2016年12月16日

●「親ロ/中東が重視のトランプ政権」(EJ第4423号)

 14日にトランプ次期政権における安全保障関係の中心閣僚が
ほぼ決まったようです。
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  国務長官 ・・・・・・・ レックス・ティラーソン氏
  国家安全保障補佐官 ・・    マイケル・フリン氏
  国防長官 ・・・・・・・  ジェームズ・マティス氏
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 結局、トランプ次期米国大統領は、国務長官に、米石油大手エ
クソン・モービル会長兼最高経営責任者(CEO)のレックス・
ティラーソン氏を選んだのです。ティラーソン氏は企業経営者で
はありますが、外交経験ゼロの民間人です。国務長官にこのよう
な民間人を起用するのはきわめて異例なことです。
 ティラーソン氏は石油事業を通じてロシアのプーチン大統領と
長い親交があり、ロシアに接近したいと考えているトランプ氏に
とって願ってもない人材といえます。しかし、ティラーソン氏は
ロシアのクリミア併合による米国などが実施した対ロ制裁には反
対の立場です。したがって、同氏の国務長官就任によって、米国
は、これまでの対ロ路線を大きく変える可能性があります。
 問題は、ティラーソン国務長官が上院の承認を得られるかどう
かです。新政権の閣僚は上院の承認手続きが必要ですが、与党の
共和党は、伝統的に「反ロ」の傾向が強いのです。ティラーソン
氏の起用について、党重鎮のジョン・マケイン氏と、上院議員で
トランプ氏と予備選を戦ったマルコ・ルビオ氏は、ティラーソン
氏の起用に次のように難色を示しています。
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 ◎ジョン・マケイン上院軍事委員長
  ・ティラーソン氏がプーチン大統領と個人的に親しい間柄
   であることが懸念される。
 ◎マルコ・ルビオ上院議員
  ・国務長官として望む人物はプーチン氏の友人ではない。
         ──2016年12月14日付、朝日新聞
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 トランプ氏と共和党幹部は、まだ完全には和解していないので
す。したがって、共和党の上院議員が数人反対に回ると、国務長
官就任が承認されない可能性は十分あります。
 それにもうひとつ重要な問題があります。それは、大統領選挙
において、ロシアがトランプ氏が有利になるように、民主党の全
国委員会のサーバーをハッキングし、ウィキリークスに提供した
との米中央情報局(CIA)の分析結果の発表です。これは、ロ
シアによるハッキングであるとほぼ断定しています。
 これに対してジョン・マケイン氏は、12月12日に「これは
深刻な問題であり、一つの戦争である」とあからさまにロシアを
批判しています。トランプ氏は「馬鹿げている」と一蹴していま
すが、共和党との仲がこれ以上悪化すると、トランプ新政権は、
出だしから、つまづくことになってしまいます。
 トランプ政権の安全保障関係閣僚の布陣を見ると、次の2つの
特色が明確になっています。
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           1.親ロシア
           2.中東重視
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 「1」については、選挙期間中からトランプ氏はロシアのプー
チン大統領に親ロのメッセージを送り、大統領に決まると、ロシ
ア通のティラーソン氏を国務長官に任命するなど、親ロの実現を
図ろうとしていることから、明らかであるといえます。
 「2」に関しては、国防長官にジェームズ・マティス元中央軍
司令官、国家安全保障補佐官にマイケル・フリン氏を任命したこ
とで明らかです。マティス氏は、湾岸戦争やイラク戦争など、中
東での紛争で、長く指揮をとっており、経験豊富です。フリン氏
は、元国防情報局長であり、中東での情報活動や戦闘指揮経験豊
かな軍人です。いずれも中東の専門家なのです。
 明らかに、IS掃討や対テロで、ロシアと共闘して成果を上げ
ようとしているのです。したがって、アジアで台頭する中国とど
う向き合うのかが注目されます。しかし、トランプ氏の台湾をめ
ぐる対応を見ても相当強い姿勢で臨むことは考えられます。
 少なくとも、クリントン氏が大統領選で勝利し、大統領になっ
た方が、日本と中国との関係は厳しくなっていたと思われます。
なぜなら、中国とクリントン家の関係は非常に深いからです。表
面的にはともかく、クリントン夫妻は「親中国」であることは明
らかです。
 しかし、民主党(現民進党)時代に、中国との間で尖閣諸島で
もめたとき、訪米した前原外相に対して、クリントン国務長官は
尖閣諸島に関して、次のように明言しています。確か尖閣諸島に
関して、米国の高官がここまで踏み込んだ発言をしたのは、はじ
めてのことです。2010年10月29日のことです。
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 はっきり改めていいたい。尖閣諸島は日米安保条約第5条の
 (適用)範囲に入る。日本国民を守る義務を重視している。
                 ──クリントン国務長官
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 このとき多くの日本人は、クリントン国務長官の発言を好感し
たと思います。そしてこのクリントン国務長官の発言が、後のオ
バマ大統領の同様の発言につながったといえます。
 しかし、国務長官の立場と大統領の立場は基本的に異なるので
す。クリントン氏は確かにこの発言をしましたが、大統領になっ
ても、この発言を繰り返すとは限らないのです。それは、夫のク
リントン大統領と中国との関係、クリントン財団と中国との関係
を見ていくと、わかります。このクリントン財団と中国との関係
については、来週のEJで述べることにします。
            ──[孤立主義化する米国/108]

≪画像および関連情報≫
 ●サイバー攻撃 関与を指摘されるロシアとトランプの関係
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   ロシア政府が関与した疑いのあるサイバー攻撃が世界中で
  相次いでいる。7月には米民主党全国本部のサーバーにサイ
  バー攻撃が仕掛けられ、内部メールの内容が流出し、民主党
  内部でサンダース候補(当時)の勢いを落とすための協議が
  行われていた事実が判明。委員長が辞任する騒ぎへと発展し
  たが、クリントン候補はサイバー攻撃をロシア情報機関が関
  与したものであったと断言している。9月にはホワイトハウ
  スのスタッフのメールがハッキングされ、ミシェル・オバマ
  大統領夫人のパスポート用写真などが流失。米ヤフーも約5
  億人分の個人情報が盗まれたと発表したが、複数の米メディ
  アは政府関係者の話として、これらのサイバー攻撃にロシア
  政府が関与している可能性が非常に高いと伝えている。一方
  でトランプ陣営とロシアとのつながりを指摘する声もある。
   大統領選挙まで1週間を切ったが、複数の米メディアはク
  リントン候補が依然としてトランプ候補に数ポイントの差を
  つけてリードしていると伝えているものの、トランプ候補の
  支持率が直前になって再び上昇傾向にあると伝えるメディア
  もあり、最後まで展開が読めないのも今回の選挙の大きな特
  徴だ。これまでの大統領選挙でも舌禍によって道半ばにして
  自滅した候補は存在したが、トランプ候補には自らの発言に
  よって支持率を下げてしまうケースが頻繁にあり、メディア
  を何度も賑わせてきた発言が、ここに来て自身の首を絞めて
  いるようにも思われる。      http://bit.ly/2hrssvw
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レックス・ティラーソン氏.jpg
 
レックス・ティラーソン氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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