2016年09月29日

●「北朝鮮の核技術は高度化している」(EJ第4370号)

 昨日のEJで、平井久志共同通信客員論説委員の北朝鮮の核技
術についての2つのコメントを紹介しましたが、それを再現し、
以下、平井氏のレポートに基づいて解説します。
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  1.核弾頭の小型化・軽量化・多様化に成功したこと
  2.弾道ロケットに装着できるように標準化・規格化
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 「1」について考えます。
 北朝鮮の第3回核実験というと、2013年2月12日に行わ
れていますが、金正恩氏がトップになってはじめての核実験とい
うことになります。このとき、北朝鮮は、次のようにコメントを
発表しています。
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 以前の核実験と違い、爆発力が大きく、なおかつ小型化、軽量
化された原子爆弾を使い、高い水準で完全かつ完璧に実施された
核実験である。    ──第3回核実験での北朝鮮のコメント
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 北朝鮮の発表には、眉につばをする人が多いですが、いま考え
ると、この発表は真実を伝えていたと考えられます。今年9月の
第5回の核実験では、上記の「原子爆弾」の部分が「核弾頭」に
変わっており、これまで5回核実験を重ねているところから、核
弾頭の小型化が実現できても不思議はないといえます。
 2016年3月9日に金正恩氏は、核兵器研究所の科学者や技
術者と会い、核の兵器化事業を視察していますが、そのとき次の
ように述べています。
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 核弾頭を軽量化して弾道ロケットに合わせて標準化、規格化を
実現したが、これが本当の核抑止力である。   ──金正恩氏
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 この核の弾頭化と並行して、北朝鮮は今年に入って、ミサイル
の発射実験を何回も行っています。北朝鮮は米韓の合同軍事演習
の実施や、核実験をしたことによる国連の制裁決議などに合わせ
るかのように多くのミサイルを発射しています。それは抗議のた
め、反発の意思表示のための発射のように捉えられがちです。し
かし、それは違うのです。実験やミサイルの発射をそういうタイ
ミングに合わせて行っているのは確かですが、北朝鮮は、冷静に
計画的に必要な実験を積み重ねてきているのです。
 それは今年に入ってからのミサイルの発射実験に見られます。
「ムスダン」といわれる中距離弾道ミサイル(射程:2500〜
4000キロ)は、韓国では既に実戦配備されていると見られて
いましたが、今年の4月15日にはじめて発射されたのです。し
かし、このときは失敗したものの、6月22日の発射では成功さ
せています。
 同じ中距離弾道ミサイル「ノドン」(射程:1300キロ)も
8月3日に発射されています。これは秋田県沖の約250キロの
日本の排他的経済水域に落下していますが、飛距離は約1000
キロで、北朝鮮がこれまでミサイルとして発射したものでは、最
長距離だったのです。
 さらに北朝鮮は、9月5日に弾道ミサイル3発を発射して成功
させています。これは動画がテレビのニュース番組で紹介されて
いるので、多くの人が視聴しているはずです。しかもいずれも成
功させています。3発とも約1000キロ飛翔しているのです。
これらはノドンではなく、スカッドの改良型とみられています。
このように、日を追って精度が向上してきているのです。
 「2」について考えます。
 核兵器の標準化・規格化は、核弾頭の量産化を意味していると
平井久志氏は指摘しています。北朝鮮は、5000キロワットの
実験用原子炉を稼働させ、その使用済み核燃料を再処理して兵器
用のプルトニュウムを生産しているとみられます。
 ここでいう「5000キロワットの実験用原子炉」は、6ヶ国
協議の合意で稼働を止めていた原子炉ですが、2013年再稼働
させています。これについて北朝鮮は公式に認めています。
 ジョエル・ウィット米ジョンズ・ホプキンズ大客員研究員は、
北朝鮮は最悪の場合、2020年までに核兵器100個を製造す
る可能性があることを次のように指摘しています。
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 スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)
は北朝鮮の核兵器について昨年は6〜8個保有と推定していたが
今年6月の報告では最大10個に増加とした。また、米シンクタ
ンク、科学国際安全保障研究所(ISIS)も今年6月の報告書
で、北朝鮮は過去1年半の間に核兵器を4〜6個増やし、現在の
保有数は13〜21個に上ると推計している。
 米ジョンズ・ホプキンズ大客員研究員のジョエル・ウィット氏
は、昨年2月に、北朝鮮が最悪の場合、2020年までに核兵器
100個を製造できるとの分析を発表した。同氏はこの時点で北
朝鮮が保有する核兵器はプルトニウム型とウラン型を合わせて、
10〜16個と推定。5年後の保有数について、核開発にほとん
ど進展がない場合は20個、ある程度順調に進展した場合は50
個、予想以上に急速に進展した場合は100個と予測した。
                   http://bit.ly/2d0ZvSV
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 ここまで、平井久志氏のレポートをご紹介してきましたが、不
可解なのは、金正恩氏がトップについてから、北朝鮮の核技術が
なぜここまで急速に進化を遂げたのかです。
 国連安保理制裁決議による経済や原材料などの制約にもかかわ
らず、経済も比較的安定し、ミサイルの原材料にも不足はしてい
ないようです。つまり、制裁はまるで効いていないのです。これ
はどう考えても中国の支援がないと不可能なことです。経済だけ
でなく、核技術の支援も行っていることは明らかです。
            ──[孤立主義化する米国/055]

≪画像および関連情報≫
 ●金正恩氏の核戦略を侮るべからず/産経ニュース
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   北朝鮮が5回目の核実験を強行した9日、韓国の朴槿恵大
  統領は「権力を維持するために、周辺国の忠告に耳を貸さぬ
  金正恩(朝鮮労働党委員長)の精神状態は制御不能とみなけ
  ればいけない」と、呼び捨てで激しく非難した。韓国紙・朝
  鮮日報(10日付)も社説で、北朝鮮を「ゴロツキ」と罵倒
  した。ところがわが国は「精神状態が制御不能なゴロツキ」
  の手口をきちんと学習していない。今次小欄は、北朝鮮の核
  ・ミサイルの脅威度を洗い、対する日本の安全保障態勢や国
  防認識がいかに追いついていないかを検証する。
   5回目の核実験で使われた爆弾の威力は、TNT火薬1万
  トンに相当する約10キロトンと言われる。広島に投下され
  たウラン型原爆《リトルボーイ》が15キロトンだから、威
  力のほどがわかる。
   広島市国民保護協議会の《核兵器攻撃被害想定専門部会報
  告書》によると、仮に広島市中心部で1キロトンの核兵器が
  地表1メートルの高さで爆発すると、死者1万人/負傷者5
  万人に達する。《広島市・長崎市原爆災害誌編集委員会》の
  調べでは、実際の広島型は爆風も凄まじく、半径2キロ以内
  の全木造家屋が倒壊・焼失、半径2〜4キロ圏内では全壊か
  半壊し、窓ガラスは16キロ先でも割れていた。
                   http://bit.ly/2dqrYRu
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3発連続してミサイル発射(北朝鮮).jpg
3発連続してミサイル発射(北朝鮮)
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする