2016年11月24日

●「党派性の強いベンガジ特別委員会」(EJ第4407号)

 そもそも「ヒラリーメール」(以下、この表現で統一)はいつ
頃からいわれるようになったのでしょうか。副島隆彦氏の本を中
心に時系列に事件を追ってみることにします。
 クリントン国務長官が退任したのは2013年2月1日のこと
です。同年3月3日に、あるハッカーがシドニー・ブルメンソー
ル氏のメールをハッキングしたのです。ブルメンソール氏という
のは、ビル・クリントン元大統領の補佐官であり、国務長官に就
任したヒラリー・クリントン氏の私的な相談相手を務めていた人
物といわれています。
 したがって、ブルメンソール氏のメールのなかには、当然のこ
とながら、クリントン国務長官とやりとりしたメールが多く含ま
れていたのです。このハッカーは、「グッシファー」と呼ばれる
ルーマニア人であり、ブルメンソール氏のメールアカウント経由
でクリントン国務長官のメールをハッキングしたことを明らかに
したうえで、クリントン氏が国務省の国家機密を勝手に使ってい
たという事実を暴露したのです。
 しかし、このことは表に出ていないので、ヒラリーメールのこ
とは多くの人の知ることにならなかったのです。その後その男は
ルーマニアで逮捕され、7年の刑を宣告されています。2015
年に米国に移送され、現在バージニア州の拘置所に収監されてい
るといわれます。
 ちょうどその頃、元CIA職員であるエドワード・スノーデン
氏は、政府が違法な情報収集をしているとして、主要メディアに
国家機密を送り始めたのです。実はそのなかに、ヒラリーメール
が多数含まれていたのです。しかし、身の危険を感じたスノーデ
ン氏は、2013年5月20日に香港に脱出し、6月23日にモ
スクワに政治亡命しています。
 2014年5月2日に米議会下院に「ベンガジ特別委員会」が
設置されます。委員長は共和党のトレイ・ガウディ氏です。この
特別委員会の設立は、ヒラリーメールが発覚したことと無関係で
はないのです。ヒラリーメール(一部ではあるものの)その内容
が尋常ならざるものであったからこそ、特別委員会を立ち上げた
ものと思われます。
 さらにその頃から、次期大統領選には、民主党からヒラリー・
クリントン氏が出馬することが既定事実になっており、共和党と
してはその意味からもヒラリーメールとの関連でベンガジ事件を
究明することによって、ヒラリー・クリントン氏の出馬を牽制し
たかったのではないかと考えられます。
 果せるかな、この特別委員会には民主党が猛烈に抵抗したので
その開催が3ヶ月間も遅れたのです。もし開催され、調査がはじ
まると、ベンガジ事件が暴かれ、オバマ政権にとって不利な事態
になると考えたうえでの抵抗です。
 2014年8月に調査が行われると、ベンガジ特別委員会の要
請に基づいて国務省はヒラリーメールの一部を提出したのです。
このあたりから、クリントン氏が国務長官時代の公務に、私的な
メールアカウントを使っていたことが明るみに出たのです。
 2014年11月に、ベンガジ特別委員会は、クリントン氏が
私的に使用したメールをすべて提出するよう命令しています。こ
れを受けて、ヒラリー事務所は3万490通の印刷されたメール
(約5万5千ページ)を国務省に提出しています。なお、このメ
ールの数については、いろいろいろな情報があってはっきりして
いないのです。
 2015年3月3日付けのニューヨーク・タイムズ紙が、ヒラ
リーメール問題を取り上げたのです。これによって、この問題が
世界的に知られることになったのです。このニューヨーク・タイ
ムズ紙の記事について、新田容子日本安全保障・危機管理学会主
任研究員は次のように報じています。
─────────────────────────────
 2015年3月3日付けのニューヨーク・タイムズ紙によると
クリントン氏が国務省時代の4年間、個人のメールアカウントを
使用して職務に当たっていたという。
 側近が5万5千ページに渡る同氏のメール内容をアメリカ国立
公文書記録管理局(米国連邦政府下の独立機関)へ提出した後に
明るみに出た。タイムズ紙はクリントン氏が職務用に個人メール
を使用した初めての政府高官ではないとしているが、このスクー
プは懸案を引き起こしている。評論家や政治家達がこの問題にか
かる倫理性と合法性について論じている一方、クリントン氏の通
信の安全性が取りざたされている。   http://bit.ly/2fpO21F
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 クリントン氏は、2015年10月22日のベンガジ特別委員
会の公聴会で「自分はきちんと職務を果たしている。やましいこ
とはしていない」と証言しています。この公聴会は、10時間に
わたり議論が行われましたが、新しい事実はほとんど出なかった
のです。肝心のメールが表には出ていないからです。
 しかし、ガウディ委員長は、ブルメンソール氏とやり取りした
メールの内容にこだわり、民主党委員と激しい論戦になったとい
います。BBC系のサイトは次のように述べています。
─────────────────────────────
 ガウディ委員長が、クリントン氏の友人のシドニー・ブルーメ
ンソール氏が、リビア関連の機密情報をメールでクリントン氏に
送っていた事実にこだわったのだ。ガウディ委員長は、ブルーメ
ンソール氏がクリントン氏のリビア政策に不当に影響を及ぼし、
スティーブンス大使よりも頻繁にクリントン氏に連絡をとってい
たのではないかと示唆した。
 民主党の委員たちはそれに強く反発し、ブルーメンソール氏の
証言内容を公開するよう要求した。そのやり取りをクリントン氏
は、面白がっているような表情で超然と眺めるだけだった。
                   http://bbc.in/2f5n6Wx
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/092]

≪画像および関連情報≫
 ●ベンガジ事件やメール問題の追及かわす/下院公聴会
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   ワシントン(CNN)2012年に起きたリビア・ベンガ
  ジの米領事館襲撃事件をめぐり、ヒラリー・クリントン前米
  国務長官は22日、下院特別委員会の公聴会に出席した。
   襲撃事件ではクリス・スティーブンス駐リビア大使ら米国
  人4人が死亡した。公聴会では、下院の過半数を占める共和
  党の議員たちが、国務長官としてのクリントン氏の事件への
  対応や、長官在任中に個人の電子メールアカウントを使用し
  ていた件などを追及した。
   党派色の非常に強い公聴会で、多くの米国民の見方に影響
  を及ぼすものではなかったかも知れない。共和党は在外公館
  の警備に関するクリントン氏の失策が事件を招いたと考え、
  前国務長官が徹底調査に応じていないとの立場を崩そうとし
  ない。一方、民主党から見れば、公聴会は同党の大統領選指
  名候補争いで最も有力視されているクリントン氏を傷つける
  ために開かれた一種の「魔女狩り」だ。
   クリントン氏は終始落ち着いた様子で、質疑の主導権を握
  っていた。それでも時間が経つにつれ、共和党からの質問内
  容や、何度も発言に横やりを入れられることにいらだちの表
  情も見せていた。だが結果としてクリントン氏は、約11時
  間にわたる公聴会をさしたる痛手も受けずに切り抜けること
  ができた。            http://bit.ly/2gfZTAr
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ベンガジ特別委員会/公聴会でのクリントン氏.jpg
ベンガジ特別委員会/公聴会でのクリントン氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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