2016年11月21日

●「カダフィー大佐を殺したのは誰か」(EJ第4405号)

 民主主義国家から見ると、「独裁国家=悪」という考え方を持
つものです。とくに民主主義国家を世界中に拡大したいと考えて
いる米国はそのように考えるのがつねです。しかし、独裁国家で
あってもきちんと統治されている国家は少なくないのです。かつ
てのイラクもそういう国のひとつだったのです。
 ところが米国は、イラクが実際には保有していなかった大量破
壊兵器を確証もないのに保有しているとし、イラクに戦争を起こ
してフセイン大統領を排除したのです。このさい、大量破壊兵器
の有無など、どうでもよかったのです。米国が戦争を起こした理
由は他にあります。
 それは一言でいえば米国の国益を守るためです。本当の理由は
イラクが米国に対して、絶対に容認できないことをやったからで
す。それは、イラクが自国の原油の取引をドルからユーロに変更
したことです。
 原油は現在ドルでしか取引できませんが、もし他の産油国がイ
ラクに同調してユーロでの取引に切り替えるようなことが起きる
と、米ドルは基軸通貨の地位を失いかねないことになります。そ
のため、イラクが大量破壊兵器を保有しているという不確かな情
報に基づいて戦争に踏み切ったのです。つまり、イラクは米国の
虎の尾を踏んでしまったのです。実際にイランでもドルをユーロ
に切り替えており、これに対して米国はイランに対し、厳しい経
済協力を課したのです。
 それでは、リビアのカダフィ大佐は、なぜ殺されたのでしょう
か。リビアも資源豊かな産油国であり、独裁国家であることはイ
ラクと同じです。リビアはアフリカでも屈指の石油産出国であり
2010年のGDPは779億ドル、アフリカ第7位の豊かな国
です。リビアを統治していたカダフィ大佐は、独裁者ではあった
ものの、国民に対しては善政を行っていたのです。
 ただ、カダフィー大佐は、アフリカを何とかひとつにまとめよ
うと努力していたのです。しかし、そのためにやろうとした次の
3つのことが、欧米諸国の国益を損ねたといえます。ちなみにこ
れら3つのうち、カダフィー大佐が実際にやったのは「1」だけ
で、「2」と「3」は実現する前に殺害されています。
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 1.コミュニケーション用衛星を独自に打ち上げ、英米資本
   家に損害を与えた。
 2.「ユナイテッド・ステート・オブ・アフリカ」を作り上
   げようと努力した。
 3.AMF(アフリカ通貨基金)を設立して、IMFに損害
   を与えようとした。
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 このなかで、「3」はストロスカーン前IMF専務理事と組ん
で、カダフィー大佐は、米ドルに替わる基軸通貨を作る方向で動
いていたのです。この点はフセイン大統領と同じであり、とくに
米国にとっては、とても受け入れられないことだったのです。
 しかし、リビアの場合は、イラクの場合と違って、世界の関心
が日本の311(東日本大震災)に向いているときに、こっそり
とNATOによる空爆が行われ、地上では米国が後押しする反政
府勢力によって、カダフィー大佐が殺害されたのです。かたちの
うえでは、カダフィ大佐の殺害は反政府勢力によって行われたと
されています。
 カダフィー大佐は、2011年4月30日、空爆を続けるNA
TOに対して、次のメッセージを発信しています。
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 NATOの人々よ、聞きなさい!あなたたちは、アフリカから
欧州への移民流入を堰き止めてきた壁を爆撃しているのでり、ア
ルカイダのテロリストを抑えてきた壁を爆撃しているのです。リ
ビアがその壁だったのでしょう。それをあなたたちは破壊しよう
としているのです。あなたたちは馬鹿ものだ。アフリカからの数
千の移民のせいで、アルカイダに対する支援のせいで、あなたた
ちは地獄に落ちるがよい。実際、そうなるだろう。私は、嘘はつ
かない。今言っていることは嘘ではない。
         ──カダフィー大佐/2011年4月30日
─────────────────────────────
 それでは、米国は何をやったのでしょうか。
 米国は、リビア第2の都市であるベンガジを中心に反政府軍を
密かに組織し、武器を貸与してカダフィー大佐の殺害を企てたの
です。その中心人物はベンガジ米領事館のスティーブンス大使な
のです。スティーブンスは大使ですから、当時国務長官をしてい
たヒラリー・クリントン氏の部下ということになります。このク
リス・スティーブンス大使について、副島隆彦氏は次のように述
べています。
─────────────────────────────
 このクリス・スティーブンスは、国務長官だったヒラリーの直
属の外交官で、CIAの人殺し部隊というか特殊部隊の責任者で
もあった。スティーブンス大便はその前年に、自分が直接指揮を
してカダフィ大佐を惨殺した。リビアの独裁者カダフィ殺し──
2011年10月20日の最高責任者はヒラリーである。ヒラリ
ーはカダフィが殺される2日前に、リビアの首都トリポリに自ら
乗り込んでいる。そして暗殺部隊と写真に収まっている証拠写真
がある。                  ──副島隆彦著
      『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社
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 カダフィー大佐が殺害されてから、クリス・スティーブンス大
使の周辺は危険が増していたのです。米国のベンガジ領事館は、
領事館としての最小限度の警備も設備も備えておらず、単なる派
出所に過ぎなかったからです。スティーブン大使は、何回もベン
ガジの警備体制を整えて欲しいとクリントン国務長官に申請した
のですが、クリントン国務長官は、なぜか、その申請のすべてを
却下したのです。    ──[孤立主義化する米国/090]

≪画像および関連情報≫
 ●カダフィーの真実/理想社会を創った英雄
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  カダフィー大佐。
   2年前のリビア戦争で話題になった人です。最期は反政府
  軍らに殺害されます。「独裁者」とか「アラブの狂犬」とか
  悪の象徴であるかのような感じでしたね。確かに緊張みなぎ
  った強面ですし。腕っ節の強そうな剛毅な感じもします。
   40年以上も独裁者だった、とい言われていましたね。ま
  た武装もしていないリビア国民をも無差別に攻撃したとか。
  残虐非道で、悪魔のような人物。リビア国民は恐怖と圧政に
  強いられていたんだろうな、という感じでした。
   ですので、リビア戦争では、「民主主義万歳!」「反政府
  運動イケイケ!」という感慨をおそらく全世界の人達が持っ
  たでしょう。欧米メディアでは、カダフィー大佐を「悪者」
  として報道していましたし。無差別攻撃の映像が流れたり。
  そんな報道一色でした。これに対して「正義の味方」の「国
  連・NATO」といった感じでもあったりします。しかし、
  カダフィー大佐は、報道されていた人物とは真逆でした。
  「え!?」と想うかもしれません。最初知った時は、私も驚
  きました。カダフィーの本当の姿は、独裁者でも無ければ、
  狂犬でもありませんでした。なんとリビアの国民の全てを愛
  し、リビア国民の幸福の実現のために、本気で取り組んだ方
  だったのです。          http://bit.ly/1TCa8HJ
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クリス・スティーブンス大使.jpg
クリス・スティーブンス大使
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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