレンマ」)を、富士通総研中国
  通セミナで聴いたが、非常に興味深かった。
   経済分析だけでは中国社会が抱える矛盾を解明できないた
  め、中国社会の深層の矛盾について、政治、経済と社会の3
  つの側面から問題を明らかにしようという趣旨のようであっ
  た。氏は、1947年生まれ、11年目2回目の訪日とのこ
  とだが、名刺など作ったことがないなど大分変った生活ぶり
  で、招待の連絡もなかなかとれず苦労したらしい。
   “一流の研究者は、専門家だけでなく素人もわかる”と言
  われる通りで、熱のこもった内容を通して感じることができ
  た。第一世代毛沢東の国民党との闘争、文化大革命での下放
  と日々革命、第二世代ケ小平の都市と農村、対外二つの開放
  と経済建設、天安門での発砲、第三世代江沢民の時代からの
  農民工、暫定居留証など例を引きながらの説明は、中国語で
  意味は分からないながら、語気の強い発声ぶりで話されると
  一層理解できた感がある。習近平と軍の関係について、習近
  平には過去の指導者たちと違って、自身には実戦経験がない
  ことを指摘していたのは、一寸印象的であった。ダブルスタ
  ンダードを取りあげた中で、中国の憲法はあっさり“偽物”
  とし、当時全く法律など無かった状況の中、毛沢東の指示で
  世界中の憲法の良いところを寄せ集めたものと解説していた
  のは面白い。           http://bit.ly/2jnXtkT
  ───────────────────────────

長谷川慶太郎氏.jpg
長谷川 慶太郎氏
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2017年01月20日

●「習近平主席には真の友達はいるか」(EJ第4442号)

 1月17日、中国の習近平国家主席は、世界経済フォーラム年
次総会(ダボス会議)に初めて出席し、基調講演を行い、次のよ
うに貿易の保護主義の批判を展開しています。
─────────────────────────────
 世界はテロや難民問題などに直面し、不確実性が増している。
しかし、金融危機も含め問題のすべてを経済のグローバル化がも
たらしたわけではない。われわれは明確に保護主義に反対する。
貿易戦争をすれば結局は双方が負けることになる。中国はグロー
バル経済の受益国であり、かつ貢献国である。
         ──2017年1月16日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 中国に保護貿易を批判されたくありませんが、この習主席の発
言は、明らかに、本日、アメリカ大統領に就任するトランプ氏が
主張する保護主義的な政策を意識したものであることは明らかで
す。それをいうために習主席はダボス会議に出席したのです。
 習近平主席が進める「反腐敗」キャンペーンは、情け容赦ない
もので、その対象は自身の親派とされる人物にも及んでいます。
それも必ずしも腐敗の排除をするだけではなく、今後自身の政敵
になると思われる人物についても、キャンペーンの名の下に排除
することが進められています。
 それは、恩人であろうと、年長者であろうと、盟友であろうと
相手を選ばないのです。習主席はひたすら権力の掌握を目指し、
強権を手にしようとしているように見えます。
 習主席がいかに非情であるかを示す軍の大物の排除劇がありま
す。それは、中国人民解放軍のナンバー2で、制服組のトップま
で上り詰めた当時71歳の退役上将で、軍長老の徐才厚の摘発事
件です。
 徐才厚は遼寧省の出身であり、江沢民元主席の抜擢によって出
世したいわば江沢民派の代理人です。軍内人事に絶大な影響力を
持っており、瀋陽軍区の出身者を優先して出世させ、遼寧閥を築
くなど、将校の地位を事実上売買するというようなこともしてい
たのです。いわば、軍内腐敗の元締め的存在であり、摘発されて
当然ではあったのですが、2012年11月の党大会で、すべて
の役職から退いており、末期がんを患っていたので、まさか摘発
されるとは本人はもとより誰も予想していなかったのです。
 しかし、習主席は国家主席になると、2014年6月、中央軍
事委規律委員会は、北京の301軍病院に入院していた徐才厚を
連行し、党籍を剥奪し、逮捕したのです。まさに「ハエもトラも
叩け!」を文字通り実行したことになります。これによって、徐
才厚は2015年3月15日、起訴を待たず、がん悪化による多
臓器不全で死亡しています。
 だが、もともと習主席と徐才厚は親密であり、彼は習主席の後
ろ盾的存在でもあったのです。
─────────────────────────────
 徐才厚と習近平はけっして赤の他人ではない。徐才厚は習近平
に対し、同じ上海閥の期待のエースとして、江沢民の頼みを受け
て将来的に軍内の後見人役となる約束をしていた。解放軍に所属
する歌姫、習近平夫人の彭麗媛に対しては父娘といってもいいよ
うな深い親交があった。習家のホームパーティでは、徐才厚はた
びたび主賓格で招かれ、習近平も心を込めて接待する姿がしばし
ば見かけられていた。つまり地位が高いだけでなく、恩人であり
身内といってもいいような人間関係の老い先短い重病の老人を病
床からひったてて訊問し、刑事罰を科す、というのは従来の共産
党的秩序や中国的長幼の序からは考えられなかった。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 このように味方まで敵に回してしまう習近平政権ですが、真の
味方はいないのでしょうか。
 その習近平氏の唯一の盟友といわれているのが、王岐山党中央
規律検査委員会書記です。いわゆる習政権の反腐敗キャンペーン
はここが担っており、習政権への権力集中に大きく貢献している
のです。王岐山氏は1948年生まれで、習近平氏よりも5歳年
上で、習近平氏と同じ太子党の出身です。
 王岐山氏は胡錦濤政権時代には、商務、金融、市場管理、観光
などを担当し、大きな成果を上げているのです。とくに、リーマ
ンショックのさい、王岐山氏は大規模財政出動を主導し、中国経
済を劇的に回復させるなどの手腕を発揮しています。
 しかし、2016年になってから、習近平主席と王岐山書記の
関係は微妙なものになりつつあるのです。それは、王岐山書記が
反腐敗キャンペーンによって政敵を倒し、権力が習近平主席に集
中すればするほど、習主席は友達の王岐山書記と距離を取ろうと
するからです。
 「習近平に真の友達はいるのか」──このテーマについてのメ
ディアや知識人は次のように結論しています。
─────────────────────────────
  1.習近平は権力さえあれば、友達は不要と考えている
  2.習近平には部下はいるが、信頼できる友達はいない
  3.習近平と王岐山の関係は、皇帝と臣下のそれである
─────────────────────────────
 確かに、習政権スタート当初は、習近平氏と王岐山氏は、お互
いに信頼できる真のパートナー同士だったのです。もともと王岐
山氏は高い能力の持ち主であり、反腐敗キャンペーンは大きな成
果を上げたのです。
 しかし、反腐敗キャンペーンの実行によって政敵がいなくなり
習政権に権力が集中するにつれ、習主席は皇帝化していったので
す。そして現在では、習近平氏と王岐山氏の関係は、まさに皇帝
と臣下の関係と同じになっています。つまり、習近平氏には臣下
はいるが、友達は一人もいなくなってしまったのです。
             ──[米中戦争の可能性/012]

≪画像および関連情報≫
 ●中国有識者層に募る習近平主席への不信感
  ───────────────────────────
   2016年4月下旬に北京と上海に出張した。目的は定例
  の中国経済情勢に関する現地での情報収集である。習近平政
  権が掲げる「新常態」の方針の下、的確なマクロ経済政策運
  営と積極的な構造改革の組み合わせによって、経済の安定が
  保持されており、安心して見ていられる状況である。
   この点については、今回の出張中に面談した政府内および
  民間の経済専門家の全員がほぼ一致した見方をしていた。し
  かし、その面談相手と話しているうちに、「経済は安定して
  いるが、最近政治情勢が不透明になってきていて心配だ」と
  の懸念を耳にすることが少なからずあった。
   これまで習近平政権が行ってきた政策について、政治面で
  は反腐敗キャンペーンの断行が国民的支持を得ている。経済
  面でも雇用と物価の安定を確保し続け、過剰設備の削減や過
  剰不動産在庫の処理への取り組みも一定の成果を上げるなど
  こちらも高い評価を得てきた。最近は政治リスクの高い軍組
  織の抜本的改革まで実現し、着々と政策の結果を積み上げて
  きている。こうした政策面の大きな成果もあって、多くの国
  民から「習おじさん」(中国語では「習大大」シーターター
  と発音)と親しみを込めた愛称で呼ばれるなど、政権基盤も
  安定度を増していた。ただし、有識者の間では学者やメディ
  アに対してイデオロギーや政府批判に関わる活動の取り締ま
  りがますます強化されてきていることに対する疑念がしばし
  ば指摘されていた。        http://bit.ly/2jvYNCq
  ───────────────────────────

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ダボス会議での習主席の演説
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2017年01月23日

●「習近平とフルシチョフは似ている」(EJ第4443号)

 社会主義国の軍隊は、共産党の指導に絶対に服従する党の軍隊
であり、いわゆる国軍ではないのです。これはかつてのソ連も現
在の中国も同じです。このようにしておくと、クーデターが起こ
りにくいのです。
 しかし、このような軍隊は強固な利益集団を形成し、その利権
や予算を争い、軍閥化する可能性が高いのです。江沢民時代の中
国ではそれが上海閥として顕在化したのです。
 江沢民主席時代から、軍、すなわち人民解放軍を牛耳ってきた
軍人といえば、次の2人です。江沢民元主席の腹心です。
─────────────────────────────
        東北の虎 ・・・・ 徐才厚
        西北の狼 ・・・・ 郭伯雄
─────────────────────────────
 その社会主義政権が最も嫌うのが党のための軍隊を国軍化する
ことです。胡錦濤前主席は人民解放軍の国軍化こそ政治改革の核
心であるとして、それに挑戦しようとしたのですが、江沢民元主
席を中心とする軍の猛反発によって挫折しています。そのとき、
胡錦濤前主席の改革を潰す先頭に立ったのが上記の2人です。
 ちなみに、軍の国軍化は中国における「8つのタブー」の筆頭
に位置付けられています。「8つのタブー」とは、雑誌やメディ
アに通達されている取り上げることが禁止されている事項です。
─────────────────────────────
  ≪8つのタブー≫
   1.軍の国軍化問題
   2.三権分立
   3.天安門事件
   4.党・国家指導者及び家族の批判・スキャンダル
   5.多党制
   6.法輪功
   7.民族・宗教問題
   8.劉暁波
─────────────────────────────
 ここで、中国において押さえておくべきことがあります。江沢
民と胡錦濤政権時代の20年間は、グローバル経済の発展のなか
で外交を極めて重視し、経済成長を優先に考えた政策をとったと
いうことです。その基本は、対日重視政策だったのです。
 確かに江沢民政権は強い反日政策をとり、胡錦濤政権では靖国
問題や尖閣国有問題などは起きたものの、その基本は日本を重視
する政策だったのです。「政冷経熱」といわれるように、経済成
長が何よりも重要だったからです。しかし、それは習近平政権に
なってその外交政策は一変するのです。これについて、福島香織
氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 習近平の外交は、強い軍の存在と、それをきっちり掌握する強
い党であることが共産党体制維持の最重要課題であるから、周辺
の大国にはきわめて強い態度で出ることが大切であった。なので
習近平政権当初から、その外交政策は国際社会が目をむくような
横暴さであり、粗野であった。その中でもとくに、日本は敵視さ
れている。   ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 習近平主席は、2012年11月の中央委員会総書記に就任時
点から強い意欲で軍制改革に取り組んだのです。2013年3月
に国家主席になると、その年の秋の三中全会のコミュニケに軍制
改革を盛り込んだのです。
 そして軍を掌握するために上記の徐才厚と郭伯雄という軍に影
響力の強い大物上将を失脚させ、軍制改革をやりやすくしたので
す。2014年3月に徐才厚、2015年4月に郭伯雄を自らが
推進する反腐敗キャンペーンを名目に逮捕・失脚させ、軍制改革
の邪魔者を排除したのです。この2人を失脚させると、江沢民元
主席は影響力を発揮できなくなるからです。
 習主席が進める軍制改革については、改めて詳しく述べますが
それは人民解放軍にとって不都合極まるものであったのです。そ
のため、当然のことながら江沢民派からのさまざまの抵抗はあっ
たのです。それが2015年8月の習近平主席とその幹部の暗殺
未遂事件につながってくるのです。
 ところで、習近平という人物は、かつてのソ連の指導者フルシ
チョフ総書記に似ているといわれます。なぜなら、フルシチョフ
も軍制改革を行ったからです。社会主義革命から誕生した政権は
「銃口から生まれた政権」といわれますが、それは陸軍の銃口な
のです。フルシチョフの軍制改革は、陸軍軍縮であり、陸軍司令
部の撤廃です。これには、軍閥化している軍の大反発を招くこと
になります。このフルシチョフの改革について、福島香織氏は次
のように説明しています。
─────────────────────────────
 フルシチョフは陸軍を軽んじて、核ミサイルの優先発展を決め
た。このことに盟友とされたマリノフスキー元帥は、各軍ともバ
ランスよく発展させるべきだ、陸軍を無視してはならないと反対
したが、フルシチョフはそれを聞かなかった。習近平は陸軍より
も海空軍の発展を優先させている。1964年のフルシチョフの
失脚は、軍に見放されたことが一つの重大な原因だとしている。
                ──福島香織著の前掲書より
─────────────────────────────
 習近平主席による軍制改革も現在の陸軍中心の「軍区制」から
空軍と海軍中心の「戦略区制」に変更しようとするものです。こ
れはきわめて合理性があるのです。なぜなら、現在の中国にとっ
て、陸の国境線から攻め込まれるリスクは、ほとんどないからで
す。そうであるとすると、陸軍は大幅に削減されることになりま
す。これが習主席のいう「30万人の兵力削減」です。
             ──[米中戦争の可能性/013]

≪画像および関連情報≫
 ●フルシチョフの時代
  ───────────────────────────
   フルシチョフの時代は、あの有名な『スターリン批判』か
  ら始まる。第20回党大会において、外国代表を締め出し、
  スターリンの個人崇拝、独裁政治、粛清の事実を公表した。
  特に粛清について発表された数字は世界に衝撃を与えた。第
  17回党大会で選出された中央委員・同候補139名のうち
  98名が処刑、党大会の代議員全体1986名のうち110
  8名が同様の運命をたどった。彼らに科せられた「反革命」
  の罪状は、その大半が濡れ衣であったと言うものであった。
  スターリン批判はスターリンの個人批判にとどまり、それが
  可能にになった体制の問題にまで掘り下げられなかった。
   スターリン批判によって重い空気は取り払われたが、政治
  体制、経済政策はスターリン時代を踏襲したものであった。
  消費産業に一定の配慮はされたものの、軍需・重工業重点は
  変わらず、5か年計画は継続された。農業政策に通じていた
  彼は、農業改革を実施。西シベリアや中央アジア等の処女地
  開墾を行い食料・農産物の増産に成功する。特に中央アジア
  では大規模灌漑で、綿花生産は大きな成果を挙げ、一帯は綿
  花地帯と化し綿工業も発達した。農業生産での成功で、数年
  の間にアメリカを追い越すとフルシチョフは豪語するように
  なった。実はソ連は広大な耕作地を持ってはいたが、気象条
  件に左右される環境にあり、相次ぐ戦乱、集団化の失敗等で
  悩みは農業問題で、食料が自給出来なかったのであった。
                   http://bit.ly/2iMdodj
  ───────────────────────────

フルシチョフと習近平.jpg
フルシチョフと習近平
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2017年01月24日

●「習主席の軍制改革の目的とは何か」(EJ第4444号)

 習近平政権までの「軍制」はどうなっていたのでしょうか。そ
れは「7大軍区制」という制度だったのです。この制度は、旧ソ
連の「軍管区制度」にならったものといわれています。
 中国は広大な地域を持つ国ですから、その国境線は広大です。
したがって、いつ国境から敵が侵入してくるかわからないので、
陸軍を7つの軍事組織である「軍区」に分けて、敵の侵入に備え
ていたのです。軍区制は1949年に導入されています。
 この場合、軍区の司令はその地域の作戦を遂行するうえで、い
ちいち上層部の指揮を仰がなくでも、作戦を実行できる強固な指
揮権を有しています。その7つの軍区とその主たる対応国を以下
に示します。
─────────────────────────────
   1.瀋陽軍区 ・・・ 北朝鮮
   2.成都軍区 ・・・ インド(チベット独立派)
   3.北京軍区 ・・・ モンゴル
   4.南京軍区 ・・・ 台湾(日本)
   5.蘭州軍区 ・・・ ロシア・ウイグル独立派
   6.広州軍区 ・・・ ベトナム
   7.済南軍区 ・・・ 予備軍区
─────────────────────────────
 これら7つのそれぞれの軍区には、陸軍だけでなく、海軍、空
軍、第二砲兵(ミサイル部隊)も配置されており、兵站や兵力の
配置なども軍区の司令が担うのです。なお、軍区には政治委員も
設置され、軍政権もある。つまり、軍区の司令は軍事のことは自
らの判断で実行できるのです。しかし、この軍区制には次の2つ
の問題点があります。
─────────────────────────────
       1.軍区が軍閥化しやすいこと
       2.中央にとっては脅威になる
─────────────────────────────
 軍区は地域に密着しており、政治性の強い組織です。当然、地
域から人を登用し、軍人に育てるということも当然行われます。
また、利権の温床になりやすいのです。したがって、どうしても
派閥が形成されやすくなります。司令の権限は軍事限定ですが、
小さな国のようなまとまりを持つ可能性もあります。これが問題
点「1」です。
 この7大軍区制は、国境からの敵の侵入を防ぐのには有効だっ
たのですが、現在の中国に国境線からの侵入のリスクはほとんど
ないのです。最大の脅威であったロシアとの国境線の問題も既に
解決しているからです。
 中国が現在想定する戦争は、南シナ海や東シナ海での外敵との
空海軍やミサイル部隊による戦闘と、テロや内乱などの非対象戦
闘です。これには軍区制ではほとんど対応できず、軍区の強い政
治性は、軍隊を一本化するとき、スムーズにいかない原因になり
ブレーキになります。
 それに軍区が導入されてから70年近くになるので、中央のコ
ントロールが効かなくなりつつあります。これは中央にとって、
大きなリスクになるといえます。これが「2」の問題点です。
 江沢民元主席は、これらの7大軍区をうまくまとめ、その上に
君臨した国家主席です。そのため、胡錦濤氏が国家主席になって
も、江沢民主席は、軍をコントロールする権限は手放さなかった
のです。しかし、胡錦濤主席は、軍区制は時代遅れであるとして
その改革に取り組んだのですが、軍区は陸軍の利権であって、強
い抵抗に遭い、改革は失敗に終わっています。
 その軍制改革を習近平主席は、胡錦濤時代から、周到な計画の
下に実施したのです。その軍制改革の骨子は、次の4つです。
─────────────────────────────
   1.軍区制を廃止して、戦区制(戦略区制)にする
   2.軍令と軍政を分離し、軍の司法機構を一新する
   3.30万人の兵力を削減し、200万兵力にする
   4.軍の「民間向け商業活動」を全面的に廃止する
─────────────────────────────
 「1」について考えます。
 戦区制とは、米軍の統合軍がモデルです。戦略・作戦目的ごと
に、陸、海、空軍の統合軍が設置され、指揮系統も統合作戦指揮
系統が置かれるのです。具体的には、かつての7大軍区を次の5
戦区に編成されたのです。
─────────────────────────────
 1.東 部戦区 ・・・ 本部は南京。日本や台湾方面での紛
             争発生に対して対応する戦力
 2.南 部戦区 ・・・ 本部は広州。南シナ海やシーレーン
             の安全の確保を想定した戦力
 3.北 部戦区 ・・・ 本部は瀋陽。ロシアと北朝鮮方面で
             軍事衝突などに対応する戦力
 4.西 部戦区 ・・・ 本部は蘭州。中央アジアのイスラム
             過激派テロ活動に備える戦力
 5.中央部戦区 ・・・ 本部は北京。首都である北京とその
             周辺地を警護するための戦力
─────────────────────────────
 中国は2016年から「ロケット軍」や、サイバー攻撃・宇宙
空間の軍事利用を担う「戦略支援部隊」を創設しています。そし
て、陸軍を海軍・空軍と同列の扱いとし、中国共産党が直接作戦
指揮を行えるようにしたのです。これにより、習近平政権の統制
力はさらに高まったといえます。
 習主席は「各戦区には平和を維持し、戦争に勝つ使命がある」
といっていますが、まるで戦争に勝てる強軍があってこそ平和が
実現できると考えているようです。このように、習主席は、いつ
でも戦争ができるよう、軍制を改革し、着々と権力を自分に集中
させつつあります。「2」から「4」については明日のEJで述
べます。         ──[米中戦争の可能性/014]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平と中国軍の対立/国家主席に従わない人民解放軍
  ───────────────────────────
   習近平主席と中国軍は外から見ると強固な関係で、習の独
  裁あるいは軍と一体化しているようにも見える。だが実際に
  は、中国人民解放軍には習近平への不満が渦巻いており、機
  会があれば失脚させようと狙っている。
   まず中国人民解放軍について理解する必要があるが、この
  軍隊は中国という国家に所属してない。法律では中国共産党
  に所属する私兵なので、国家主席だろうと最高指導者だろう
  と、軍に命令する事はできない。これは、清国が辛亥革命に
  よって倒れたあと、国民党が政権を握り後で共産党が誕生し
  た経緯に原因が求められる。
   「一つの中国」の中で国民党軍と共産党軍が内戦をしてい
  るのだから、国家に所属する軍隊など敵に寝返りかねない。
  中国に近代国家としての正規軍が存在せず、共産党に所属す
  る私兵だという事は、党内の派閥や軍閥が強い力を持ってい
  る。習近平が人民解放軍を動かせるのは、「共産党中央軍事
  委員会主席」という地位に就いているからで、中国の国家主
  席だからではない。1982年に重要な憲法改正が行われ、
  「軍事委員会主席が軍を統率する」から「軍事委員会が軍を
  領導する」に変わっている。比較すると以前は、主席(毛沢
  東)個人に指揮権があったのに、現在は委員会が統率して指
  導するとなっていて、権限が縮小されている。これは恐らく
  毛沢東時代の独裁が経済や軍事に悪影響を与えた事から、最
  高指導者の権限を縮小したのでしょう。
                   http://bit.ly/2jLUHps
  ───────────────────────────

中国の軍制改革/5大戦区.jpg
中国の軍制改革/5大戦区
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2017年01月25日

●「軍制改革で強大化する習近平政権」(EJ第4445号)

 昨日のEJでご紹介した中国の軍制改革の4つの骨子を再現し
ます。「1」については説明済みです。
─────────────────────────────
   1.軍区制を廃止して、戦区制(戦略区制)にする[済]
 → 2.軍令と軍政を分離し、軍の司法機構を一新する
   3.30万人の兵力を削減し、200万兵力にする
   4.軍の「民間向け商業活動」を全面的に廃止する
─────────────────────────────
 「2」について考えます。
 軍制改革以前の人民解放軍の実権は、四大総部が握っており、
中央軍事委員会主席の持つ総帥権は飾りでしかなかったのです。
ちなみに中央軍事委員会主席は、国家主席が兼務します。四大総
部とは、次の4つの部署のことです。
─────────────────────────────
      1.総参謀部     3.総装備部
      2.総政治部     4.総後勤部
─────────────────────────────
 人民解放軍は四大総部による支配が長年続き、横の人事異動は
ほとんどなく、縦割り行政の弊害が指摘されていたのです。20
16年12月11日までに四大総部は解体され、その機能が15
の専門部局に分散されたのです。
 新しく設けられたのは「連合参謀部」「政治工作部」「訓練管
理部」「国防動員部」などの部局で、これまで四大総部の傘下に
あった部門が独立したのです。どうしてこの体制になったのかと
いうと、組織間の情報交換と連携を強化する狙いであるとの指摘
があるほか、軍内部の権限を細かく分散させることで、中央軍事
委員会主席である習近平主席が軍の全面的な掌握を進める狙いが
あると思われます。
 この組織改編の後で習近平主席は、北京市西部の中央軍事委員
会本部で各部署の責任者に任命された将軍を集め、次のように訓
示しています。
─────────────────────────────
 共産党中央と中央軍事委員会の指揮に断固として従わなけれ
 ばならない。       ──習近平中央人事委員会主席
─────────────────────────────
 四大総部の組織改編では、「軍政と軍令の切り離し」を行って
います。ところで、軍政と軍令はどう違うのでしょうか。
 軍事権は、「軍政権」と「軍令権」から成ります。軍政権とい
うのは、軍事行政、装備、兵站などの軍隊建設に関わる政治を意
味します。これに対して軍令権は、軍事力の直接的使用に関わる
権力のことです。つまり、軍令権は作戦用兵に関する統帥権を意
味します。明治憲法下では,日本はドイツを模倣して、軍令権は
内閣の権能外に独立させ、天皇が直接掌握するかたちになってい
たのです。
 軍政権と軍令権の関係について、福島香織氏は、次のように述
べています。
─────────────────────────────
 平和時、軍令権はあまり存在感がない。むしろ軍政を握るもの
が軍の権力の中枢を握ることになる。逆にいえば、それが平時の
軍の常態である。だが、習近平が軍令権と軍政権を分離し、軍令
権については自らが掌握することにした。これは、平時から戦時
体制に変わる準備ともいえる。軍令権の中には仮想敵国の想定や
戦術戦略研究の方針も含まれるという。
 この改革が進めば、これまで軍の実権を握っていた四大総部は
中央軍事委の決定に従って実務に専念する職能機関に格下げにな
る見通しだ。中でも総政治部の権限は大幅に弱体化する。
          ──福島香織氏 http://nkbp.jp/2jMk1vI
─────────────────────────────
 今回の軍制改革では、軍の司法機構を一新するとありますが、
実際にどうなったのかについてはわかっていないのです。軍の司
法機関については、中央軍規律委員会が軍の腐敗を摘発すること
になっていますが、これまであまり厳しい裁きが行われてきてい
ないのです。
 これは長らく軍政を握ってきた徐才厚が身内意識を優先して甘
い裁きをやってきているからです。徐才厚は既に死亡しています
が、その残党は多く残っており、その一掃のために司法機関の改
革が打ち出されたものと思われます。おそらく中央軍規律委員会
を独立させて、新たに軍事政法委員会を作るなどの改革が行われ
るものと考えられます。
 そもそも習近平主席が仕掛けた軍制改革──とくに7大軍区の
改変の真の目的は、徐才厚派の多くいる瀋陽軍区と、郭伯雄派の
多くいる蘭州軍区の解体にあるのではないかといわれるのです。
これをやらないと、本当の意味での軍制改革はできないといわれ
ます。しかし、この軍制改革によって軍は動揺しており、不満が
渦巻いているのです。
 なぜ習近平主席は、このタイミングで軍制改革をやろうとした
のでしょうか。それは「2つの100年」の目標実現のためとい
われています。「2つの100年」とは次の2つです。
─────────────────────────────
   1.  中国共産党成立100年(2021年)
   2.中華人民共和国成立100年(2049年)
─────────────────────────────
 第1の100年は、2021年に訪れる中国共産党成立100
年に小康社会を樹立することです。小康社会とは、全面的なゆと
りある社会のことです。
 第2の100年は、2049年までに中国を社会主義現代国家
にするという目標です。そのための4つの全面──全面的小康社
会の建設、全面的改革の深化、全面的法治国家の推進、全面的統
治の厳格化の協調的推進に必要なのが軍制改革による強軍興軍化
であるというのです。   ──[米中戦争の可能性/015]

≪画像および関連情報≫
 ●人民解放軍を骨抜きにする習近平の軍事制度改革
  ───────────────────────────
   「政治権力は銃口から生まれる」。毛沢東が語ったこのき
  わめて明快な権力観は、習近平の中国でも生きている。習近
  平は、2012年11月に中国共産党総書記に就いて以来、
  歴代の指導者と同様に、繰り返し人民解放軍に対して「党の
  軍に対する絶対的な指導」を守るよう繰り返し確認してきた
  のである。これを制度的に保障するために、やはり歴代の指
  導者と同様に、習近平は中国共産党のトップである中国共産
  党中央委員会総書記であり、国家のトップである国家主席で
  あり、中国共産党の軍事に関わる意思決定のトップである中
  国共産党中央軍事委員会主席であり、国家の軍事に関わる意
  思決定のトップである国家中央軍事委員会主席を兼ねている
  のである。
   実は、中国共産党総書記はこれまで、その就任直後から、
  国家、そして軍の三権を一度に掌握してきたわけではない。
  現代中国政治において政治指導者たちは、権力を継承すると
  き、軍に関する権力の継承については極めて慎重におこなっ
  てきた。天安門事件の責任を負って失脚した趙紫陽の後任と
  して中国共産党総書記に就いた江沢民は、中国共産党中央軍
  事委員会主席の地位を、総書記就任から5ヶ月経ってから、
  ケ小平から継いだ。江沢民の後継である胡錦濤は2002年
  11月に総書記に就任したが、中央軍事委員会主席となった
  のは2年後のことであった。    http://bit.ly/2kfWAvP
  ───────────────────────────

軍人を激励する習国家主席.jpg
軍人を激励する習国家主席
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2017年01月26日

●「陸軍の兵力削減30万人への不満」(EJ第4446号)

 中国の軍制改革の4つの骨子を再現します。「1」と「2」に
ついては説明済みです。
─────────────────────────────
   1.軍区制を廃止して、戦区制(戦略区制)にする[済]
   2.軍令と軍政を分離し、軍の司法機構を一新する[済]
 → 3.30万人の兵力を削減し、200万兵力にする
 → 4.軍の「民間向け商業活動」を全面的に廃止する
─────────────────────────────
 「3」について考えます。
 習近平国家主席は、軍制改革によって兵力を30万人削減する
と発表しています。これは、2015年9月3日に中国で行われ
た抗日戦勝利70周年記念式典での習近平国家主席の演説のなか
で出てきたのです。演説のなかのその発言部分を抜き出して、以
下に示します。
─────────────────────────────
 平和のために、中国は終始平和発展の道を堅持していきます。
中華民族は従来、平和を愛しています。どこまで発展を遂げても
中国は永遠に覇を唱えず、永遠に拡張を行わず、自分自身がかつ
て経験した悲惨な遭遇を、ほかの民族に押しつけるようなことは
決してしません。中国人民は世界各国人民と友好的につきあい、
中国人民抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利の成果を固とし
て守り、人類のために新たに、より大きな貢献をしていくよう努
めていきます。
 中国人民解放軍は、人民からなる軍隊で、全軍の将士は全身全
霊人民に奉仕するという根本的な主旨を心に刻み、祖国の安全と
人民の平和な生活を守るという神聖なる職責を忠実に全うし、世
界平和を守るという神聖なる使命を忠実に遂行しなければなりま
せん。ここで中国は、軍兵士30万人を削減することをここに宣
言します。              http://bit.ly/1KKEbNr
─────────────────────────────
 この演説で習主席は誠に殊勝なことをいっています。「中国は
覇権を唱えず、拡張を行わない」といい、他の国を攻めて領土を
拡張するようなことは永遠に行わないと断言しています。しかし
その一方で、南シナ海諸島や尖閣諸島のように、かつて歴史上、
中国の領土であった島々は中国のものであり、それは中国の譲れ
ない核心的利益であって、中国のものにするのは当然であるとい
う奇妙な論理を展開するのです。
 そのうえで習主席は、兵力を30万人減らすといっているので
す。一見すると、軍縮であると思うはずです。しかし、これは軍
縮ではなく、軍のスリム化であり、強軍化なのです。それと同時
に習主席にとって邪魔になる人材を切って、風通しをよくすると
いう裏目的もあるのです。この30万人のリストラについて福島
香織氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 (軍制改革によって)兵力30万人削減という大リストラを開
始している。これは軍縮ではない。軍のスリム化による強軍化で
あると同時に、軍の徐才厚、郭伯雄(ともに習近平の政敵として
粛清された)の残党の粛清発表と受け止められている。この30
万人の内訳の多くが「非戦閣員」といわれている。汚職の温床化
している装備部の圧縮が真っ先に挙げられている。また、30万
人中17万人は、陸軍の江沢民系、徐才厚系、郭伯雄系ら将校ク
ラスのようだ。この軍のスリム化は2017年までに完了させる
という。    ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 習近平主席は、この軍制改革と並行して着々とあることを実行
しています。それは軍内の要職に自分の息のかかった者を配置し
ようとしているのです。南京軍区出身、とくに第31集団軍出身
者が多いのです。習主席が、福建、浙江省勤務であったときの人
脈が中心です。
 具体的にいうと、趙克石(後勤保障部長)、李暁峰(政治委員
会書記)、王安竜(中央軍事委弁公庁副主任)、苗華(海軍政治
委員)、蔡英廷(解放軍軍事科学学院)といった習主席の腹心が
続々と出世しています。彼らのなかには実力不足の者も多く、軍
内に大きな不満が渦巻いています。まさしく、「お友達人事」そ
のものです。
 「4」について考えます。
 軍の「民間向け商業活動」とは何でしょうか。
 実はこれこそ人民解放軍を腐敗させる原因になったのです。ケ
小平は、経済成長を重視し、国防費を大幅にカットしたことがあ
ります。その国防費の不足を補うためにケ小平は、中国軍の独自
ビジネスを認めたのです。これについて、ハーバード大学アジア
センター・シニアフェローの渡部悦和氏は、自著で次のように述
べています。
─────────────────────────────
 腐敗した中国軍の改革は困難を極める。軍所有の土地や施設の
賃貸、新聞の発行、ホテルやレストランの経営、軍の病院を民間
人にも開放することによる診療収入の確保などのビジネスを展開
してきた。このビジネスが軍腐敗の原因であり、習主席は今回の
軍改革の一環として軍のビジネスの大半を禁止した。今後、習近
平政権と陸軍を筆頭とする軍の抵抗勢力との関係がどう推移する
かが重要な指標となる。いずれにせよ、中国軍の改革を通じた権
力基盤の強化にはまだまだ時間がかかると予想する。
        ──渡部悦和著「米中戦争/そのとき日本は」
                  講談社現代新書2400
─────────────────────────────
 それでも人民解放軍の腐敗はなくならないと思われます。腐敗
のある軍隊は絶対に強軍化できないものです。それでも習主席は
軍制改革を早期に完成させるといっています。
             ──[米中戦争の可能性/016]

≪画像および関連情報≫
 ●「戦争ができ、戦争に勝つ」軍隊の誕生
  ───────────────────────────
  2016年2月8日から13日まで、中国は春節(旧正月)
  の大型連休だった。習近平主席にとって、中国共産党のトッ
  プに立って迎える4回目の春節だった。北朝鮮がこのところ
  「大暴れ」しているので、習近平政権も大揺れの正月だった
  かと言えば、そうではない。
   思うに習近平主席にとって今年が最も安らかに迎えた春節
  ではなかったか。それは習近平主席が最も重要視する200
  万人民解放軍を、「自分の軍隊」に改造することに成功した
  からである。
   春節を一週間後に控えた2月1日午前10時、新調した人
  民服を着た習近平主席が、満足げな表情を浮かべて、「八一
  大楼」の大ホールの壇上に立った。「八一大楼」は、8月1
  日の人民解放軍創建記念日の名を冠した国防部の施設で、長
  安街沿いの軍事博物館東側に位置する。建築面積9万255
  平方メートル、地上12階、地下2階建てで、1997年に
  人民解放軍を統轄する中央軍事委員会のオフィスとして建て
  られた。習近平主席は、1979年、26歳の時に、元人民
  解放軍幹部だった父・習仲勲の命令で、中央軍事委員会のオ
  フィスで働くことからキャリアをスタートさせた。以後、中
  央軍事委員会主席に収まった現在に至るまで、そのキャリア
  の大半で、軍務を兼務してきた。  http://bit.ly/2kdjZug
  ───────────────────────────

30万人の兵力削減の演説.jpg
30万人の兵力削減の演説
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2017年01月27日

●「尖閣諸島国有化が招いた日中関係」(EJ第4447号)

 中国の支配者、習近平主席の正体を知るために、胡錦濤前主席
との違いを知る必要があります。胡錦濤政権は、中国が今後発展
していくためには、国際協調は欠かせないと考えており、そのた
めには、党の私軍である人民解放軍を党から切り離し、国軍とす
る軍制改革を行うべきであるとして、改革に着手したのです。そ
して、共産党執政の正当性の根拠を経済成長に求めたのです。
 社会主義国のトップとしては正しい判断であり、旧ソ連のゴル
バチョフ総書記のやったことに似ています。しかし、胡主席の軍
制改革は抵抗勢力の妨害によって潰されています。
 これに対して胡錦濤政権を受け継いだ習近平政権は、党が軍を
より掌握し、これによって共産党一党支配の正当性を担保しよう
としたのです。まさに中国の北朝化そのものです。世のなかの動
きに逆らう先祖返りを図ったといえます。
 ところで、習近平氏は、胡錦濤政権の国家副主席を務めていた
ときから、胡政権の進めようとする軍制改革に疑問を持ち、先祖
返りのための布石を打っていたといわれます。
 ところで、『習近平内部講話』(広度書局)という本がありま
す。この本には習近平氏の主張が詳しく書かれているのですが、
次のような習近平氏のレポートも載っています。
─────────────────────────────
          2012年9月13日付/習近平記
   「第18回党大会前の時局においての個人的見解」
─────────────────────────────
 このレポートは、当時の政権の胡錦濤、温家宝および江沢民、
李鵬、朱鎔基などに宛てたものになっています。この文書が書か
れた時点では、習近平副主席が次の総書記/国家主席になること
は確定していたのです。したがって、そのレポートの内容は、自
分が総書記になったら、このようにやりたいという政策の方向性
について書かれているのです。
 ところで、このレポートの日付に注目して欲しいのです。20
12年9月13日というのは、日本が尖閣諸島を国有化してから
2日後です。したがって、このレポートは、日本を意識した内容
にになっていることは確かです。
 それに、2012年9月1日〜14日までの2週間、習近平副
主席の動静は不明だったのです。その期間内の公式スケジュール
には、中国を訪問していたヒラリー・クリントン氏らの要人と面
接する予定があったのですが、それは突然キャンセルされていま
す。多くの中国メディアは、習近平氏は水泳中、プールサイドで
転んで背中を痛め、入院していると報道したので、暗殺説まで出
たほどです。
 実際は、習副主席はけがを理由に2週間の休暇を取り、ブレー
ン一人とこのレポートを作成していたのです。そのなかには当時
の習近平氏の日本観を窺うことができます。その部分を福島香織
氏の著書から引用します。
─────────────────────────────
 日本は長期の経済低迷に、天災人災が相次ぎ、社会存亡の危機
に見舞われている。右翼勢力の台頭、戦後の国際秩序への挑戦、
日本政府が釣魚島を「国有化」するなど、これは愚かな行動の一
例だ。われわれは、アジア太平洋と世界の平和環境、秩序維持、
国内の発展のために、かなり我慢して譲歩してきたが、最近の事
態は我慢の限界だ。釣魚島は東海の中国大陸棚の資源に関係する
だけでなく、国家の長期的戦略的経済利益に関係する。また、中
華民族の近代から現代に至る屈辱的な歴史と民族の痛みにも関係
する。(釣魚島防衛は)わが国民衆の民族の自尊、国家の尊厳、
国家領土主権の防衛という正当な要求のほか、社会の各種矛盾、
積怨、不満の爆発のはけ口も見つけることができる。・・・われ
われは一定の民意に従い、同時に正確に誘導し、日本が運んでき
たこの重い石を、自分の足の上に落とさせるようにしよう。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 このレポートには、胡錦濤政権は日本に対してあまりにも弱腰
であり、そのために尖閣諸島が国有化されたとの思いが強く込め
られています。実際にこの件に関して胡主席は、党長老、軍幹部
たちから、非難されていたのです。
 さらに、このレポートでは、次の具体的な7つの提案をしてい
ます。それらのほとんどは既に実行されています。
─────────────────────────────
 1.反日デモは抑制せず、もし日本製品(日貨)の打ち壊し
   が起きても恐れない。
 2.米国とも協調して、日本の軍国主義復活・拡張主義の復
   活に警戒を喚起する。
 3.両岸三地(台湾/香港/中国)で、漁民の非暴力形式で
   中国主権を主張する。
 4.国連などに働きかけ、釣魚島の主権を訴え、米国に肩入
   れさせてはならない。
 5.日本に対して強硬な外交姿勢を強め、経済貿易制裁など
   有形無形で発動する。
 6.上記に加えて、中国として軍事的に釣魚島を完全防衛す
   る準備を新調させる。
 7.国内で、釣魚島問題に関する民衆の言論を大きく解放さ
   せ、世論を形成する。
               ──福島香織著の前掲書より
─────────────────────────────
 これを見ると、現在の中国の習政権が日本にとっていかにリス
クの多い政権であるかがわかります。実際に中国は、日本が少し
でもスキを見せれば、局地的軍事衝突に持ち込むハラであること
は確かです。現在でも、尖閣諸島周辺では中国の挑発は続けられ
ており、日中の火種になっているのです。
             ──[米中戦争の可能性/017]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平は尖閣諸島を奪うつもりだった/福島香織氏
  ───────────────────────────
   2012年9月の第18回党大会前に、習近平が、米国と
  ともに戦後国際秩序の守り手として、軍国主義復活を企てる
  日本を追い詰めていく戦略を頭に描いて、こんな手紙を書い
  ていたとしたなら、やはり彼はたいそう国際社会の現実を知
  らない外交音痴の人であったかと思う。結果から言えば、中
  国は「戦後国際秩序の守り手として米国と協調する路線」か
  ら、「米国に対抗する中華秩序圏のアジアにおける樹立」に
  方針変更したし、日米の離反を狙った外交・宣伝工作は失敗
  し、米国のアジア・リバランス政策を引き起こし、尖閣諸島
  (釣魚島)で作戦を仕掛ける前に南シナ海問題で米中の対立
  を先鋭化させた。"両岸三地共同の釣魚島防衛"など、ひまわ
  り、雨傘運動で消し飛んでしまった。
   そして2014年秋からは180度方針を転換し、むしろ
  日本に積極的にアプローチしてきている。春節には日本での
  「爆買ブーム」を比較的肯定的に報道し、フェニックステレ
  ビでは6月、安倍晋三の単独インタビューを比較的好意的な
  編集で流し、「安倍は中国に好意的」といったシグナルを発
  信した。最近では、安倍の密使として訪中した谷内正太郎に
  は、首相の李克強が35分の時間を割いて会談すると言う厚
  遇ぶりを見せた。        http://nkbp.jp/2jzKc5R
  ───────────────────────────

冷たい二国関係/日本と中国.jpg
冷たい二国関係/日本と中国


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2017年01月30日

●「空自のスクランブルの厳しい現状」(EJ第4448号)

 日本の新聞では大きく報道されませんが、尖閣諸島周辺空域で
は、間断なく飛来する中国戦闘機に対して、航空自衛隊のスクラ
ンブルが厳しさを増しています。
 2016年12月10日のことです。中国国防部は次の発表を
行ったのです。昨年暮れのことですから、覚えておられる人もい
ると思います。
─────────────────────────────
 2016年12月10日(土)、中国国防部は「中国空軍航空
機が、宮古海峡空域を経て西太平洋における定例の遠海訓練に赴
いたところ、日本自衛隊が2機のF─15戦闘機を出動させ、中
国側航空機に対し、近距離での妨害を行うとともに妨害弾を発射
し、中国側航空機と人員の安全を脅かした」(防衛省報道資料よ
り)と発表しました。        ──中国国防部の言い分
─────────────────────────────
 これに対して日本の防衛省は次の反論を行ったのです。「妨害
弾」などもってのほかというわけです。
─────────────────────────────
 これに対して防衛省は、翌12月11日(日)、空自F─15
戦闘機は中国軍用機に対し、状況の確認と行動の監視を、国際法
および自衛隊法に基づく厳格な手続きに従って行ったものであり
「中国軍用機に対し、近距離で妨害を行った事実はなく、妨害弾
を発射し、中国軍用機とその人員の安全を脅かしたという事実も
一切ありません」との見解を表明しました。 ──防衛省の反論
                   http://bit.ly/2jDHAnj
─────────────────────────────
 ところで、中国国防部のいう「妨害弾」というのは「フレア」
のことです。戦闘機が搭載しているミサイルは、敵のエンジンか
ら発射される赤外線を追尾して撃墜する赤外線追尾型ミサイルが
多いのです。フレアというのは、赤外線追尾型ミサイルを欺瞞す
る、いわばおとり弾のことです。
 敵機が近づいてきて、ロックオンされた場合、戦闘機はフレア
を射出してミサイルの追尾をフレアに引き寄せ、その間に現場か
ら離脱することになります。
 ということは、この場合、中国の戦闘機2機が、スクランブル
で接近してきた空自のF─15戦闘機2機に対し、ロックオンし
たので、2機のF─15戦闘機は、フレアを発出して離脱したと
いうことが想定されます。しかし、防衛省はそのどちらも否定し
ています。どうやら、ことを大きくしたくないようです。
 なぜかというと、このようなことはこれまでにも起きているか
らです。実は、これとそっくりの事例が2016年6月17日に
起きているのです。しかし、このときはなぜかメディアが取り上
げていないのです。官邸が特定秘密保護法の対象項目として公表
しなかったからです。
 福島香織氏は自著でこの事実を取り上げていますが、それは、
航空自衛隊の戦闘機パイロットで、元空将の織田邦男氏が、JB
プレスという有料サイトに掲載した主張に基づいています。福島
香織氏はこれについて次のように述べいます。
─────────────────────────────
 織田記事では、「(中国軍機から)攻撃動作を仕掛けられた空
自戦闘機は、いったんは防御機動でこれを回避したが、このまま
ではドッグファイト(格闘戦)に巻き込まれ、不測の状態が生じ
かねないと判断し、自己防御装置を使用しながら、中国軍機によ
るミサイル攻撃を回避しつつ戦域から離脱したという」とある。
素直に読めば、中国軍機がミサイル攻撃体制をとったので、フレ
ア(赤外線センサーを欺瞞するデコイ装置)を発射して、これを
回避し離脱した、と受け取れる。
 これを受けて、萩生田光一副官房長官が29日の記者会見で、
「近距離でのやり取りは当然あったのだと思う」としながらも、
「攻撃動作をかけられたという事実はない」と言明した。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 これは、12月10日に起きたこととまったく同じです。なぜ
そのとき政府はこのことを公表しなかったのでしょうか。
 それは、スクランブルをかける空自の戦闘機が厳しい状況に置
かれている現状と関係があります。福島氏によると、2016年
4月〜6月の中国戦闘機へのスクランブルは、前年同期比1・7
倍に増加しており、予備パイロットまでスクランブルに駆り出さ
れる事態になっているからです。そのため、中国戦闘機に押され
ているのです。そのため、織田氏は心ある日本人に対して警鐘を
鳴らす目的で、あえて有料サイトに論文をアップし、事実を公表
したものと思われます。福島氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 織田記事が懸命に警鐘を鳴らしているように、いま日本の対中
国防衛の最前線はきわめて厳しい状況にあることを、もっと多く
の日本人が知るべきだろう。だが日本政府はこれを特定機密保護
法の対象として、公表を見送ったうえ、自衛隊OBが危機感から
問題提起したことをむしろ問題視して、情報漏えいの犯人探しに
躍起になっている。これは、中国国防部がおおむねの内容を公表
した今になっては、東シナ海防衛の最前線にいる人たちの士気を
下げ、日本の防衛体制の穴を中国に知らしめる利敵行為以外の何
ものでもない。         ──福島香織著の前掲書より
─────────────────────────────
 習近平主席の意思を受けて、中国戦闘機は本気で東シナ海の制
空権を取ろうとして尖閣周辺上空に飛来してくるのです。そのた
め、スクランブルをかけた空自の戦闘機が、中国機にドッグファ
イト(バックをとられること)されたからこそ、自衛隊機はフレ
アを射出して離脱したのです。バックをとられてロックオンされ
れば、フレアで離脱するしかないからです。
             ──[米中戦争の可能性/018]

≪画像および関連情報≫
 ●空自機、対領空侵犯措置にて「妨害弾」射出か
  ───────────────────────────
   防衛省は「近距離で妨害を行った」ことと「妨害弾(フレ
  ア)によって安全を脅かした」ことは否定しましたが、「フ
  レアの投下自体」は否定していません。よって、実際のとこ
  ろどのような状況であったのかは不明ですが、少なくとも中
  国国防部が主張する「フレアの射出によって安全が脅かされ
  た」という点は、フレアの特性上発生しようがないことは明
  白であると断定でき、中国国防部の発表は矛盾しています。
   もし仮に、本当に航空自衛隊のF─15戦闘機からフレア
  が射出されていたとしたならば、それはF─15のパイロッ
  トが何らかの脅威を認識したからであると推測されます。今
  回の中国空軍機の編隊には戦闘機が2機(防衛省はSu30
  戦闘機と発表)、確認されています。おそらくこの中国軍の
  戦闘機が、F─15に対してレーダー追尾(ロックオン)を
  仕掛けたのではないでしょうか。F─15には国産の自己防
  御システムが搭載されており、レーダー電波を逆探知するこ
  とでパイロットはロックオン、すなわち攻撃される寸前の状
  態であることを認知できます。もし、「レーダー誘導ミサイ
  ル」が発射された場合、F─15はやはりレーダー電波を逆
  探知し、パイロットはミサイル接近中であることを認知でき
  ます。ただし「赤外線誘導ミサイル」は電波を出さないので
  ミサイル接近警報装置を搭載していないF─15には、同ミ
  サイルで攻撃されているかどうかを知ることはできません。
                   http://bit.ly/2kA2pjw
  ───────────────────────────

スクランブル戦闘機によるフレア射出.jpg
スクランブル戦闘機によるフレア射出
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2017年01月31日

●「中国は軍事紛争を日本に仕掛ける」(EJ第4449号)

 2013年1月30日のことです。中国海軍の軍艦が、海自の
護衛艦に対してレーダーを照射するというとんでもない事件が起
きたのを覚えていますか。2013年2月5日付のAFPニュー
スは、その事件を次のように伝えています。
─────────────────────────────
 【2月6日AFP】小野寺五典防衛相は5日夜、中国海軍のフ
リゲート艦が1月30日に東シナ海で、海上自衛隊の護衛艦に射
撃用の火器管制レーダーを照射したと発表した。
 日本と中国の艦艇間でレーダー照射が明らかになったのは初め
て。両国関係は尖閣諸島の領有権問題で緊張が高まっており、武
力衝突が起きる恐れもあると懸念する声も聞かれている。
 小野寺防衛相によると、1月19日にも自衛隊ヘリコプターが
似たレーダー照射を受けた。関係者によれば、19日と30日の
レーダー照射はともに数分間続いた。小野寺防衛相は「大変、特
異な事例」で「一歩間違えれば大変危険な状態に発展していた」
と述べ、中国にこのような行為の自制を求める意向を表明した。
                   http://bit.ly/2jH4ASz
─────────────────────────────
 どこかの国の船舶、まして軍艦に対してレーダーを照射すれば
それは砲撃目的以外はあり得ないので、砲撃戦になることは確実
です。それがきっかけで戦争になっても不思議はないほど重大な
ことです。米国の軍艦に、もしレーダーを照射したら、たちまち
ミサイルが飛んできます。
 同じレーダー照射といっても戦闘機の場合と軍艦の場合は異な
るのです。戦闘機の火器管制レーダーの照射は「ロックオン」と
いいますが、必ずしも攻撃の照準を合わせるという目的ではなく
相手機がどこにいるかを把握し、そのスピードを測定するために
行うのです。スクランブルでは必ずやることです。
 したがって、ロックオンという行為それ自体は、攻撃の意思表
示ではないのです。しかし、戦闘機の位置によっては攻撃のサイ
ンになります。その攻撃のポジションが「ドッグファイト」、す
なわち、バックを取ることです。つまり、航空機のバックに回っ
てロックオンをすれば、それは攻撃のための照準合わせを意味す
ることになります。
 したがって、スクランブルをかけるときは、ロックオンはしま
すが、バックには回らないのです。相手機の斜めのポジションを
キープし、相手機に対し「ここは日本の領空である」と伝えるの
です。これは戦闘機の操縦技術としては非常に難しいのです。
 しかし、中国の戦闘機の操縦技術のレベルは今一つで、しかも
攻撃的ですぐバックを取ろうとします。日本のスクランブル機は
そうはさせないように操縦しますが、ときにはバックをとられる
ときもあります。そういうときは、フレアを発射して離脱するこ
とになります。そんなことは毎日のように起きています。
 しかし、軍艦が火器管制レーダーを照射するときは、砲撃以外
あり得ないのです。当然日本政府は中国に対して厳重抗議しまし
たが、その後は海軍のルールを知らないはねっ返りの暴走事件と
して、ことを収めてしまっています。
 これに関して福島香織氏は、「中国は空でも海でも、最初から
軍事衝突を起こす気で尖閣諸島にやってきている」として、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 習近平政権としては日本が挑発に乗って軍事行動を起こせば、
それを理由に局地的衝突に持ち込む気であったとみられる。この
ころは、米国は中国よりも日本の軍国主義化の方を警戒している
と、少なくとも中国は考えていた。続いて2013年2月に中国
が一方的に東シナ海上空にADIZ(防空識別圏)発表したのも
こうした日本挑発のシナリオに従ったものだろう。だが習近平に
大きな誤算があった。一つは、日本政府がこの手の挑発に非常に
忍耐強く、日本人は良くも悪くもこうした危機に鈍感であったと
いうこと。そして中国のこうした危険な挑発はむしろオバマ政権
にいっそうの警戒感を与える結果となった。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
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 習近平主席はこう考えているのです。彼の総書記就任前に作成
したレポートにもあるように、尖閣諸島は力づくでも手に入れる
が、重要なことがある。それは、そのさい米軍が出動しないよう
にすることだ。そのためには、アクシデントを装って、偶発的軍
事衝突を起こし、漁民を装った軍隊によって、尖閣諸島を奪うと
いうシナリオです。
 そうであるとすると、空でも海でも中国軍は本気で尖閣諸島を
奪う気でやってきているということになります。しかし、海警と
いう事実上の戦艦に近い公船を何回送り込んでも、日本の海上保
安庁の巡視艇は、いつても辛抱強く待機しており、領海に侵入し
ようとすると、非戦闘的に公船と並走しながら、やがて領海外へ
中国の公船を追い出してしまうのです。
 中国海軍は、そういう日本の巡視艇の高度な操船技術を肌で感
じているのです。巡視艇レベルでもこれほど高い技術を持ってい
るのですから、海上自衛隊はもっと高度であることを認めざるを
得ないのです。つまり、海でも空でも、戦争をするのではなく、
戦争をしないように対応する技術レベルが非常に高いのです。
 それに加えて日本の海自の潜水艦はまったく音がせず、どこに
潜んでいるかわからない恐怖が中国側にあります。したがって、
中国としては、たとえ米軍抜きでも、尖閣諸島を攻めあぐんでい
るというのが現在の状況です。
 このように、習近平政権は日本にとって非常に危険な政権であ
るといえます。米中戦争が起きる前に、尖閣諸島周辺海域におい
て、日中の軍事衝突が起きる確率はきわめて高いといえます。日
本は今まで以上にそれに備えることが必要です。
             ──[米中戦争の可能性/019]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプが中国・習近平政権に仕掛ける、3つの最終戦争
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   選挙後初となる記者会見で本領を発揮したトランプ氏の様
  子が日夜報道されていますが、彼が大統領に就任することを
  世界中で最も恐れているのは、意外にもあの習近平氏かもし
  れません。無料メルマガ『石平のチャイナウォッチ』の著者
  で、中国情勢に精通する石平さんは、トランプ氏は大統領就
  任後、間髪おかず中国に「3つの戦い」を仕掛けるだろうと
  予測。これに対抗し得る力は今の中国にはない、と断言して
  います。
   中国の習近平政権にとって2017年は文字通り、内憂外
  患の年となりそうだ。まずその「外患」について論じたい。
  中国政府に降りかかってくる最大の外患はやはり、今月誕生
  する米トランプ政権の対中攻勢であろう。大統領選で中国の
  ことを、「敵」だと明言してはばからないトランプ氏だが、
  昨年11月の当選以来の一連の外交行動と人事布陣は、中国
  という敵との全面対決に備えるものであろうと解釈できる。
   トランプ氏は日本の安倍晋三首相と親しく会談して同盟関
  係を固めた一方、ロシアのプーチン大統領や、フィリピンの
  ドゥテルテ大統領とも電話会談し、オバマ政権下で悪化した
  両国との関係の改善に乗り出した。見方によっては、それら
  の挙動はすべて、来るべき「中国との対決」のための布石と
  理解できよう。          http://bit.ly/2kE9P5B
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中国海軍軍艦による海自護衛艦へのレーダー照射.jpg
中国海軍軍艦による海自護衛艦へのレーダー照射
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする